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2014/03/18 23:00

 

大森靖子、満員のリキッドルームでメジャー・デビューを発表ーーOTOTOYライヴ・レポート

 

Photo by Terumi Fukano

大森靖子が、2ndアルバム『絶対少女』レコ発ツアーのファイナルとなるワンマン・ライヴ〈絶対少女が夢見るBBa'14ツアーファイナル『最終公演』〉を、東京・恵比寿リキッドルームにて開催。エイベックスからメジャー・デビューすることを発表した。

ライヴの最後に、たったひとりで弾き語りで演奏した「ハンドメイドホーム」。デビューを発表した直後に聴く「大好きな歌で夢をみる」という歌詞は、いつも以上に大きな希望を感じた。そして弾き語りでライヴを締めくくったことは、大森はどんなフィールドに行こうとも、これまでの尖った姿勢を貫いてくれると強く確信させてくれるものだった。

Photo by Terumi Fukano

この日のライヴは、一般発売されたチケットは発売早々にソールド・アウト。ほかに、ライヴ会場などで手売りのチケットも売られていたが、こちらも2月11日の時点で400枚近くが売れていた。リキッドルームの一般的なライヴでの収容人数が900人ほどであることを考えると、半分近くを手売りで売ったことになる。これだけの数が短期間で売れたのは、いかに彼女がライヴを大切にしているか、いかにライヴで多くの人を惹きつけているかがうかがえる。ちなみに、こちらは前回のクラブクアトロでのワンマンと同様に大森本人との2ショット・チェキが撮れるという特典付き。筆者もチェキ欲しさに思わず購入してしまった。そういう人も、それなりにいたことだろう。

入場受付を済ませると、ロビーには大きなピンク色のオブジェが。部屋のように四角く切り取られた空間が、大森の写真や私物と思われるもので装飾されていた。すでに我々は、彼女の世界に足を踏み入れてしまっている。フロアに入ると、まだ開演までは少し時間があったにも関わらず、移動するのにも労力がいるほどの満員に。さすが、当日券も出ないほどの正真正銘のソールド・アウト公演である。ちなみに、この日は客席の上手側前方に女性専用エリアが設けられていた。アルバム『絶対少女』では「すべての女子を肯定しようと思った」と語られているとおり、女性客を大切にしている彼女らしい試みと言えよう。

Photo by Terumi Fukano

開演予定時刻を少しだけすぎた19時7分頃に場内は暗転。まだステージの幕は閉まったまま、「ミッドナイト清純異性交遊」のイントロが流れる。すると、ステージ袖から大きなうさぎの耳を頭につけた大森が登場し、歌いはじめる。いきなりのサプライズ演出に、場内はどっと沸きあがった。そして次の瞬間、客席がピンク色に染まる。事前に有志が入口で配っていたサイリウムが一斉に光りだした。まるでアイドルのライヴさながらに、BメロではPPPH(「ぱんぱぱんひゅー」のリズムで合いの手を入れること)が起こる。そんな光景を背に、大森はうれしそうに歌いながら自身のiPhoneで自撮りしたかと思うと、すかさず客席に飛び込んだ。オープニングから、大森ワールド全開だ。

1曲歌い終えると、大森はステージからはけ、下手側に用意されたスクリーンに映像が映しだされる。そのなかで大森は「私、大森靖子は、エイベックスさんからメジャー・デビューすることを発表します」と告げた。いきなりの衝撃発表に、またしても客席から大歓声。続いてスクリーンに、大森のMVにも出演している蒼波純や、たびたび共演している南波志帆、いずこねこ、アップアップガールズ(仮)などからのメッセージが流れると、場内は祝福ムードに包まれた。

Photo by Terumi Fukano

ドラムのカウントから力強いバンド・サウンドが鳴り響くと、ついに幕が開く。そして、ピンクに彩られたステージが目に飛び込んでくる。「ミッドナイト清純異性交遊」「君と映画」のMVで観せた世界。そのなかで描かれていた、煌びやかに装飾されたアンダーグラウンド、彼女のホームともいうべき無力無善寺を模した世界が、そのまま大きくなってステージに広がっていた。そんなセットの中央で、大森は「絶対彼女」をとびきりキュートに歌った。続いて「あまい」「Over The Party」が演奏される。直枝政広(Gt / カーネーション)、tatsu(B / レピッシュ)、久下恵生(Dr)、奥野真哉(Key / ソウル・フラワー・ユニオン)、畠山健嗣(Gt/ H MOUNTAINS)によるサウンドは、メジャー・デビュー発表直後だというのに、まったく容赦ない爆発的な音を放っていた。

ここで大森が「こんばんは、大森靖子です。来てくださってありがとうございます」と挨拶。メジャー・デビューにあたり、「すでにいっぱい怒られてるんです」と告白。「幸先が不安ですが、私たちがこれまでファンのみなさんと一緒に考えてきたおもしろいことを超える、おもしろいことを考えてくれるんですかねー」と、少々の毒を吐きつつも、「一緒にがんばっていきたいなと思っているので、エイベックスさんと。これからもどうぞよろしくお願いします」と意気込んだ。

「hayatochiri」や「魔法が使えないなら」では、静まり返った客席にダークな世界観を観せつける。そして、ステージには大森がひとりになり、「新曲です」という紹介から「呪いは水色」がはじまった。ただただ、せつないメロディが胸を打つ。「私たちはいつか死ぬのよ」という歌詞が心をえぐる。「婦rick裸にて」を優しく歌ったあと、ギターを置いて「さようなら」をアカペラで歌う。序盤で聴かせたバンドの轟音とは対照的に、静寂のなかで響く大森の歌声。これまで数えきれないほど、たったひとりでライヴを行ってきた彼女の真骨頂。曲が終わってからしばらくの間、誰もひと言も声を発さなかった。それだけ説得力のある演奏だった。

Photo by 二宮ユーキ

直江と畠山のギターから、強烈なノイズが発せられる。そのなかで怨念を込めるように大森が歌ったのは、島倉千代子のカヴァー「愛のさざなみ」。そして「高円寺」を演奏したあと、大森はステージから去り、残されたふたりは、まるで音楽に取り憑かれたかのようにギターを激しく弾き続けた。黒い衣装に着替えツインテールに髪を結った大森がステージに戻ると、キーボードでの弾き語りで「キラキラ」「青い部屋」を披露。続く「KITTY'S BLUES」では、ふたたびバンドもくわわる。ここでは、奥野がアコーディオンを演奏する場面も観られた。

大森が、それぞれとのエピソードを交えながらバンド・メンバーを紹介すると、場内は和やかなムードに。ライヴは終盤へと突入する。大森はふたたびアコギを持ち、初期の代表曲のひとつである「パーティードレス」を演奏。軽やかなサウンドに導かれ「君と映画」がはじまると、大森は満員の客席をうれしそうに見渡しながら歌い、観客ひとりひとりを指差した。続いて、バンド・サウンドで生まれ変わった「新宿」を演奏。ギターを置いてハンド・マイクを手にした大森は、スカートをひるがえしながら、くるくると自由にステージを踊りまわった。

うめくような声で大森が「音楽は魔法ではない」と繰り返す。その声は次第に大きくなり、叫び声へと変わっていく。そのまま「音楽を捨てよ、そして音楽へ」が演奏され、客席も一体となり「音楽は魔法ではない」と合唱。その声をさえぎるように、大森は「でも、音楽は」と囁く。その後、すべての感情をぶつけるかのように大森が絶叫。場内のテンションも最高潮に達したところで、本編は終了した。

Photo by 二宮ユーキ

アンコールに応え、ピンク色のドレスに着替えた大森が、バンドとともにステージに戻る。大森の地元・愛媛のゆるキャラ「みきゃん」のなかに入った同級生と宮城県の女川で対バンすることなどを、おどけながら話す。アンコールでは、ピンクトカレフのライヴでもたびたび演奏される「最終公演」と、未発表曲の「デートはやめよう」を演奏した。

2度目のアンコールは、大森がひとりでステージに戻る。最後の最後は、やはりひとりで、いつものギターでの弾き語り。はじまったのは「ハンドメイドホーム」。繰り返し歌われる「毎日は手づくりだよね」という歌詞。これをこの満員のリキッドルームで弾き語りで聴けることが、たまらなくうれしい。大森はずっと、自らの手づくりによる活動で、これだけ多くの人の支持を獲得してきたのだ。曲が終わると、大森は「ありがとうございました! 」と晴れやかな笑顔で挨拶。客席に向けて深くお辞儀をすると、2時間20分、計26曲に及んだライヴは終了した。

Photo by 二宮ユーキ

メジャーへの移籍は、もはや時間の問題だと思っていた。それほど彼女の活動は、インディーズだとか、ロックだとか、アイドルだとか、そういう枠を当に取っ払っているものだった。リキッドルームですら、少し狭く感じてしまうくらいに、彼女の世界観は大きくなってしまっている。また、大森は先日、畠山との対談で「最初から大観衆の前で歌ってるイメージしかなかった」と語っていた。「君と映画」で大森が客席を見渡しているときに見せた笑顔は、とても印象的だった。大森が抱いているイメージに、この日のライヴは少しでも近づいていたのだろうか。彼女にとってメジャーなど、そのイメージに辿り着くための第一歩でしかないのだろう。いまだに閉塞感を打破できない音楽業界に、大森靖子ならきっと、かつてないほどの大きな風穴を空けてくれるのではないだろうか。これからの活動に、大いに期待したい。(前田将博)

〈大森靖子「絶対少女が夢見るBBa'14ツアーファイナル『最終公演』〉
2014年3月14日(金)LIQUIDROOM ebisu

<セットリスト>
1. ミッドナイト清純異性交遊
2. 絶対彼女
3. あまい
4. Over The Party
5. エンドレスダンス
6. あたし天使の堪忍袋
7. 展覧会の絵
8. hayatochiri
9. PS
10. 魔法が使えないなら
11. 呪いは水色
12. 婦rick裸にて
13. さようなら
14. 愛のさざなみ(島倉千代子カヴァー)
15. 高円寺
16. キラキラ
17. 青い部屋
18. KITTY'S BLUES
19. パーティードレス
20. 少女3号
21. 君と映画
22. 新宿
23. 音楽を捨てよ、そして音楽へ

<アンコール>
24. 最終公演
25. デートはやめよう

<アンコール2>
26. ハンドメイドホーム

・大森靖子 オフィシャル・サイト
http://oomoriseiko.info

・大森靖子×畠山健嗣 H MOUNTAINS、1stフル・アルバム完成記念対談
http://ototoy.jp/feature/2014031101/

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