2011/07/13 00:00

Zomby / Dedication

ディプロ、ブリアルやコード9が激推しのダブ・ステップ界の異端児・ゾンビー、大注目の2ndアルバム! 「Things Fall Apart」ではアニマル・コレクティヴのパンダ・ベアがヴォーカルで参加と、リリース前から既にクラブ・ファンだけでなくクラブ寄りなロック・ファンの間でも話題に。もはやチェックしないわけにはいかない、今年ナンバー・ワンのクラブ・アルバムが完成!

配信ファイル形式 : mp3 / wav
価格 : ともに1500円

4ADの隠し玉? UKの謎多きサウンド・プロデューサーことゾンビーの献身

以前、4ADの現社長サイモン・ハリデー氏にインタビューする機会があった。元WARPのUSAオフィスに在籍していた人物で、「耽美」、「神秘的」、あるいは「デカダンス」と形容され続けてきたあの名門レーベルが、ザ・ナショナルやボン・イヴェール(アメリカではJagjaguwarが展開)のような時代のカリスマを輩出し、アリエル・ピンクやツイン・シャドウといった一見キワモノっぽいアーティストを取り込むことになったのは、間違いなく彼の功績と先見の明である。そのサイモン氏の口から、(当時は)オフレコで語られた驚愕のニュースがゾンビーとのサインだった。

ゾンビーといえば、UKを拠点に活動する謎多きサウンド・プロデューサー。ジャングル、ダブ・ステップ、ブレイク・コア、エレクトロニカ、グライムやガラージ… ありとあらゆるダンス・ミュージックを横断/吸収しながら、きわめてオリジナルで高精度なビートを創造するベッドルームの確信犯だ。ブリクストンのインディ・レーベル=Werk Discsより08年にリリースされたデビュー・アルバム『Where Were U in '92? 』は、文字通り90年代初期のレイヴ・シーンにインスパイアを受けたもので、AKAI S2000やAtari STなどの古い機材のみを取り入れ、当時の空気とフィーリングを見事につかまえた。Hyperdubからのリリースを含む大量のEP作品や、2009年のミニ・アルバム『One Foot Ahead of the Other』を経て新作への機運が高まる中、突如、盟友ブリアル&コード9がBBCレディオ1にて放送したミックスにおいて、新曲「Natalia's Song」が解禁。件の4ADとの契約はバズを巻き起こし、満を持してドロップされるセカンド・アルバムが『Dedication』だ。

全16曲、35分余り。“献身・専念”という意味を持つタイトルだが、日々新しいビートのアウトプットに骨身を削ってきたゾンビーの面目躍如たる1枚。オープナーの「Witch Hunt」を筆頭に、躁病的かつアッパーだった前作よりも遥かにダークで、不穏で、都会の夜のサウンド・トラックに最適である。先述の「Natalia's Song」も勿論収録されているが、エコーの効いた電子音が残響する「Alothea」から、C64シンセを用いたチップ・チューン風味の「Black Orchid」における流麗なコンビネーションには溜め息が漏れる。おそらく本作最大のハイライトは、アニマル・コレクティヴのパンダ・ベアをヴォーカルに招いた7曲目「Things Fall Apart」。ギターに重点を置いたパンダの新作『Tomboy』とも通じるサイケデリックなサウンドスケープで、「ピッチフォークへの目配せ」と揶揄する評論家がいたとしても、ブルックリンの実験音楽シーンの立役者と、UKアンダーグラウンドの鬼才による邂逅は興奮を隠せない。

アルバム後半はグッと躍動的でトライバルな側面が顔を出していくが、15曲目「Basquiat」が破格に素晴らしい。1988年に夭逝した伝説のアウトサイダー・アーティストの名前を拝借したこの楽曲は、荘厳なピアノとストリングスをフィーチャーした新機軸。ジェイムス・ブレイクのファースト『James Blake』が「歌もの」として驚きと賞賛をもって迎えられたのと同様に、『Dedication』もまた、ダンス・ミュージックのネクスト・ステージを予見させる試金石となるに違いない。今年のサマーソニックでも披露されるプライマル・スクリームの『Screamadelica』再現ツアーを例に挙げるまでもなく、世界中が20年前のセカンド・サマー・オブ・ラブ、およびレイヴの時代を懐かしんでいるように思える昨今。3年前にレイヴを“清算”してしまったゾンビーは今、何を見つめているのだろうか…?(text by 上野功平)

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煌めく音の粒と、弾けるリズムが絡み合い生み出した、プリズム色のサイケデリア。現在USインディー界で絶対的な人気を誇る音楽集団、アニマル・コレクティヴの中心メンバー、パンダ・ベアことノア・レノックスによる超待望の新作ソロ・アルバム。2007年リリースのソロ前作『パーソン・ピッチ』が米有力ブログ・ピッチフォークの年間ベスト・アルバム第1位に選出、大絶賛を浴び、続いて本家アニマル・コレクティヴとしてリリースした『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』(09年)も界中の有力媒体の年間ベストを総なめしたパンダ・ベアが新作ソロ・アルバムとともに帰ってきた! 元スペースメン3のソニック・ブーム(MGMT他)がミックスを担当!

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2010年最もビッグなリリースと言われる「CMYK EP」に続きジェイムス・ブレイクがR&S Recordsからリリースした「Klavierwerke EP」。彼のヴォーカルが斬新なサウンドスケープに複雑に織り込まれ、時にBurialのアーバン要素をちらつかせながら、ジェイムス独自の世界を展開。ここ数年に現れた最もエキサイティングなアーティストのこれからに要注目である。

Bon Iver / Bon Iver

2008年発表した奇跡のデビュー・アルバムで、その神秘的な歌声と幻想的な世界観に世界が絶賛! 音楽メディア、批評家やアーティストから絶大な指示を得るシンガー・ソングライター=ジャスティン・ヴァーノンこと、ボン・イヴェールが日本デビュー。今年最も注目を集めているニュー・アルバムが登場。

[レヴュー] Zomby

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