2010/07/27 00:00

OTOTOY POWER PUSH!
TOKiMONSTA『MIDNIGHT MENU』

OTOTOY編集部が今イチオシのアーティストを紹介するOTOTOY POWER PUSH。今回は、DAEDELUS、THE GASLAMP KILLER、RAS-G、MATTHEW DAVIDなど蒼々たるメンバーが所属するFLYING LOTUS主宰レーベルBRAINFEEDERに所属する紅一点、TOKiMONSTA待望のファースト・フル・アルバムをご紹介。

一曲目、イントロを一聴。まだ7月だと言うのに今夏No.1 BGMに大決定である。極太ベースの波を乗りこなすのは、レイドバック感満載な叙情的メロディー。時に軽快、時に破壊的なビートが何とも言えぬ妙味を付け足す。新進気鋭の女流ビート・メイカーここに在りとでも言おうか、恐れ入谷の鬼子母神とはまさにこのこと。かのFLYING LOTUS主宰レーベルBRAINFEEDERに所属するアーティストでは紅一点とのことだが、本作は「だから何だ。」と言わんばかりの実力を見せ付けるに十分な出来である。現在のビート・シーンを席巻して止まないLA勢であるが、幼少の頃よりピアノ、クラリネット、ドラムやギターの教育を受けてきたというTOKiMONSTAは、その確かな音楽的素養を持ってして、LA特有の極悪ドープなベース・ラインを、身体的ばかりでなく音楽的にも響かせる希有な才能と言って良い。それにしても本作、全編LAらしい乾いた空気感の中で、とにもかくにもノスタルジックな魅力に溢れている。ノスタルジックと言っても、ただ懐かしいだけではない。再生するや否や、靄のかかったメロディーの向こう側で、来る予定もない未来が時を駆けてフラッシュ・バックするのである。八月の夜、あの娘と行った海辺の花火大会。そんな、根も葉もない捏造紛いの胸キュンな思い出に包まれる。別に花火大会でなくてもよい。只、海、山、川、お祭り、夏フェス、そういった各種に渡る疑似脳内アーカイブのバックには、必ずやこのTOKIMONSTAが流れてくる。初聴なのに!

妄想はさておき、梅雨が明けた途端、人生辞めたくなる位の暑さが続くが、TOKiMONSTAがこの猛暑を軽くいなしてくれる一服の清涼剤になることは確かな現実であろう。それは、何層にも渡る音色やエフェクト処理によって巧みにもたらされる効果とも言えるが、そんなプロダクションの過程など、この際どうでも良い。聴いて心地の良い音がある。それだけのことであるし、ある意味、それだけが重要なのである。海に向かう車中で聴くもよし。渋滞にはまったって気にならない。そもそも急ぐ必要がない。車窓からの景色は全てがスロー・モーションになって、聴き手の時間感覚を異次元に誘うだろう。街中、チャリンコに乗りながら、風を切って聴くもよし。勿論アクティブな夏は苦手という貴方なら、クーラーを効かせて部屋で踊るもよし。踊り疲れて、アイス・コーヒーでチルしながら聴くもよし。「気付いたら昼寝になってたり」もよし。そう、こんな音楽を聴きながら昼寝なんか出来たら最高じゃないか。(text by 木村直大)

PROFILE

FLYING LOTUS主宰レーベルBRAINFEEDER所属に所属するLAベースの女性アーティストTOKiMONSTA。幼少の頃からピアノ、クラリネット、ギターやドラムを習うなど恵まれた音楽環境に育ち、多くの音楽を吸収しHIPHOP/BEATへ傾倒していく。2008年には自身がプロデュースした楽曲にSHING02をフィーチャーし、VINYLもリリースされ、WENODのみで取り扱われたミニ・アルバムは世界で注目されることになる。BRAINFEEDERに所属してからは多くのリミックスやプロデュースで知名度を上げ、GILLES PETERSONやMARY ANNE HOBBSらの強力サポートもあり2010年REDBULL MUSIC ACADEMYへの参加が決定する。2010年は本作のリリース以外にGILLES PETERSONがBROWNSWOOD BUBBLERSに収録したANALOG MONSTAがJAZZY SPORTからリリース、BRAINFEEDERからのリリースも決定と今後も続々リリースが控えている!! その美貌も手伝い現行ビート・シーンにて最も注目されるアーティストの1人!! 今秋来日予定。

[レヴュー] TOKiMONSTA

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