2012/08/15 00:00

∴560∵ INTERVIEW

∴560∵(Bass)

——Wienners以前のお話からお伺いしたいのですが、∴560∵さんが初めてバンドを組んだのは、いつ頃のことですか。

∴560∵ : 中学2年生の頃ですね。文化祭の準備をしていたときに、横でリハーサルしている先輩のバンドを見て、そこにいた4人で「来年は俺らも出ようぜ! 」ってバンドを組みました。余談なんですけど、そのバンドでベースを弾いていたのが、今、快速東京でギターを弾いてる一ノ瀬(雄太)なんですよ。

——え、そうなんですか!?

∴560∵ : そうなんですよ。当時、俺はドラムだったので、今となっては2人とも違う楽器を持っているんですけど(笑)。

——確かに(笑)。そこから、ライヴ・ハウスに出るようになったのはいつ頃のことなんですか。

∴560∵ : 高校生になってからですね。一之瀬がギター/ヴォーカルで、もう1人、ベースの子をいれて、3人でオリジナルのバンドを始めました。また余談なんですけど、I HATE SMOKE RECORDSってレーベルをやっている大澤(啓己)君が、俺の2個上の先輩で、当時大沢君のやっていたバンドが、玉屋君がやっていたSCHOOL YOUTHと対バンをしていたんです。それを見て「かっけええ! 」って。

——それじゃあ、玉屋さんとはそのライヴで知ったんですか?

∴560∵ : そうですね。大沢君と友達だったので紹介してもらって、ライヴによく顔を出しているうちに段々知り合いになって。その後、いろいろ機会があって、一緒のライヴに出るようになって、段々仲良くなっていきました。

——Wiennresを始めたのはいつ頃ですか?

∴560∵ : 22歳くらいのことですね。SCHOOL YOUTHが解散した半年くらい後に、俺のやっていたバンド、United Skatesも解散してしまって。その間、玉屋君はもう新しいバンドを始めようって動きをしているのは知っていて、あとはベースさえいればって状況だってことも知っていたんです。俺はSEVENTENN AGAiNの活動を始めていたんですけど、玉屋君の新しいバンドが気がかりというか、早く始めて欲しいなって感じで様子を見ていたので、一緒にやってみようかなと思って入ったんです。

——自分の楽器、パートを変えてでも、玉屋さんに早く動いて欲しいって気持ちがあったということですか?

∴560∵ : そうですね。SCHOOL YOUTHがどういう風に変わっていくかも見てきていたし、西荻WATTSでやっていた頃から、お互いに好きな音楽の話もしていたから、玉屋君がどういう音楽をやろうとしてるか、わかってるつもりだったというか。いきなりインターネットの応募で出会った、「ベースやってます。バンド暦どれくらいです」って人と、Wiennersの音楽をがっちり出来る確立ってものすごく少ないと思うんですよ。俺は玉屋君のやりたいことがすげーわかるって思ってたから、そういう意味では楽器は違うけど、絶対話が速いし、いいんじゃないかって。ベースが上手い人より、そういう部分のほうが大事だろうと思って。

——玉屋さんの音楽的な側面に可能性を感じていたということですか。

∴560∵ : そうですね。

——Wiennersをやるにあたって「本気でやりたい」という気持ちで始めたとマナブシティさんはおっしゃっていましたが、そういう部分は感じていましたか?

∴560∵ : そうですね。メンバーで話したりもしましたね。この歳で新しくバンドを始めるんだから、なんとなくじゃなくて、ちゃんとメンバーの意識を確認しておこうって話をして。最初に言っていたのは、「自分達に出来ることを最大限にやって、どこまで通用するもんなのか本気で見たい。そういう意味で全員本気でやりたいんだけど、皆もそう思ってる? 」ってことで。俺は、玉屋君が面白いことをやろうとしてるし、やれると思っていたから、「いやあ、やれるっしょ!! 」と思って入りました。

——実際、ドラムからベースに楽器を持ち替えて、すぐに上手くいったんですか?

∴560∵ : いや、もう一杯一杯ですね。最初の頃は、そんなに出来ないとは思わなかったし、挫折は味あわなかったというのが正直あるんですけど、それは「楽しい」の一心だったというか、楽しいから心が折れずにやれたみたいなことで。それは中高生のコピー・バンドをやっている時期の、怖いものがないみたいな感覚でしかなくて、実際は下手っぴだし、続けていくうちにそれにやっと気が付いた感じですかね。だから、続けて行くうちにどんどんダメなことに気が付いてという感じですかね。

——それに気付き出したのは、1stアルバム『CULT POP JAPAN』を出してからですか?

∴560∵ : 『CULT POP JAPAN』を作った後ですね。最初のアルバムって、それまでやっていた曲を改めて録るという感じでもあるし、前へ前へという衝動的な感じでもあったから、とにかくライヴで爆裂するみたいなものを録るって感じだったんです。次にリリースしたミニ・アルバム『W』を作る段階で、気がついていったんだと思います。

——『W』の制作時期って、玉屋さんが曲を書けなくなったり、バンドとしても一つの転換期となった時期ですよね。

∴560∵ : そうですね。あと、アルバムを出してツアーをしてみて、もっと色んなことをやりたいって純粋に思ったし、こんなもんじゃないぞとも思ったんです。改めて、バンドとして、一演奏者として、もっと音楽と向き合うようになった時期でしたね。1枚目よりテンポの遅い曲があったり、歌と言葉があるとか、そういう曲を演奏する方向に向かっていった時期なんで、考えれば考えるほど自分達に出来ないことがわかったというか。自分のベースと向き合い出したのはその頃からですね。

——自分の演奏と向い合うことによって、どういう風に変えていこうと思ったんですか?

∴560∵ : 演奏を聴かせることが、どういうことかを考えるようになりました。俺はパンク育ちだったから、メンバーがフロアに降りてきて物を投げまくるとか、この人たち怖いんじゃないかとかっていう空気が、一番楽しかったりすんですよ。スリルと恐怖と紙一重のライヴ。ボコボコにされるんじゃないかって現場にいる感じが好きだったりして、演奏どころじゃない、もう何をしてるかわからない所が好きだったりして。でもCDを出して、それこそWiennersでやろうとしてる音楽ってそれだけじゃないというか、それはわかっていながら音楽的なことをやりたいし、それを表現しなきゃいけない、ライヴでそれを伝えられる力を持たなきゃいけないんだなってことを考えて行くようになりましたね。

——『CULT POP JAPAN』と『W』では、表現の幅が全然広がったなと思ったんですけど、それは今作『UTOPIA』でさらに加速していると感じました。曲の長さとかアレンジも、この時期に考え方が変わっていったんですか?

∴560∵ : そうですね。ただ、作ってる時は色々やってるつもりだったんですけど、意外と自分達でルールを作ってしまっていたというか、実は幅を狭めていて。口では「何でもありっしょ!」みたいなことを言ってはいたんですけど、どこかでWiennersでこれをやるのは違うでしょみたいな選択肢があって。そういうのも取っ払って、色んなことを表現したいと思ったので、より色んな音楽を聴くようになって、広がっていきましたね。

——本当にこの時期は、バンドにとって相当にヘビーだったようですよね。マナブシティさんはこの時期に辞めようとも思ったそうです。∴560∵さんは、Wiennersを辞めようかなとか思ったことはありますか?

∴560∵ : うーん… 確かにその当時はしんどい… しんどいというか上手く行かないことが多くて、スタジオに入ってもなんか楽しい気分になれなかったりしました。でも辞めようとは思わなかったですね。これを乗り越えなきゃいけないなという感じで思ってて。なにかあると思ってたんですね。

——すごい面白いのは、マナブシティさんも同じ発言をしていて、「まだなにかあるから、辞められない」「全力を出し切った先には、まだ何かある」って。その何かっていう、追い求めているものが何なんだろうって僕はすごく気になっていて。

∴560∵ : 何なんでしょうね。俺とマナブ君で共通してそうだなって思うのは、付き合い自体がそれぞれ長いから、今までの玉屋が作ってきた曲を聴いた上でも、この人から出てくるものがまだまだあるんだろうなって。それをバンドとして上手く広げて表現をする、バンドのものにするみたいなことも出来ると思ってたから辞めるって選択肢はなかったんだと思います。

——つまり、玉屋さんのポテンシャルというかやりたいことを皆で形にしていきたいって気持ちが中心にあるんですか?

∴560∵ : そうですね。

どこまで行けるか追い求めたい

——マナブシティさんは、Wiennersのムード・メイカーになっていきたいとおっしゃっていました。そういう意味で、∴560∵さんがWiennersの中で率先して力になれると思っている部分はどういった所ですか?

∴560∵ : あんまり... わかんないです(笑)。実際、自分は根が暗いし、ネガティブな人間なんですよ。決して、自分に自信を持ってる人間ではないので、俺がコレ得意だよとか任せてよとかは言いたくないし、求められるとすごく安心するんですよ。俺って必要なんだみたいな。ただ、自分から「俺はここにいた方がいいでしょ」とか自分から出ていきたくないんですよね。

——ここまでのお話だと自分に自信がないとか、そういう感じがしなかったので、正直とても意外です。

∴560∵ : 引っ込み思案ではないけど、でしゃばりたくないというのがあって。身の程をわきまえろと(笑)。自分に対してですけど、そういう所があって。

——逆に、そこに対してもっと前に出てきてよ、と言われることはないんですか?

∴560∵ : もちろん意見を持っていれば言うし、やりたいとか、こうしたいという意見は言いますね。でも、自分の意見を言ってる時に、自分が一番我儘な気がしちゃうんですよ。もちろん、話し合って「なるほど! 」っていい位置に落ち着くとかってこともあるんですけどね。自分の意思ははっきり伝えるは伝えますね。ただ、なるべく待つっていうか、皆の方向性をしっかり聞きたいと思ってでしゃばらないんです。「はいはいはい! まず俺! 」みたいにしたくない。

——それぞれの意見を尊重していきたいということですか。

∴560∵ : そうですね。今の状況を踏まえて、みんなの意見を聞いたうえで、良いと思ったら良いと言うし、違うと思ったら話しあって。だから自分のやりたいこととか行きたい方向に関しては、伝えているし我慢はしてないですね。

——例えば、人にもよると思うんですけど、とにかくそれぞれの意見をぶつけ合っていくことで、より深まるって考えもあると思うんですね。マナブシティさんは、まだちょっとお互いに遠慮があるんじゃないかって話してくれたんですけど、そういう部分は感じますか?

∴560∵ : 平たく言うとあると思いますね。今言って下さった、互いの意見をとにかく言い合うバンドもあると思いますけど、それって人間性だなって。ウチのバンドって、なんというか簡単に言うと皆優しい(笑)。割と大人しい人間が集まってると思うんですよ。ケンカっぽい人とかじゃないし。それは遠慮といえば遠慮かもしれないけど、悪い意味での距離じゃないし、変に距離があるとかじゃないと思うんですよね。お互いの距離感って、あるのかないのかと言ったらあると思うんですけど、それはWiennersというバンド・メンバー4人との距離の置き方であると思っていて。だからそれが遠慮してる距離が遠いという訳じゃないと思うんですよね、俺は。

——そういうバランスで成り立ってるというわけですね。

∴560∵ : 相手によって距離のとり方って違うじゃないですか。バンド・メンバーの距離だと、良い具合だと思ってますけどね。

——∴560∵さんとしてはこれからのWiennersはどのような活動をしたいですか?

∴560∵ : 結局WiennersはWiennersでしかないので、もともと大事にしてた自分達の好きなアンダー・グラウンドな所の繋がりを大事にしつつ、バンドを組んだ当初に話した、自分達がどこまで行けるんだろうっていうことを追い求めたいし貫きたいです。多くの人に見てもらえるようになりたいし、そのためにはもともと持っていたルーツというかアンダー・グラウンドといったらざっくりですけど、というものを感じてもらいたい。そういう面白みがあるバンドでいたいと思いますね。さっき言ったように殺伐としてて危険を感じるようなライヴ・ハウスがもともと好きでいたっていう感覚を感じたい。そういうものを知るきっかけになりたい感じというんですかね。

——殺伐としたやばい感じもありつつ、もっと多くの人に聴いて欲しい気持ちもあるんですね。

∴560∵ : そうですね。ライヴで「うわー、なんかやばいな」という空気感、危ない、危険であるって感じじゃなきゃいけないわけじゃないですけど、その場でやばい感じ、そういうバンドでいたいという気持ちはあります。どこへでも行きたいんですけど、色んなシーンというかどういう界隈でもやらせてもらいたいとは思いますね。

——さっき言っていた、のびしろじゃないですけど、まだなんか出来ることがあるから追い続けるというか突き詰めていくという感じですかね。

∴560∵ : そうですね。それって結局、Wienners自身が、バンドとしてどれだけしっかりどーん! としていられるかだと思うんです。揺るぎないWiennersでいることが大切というか。ちょっと前にアイドルに曲を書いてコラボレーションしたりしたこともあって。今までだったら関わらないであろうアイドルと競演するとか、アイドルと半々のイベントに出たりとかして、普通にやっていたら関わらないシーンと関わってみて、全然アリだと思ったんです。そういう場に行っても、WiennersがしっかりWiennersであれば、他のジャンルのファンの人達にも受け入れられてもらえると思うし。そういういうことが色んな所で起きたらいいなと思ってて。それって結局、Wiennersがどれだけどこにいても、Wiennersであるってことが大事だと思うし。それで「バンドのライヴはなんかヤベえんだ」って感じが出せれば良いなって思いますね。

——まだ何かある、というところを突き詰めていって、Wiennersが見せてくれる景色を楽しみにしています。

2nd album『UTOPIA』のダウンロードはこちらから

マナブシティのインタビューはこちらから

TOP