独自の感性で世界を歌で描くシンガー、吉澤嘉代子。ほぼ未成年座談会、Ustream番組「吉澤嘉代子の魔女修行 出張編」、リード曲「未成年の主張」のフリー・ダウンロードなど、吉澤嘉代子と並走してきたOTOTOYの本プログラムもついに最終回。吉澤嘉代子のパーソナルな部分が反映されているともいえる「泣き虫ジュゴン」をHQD(24bit/48kHzのwav)で配信開始!! 吉澤嘉代子へのロング・インタヴューとともにお届けいたします。彼女がどんな考えをもって曲を制作しているのか。その一端を知ったあとで、『魔女図鑑』を改めてゆっくりと聴いてみてください。

吉澤嘉代子の世界を高音質で

吉澤嘉代子 / 泣き虫ジュゴン(24bit/48kHz)
【価格】
HQD(24bit/48kHzのwav) 単曲 250円

作詞、作曲 / 吉澤嘉代子
編曲、サウンド・プロデュース / 横山裕章

歌 / 吉澤嘉代子
ピアノ、キーボード / 横山裕章
ギター / 佐藤大剛
ベース / 伊賀航
ドラム / 伊藤大地

INTERVIEW : 吉澤嘉代子

「私にとって、音楽をやるのはすごくカッコ悪いことなんです…」。吉澤嘉代子はそう言った。なにかを表現すること自体、とても恥ずかしいことだと言うのだ。彼女へのインタビューから見えてきたのは、一般的なシンガー・ソングライターとは少しだけ違う、言葉や音楽に対する独特の姿勢だった。「好きです」という歌詞は記号でしかないと語り、「リアル」や「共感」を求めているわけではないと漏らす彼女の音楽は、どこか職人的な態度で作られているのかもしれない。だが、インタビューを通じ、その背後には間違いなく人一倍ナイーブで繊細な感受性があることもわかった。そうでなければ歌えないような歌ばかりなのは、きっとすぐに理解していただけるはずだ。

「言葉を発するのは恥ずかしいこと」と語る彼女にインタヴューを敢行するのは、ある意味で無謀な試みだっただろう。しかし、抑えられた調子で語る彼女の口からは、ハッとするような言葉がいくつも飛び出してきた。各所で注目を集めはじめ、より広い世界に向けて羽ばたこうとしている吉澤嘉代子。その意外な側面も垣間見えたインタヴューとなっている。

インタヴュー&文 : 長島大輔
写真 : 雨宮透貴

吉澤嘉代子のルーツとは

――よく言われると思いますが、吉澤さんの作品のいくつかには、どこか懐かしいオールディーズ風の空気が漂っています。これは明らかに同世代のシンガーたちとは違う空気なので、それが一体どこからやってきたのか気になりました。

吉澤嘉代子(以下、吉澤) : 父が家のなかでよくフォークソングを流していたんですけど、それが一番大きいかなと思います。父は井上陽水さんが大好きなんです。

――お父さんの好きだったフォークソングに音楽的なルーツがあるんですね。

吉澤 : そう思っています。物心つく頃からずっと聴いていたので。

――じゃあ、自分でもフォークソングを聴き漁ったり?

吉澤 : それはまったくないんですよね。ただ、小さい頃から吉田拓郎さんとかを自然と聴いて育ったので、友だととカラオケに行ったときも歌ったりしていました。友だちは驚いていましたね。「モー娘。じゃない!」みたいな(笑)。

――モー娘。直撃の世代ですもんね。同世代の音楽はどんなものを聴いていたんですか?

吉澤 : 小学校2年生か3年生の頃にラジオで矢井田瞳さんの曲を聴いて、初めて自分からCDが欲しいと思って買いました。あとは山崎まさよしさんとか、サンボマスターも好きでしたよ。

――自然とフォークソングが流れ込んでくる環境に育ちながら、同世代のポップスにも触れていたんですね。この辺に吉澤さんの楽曲を作っているベースがあるのかなと思います。

吉澤 : 最近、私の曲が表に出るようになって、よくオールディーズとかレトロって言っていただくんですけど、あえてそうしようと思ったことはなくて、ただ自分の心が動くように曲を作ったら、結果的にそうなったという感じなんですよね。

一貫したテーマ、滑稽味

――なるほど。それでは、今回リリースされるアルバム『魔女図鑑』について詳しくうかがっていきたいと思います。先日の座談会でも話題になっていましたが、このアルバムは前半の4曲(『未成年の主張』、『化粧落とし』、『恥ずかしい』、『らりるれりん』)と後半の2曲(『泣き虫ジュゴン』、『ぶらんこ乗り』)でかなり雰囲気が異なっていると感じました。この乖離に吉澤さんの作品を読み解くカギがあるような気がしたのですが。

吉澤 : そうですね。自分のやりたいことを自然にやると『ぶらんこ乗り』みたいな曲ができるんです。ただ、自分のやりたいものと、大勢の人に受け入れてもらえるものは違うと思うので、その重なり合う部分を探ったときにできたのが、前半の4曲だったというか。

――どちらかと言えば、吉澤さんの自然な感受性は後半の2曲に現れているんですか?

吉澤 : 『ぶらんこ乗り』はそうですね。『泣き虫ジュゴン』は思春期のときに書いた曲なので、それが自然と言えるのかはちょっと分からないです。でも、自分の内面が現れている曲だとは思います。

――じゃあ逆に、前半の4曲は個人的な内面を出すのではなく、吉澤嘉代子というキャラクターを演じるための曲だと。

吉澤 : そうですね。自分の言葉を外に出すことって、どうやってもカッコ悪くなるしかないと思うんです。よく「モテるためにバンドをはじめました」とかって言うじゃないですか。それを最初に聴いたときにすごくビックリしました。私にとっては「音楽をやるのってすごくカッコ悪いことなのに…」って。私が書きたいのは、人のその滑稽さなんですよね。

――なにかを表現すること自体が滑稽だということですか。

吉澤 : そうですね。前半の4曲ってほぼラヴソングばかりなんですけど、ラヴソングって、等身大であったり自然体であったりすることが大切とされるじゃないですか。でも、私は「等身大」とか「自然体」っていう言葉がすごく嫌いで。どうしたって等身大にはならないし、自然体っていうのがそもそも不自然だと思うんです。だから、ラヴソングを歌うときって、もっとゴテゴテにしたりとか、茶目っ気を出したりとかして、やっと保てるというか…。

――そうだったんですね。ただ、座談会を見てもわかりますが、聴き手は吉澤さん自身の言葉として、もっとベタに受け取っている印象を受けます。このあたりはいかがでしょうか。

吉澤 : そうですね。それはビックリしました(笑)。シンガー・ソングライターってそういう立場なんだなぁって思いましたね。

――自分の内面をストレートに表現するっていうのが、いわゆるシンガー・ソングライターのイメージですよね。

吉澤 : それもひとつのスタイルだと思うんですけど、私の場合は、内面をそのまま出すんじゃなくて、フィクションのなかにノンフィクションを入れるというか。私個人の伝えたいことはもう少し別の形で反映されていればいいと思います。私にとって作品は箱のようなものなのかな…。

――箱ですか。

吉澤 : たとえば小説を読んでいるときって、それが私小説でない限り、作者のことってあんまり考えないじゃないですか。それと同じで、歌い手と楽曲は切り離して考えてもいいと思うんですね。作者の個人的な背景とか、そういうものを過度に作品に読み込まなくてもいいというか。そういう意味で、作品は聴く人が自由に入っていける入れ物になればいいなと。

――なるほど。ただ、吉澤さんがルーツとして挙げていたフォークソングって、むしろ真逆というか、歌い手の個人的な感情から生まれる言葉を届けようとする音楽じゃないですか?

吉澤 : たしかにフォークソングはそうなんですけど、ニューミュージックは違うと思っています。それこそ井上陽水さんは、アーティストの内面とは切り離された世界を歌っていますよね。そういう部分に影響を受けているのかもしれないです。

――曲のレベルでも歌詞のレベルでも井上陽水の影響は大きいんですね。

吉澤 : そう思いますね。

吉澤嘉代子が語る『魔女図鑑』

――先日行われた座談会では、ほぼ未成年の女子たちに吉澤さんの曲を語ってもらったわけですが、今度は逆に吉澤さん本人から1曲ずつコメントをいただきたいと思います。

吉澤 : わかりました。座談会はかなり予想と違っていたんですけど、自分の曲がこんなふうに受け取られているんだっていうのが分かって面白かったです。

――まずは『未成年の主張』ですね。座談会で言われていたのは、未成年の恋をリアルに表現しているということでした。

吉澤 : そうですね。実を言うと、リアルとか共感って好きじゃなくて…(笑)。たしかに重なる部分があるのは素敵だと思うんですけど、共感してくださいと思って書くことはないし、リアリティを表現したいとも思ってないんです。曲を作っているときって本当に夢中になっていて、泣いたり笑ったり感情が爆発しているんですね。だからそこまで考えてる余裕もないというか。

――制作の段階ではかなり感情を表に出して作っているんですね。

吉澤 : そうですね。ひとりの部屋で「うわー!!」ってなりながら作ってます(笑)。

――でも、その一方で、作者と作品は切り離されてドライにあるべきだと考えているわけですよね。そんな吉澤さんが制作の段階では感情を爆発させて書いているというのはおもしろいですね。

吉澤 : たしかにそうですね。

――この『未成年の主張』ってすごくおもしろくて、告白の歌なんですけど、相手(=「あなた」)のことは一切描かれない。いわば主人公はずっと「マイクチェック」ばかりしているんですよね。

吉澤 : そうですね。サビの「好きです」っていう歌詞とか、告白っていう設定とかは、私にとって記号でしかないんですね。それよりも、「大人が書いた台本はいらない」とか「今日からやらせを廃止にさせて」っていう部分で自分の気持ちを書いています。でも、そういう気持ちを伝えるために、あえてラヴソングっていう形式を選んだんです。

――なるほど。たしかにそれなら相手はいらないですね。

吉澤 : そうですね。「好きです!」って言葉だけでラヴソングになるかなみたいな(笑)。

――(笑)。そのあたりは『化粧落とし』にも繋がりそうですよね。この曲も同じで、具体的な描写はたくさんあるのに、相手については一切描かれないんです。これもラヴソングというフォーマットを使って何か別のことを表現したかったんですか?

吉澤 : これは言葉遊びというか、細かい仕掛けをたくさん使って、滑稽さを表現したかったんです。たとえば“餃子”だったり“障子”だったり、あんまり歌詞に使われないような単語を入れて遊んでいます。

――これはアルバムのなかで最も滑稽味が伝わってくる曲だと思いました。

吉澤 : ありがとうございます。

――続いて『恥ずかしい』ですが、座談会ではなにがそんなに恥ずかしいのかと質問が出ていましたね。

吉澤 : そう言われたのがすごく意外でした。もしかしたらこの曲は私のパーソナルな部分が一番出ている曲かもしれません。というのは、私、基本的にいつも恥ずかしいんです。何か言葉を発するたびに恥ずかしさを感じて、それを埋めるために別の言葉を発して、「それでまた恥ずかしくなって…」というのを繰り返して生きてきた気がするんですね。でも、あるときこの「恥ずかしい」っていう感情は私にとってすごく大事なものかもしれないって思うようになったので、それを大袈裟に書いてみました。

――なるほど。恥の感情というのは滑稽味とも繋がってきますよね。

吉澤 : そう思いますね。

――『らりるれりん』はどの辺に滑稽味を意識されているんですか?

吉澤 : 私がラヴソングを書いている時点で滑稽だと思うんですよね(笑)。実はこの曲は泣きながら作った曲で。

――それは個人的に辛いことがあったから?

吉澤 : いや、ラヴソングを書くのが辛すぎて(笑)。でも、『らりるれりん』を書いたときからラヴソングが書けるようになったので、自分の殻を破るきっかけになった重要な曲ですね。だいぶブリっ子して書いてますからね(笑)。

――そうだったんですね(笑)。一方、次の『泣き虫ジュゴン』はラヴソングでもないし、滑稽味ともちょっと違うことを表現しているのかなと思いました。

吉澤 : そうですね。前半の4曲は、言葉を発する恥ずかしさを隠すために、あえてラヴソングというフィルターをかけて歌っているんですけど、『泣き虫ジュゴン』は違いますね。でもこの曲にも、「フィルターをかけずにありのままに出すこと」っていう滑稽さがあると思っていて。

――なるほど。じゃあ、ありのまま出すっていうのも“あえて”の選択なんですね。

吉澤 : うん、そうですね。『泣き虫ジュゴン』はそれこそ恥ずかしいことを言っていると思うんですよ。すごく感傷的だし。でもだからこそ大切な曲でもあります。これは17歳の頃に書いた曲なんですけど、21歳のときに17歳の自分に贈る気持ちで、歌詞を書き直した部分もあるんです。

――この曲は座談会で、〈海水に飲み込まれた日〉=「ミュージシャンとして社会に出た日」なんじゃないかという意見も出ていましたが、どんな思いの込められた曲なんですか?

吉澤 : それまでは母親のお腹の中にいたジュゴンが、生まれると同時に海の中に放り出されて産声を上げるんだけど、それも飲み込まれて…っていう曲です。生まれたときの産声は祝福されていたのに、大人になると泣いちゃダメって言われるじゃないですか。でも大人になって泣くことも肯定したいなと思ったんです。どうすればそれを肯定できるかなって思ったときに、「海の中で泣けばいいんだ」って思いました。

――吉澤さん自身のナイーヴな内面を肯定する曲にも感じました。

吉澤 : そうかもしれないです。

――『ぶらんこ乗り』も少し異色な曲で、「わたし」的な一人称が出てきませんよね。

吉澤 : 「わたし」と「あなた」っていう言葉を入れないようにしようと思ったんです。これは、いしいしんじさんの「ぶらんこ乗り」っていう小説に出てくる、ぶらんこ乗りの夫婦のお話をもとに書いた曲です。

――この曲は吉澤さんにとってすごく大切な曲だとおっしゃっていましたが。

吉澤 : わたしにとっての初めての愛の歌というか…。

――それは詳しく聞きたいですね。

吉澤 : これは運命の歌なんです。生まれて死んでも、どこかで通じ合っているからまた出会えるというか。名前が変わって、形が変わって、また生まれ変わっても、何度でも出会えるというか。そういう過程の中にいるっていう歌なんです。もちろんそれは恋人同士のことだけじゃなくて、自分自身と何度もめぐり会う必然性っていう意味もあるんです。また生まれ変わっても、きっと音楽をやっているだろうとか、そういうことですね。

――自分が持って生まれた感受性というのがあって、それは生きるうえで邪魔になることも多いんだけど、やっぱり結局はそこに戻ってきてしまうし、それを受け入れるしかない、みたいなことでしょうか。感動的ですね。

吉澤 : そうですね。宿世というか。

――最後になりましたが、『魔女図鑑』というタイトルの意味を教えてください。

吉澤 : 小さい頃、魔女の修行をしていた時期があって、それは自分にとって黒歴史のようなものなんです。自分だけの世界観のようなものができてしまっていて、現実世界とのギャップをすごく感じていました。特別な存在でありたい気持ちと、実際はそうではない現実というか。その時期のことをずっと忘れたかったんですけど、音楽を作るようになってやっと、自分にとって重要な時期だったと思えるようになったんです。なので、初めての作品を世の中に出すとしたら、当時の自分を大切にしたいと思って、このタイトルにしました。

――ありがとうございました。初めてのアルバム・リリースにあたって一言あればお願いします。

吉澤 : がんばるぞ!おー!(笑)

2013年6月5日(水)『魔女図鑑』リリースパーティー開催

インディーズ 1st mini Album「魔女図鑑」リリースパーティー
~吉澤嘉代子、ただいま魔女修行中。~

日時 : 2013年6月5日(水) open 18:30 / start 19:00
会場 : Shibuya duo MUSIC EXCHANGE
出演 : 吉澤嘉代子
ゲスト・アーティスト : 黒沼英之 / 関取花 / 野上智子
料金 : 前売2,500円(全自由/ドリンク代別) 

チケット : 下記プレイガイドにて発売中!
*チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:201-519)
*ローソンチケット 0570-084-003(Lコード:79857)
*duo MUSIC EXCHANGE 03-5459-8716

【お問い合わせ】ネクストロード 03-5712-5232(14:00~18:00) / duo MUSIC EXCHANGE 03-5459-8716

RELEASE INFORMATION


インディーズ 1st mini Album『魔女図鑑
2013年6月5日発売
¥1,500(tax in)

1. 未成年の主張
2. 化粧落とし
3. 恥ずかしい
4. らりるれりん
5. 泣き虫ジュゴン
6. ぶらんこ乗り

PROFILE

吉澤嘉代子

1990年 埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。
父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。

2010年11月、ヤマハ主催のコンテスト“The 4th Music Revolution” JAPAN FINALに出場し、
グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。

2013年6月5日、インディーズ 1st mini Album『魔女図鑑』発売。

>>吉澤嘉代子 official website

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