2017/02/05 18:08

【LIVE REPORT】リミエキ『ALL AGES』発売記念 one man show!!!

Limited Express (has gone?) (以下リミエキ) が5thアルバム『ALL AGES』の発売を記念したワンマン・ライヴを開催した。

2014年のメンバー脱退~加入以降、精力的にライヴを重ねてきた彼ら。昨年10月に現体制初となるフル・アルバムをリリースし、満を持して開催されたワンマン・ライヴには、その勇姿を目撃しようと多くのオーディエンスが押し掛けた。カオスでありながらヴォルテージが天井を突き破った一日の様子をお届けしよう。

Limited Express (has gone?)

Limited Express (has gone?) / ALL AGES(24bit/48kHz)
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV / AAC

【配信価格】
単曲 194円(税込) / アルバム 1620円 (税込)

【収録曲】
1. NO MEAN
2. MOTHER FUCKER
3. This world is too small for me
4. それはずるい
5. Looking for INSPIRATION
6. Discommunication
7. ギャーギャー騒げ
8. METEO DAYDREAM
9. PSYCHO ME
10. Good night kids
11. インダストリア

Limited Express (has gone?)「ギャーギャー騒げ 」MUSIC VIDEO
Limited Express (has gone?)「ギャーギャー騒げ 」MUSIC VIDEO

日本全国を猛烈な寒波が襲ったこの日、東京・新代田も凍りそうな大気が景色を鋭く輝かせていた。リミエキのニュー・アルバム『ALL AGES』は、JJがロンドンのオルタナティヴ・ジャズ・パンク・バンドMELT YOURSELF DOWN等にもインスパイアを受けたと言う通り、サックスが散らばり、太いドラムや鋭いギターはブラックかつマッド。そして、それをポップに仕上げる突き抜けたボーカルスタイルが圧巻の一枚だった。彼らはアルバム・リリース後もボロフェスタ2016でのBiSHとの共演Have a Nice Day! との2ステージ同時演奏によるコラボレーションを行うなど意欲的な活動を続け、とどまることを知らない勢いはこのワンマンライヴにも流れ込んでいた。

会場に到着し、フロアの扉を開けて目に飛び込んできたのは、いつもより明るい照明とステージの前にテーブルを並べ佇むメンバー5人。「リミエキッチン・スタジアム」と題された、メンバー本人がその場で料理を給仕してくれるという何ともうれしい企画だ(笑)。想像以上のおもてなしだったため、ここでそのリミエキッチン・エントリー品を紹介するとともに、軽く食レポを。

エントリーNO.1【JJ(Vo, Gt)】国産特性鰻巻き。
優しいだしの味がしっかり効いた卵に、ふっくら仕上げられた鰻の舌触りがアクセントになった一品。
エントリーNO.2【YUKARI(Vo)】ヘルシーうれしーおいしー蒸し豚。
しっかり蒸しあげられ、優しい味が沁みた、口に入れた瞬間とろける食材たちが家庭を感じさせる一品。
エントリーNO.3【小森良太(SAX)】ペルーカフェオルキデア。
酸味の効いたナッツの薫る、それでいてオレンジを思わせるようなフルーティーなコーヒーに可愛い猫のココアクッキーを添えた一品。
エントリーNO.4【谷ぐち順(Ba)】FUCKERのコロッケサンド。
食パンにポテトチップスを砕いてソースをかけたものを挟んだ一品。本人曰く、お菓子だけは購入できた東京拘置所で流行っていたそうだ。確かにサクッとした食感とソースの味はまさにコロッケサンドと言わせる一品だ。
エントリーNO.5【もんでんやすのり(Dr)】炊き込みごはん。
定番のゴボウやニンジン、鶏肉などの五目を甘めに炊き上げた一品でトッピングに刻みのりも香りのアクセントになっている一品。

ここまで献身的にもてなしてくれるバンドが他にいただろうか?(まぁ、本人達はただただふざけてやっていたのだろうが...(笑))

ライヴ本編開始の時間が迫り、メンバーが控室に戻っていく。「リミエキッチン・スタジアム」の影響か、ワンマン特有の緊張感はフロアに皆無で、DJ西村道男がフロアを祝祭の世界へ再び誘う。西村道男からバトンを受け取り始まったのは一曲目「GROUCHY」。ローテンポな曲で、YUKARI(Vo)のヴォーカルは確かなビートを刻みオーディエンスの心にゆっくり確実にライヴが始まったことを染み込ませていく。間髪入れずに始まったのは「MOTHER FUCKER」。焼けるようなディストーションのギターのリフに極太のアタック音が刻まれるイントロ、弾むギターのフレーズを引き金にリズム隊やサックスが一気に暴れまわるこの曲は、有無を言わさず観客を躍らせた。続く「Looking for INSPIRATION」ではYUKARIの「よっしゃーー! 」という雄叫びがこだまする。

YUKARI(Vo)

「Discommunication」では、谷ぐち順が「communication! discommunication!」と叫び、一気にメンバーもオーディエンスもファストコアに突撃する。このファストコアへの瞬発力こそ、新体制のリミエキの持ち味だ。

JJ(Vo, Gt)

「Hip & Shake」ではセクシーな悪さを、「NO MEAN」では気怠いヴォーカルからのジャンクサウンドを、そしてサックスがフィーチャーされた「ガールズバー」と、70年代NO WAVEバンドが現代にやって来たかのように、これ見よがしにNO WAVEサウンドを叩き付ける。前半戦のラストは前作『JUST IMAGE』収録の「TVフラット」。現編成では軽快なサックスが加わり、より強烈な刺激が耳から脳内に入り込む。

小森良太(SAX)、谷ぐち順(Ba)

MCを挟んで演奏されたのは、過去アルバムからのメドレー。「アロハ!」「Talk to me, all right」「生け贄のJESUS CHILD」「old life new life」「D.N.A」「PU/AR」「fuck it out」と繋いでいく。「アロハ!」での奇天烈なギターとYUKARIの「アロハー! 」という掛け声は圧巻だ。「今これ叫ぶのめっちゃ恥ずかしい」「当時はこの言葉が世界を変えると本気で思ったんやから」とメンバーは冗談交じりで話していたが、後日「僕の世界はこの言葉で本当に変わったんですよ」というメールが彼らの長年のファンから届いたそうだ。その言葉は、過去を振り返らず新曲ばかりやり続けてきたメンバーに少なからぬ影響を与えたのではないだろうか。

メドレー後「皆さんお待ちかねの…」という谷ぐち順の呼び込みで2MUCH CREWよりぽえむとYO! マイキーが登場した。共作『CHAMPURU OF DOOM』から「ぞくぞくふらふら」で一気にバースト。ぽえむとYO! マイキーの狂気が注入され、会場はぐちゃぐちゃに。初披露の「CAN I KICK IT ? 」ではしっとりとYO! マイキーの歌を聴かせ、とびきりドープでマッドなトラックの上で全員がラップする「TV破壊クラブ」へと続いた。なんて自由なバンドたち…。この自由さ、そしてコラボだからこその遊び心を忘れない姿勢は、今のリミエキを重鎮に見せない要因の一つだろう。

ぽえむ、YO! マイキー

もんでんやすのり

2MUCH CREWのふたりに続いて、Have a Nice Day!より浅見北斗とチャンシマが登場。「髪を切れ!」「帰れ!」等、ステージに訪れた浅見に対してのヤジの多さから、いかに浅見が愛されているかがうかがえる。まずはリミエキが、Have a Nice Day! の最新作『The Manual(how to Sell My Shit)』より「666」をカバー。イントロのリフを地割れのようなベースで表現するとともに、ギターを最大に歪ませた音がフロアを一気に真っ赤に染める。 そしてこの2バンドが生み出した、最もジャンクなのに世界一踊れる「Heaven Discharge Hells Delight」がはじまる。「ここはヘルより危険なヘヴンさ! 」とシャウトする浅見、躍動感溢れるYUKARIのパフォーマンスに呼応するかのようにオーディエンスは踊り狂う。回数は多くないが、2バンドが共演する際に披露されてきた本楽曲は、ボロフェスタ2016とこの日で遂に完成した気がする。

浅見北斗

後半戦。ボロフェスタ2016のテーマソングになった「ギャーギャー騒げ」、ウォーリー風のMVが印象的だった「METEO DAYDREAM」、そして「インダストリア」と『ALL AGES』の楽曲が披露され、フロアにはサークルモッシュが次から次へと巻き起こっていた。

DEATHRO

変則的なギターとサックスの絡みが素晴らしい「それはずるい」の後、ステージにDEATHROが乱入。リミエキのメンバーを紹介するとともに、8名のゲストを呼び込んだ。

メンバーは以下
DEATHRO & 井上貴裕(SHUT YOUR MOUTH) / スガナミユウ(GORO GOLO) / ひらっち(MANGA SHOCK) / クロカワ(VOGOS) / 加倉ミサト(SOSITE) / ラミ子 / 黄倉未来 / 柿沼実(TIALA)

ギュウギュウのステージで始まったのは、Have a Nice Day!の名曲「Zombie Party」をリミエキ流にアレンジしたもの。次から次にくり出されるゲストによるマイクリレーは、人々を踊り狂うだけのゾンビに変えた。ゲスト各々が、都内各地でそれぞれ活躍しているミュージシャンだけに、ラップ(or 歌?)のクオリティは高く、「東京のアンダーグラウンドここにあり!」と筆者やオーディエンスに深く印象づけることとなった。

そしてラストは、現リミエキの代表曲「This world is too small for me」。曲が終わり楽器を置くメンバーに、オーディエンスは惜しみないアンコールを送る。アンコールに応え(JJはアンコールが嫌いで、本当に用意してなかったようだ…)、本日2回目の「TVフラット」。今日一番の太い爆音で会場のヴォルテージは天井を突き破り、ワンマン・ライヴは終わりを告げた。

これほど好き勝手にオーディエンスが踊り狂う現場はあっただろうか? ライヴが終わる最後まで形を変え、大きくなるモッシュ・ピット。よくある流れやコールアンドレスポンス等の使い古された手法は一切なく、アイデアを次から次へとぶつけてくる彼らのライヴは、一見隙間がないようでもあるが、実はオーディエンスが創造力を使える余白が多いのだ。オーディエンスが創造力を発揮すればする程、この空間には不思議と笑顔とモッシュが生まれ、祝祭の空気になっていく。その祝祭の空気こそ、彼らが主催するLessThanTVやボロフェスタに必ずあるものだ。自由、そしてイマジネーション。この日は、その喜びを会場の全員が発揮したからこそ起こった全員で創り上げた巨大なパーティーだったのだ。

text by 水上健汰
photo by 大橋祐希

『ALL AGES』発売記念 Limited Express (has gone?) one man show
1月14日(土)@新代田FEVER

01. GROUCHY
02. MOTHER FUCKER
03. Looking for INSPIRATION
04. Discommunication
05. PSYCHO ME
06. SCIENCE FICTION
07. PLAY AT ALL
08. Hip & Shake
09. ガールズバー
10. NO MEAN
11. TVフラット
12. Limited Ex メドレー
アロハ! →Talk to me, all right→生贄のJESUS CHILD→old life new life→D.N.A→PU/AR→fuck it out
13. ぞくぞくふらふら
14. Can I kick it?
15. TV 破壊クラブ
16. 666
17. Heavens Discharge Hells Delight
18. ギャーギャー騒げ
19. METEO DAYDREAM
20. インダストリア
21. それはずるい
22. Zombie Party feat.
【マイクリレー】
DEATHRO & 井上貴裕(SHUT YOUR MOUTH) / スガナミユウ(GORO GOLO) / ひらっち(MANGA SHOCK) / クロカワ(VOGOS) / 加倉ミサト(SOSITE) / ラミ子 / 黄倉未来 / 柿沼実(TIALA)
23. This world is small for me

(ENCORE)
01.TVフラット

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LIVE SCHEDULE

2月19日(日)@下北沢THREE
BAUHAUS vol.14
12:00-15:00
チケット:入場無料
※ドリンク飲み放題(2,000円)もあります!
※出演3バンド収録CD-R「BAUHAUS SOUND TRUCK 4」当日会場にて限定販売!! 3曲入り500円!!
w/ gokarts / THE DEAD PAN SPEAKERS
DJ COGEE(BLACK SHEEP)

3月5日(日)@金沢メロメロポッチ
connecting vol.18
open 16:30 / start 17:00
予約/当日 2000円(+1D)
w/ vermillion lies Ω / やまも / herpes / ある生き物の記録

3月11日(土)@新宿LOFT Bar THE LOFT
COUNT PHANTOM&NIGHT ON THE PLANET『ZOI OF A NOI』
Open 23:30 / Start 24:00
前売 2000円(+1D)
w/ COUNT PHANTOM / Klan Aileen / DJ Taigen Kawabe (BO NINGEN) and more!!!

PROFILE

Limited Express (has gone?)

2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、世界15カ国以上を飛び回る。その後、高橋健太郎主催のmemory labより2nd album、best albumをリリース。WHY?、NUMBERS、そしてダムドの日本公演のサポートを行うなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンを率先するバンドになるも、2006年突然の解散宣言。半年後、突然の復活宣言。ニュー・ドラマーには、JOYのTDKを迎え2枚のアルバムを制作。TDK脱退後は、ふくろ/GROUNDCOVER.等でもプレイするもんでんやすのりが、ベーシストにはLessThanTVの谷ぐち順が加入。またサポート・メンバーとしてSAXに小森良太を迎える。

>>Limited Express (has gone?) オフィシャル・サイト

[ライヴレポート] Limited Express (has gone?)

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