2011/07/29 00:00

日本盤のみのボーナス・トラック付きで配信開始

Her Space Holiday / HER SPACE HOLIDAY
心優しきSSWマーク・ビアンキによる1人ユニット。ドリーミー・ポップ、エレクトロニカやフォークなど、15年にわたるキャリアを総括したグランド・フィナーレ。4 bonjour's partiesの灰谷歩によるリミックス「DEATH OF A WRITER(AYUMU HAITANI REMIX)」も収録。

至高の休息へと導く

始まりがあれば終わりも必ずやって来る。しかし決して悲しいことではないよ、新しいスタートが君を待っているのだから。Her Space Holidayによるラスト・アルバム『HER SPACE HOLIDAY』。それは最後という「別れ」を感じさせない程、希望の光に満ちていた。サンフランシスコ近郊のサン・マテオ出身のシンガー・ソング・ライター、マーク・ビアンキによる1人ユニット、Her Space Holiday。元々、Indian SummerやCalmといったハードコア・バンドで活動していたが、1996年より本名義で1人での創作活動を開始した。元YMOの高橋幸宏のソロ・アルバム『Blue Moon Blue』及びツアーへの参加、またサッポロビールYEBISU THE HOPのCMに、コーネリアスや曽我部恵一クラムボン高田漣、つじあやのらと並んで外国人として唯一人出演するなど日本との関連も深い。ポップ~エレクトロニカの橋渡しをするようなサウンドが特徴的だが、全体的にエレクトロニクスを付随的に用いポップの要素が前面に出ているため、電子音に距離を置いている人でも聴きやすい。これまでにBright EyesやThe Go Teamとツアーを行い、R.E.M.からBoom Bipまでのリミックスを手がけてきたとあって、ロック、ポスト・ロック~ヒップ・ホップといった幅広いジャンルを複合し、暖かなポップ・ミュージックへと昇華させている。

さて、エレクトロニクスを排除し「うたの力」に焦点を当てたxoxo、panda名義の作品から約4年、15年にわたるキャリアに終わりを告げる本作。それは、驚くほどドリーミーで喜びに満ちていた。ポップ・サウンドに弦楽器や管楽器がうまく盛り込まれ、前作に比べ音色が豊かになり奥行きが深まった。まるでSigur Rosの「Takk...」にも似た、一種の壮大ささえ感じられる。本作を生み出すに当たり、xoxo、pandaでの活動は重要な役割を果たしたと言える。エレクトロニクスに頼らずアコースティック・ギターやバンジョー、グロッケンなどの楽器をすべて自分で演奏し、「自らの手で1から音楽を作り上げること」に特化したxoxo、panda。その活動を通じ、これまで歩んできた音楽表現すべてと向き合いメロディー・メーカーとして独自の世界観を確立することに成功した。ドリーミー・ポップ、エレクトロニカ、フォーク、ヒップ・ホップ、そしてローファイと様々な音楽表現を経てきたが、ところどころに各要素を配置した本作はまさにキャリアを総括する最高傑作だ。囁くような歌い方が特徴だったボーカルも前作に比べ力強くはっきり聞こえ、「僕の世界はここだよ」という揺るぎない自信が伝わってくる。

また、本作の制作期間彼は闘病生活を送っている家族と生活しており、ここ2年で祖父母を亡くしたそうだ。Her Space Holidayとしての音楽活動だけではなく、死という人間にとって不可避の「終わりもこの作品には内包されている。しかしそのサウンドはあまりにも温もりに溢れ心休まるものだった。私たちの身に時に辛く迫ってくる「終わり」に新たな始まりへの希望と期待を見出し、彼は優しく微笑みかける。「終着点」に驕りや自らを誇示するいやらしさは全くない。Her Space Holidayとして歩んできたすべての道程に感謝し、悲哀と涙で終わるのではなく盛大なパーティーをみんなで開いて笑顔で終わりにしようという彼の思いが深く心に響くラスト・アルバムだ。この名義で作る作品はこれで最後かもしれないが、再生ボタンを押した瞬間に、世界を取り巻く嫌悪や卑屈の感情はすべて宇宙へと飛んで行き、ある晴れた穏やかな日のような波風一切立たない至高の休息へと私たちを導いてくれるだろう。(text by 碇 真李江)

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ジョニー・レイネックを中心に、2004年にNYのブルックリンで結成された5人組。プロデュースにYeah Yeah Yeahs、 Grizzly Bear、TV on the Radio、 Beach House等を手がけるChris Coadyを迎えて制作された本作は、前作同様、Stone Rosesを彷彿させるグルーヴに、Oasisの全盛期に優るとも劣らないシンガロング度の高いメロディーを纏った最強のアルバムになった。

PROFILE

Her Space Holiday
2007年の『xoxo, panda and the new kid revival』(日本以外では、Her Space Holiday名義で、このタイトルでリリースされている)以後、いつくかのCMと、2010年4月に突然決まった代官山UNITと埼玉のcafe couwaでのライヴ以外、音沙汰がなかった彼は再びオースティンに居を移し、静かに、ゆっくりと、何年もかけて、Her Space Holidayを終焉させるべく、ラスト・アルバム『HER SPACE HOLIDAY』の制作にとりかかる。
これまでの1人きりでの制作スタイルを捨て、プロデューサーであるStephen Ceresiaとともに彼のスタジオであるSunday house studioに入り、これまでになくたくさんのゲストを迎える形でレコーディングは行われた。IndianSummerのドラマーだったEyad Kailehをはじめ、日本や台湾、オーストラリアでのバック・バンドを務めてきた4 bonjour's parties、2010年の代官山UNITで共演したCaroline Lufkin(Caroline/Mice Parade)、Via TaniaのTania Bowers、City LightのNick AndreとMatthew Shaw、Ola PodridaのDave Wingo… 等々、そのリストは10人以上になる。そうやって作られた『HER SPACE HOLIDAY』は、ドリーミー・ポップ、エレクトロニカ、フォーク、サイファイ、ヒップ・ホップ、ローファイ… これまで彼が経てきた音楽表現方法のどれかに偏ることなく、全てを包含して総括した、まさに集大成と呼ぶに相応しい芳醇な音楽性を宿している。また、これまでどんな音楽性を纏おうとも、決して変わらなかった、彼の優しい人柄がそのまま伝わるような温かいメロディーと唄心は今作でももちろん健在。

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