2012/11/04 00:00

2005年にスタートし、そのホットな出演アーティストと、音楽だけに留まらない企画の幅広さで、毎回大きな注目を集めている都市型フェス「SYNCHRONICITY」。いよいよ11月17日(土)に迫った「SYNCHRONICITY’12 AUTUMN -kikyu 10th Anniversary!!-」の開催を前に、同フェス主宰の麻生潤(-kikyu-)のほか、今回のライヴ・アクトの中からnico(Sawagi)、四本晶(rega)の3人にお集まりいただき、インタビューを敢行した。プライベートでの親交も深いという両バンドと、彼らの音楽をこよなく愛する麻生氏によるインタビューは終始和やか。「SYNCHRONICITY」のコンセプトから、いいフェスとは一体何かといった話まで、実に興味深い話を聞くことができた。「SYNCHRONICITY'12 AUTUMN」に足を運ぶ前に、ぜひ目を通してみてほしい。

インタビュー&文 : 長島大輔

SYNCHRONICITY'12 AUTUMN

【日程】
2012年11月17日(土)
【会場】
渋谷 O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE
※二会場連結開催、往来自由。
【時間】
OPEN : 15:00(予定) / END : 22:00(予定)
【チケット】
前売 : 4000円 / 当日 : 4500円

【出演者】
▼LIVE
曽我部恵一BAND / Caravan / OKI DUB AINU BAND / cro-magnon / GAGLE / Anchorsong(from London) / LITE / rega / Sawagi / Akeboshi(明星) / 世武裕子 / SARO × スティーヴ エトウ / シシド・カフカ / JABBERLOOP
▼DJ
JUZU a.k.a MOOCHY / DJ MITSU THE BEATS(Jazzysport) / DJ HIDE(KEMURI PRODUCTIONS / JBR) / Ko Umehara(-kikyu-)
▼VJ
矢吹和彦(-kikyu-) / eetee
▼VISUAL SPACE DIRECTION
Tomoya Kishimoto
▼LIVE PAINTING
Gravityfree / shina(-kikyu-)
▼DECORATION
大島エレク総業(Dormitory K, atombox)

【MORE INFORMATION】
SYNCHRONICITY OFFICIAL HP

鼎談 : 麻生潤(-kikyu-) × nico(Sawagi) × 四本晶(rega)

――レーベル・メイトでもあるregaとSawagiですが、プライベートでの親交もあるんですか?

nico(Sawagi) : そうですね。ツアーを一緒に回った時はずっと一緒にいて、打ち上げも絶対regaとSawagiが最初から最後までいるみたいな。
麻生潤(-kikyu-)(以下、麻生) : お酒の飲み方が結構似てるもんね(笑)。
nico : 東京には1年くらい前に出て来たんですけど、それが決まった時は最初にregaに言いましたし、上京したての頃はずっと一緒にいました(笑)。

――お互いに初めてライヴを見た時の印象はどうでした?

nico : 同世代のインスト・バンドに大阪で出会ったことがなくて、初めて見た時に、メンバーと、すげえ! って盛り上がってました。
四本晶(rega)(以下、四本) : フィーリングが一番近いバンド・マンだと思います。ツアーも数ヶ所一緒に回ったんですけど、Sawagiが良いライヴをすると、めちゃくちゃ悔しいですね。勝手にライバルだと思っています。

左から、nico(Sawagi), 四本晶(rega)

――なるほど。regaは今年3月に「SYNCHRONICITY」に出演していますよね。

四本 : はい。去年、客として遊びに行ったこともあります。「nbsa+×÷」という犬式がやっていたイベントがすごく好きだったんですけど、それと同じような雰囲気と規模だったので、出れると決まった時は嬉しかったですね。O-EASTで演れたというのも嬉しかったです。終わった後もお客さんとして楽しんでました。
麻生 : あの時は最初から入場規制かかったから大変でした。もうスタートからすごい盛り上がりだったね!

――Sawagiは初めての出演になりますが。

nico : そうですね。「SYNCHRONICITY」自体も嬉しいですけど、regaと久しぶりに東京でライヴをやれるのも嬉しい(笑)。一緒にやる機会がなかなかないので。でもregaに限らず、刺激を受けられるアーティストと一緒にやれるというのは、「SYNCHRONICITY」の魅力ですね。

――麻生さんは、2バンドとはどういう関係ですか?

麻生 : regaとは友達がやってたバーで初めて会いました。それまでは知らなかったんだけど、作品を聞いて本当に素晴らしいなと思ってCAYで行った「シンクロナイズ」というイベントを経て前回一緒にやらせてもらいました。Sawagiも同じ時期くらいから知ってて、それぞれかっこいいなあと思ってたので、いつか一緒にやりたいと思ってました。それで、同じようにPLUGで行った「シンクロナイズ」にまず出てもらって、やっぱり間違いないな、と思い、今回ブッキングさせてもらいました。お客さんにもrega、Sawagi、LITEの組み合わせは喜んでくれるし新しさもある素敵なラインナップになったと思います。

――麻生さんから見て、regaとSawagiの魅力って何なんでしょう。

麻生 : まずこの2つのバンドは絶対にライヴを観てほしい! ってくらいライヴ・バンドだってことです! だからこそ「SYNCHRONICITY」に出演して欲しいと思ったんですけど、その魅力と実力は絶対だと思ってますね。もちろん音源も素晴らしい。またregaが今年リリースした『SOLT&PLUM』が面白くて、初めて聴いたとき素晴らしいアルバムだなって思ったと同時にかなり通好みだと思ったんだよね。一聴しただけじゃ分らない、噛めば噛むほどやみつきになるスルメみたいな作品で(笑)。
四本 : 前作の『Lyrics』というアルバムはポップでわかりやすいアルバムを意識して作ったんですよ。その反動というか、もっと自分達の深いところを追及して、自分達がどういう音楽をやりたいのかを素直に出したんですよね。それで通好みなアルバムができたのかなと思います。今も曲作りをしてるんですけど、次に繋がるアルバムになったなとは思ってますね。
麻生 : 「SYNCHRONICITY」に出演するアーティストは今年新作をリリースしたアーティストが多くてどれも本当に素晴らしい。今年は良い作品を沢山聴かせてもらってるって思ってて、regaのニュー・アルバムも傑作の1枚だと思ってます。本当びっくりしました。

麻生潤(-kikyu-)

――Sawagiも8月に1stフル・アルバム『Punch Games』をリリースされてますよね。

nico : そうですね。
麻生 : Sawagiは思っていた通りストレートに攻めて来たと思った。幅広いSawagiの魅力を全力で出し切った感じがしました。何か意図とかあったの?
nico : 前に作ったミニ・アルバムから3年半空いたんですよ。その間に色んな刺激を受けて、3年半で溜めてきたものを出したという感じですね。色んなことをやるのがSawagiの面白さだと思っているので、4人のやりたいことを全部やってみた感じです。
四本 : Sawagiはオリジナリティを確立したようなイメージがあります。こういう音楽は他に無いんじゃないかと思いますね。
麻生 : そうだね。『SOLT&PLUM』の反応はどうだった?
四本 : 意外と割れましたね。ツアーでやっても、アッパーなライヴを期待してる人からは、「え?」みたいな。それで離れる人もいたんですけど、客層の幅が広がったのも実感しましたね。「SYNCHRONICITY」にも来てそうなおしゃれな年配の方とか、女の子もいっぱいいて、そのすぐ後ろにずっと手元を見てるギター・キッズとかもいて(笑)。集客数はまた別ですけど、色んな人が聴いてくれてるというのは嬉しいですね。
麻生 : regaもSawagiもライヴが本当素晴らしくて、楽しいんだよね! アルバム聴いてちょっと難しいなと思っても、ライヴではそれを感じさせないというか。そしてまたライヴやってて楽しそうなのが伝わってくる。それって2つのバンドの魅力だと思うし、サウンドや醸し出す雰囲気がすごく今っぽい。
四本 : 上から目線みたいですけど、お客さんを育てたいというのもありますね。いろんな音楽聴いてもらいたいし。そういう意味でカルチャー全体を盛り上げていきたいというのは「SYNCHRONICITY」に通じるのかなと。
麻生 : そうだね。勉強させてもらいます!! (笑)
四本 : いやいや(笑)。偉そうにすみません! 今のところカットで(笑)。

rega

――(笑)。 2バンドとも、クラブにもライヴ・ハウスにも対応できるバンドだと思いますが、「SYNCHRONICITY」はクラブとライヴ・ハウスの中間をいくようなフェスを考えているんですか?

麻生 : 元々はそこから始まったんですけど、今はクラブとライヴ・ハウスの中間とはあんまり意識してないですね。それよりも、今何がホットでワクワクと感動と感動を生み出すのかを一番に考えてます。もちろん、「SYNCHRONICITY」のルーツにはクラブ・ミュージックもあるので、クラブ・カルチャーも大切に考えてます。ただ、今のクラブ・カルチャーも昔とは随分変わりましたよね。
四本 : 深夜のクラブ・イベントにも、最近バンドが出るものが増えてますよね。
麻生 : そう、ちょうど「SYNCHRONICITY」を初めて開催した2005年くらいから増え始めた印象だね。あのときってそれが新しくて新鮮なものとしてとらえられてたし。

――クラブとライヴ・ハウスでは、演奏する側の意識も変わりそうですよね。

nico : Sawagiはセット・リストもがらっと変えて、いろいろ試したりしますね。ただ、「SYNCHRONICITY」はバンド・シーンもクラブ・シーンも好きなお客さんが多いと思うし、素の自分達を出そうと思っています。regaとのツアーもそんな感じなんですよね。
四本 : ふーん。
nico : 試してたら負けるので(笑)。
麻生 : 対抗意識とかあるの?
四本・nico : めっちゃありますね(笑)。
nico : 自分たちがめっちゃいいライヴやって戻ってきたとき、普通の対バンだったら「お疲れさまです」みたいになるところも、regaには「これ以上いいライヴやってこいよ!」みたいな感じがモロに出るので。

Sawagi

アーティストを見に来ているというより、イベント自体を楽しんでる(四本)

――唐突なんですが、いいフェスってどんなフェスだと思いますか? 単に集客が多ければいいとは言えないし、コンセプトとかが重要なのかなと思うのですが。

麻生 : 感覚的だけど単純に「ワクワクと感動」があるフェスですね。その「ワクワクと感動」って言葉で説明するのって本当難しいんだけど、例えば音楽も人もクロス・オーバーしてるフェスって本当におもしろいと思う。よくジャンルなんか関係ないって言うけど、それを超えていくのって実際は簡単じゃないんですよ。でも元を辿れば、純粋に音楽を楽しみたいという欲求があるはず。だから、ジャンルを抜きにして考えられるバランス感覚って重要だと思います。一見色んなジャンルや音楽が混在してるけれど何か共通したものがあって、新しい感覚を感じられる、新しい感動が生まれてくるってそういうことですよね。そうして人にも繋がっていきますしね。

――なるほど。今回の出演者で言えば、シシド・カフカさんにジャンルを超えた意外性を感じました。

麻生 : そうですね。最初はうちのスタッフから教えてもらったんですけど、音源もライヴも本当にかっこよかったんです。「SYNCHRONICITY」ではなかなかない音楽だけど、そういう違和感って面白い。たまたまシシド・カフカさんを見に来たお客さんがregaとかSawagiを見て、惹き込まれるってこともあるだろうし、その逆もあると思います。お客さんのそれぞれの世界観を意外な組み合わせで壊していくというのも、イベントの大切なところだと思います。

――「SYNCHRONICITY」は今までO-EASTで開催されることが多かったと思いますが、渋谷という場所にこだわりがあるんですか?

麻生 : 渋谷というか、「東京発のフェス」にしたいという感覚があるんですよ。東京は色んなアーティストが集まって磨かれているし、競い合いヒリヒリする感じがありますよね。最近では地域の個性を生かしたフェスもたくさんあって素晴らしいと思うんですけど、東京はやはりクオリティの高い表現がたくさん集まってくる。そういう場所から発信していくということは意識しています。

――むしろ東京へのこだわりが強いと。それとも、都市へのこだわりですか?

麻生 : つまるところ東京へのこだわりになるんだろうけど、イメージとしては都市へのこだわりに近いかな。自分が住んでて感覚がわかる場所。

――将来、O-EASTより大きい会場でやる可能性もあるんでしょうか。

麻生 : 今後はあると思います。もちろん大切なのは規模じゃなくて、コンセプトだと思ってますけどね。「SYNCHRONICITY」のコンセプトを表現するには、5000人くらいの規模がいいかなと思ってます。
四本 : 横浜のBAY HALLでもやってましたよね?(※「SYNCHRONICITY'11」)
麻生 : やったね。あそこも凄くよかった。

――具体的に、ここでやってみたいと思うクラブやライヴ・ハウスがあったりするんですか?

麻生 : 会場では特にないですね。「じゃあ野外で!」という考え方はあんまり好きじゃないんですけど、規模的なことを考えると野外ということになっちゃうのかな。でもさっきも話した東京や都市のエッセンスは出していきたいので、場所は慎重に考えたいと思ってます。

――最後になりましたが、regaとSawagiのお二人から「SYNCHRONICITY'12 AUTUMN」への意気込みをお願いします。

四本 : そうですね。実は、さっきから、いいフェスとは何かについてずっと考えてたんですけど、今年恥ずかしながら初めてフジロックに遊びに行ったんですよね。スタッフさん全然いないのにちゃんと規律があって、どうなってるんだろうと思ってたんですけど、多分お客さんたちが自分たちでルールを作っていって、ああいうフェスになったんだろうなと思ったんですよ。印象に残るフェスってただ良いアーティストを見るっていうだけじゃなくて、自分も参加している感覚が強いフェスなのかなと思っていて、その意味では「SYNCHRONICITY」も同じ感覚を感じさせてくれると思います。お客さんたちも、アーティストを見に来ているというより、イベント自体を楽しんでるって感じなので、自分もイベント自体の空気を楽しみつつ、250%でやりたいなと思いますね。
nico : 僕も同じです。
一同 : (笑)。
麻生 : そうだよね。好きなアーティストを見に来るって当たり前だもん。それは大前提だよね。その上でのフェスだと思う。
nico : ずっと考えてた甲斐あるな(笑)。いや本当に、その通りだよな。

――最後に麻生さんからも一言お願いします。

麻生 : とにかく regaとSawagiのライヴは絶対に見てほしい!もちろん他のアーティストも絶対見てほしいんだけど(笑)。音楽ってその時代時代で今の音楽があると思うし、「SYNCHRONICITY」はそれをすごく大事にしてます。regaもSawagiもライヴが最高なのはもちろん、まさに「今の時代の音」が感じられると思う。絶対に見てほしいです!

「SYNCHRONICITY'12 AUTUMN」出演者の作品はこちら!

PROFILE

SYNCHRONICITY
『SYNCHRONICITY』とは、「CREATION FOR THE FUTURE」をテーマにグリーン電力で開催する都市型アート・フェスティバル。音楽、ライヴ・ペインティング、映像、ダンス・パフォーマンス、デザイン等、ジャンルを超え様々なアートが交わる空間を通して、未来へ続く前向きなエネルギーを生み出すことを目的に開催しています。

クリエイターチーム -kikyu-
「楽しさの、一歩先へ」をテーマに2002年に結成されたクリエイター・チーム。自由の象徴としての「気球」、願い求めるというベクトルを指す「希求」。その二つの意味を合わせ持ち、イベント制作をベースとしながら、映像、デザイン等幅広いクリエイティヴ・ワークを手がける。オーガナイザーを始め、トラック・メイカー、VJ、ムービー・ディレクター、フォトグラファー等様々なクリエイターが在籍。未来へ向けた様々なクリエイションを発信し続けている。

GREEN POWER : グリーン電力
『SYNCHRONICITY』は、グリーン電力を使用して行われています。グリーン電力とは、風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの環境への負荷を極力与えない自然エネルギーによって発電された電力です。クラブ、ライヴ・ハウスにてグリーン電力を使用したのは『SYNCHRONICITY』が初めてと言われています。音楽やアートが交わる有機的な空間を持続可能なエネルギーで生み出していくこと。それは素晴らしい音楽やアート、それらを感じる喜びを未来に永続的に残していきたいという想いであり、私たちの未来への責任であると考えています。自然は優しさや豊かさを教え、心を潤してくれるものです。その自然への想いを形にしていくことは、家族や大切な人への想いを形にするようなもの。その想いと行動が未来へ向けての大切な一つと考えています。

SYNCHRONICITY OFFICIAL HP

Sawagi
ダンス・ミュージックをコンセプトにロック、ジャズ、ファンク、エレクトロなどのエッセンスを取り入れた ボキャブラリー豊富なアレンジを凝らす4人組インストゥルメンタル・バンド。2009年8月に発売された1stアルバム『hi hop』はタワーレコードのレコメンド『オススメ戦隊タワレコメン』 に選ばれ、同時に洗練されたライヴ・パフォーマンスも噂となり「SUMMERSONIC'09大阪」にも出演を果たす。また2011年には自身のイベント「Mitole」を大阪BIGCATにて主催し、その後活動の拠点を関西から東京へ移す。そのサウンドやライヴ・スタイルは各方面から注目を浴び、数々のアーティストのツアー・サポート、ライヴ共演、AiraMitsukiのプロデュース、CASIO KIDS、Low Frequency Club、藤井リナ、The Best of jazzin' for Ghibli(V.A)のリミックスといった活動も行なっている。

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rega
Gt2人、Ba、Drの4人編成インスト・ロックバンド、溢れ出る感情を表現する凄まじいライヴは圧巻。そのサウンドは個々の背景から鳴る音とストイックに向き合った楽曲、ジャンルにとらわれない魂の音楽。どこからか心地良いメロディが湧いてきて緻密に構築された楽曲であるが、人間味のある暖かさも投げかける。その根元で戯れるように遊ぶライヴ・パフォーマンスと洗練された心地よいサウンドで各地の音好き達を魅了している。昨年はMETAMORPHOSE、朝霧JAMの出演が決定するなど注目を集める。

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過去のSYNCHRONICITYの特集

SYNCHRONICITY 2012'春 <麻生潤(-kikyu-)×大竹重寿(cro-magnon)>

SYNCHRONICITY 2011 <麻生潤(-kikyu-)インタビュー>

[インタヴュー] rega

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