怪しげなゲンスブールのグルーヴが響く夜——サエキけんぞう&クラブ・ジュテーム、ライヴ音源をDSD & 24bit/96kHzで独占配信

サエキけんぞう&クラブ・ジュテーム

知られざるディープ・フレンチの世界へようこそ。テクノ・ユニット「パール兄弟」のヴォーカリストとして知られ、作詞家、音楽プロデューサーとしても活動するサエキけんぞうが、OTOTOY独占で高音質ライヴ音源をリリース。サエキけんぞうといえば、フランスのシンガーであるセルジュ・ゲンスブールに魅せられ、研究の域に達するカヴァー活動を続けてきたことでも知られている。今回のライヴ音源は、ヴォーカル、ピアノ、ギター、カホン、アコーディオンといった編成により、ゲンスブールを中心とするフレンチ・グルーヴを独自に再構築したもの。OTOTOYではこの音源を、DSD5.6MHz、24bit/96kHz(ALAC/FLAC/WAV)の高音質で配信開始。レコーディング・エンジニアをつとめた高橋健太郎(OTOTOYプロデューサー)による、サエキけんぞうへのインタヴューとともにお楽しみいただきたい。


サエキけんぞう / ジュテーム! ハイレゾ LIVE 〜ディープ・フレンチの饗宴〜


【配信形態 / 価格】
[左] DSD5.6MHz+mp3 : 1,944円(税込、まとめ購入のみ)
[右] 24bit/96kHz(ALAC/FLAC/WAV) : 1,620円(税込、単曲は各216円)
※この作品は、DSD5.6MHzと24bit/96kHzで、それぞれ異なるマスタリングが施されています。

【収録曲】
01. 眠れツイスト野郎 〜イントキシケイテッドマン
02. 他の男の体の下の人妻
03. 唇によだれ
04. イエイエの時代に
05. 泣く友を見る(涙)
06. ナブート・ツイスト
07. リラの門の切符きり
08. コーヒー色

Recording Date : 2014.06.23
Recorded at 下北沢 音倉 (http://www.otokura.jp/)

INTERVIEW : サエキけんぞう (by 高橋健太郎)

ゲンスブールが放つ、謎のグルーヴに惹かれて

——サエキさんがゲンスブールのカヴァーを追求しているのは知っていたけれど、こういうバンド形態に行き着いているとは、知らなかったんです。これまで、このユニットで録音物を作ってこなかったのは、何か理由があったんですか?

サエキけんぞう(以下、サエキ) : ちゃんとした音源を作ろうとすると、ドラムとベース的なものを入れないといけないんです。そうすると普通の音楽になるので、やろうとしたこととは違ってくる。セルジュ・ゲンスブールの60年代前半の音楽はアルバムによって音楽性が変わるのですが、例えば『CONFIDENTIEL(コンフィデンシャル)』(1963年)っていう作品があって、生ベースとギターだけでドラムが入ってない。『Gainsbourg Percussion(ゲンスブール・パーカッション)』(1964年)では、ドラムもエレキ・ベースもなくて、アフリカン・パーカッションで変形ラテンをやってたり。ロックってドラムとベースの音楽なわけですが、ゲンスブールは違うんです。

——わかります。

サエキ : でも90年代のクラブ・サウンドには合ってて、それをカラオケで歌うっていうスタイルを10年くらい続けてました。でもクラブの時代が終わり、次第にウケなくなっていく。カラオケではもう決定的にゲンスブールをやれなくなると思ったときに、生バンドを組んだんです。それでドラムの人を入れようということになって。でもドラムが合わない曲が多いんですよ。仕方ないからパーカッションをやってもらっても結局外したり。それで思い切ってピアノと生ギターだけにして、障害を取り除いたら3人組になっちゃった。ゲンスブールの音楽とは、ロック要素ではない音楽性を再構成することだと気づいたんです。ジャズ、ラテン、アフリカ、レゲエ、シャンソン。でもその一方で、彼はブルースをやりたかったらしくて。おそらく、世界でもてはやされてるロックの反世界としてのブルースです。ゲンスブールを追うことで消去法を使うことになり、結果として今までにないことをやろうとをすることになりました。今までにないブルースを追うというような。

サエキけんぞう

——なるほど、そういう試行錯誤をしていたんですね。

サエキ : 少なくとも言えることは、ドラムとベースは入れたくないんですよ。本質的には、ピアノと生ギターで必要な要素はそろってる。もちろんそれでは足りないから、パーカッションとアコーディオンはほしいって状況ですけど。

——謎のグルーヴに惹かれて、ゲンスブールに再入門したという感じ?

サエキ : そうです。クラブ時代にゲンスブールが再評価されたのはグルーヴの時代になったから。彼には謎のグルーヴが常にあって。川勝正幸さんが言うところの「リズムのプレイボーイ」ですね。あるときはラテン、あるときはインチキ・ジャズ、あるときはフレンチ・レゲエっていうね。

——パリの混血性みたいなものをベーシックにした、どこかインチキなグルーヴっていうか。

サエキ : (笑)。でも、ゲスな「インチキ性」に惹かれたわけではなく、90年代にロックがいったん落ち着いて、グルーヴの時代になって、別な物がほしいっていう気持ちからです。かといって4つ打ちも飽きる。ロックやディスコにあたらない選択肢を探していかないと息苦しくてたまらないなと。

——ゲンスブール一筋に近い研究を10年単位でやってきて、今のライヴ活動に行き着いたというのは、その反ロック的と言える衝動が元なんですね。

サエキ : そうです! でもそれを続けていくと、同時に必ずロックのヒントが見つかりつづけるという特典もあるんです。なんたって、ロックとジャズの源流のニューオリンズはフランス領ですからね。ゲンスブールな亡くなる前にニューオリンズで録音をしようとしていた。それから、フレンチ・サウンドは、テクノとの相性が良かった。それで、最初は中野テルヲくんの打ち込みで始めたら、フランスの音楽ジャーナリズムにすごくウケたんですよ。それが僕のフレンチを促進した大きな要因です。それで、8年ぐらいテクノっぽくやってました。でもエレクトロニカ的な流行もどんどん移り変わり、そのなかで生音を見直していったときに、ゲンスブールの初期がもう一度引っかかってくるという順番でした。てなわけで、フランスにはミュゼットの生音から現在のダフトパンクに至るクラブ・サウンドまで、ロックをカウンター、わき道から突き動かすパワーを秘めた音楽がすごく多いんです。そこでゲンスブールの後ろ側にあるフランスのカルチャーにも興味が湧いてしまった。それが僕がフレンチをやりつづけている理由なんですよ。

高橋健太郎

——研究は頭の中とか、机の上とかでできるけど、歌は身体を使うわけじゃないですか。たとえばパール兄弟で歌ってたときと、身体の使い方が違ったりしますか?

サエキ : 全然違いますね。パール兄弟は、やっぱりストレートで、そのために歌声が届きやすいと思う。一方、ゲンスブールとかフレンチで僕がカヴァーする歌って、ウィスパーを多用するし、インチキ・ロックという言い方をされる。前述したように僕はフレンチに可能性の光を感じるから好きなんですけど、胡散臭いものに正々堂々と向かっていくのって大変な作業で。きちっとした部分を生かすためにフランス語の音節に全部言葉をはめていくことが必要だし、アレンジャーと楽曲の分析をしてもらわないとダメだし。音楽を日本語で肉体化しなくてはいけない。それは壮絶な迂回かもしれない。それってパール兄弟も含めて通常の「ロック・バンド」のベクトルとは違うような気がする。

——単純な、ミュージシャンとしての快感原則に従うだけでは演奏できない?

サエキ : おそらくそうかと。ピアニストのNANASEにしろギタリストの木恵つよしにしろ、今時の態度のいい若者だから、付き合っていくうえで軋轢がなく済んでいて助かります。でも同世代とかだったら、すでにロック・アイデンティティの世界が確固と存在してるわけじゃないですか。そうなると衝突するでしょうね。たとえ年寄りでも、常に新しいことを考えてる人じゃないと、フレンチとは付き合えないかと。だからロックに自信のあるプレイヤーにはまったく興味がない。パール兄弟は好奇心が強い人たちで、常に刺激的だから、いつでもやりたいけど。通常のロック・ピープルは、あんまりおもしろいと思えないんです。

——サエキさんの声はもちろん、パール兄弟などでたくさん聴いていましたが、今回のライヴでは少し違うイメージを持ったんです。音源をミックスする上でも、そのサエキさんの声の発見、ということが大きかった。ロックを歌っているときよりももっと、もやもやした何かが喉にあって、その中低域を強調すると、音楽全体に怪しいグルーヴが出てくる。でもそうすると今度は歌詞が聴こえにくくなるというジレンマがあって、そこがおもしろくもあり、難しくもあったですね。

サエキ : そのジレンマ、将来的に解決の道ってあるんですか?

——良いマイクを使うことじゃないでしょうか? ヴィンテージの真空管マイクで録ってみたいですね。声が抜けにくい白人男性のヴォーカリストに向いた特性を持っているマイクを日本人が使っても、あまり良い結果が出ないことが多いんですが、サエキさんの声はAKGのC12とか、SONYのC37Aとか、そういうマイクで録ったらどうだろうかと。

サエキ : ぜひ試してみたいです。

ライヴ録音にグルーヴが宿る瞬間

——それで、今回のライヴ録音は、ある日突然サエキさんから連絡をいただいたわけですが、今回の編成でライヴを録ろうと考えたのは?

サエキ : 実は1年前から考えてたんですよ。その間にいろいろ偵察をして、OTOTOYのイヴェントにも聴きにいって、万を持して健太郎さんにお願いしたんですね。去年からパーカッションを入れての編成がまとまってきたり、ちょうどいい形になってきたというタイミングでもありました。

——この編成でスタジオに入る予定はないんですか?

サエキ : それも別途考えてるんですけど、スタジオでこの感じを出せるのかよくわからなくて。やはりテクノ的な要素というか打ち込みの処理をがんばらなきゃいけないのか? とか、まだ考え中ですね。

——そういうハイブリットな方法論でやることも考えているんですね。

サエキ : そうですね。まだわからないです。ところで、今回は直しなしの一発録音なのでとても緊張して、どういう録音がベストなのかということを最初にお聞きしたときに、「ノリのいいのが結局一番なんですよ」と健太郎さんがおっしゃってくれましたよね。それには本当に救われました。

——僕は数年前からライヴ録音をたくさんやるようになったんですが、途中から何かを見逃しているような気がしてきたんですよ。要するにライヴを観ていなかったんですね。現場では、録音機材のことに注意を奪われているから。それで、スタジオに帰って来ると、音響素材は目の前にあるけど、ライヴをちゃんと観ていない人間がそれをどうしよう? って考えることになる。それじゃあダメだと思って、だから現場である程度これでいけると思ったら、そのあとはライヴを観ておこうと。

サエキ : ライヴを見るっていうことは、そのときの感動というかインパクトを身体に入れておくということですよね?

——そうです。そのバンドのグルーヴがどうなってるかとか、お客さんがそれにどう反応していたかとかは、会場の真ん中で体感しないとわからない。ところが、現実にはエンジニアは会場の片隅でヘッドフォンで聴くことしかできなかったりするわけで、すると、帰ってきた後にどういうコンサートだったか? という基本が残ってない。

ライヴは6月23日(月)、下北沢・音倉でおこなわれた

サエキ : やり手側も気づいてないことがあるかもしれない。

——そのことに気づいてから、ライヴ録音というのは、レコーダーに音を入れるだけでなく、自分の中にもイメージをきちっと入れないとダメなんだと思って、なるべくそういう時間を作るようにしてる。すると、後の作業も楽しくなるし、その方がおもしろいものが作れる。

サエキ : リファレンスとして、ライヴそのものを見ておくことが重要なんですね。

——その通りです。

サエキ : 細かいことにとらわれてそれができないと、そもそもリファレンスを失うことになるということですね。しかし、ライヴ本番を体験することが「録音ミックスの参照」になるとは気づかなかった!

——もちろん、ライヴをそのまま再現するだけが録音ではなくて、もっとこういう風に聴かせたい、というミックスを施すこともあるわけですけれど、それを考えるのにもやはりライヴ体験があった方が当然いいわけで。

サエキ : 会場での体験を基準に、さらに先に進むということですね。

——はい。今回もまさしく、そうでした。

サエキ : ディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』(1972年)があるじゃないですか? あれって日本側から持ちかけた録音なんですよね。もともとディープ・パープル側は、「メンバーが聴いて良かったら出す」とか条件を突きつけてて、最初からリリースありきの話ではなかった。日本ではすぐヒットしたわけですけど、あれだけの名盤が本家本元の国でヒットするまでには、かなり時間がかかってるんです。その最大の要因は、本人たちが自分のライヴをきちっと評価できてなかったからみたいですね。実はメンバー、つまり演奏する側は、常にライヴを本番では聴けない。もし、パープル自身が客だったら、すぐにOKしたんじゃないかな。客の立場でプレイの良さをちゃんと聴けているか? って実は大きな問題かなと。

——そうだと思います。サエキさんはライヴを録って自分で聴きますか?

サエキ : もちろん聴きますけど、泣きたくなることも多いです…(笑)。でも考えてみればヴォーカリストは、バンドの演奏を聴きながらやってるから、リスナーに一番近いんですね。

——フロントに立っているヴォーカリストって、演奏の細部は聴きにくいんじゃないかと思っていました。

サエキ : でも演奏の善し悪しとグルーヴに関しては一番わかってると思いますよ。

——ヴォーカリストは自分の声が頭の中に響いているから、単純に他がよく聴こえないんじゃないかと。僕などはギター弾きながら、コーラスするみたいなことがあると、途端に聴こえなくなっちゃうんで、そう思ってきたんです。

サエキ : ああ、良い問いですね。モニターの良し悪しもあって、聴けてるときと聴けてないときがあります。だから演奏がメチャクチャになるときがあるわけですね。でもヴォーカルが一番わかってるんじゃないかな。

——そのへんは、いろんなタイプの人がいるんでしょうね。

サエキ : グルーヴは演奏者が出してるわけだから、当然意図してるわけだけど、聴いてる側とやってる側でズレがあるんでしょうか? 例えば今回、健太郎さんはミックスのダメ出しから2日間いじって、ようやくヴォーカルとピアノの間の僕らのグルーヴを見つけたと言っていましたよね。それはこのライヴでは、ライブ体験がリファレンスになってなかったということなのでは?

——ミックスする上でのリファレンスにはなってなかったですね。今回は、あの会場のサウンドを再現しようとはしませんでした。そこから、さらにバンドのグルーヴやサエキさんの意図を探っていく作業があって、最終のミックスになりました。

サエキ : 会場における音響体験はリファレンスになってなかったと…。バンドの問題もあるし、会場のクセや、PAの考え方もあるかもしれませんね。

——スタジオで2日間くらい聴いているなかで、音楽に対する理解度も変わってきたんです。グルーヴっていろんな考え方があるけど、エンジニアの立場で言うと、周波数の組み合わせで出たり出なかったりするものだったりする。で、ドラムとベースがいると、たしかにわかりやすいんですよ。でも今回はドラムもベースもいないから、一般的な基準がない。かつ、最終的にはサエキさんの歌がどう聴こえるか、が全体のポイントになってきますよね。それで試行錯誤しているうちに、ゲンスブール的というか、デヴィッド・ボウイ的というか、そういうサエキさんの声の中低域とピアノの左手の絡みが重要だというのが分かってきて。それをサウンドの中心に埋め込んだら、混沌としたグルーヴが出てきて、すると後はすごく自由になった。カホンの低域とか、ギターの荒いアタックとか、最初は出しにくくて、引っ込めていたものも、がーんと出しても大丈夫になって。

サエキ : すみませんねえ… 大変で。でも健太郎さんならそのあたりをわかってくれると思ったので、今回頼んだんです。健太郎さんも僕と同じように、ロックが好きであると同時に、ある種、早い時期からロックに飽きてた人でもあるから…。

——いや、とてもおもしろかったです。ミックスをやっていると、ある瞬間に突然、グルーヴが出ることがある。半日、あれこれやっても、「サウンドは変わったけれどグルーヴは出ない」みたいな状態だったのに、ふと気がつくと5分前とは全然違うグルーヴが生まれてることがあって、そういうときは鳥肌が立ちますね。エンジニアをやるようになって、一番おもしろくなったのは、音楽のそういうところで、僕は僕の音楽体験を反映したエンジニアリングしかできないとは思うんですが、今回はサエキさんとやりとりするなかで、いろいろ気づいたり、思い出したりして、前進できました。

サエキ : 僕はライヴをたくさん観てるほうだとは思うけど、若いアーティストやバンドについては健太郎さんには及ばないと思います。リズムの方法論について、前述のように「現状の可能性はどうなのかな?」と半ば疑問を持って観てるところがあるんですが。

——若い人や新しい人はどんどん出てきていますし、リズムのいろんなずらし方とか細かい連打とか、自分が同じようなことをやるかどうかは別として、どうやっているんだろう? と興味惹かれることは多いです。デジタル・ネイティヴの人たちは、精密な方向に向かってると思いますね。そういう意味ではアンダーグラウンドには、いろいろあると思いますよ。

サエキ : 勉強させていただきます。

(インタヴュー : 高橋健太郎)

>>「ほぼ日刊イトイ新聞」に、サエキけんぞうによる高橋健太郎へのインタヴューが掲載中!!


今回のレコーディングで主に使用された機材

TASCAM「DA-3000」


高橋健太郎によるレヴュー
TASCAMのDA-3000はレコーダーとして他にはない存在だ。PCMは192KHz、DSDは5.6MHzまで録音できるが、記録メディアとして、SDHCカードおよびCFカードを使っているのが特徴。内蔵のHDに録音するレコーダーの場合、HDにトラブルがあると、立ち上がらなくなってしまうことがあるが、DA-3000の場合は代替えメディアを持っていればいいので、その点、ライヴ録音の現場などでは心強い。

また、複数台をカスケードしたときにも、すべてのDA-3000が正確に同期して動作する。すべてのDA-3000が待機状態になってから、同時に動作を始めるので、録音されたファイルにはサンプル単位でもズレがない。このため4台 / 8チャンネルの録音などをおこなうのも、たやすくなった。ただし、DA-3000同士を繋ぐSDIFケーブルやSDHCカードまたはCFカードの品質によって、同期が上手くいかないことはあるので、この点は要注意だ。できれば、TASCAMには動作が確実な純正のケーブルやメディアを用意してもらいたいとは思う。

音質的にはいかにもTASCAMらしい端正な音質だ。筆者はTASCAMの24bitのDATレコーダー、DA-45HRを長年使ってきたが、似た感触を感じるところが多い。基本的にはフラットなバランスだが、強いていうと、少しだけ低音にゴリッとした押し出しがあり、ミッド・ハイも少しだけコンプがかかったように前に出てくる。が、このわずかなキャラクターも音楽的に使いやすいものだと思う。

入出力は豊富で、機能も多彩だが、ほとんどマニュアルを読まなくても理解できるようなメニュー構成になっている。高精度クロックや左右独立のDACチップを積んでいるのは価格からは考えられない構成で、スタジオに1台マスター・レコーダーを置くとしたら、TASCAM「DA-3000」という選択になりそうだし、あるいは、レコーディング用途ではなく、一般のユーザーがリスニング用途に使うのもいいかもしれない。

昨今はDoPという転送形式を使って、USB DACでもDSDのネイティヴ再生ができるものが増えてきた。しかし、PCからUSBケーブルを介してDACに繋いで再生するよりは、DA-3000のようなマスター・レコーダーから直接、再生した方がDSD録音のサウンドはよりフレッシュだ、という印象を筆者は持っている。OTOTOYなどで購入したDSD音源をSDHCカードに入れれば、DA-3000で聴くことができるし、そのサウンドは高価なDSD対応USB DACを凌ぐことが多いと思われる。そういう意味ではミュージシャンやエンジニアだけでなく、一般のリスナーにもお薦めできる製品なのだ。(text by 高橋健太郎)

>>TASCAM「DA-3000」の詳細

PROFILE

サエキけんぞう
1958年7月28日、千葉県出身。千葉県市川市在住。1977年、千葉県立千葉高校卒。1985年、徳島大学歯学部卒。大学在学中に『ハルメンズの近代体操』(1980年)でミュージシャンとしてデビュー。1983年にパール兄弟を結成し、『未来はパール』で再デビュー。「未来はパール」など約10枚のアルバムを発表。1985年より1992年頃まで歯科医師として日大松戸歯学部補綴学第一教室に勤務経験もあり。1990年代は作詞家、プロデューサーとして活動の場を広げる。2003年にフランスで「スシ頭の男」でCDデビューし、仏ツアーを開催。トッド・ラングレン、セルジュ・ゲンスブールなどのトリビュート事業も手がけ、2008年にクロード・フランソワのトリビュート盤を日仏同時発売。2009年、フレンチ・ユニット「サエキけんぞう&クラブ・ジュテーム」を結成し、オリジナル・アルバム「パリを撃て!」を発表。2010年、デビュー・バンドであるハルメンズの30周年を記念して、オリジナル・アルバム2枚のリマスター復刻に加え、幻の3枚目をイメージした「21世紀さんsingsハルメンズ」(サエキけんぞう & Boogie the マッハモータース)、ヴォーカロイドにハルメンズを歌わせる「初音ミク sings ハルメンズ」ほか計5作品を同時発表。2011年より加藤賢崇とともに「ニューウェイヴほぼ30周年祭」を立ち上げ、名盤の復刻、コンピ盤、ヴォーカロイドによる企画盤のリリースのほか、ライヴも開催。その他、「伊豆田洋之ボールマッカートニーを歌う」のプロデュース、ライヴ・アイドルのプロデュースなど、さまざまな企画を勢力的に展開している。また、作詞家として沢田研二、小泉今日子、モーニング娘。、サディスティック・ミカ・バンド、ムーンライダーズ、パフィーなど、多数のアーティストに提供しているほか、アニメ作品のテーマ曲も多く手がける。大衆音楽(ロック・ポップス)を中心とした現代カルチャー全般、特に映画、マンガ、ファッション、クラブ・カルチャーなどに詳しく、新聞、雑誌などのメディアを中心に執筆も手がけ、立教大学、獨協大学などで講師もつとめる。その他、TV番組の司会、映画出演など多方面で活躍。著作多数。

>>サエキけんぞう OFFICIAL HP

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レヴュー

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