2009/06/30 00:00


RATVILLEはインスト・ダブ・バンドだ。3人の男が奏でる低音は堅く、そしてしなやか。サウンドは、まるで大きく不思議な軟体動物のよう。7月にリリースされるRATVILLEのファースト・フル・アルバム『Dubs on the Corner』はシンプルでクセになるアルバム。色で言ったら、真っ黒の空間に原色だ。今回は曲作り、ダブというジャンルや新レーベル等について、ミックス・コンソール前田耕輔・ドラムス有井佑樹の2人に話を伺った。

インタビュー&文 : 小山真帆

INTERVIEW

—では自己紹介から…

前田耕輔(以下M) : 自己紹介…、RATVILLEでダブ・ミックスをやっている前田といいます。

有井佑樹(以下A) : ドラムと営業担当の有井です。よろしく願いします。

—アルバムのタイトル『Dubs on the Corner』はどなたが?

M : もともとRATVILLEの前身バンドではげしめのオルタナティヴなグランジをやっていたんです。その後、僕は1回離れてひとりでトラックを作ったりしてたんです。で、また今のメンバー3人が集まった時に、好きな曲を集めてCDにして2人に配った。そのコンピCDのタイトルが『Dubs on the Corner』だったんですね。

A : 「アルバム・タイトル何にしよかなー」言うてる時に、「あぁ、そういえばあれかっこよかったやん」って閃いたんです。『Dubs on the Corner』って、どういう意味なん?

M : マイルス(ディヴィス)の『Dubs on the Corner』っていうアルバムがあって、僕がそれむっちゃ好きってこともあるし、"On the corner"だから、ちょっと"曲がり角"的な。ちょっとひねくれたダブが好きやったから、ダブの名曲ばかりじゃなくて、そういうのを聴いてもらってそれぞれインスパイアされるものがあったらいいなと思って。

—アルバム・タイトルもそうですけど、何曲かタイトルに"Dub"という言葉を使われていますね。何かこだわりがあるのですか?

A : んー、まぁ(dubという言葉を使うのを)我慢した方よな。いかにも、って感じにはしたくなかったんで最低限で済ませた感じ。

M : タイトルにdubって言葉使ってるけど、ダブ・アルバムやと思う人がおってもいいし、これはダブじゃないって言う人がおってもいい。俺らは今まで好きな音楽から感じたもの詰め込んでいるので、くくりを決めてるとか偏った意識はないです。

—なるほど。ちなみに、曲はどうやって作っているんですか?

M : 自然発生的に作るようにしてます。たとえば、僕が家でベース・ラインを作ってきて、スタジオでポーンとループで鳴らして。そこにみんなでセッションして被せていって、ひたすら録音したり。

A : 最初から展開が決まってるわけではなくて、よかったところを抽出して分析して組み立てていく。あとは「"相槌こそ打たないものの、話はちゃんと聞いてるで"って感じにしたら、もっとよくなるんちゃう? 」とか抽象的なイメージを話し合ったりしながら。例え話はよくしますね。

—今回のアルバムも?

M : アルバムはねぇ、もともと雲をつかむような過程を経て出来た曲を、(ライブなどで)ある程度アウト・プットした後に、如何に熱を失わずに音源に詰めるか、それをどう流れで聞かすかってことが苦労しましたね。

—ライヴで一番長いことやってる曲はどれですか?

A : 6曲目の「Output Dots」ですね! RATVILLEで一番最初にできた曲です。

M : 今回、ドクター(Doctor Hasegawa)がサックスで参加してくれています。レコーディングで彼のサックスがバチッと曲にハマった瞬間、「今までよう頑張ってきたな。これからも頑張れよ」って3人に言ってくれてるようで、泣きそうになりましたよ。

—皆さんが考えるダブとは?

M : ダブって要素は、人によってイメージするものがいろいろあるから。なかなか定義するのは難しいんですけど、やっぱりキーになるのは、振動とか…

A : ベースがなくてもダブは表現できるけど、やっぱりヘビーなベースと音の隙間。

M : 重たいベースを感じるためには、あんまりいろんな要素がない方がいいというか。隙間って大事なんです。

A : 本場のライヴでは入り口で耳栓が配られるらしくって、音圧で痛くなるくらい低音で充満している。でも、まったくベースの入ってないミニマル・テクノみたいなものを聴いても「あぁ、ダブやな」と思うときもあるし。

—なるほど。ヘビーな低音と音の隙間。

M : まぁ、僕等はそんなことを大それて言われへんくらいのレベルですね。今後も研究します。

A : 精神的なものもやっぱ大きいしな。テクニックもない武士が、武士道について語るみたいな感じがある。

M : まぁ… そんな堅苦しいものでもないんですけどね! 僕は自分の奥底でパッと思いついたものを変換するまでの距離が近いような気がしていて。

A : …おもしろいですか? こんな話

—あぁ! 大丈夫ですよ(笑) もっと複雑な音楽だと思ってたので、へぇ! と思って聞いています。

M : 情報量が少ないシンプルな音楽ですよ。

—シンプルな分、3人だと曲作りが難航するのでは?

M : そうですね… RATVILLEは、3人がポーンとボールを投げて3つの点ができる。それをひとつの場所に合わそうっていう作業をするから、難航しますね。

A : 細い所に集中していってその先に解放がある、っていうイメージかな。僕は快楽主義のパラドックスというか、快楽を得るにはしんどいところを通過せなあかん、ってそういうテンションで臨んでます。

M : レゲエにガイダンスって言葉があって、因果応報みたいなものなんですけど。僕は楽しいこともしんどいことも絶対的な数値はゼロやな、と思ってて。そう思ってたら気が楽でしょ? はなからそんなもんや、と思って天秤のなかでやってますね。

—ありがとうございます。最後に、今回CDを出すレーベルPUBLICRIDDIM(パブリック・リディム)について紹介してもらっていいですか?

A : えー、これは僕が個人的にやっているレーベルでRATVILLE専属ってわけでもないです。誰がやってるとかどうでもよくて、これからのタイトルで色を見せていかなあかんかなと思うので。んー、まぁ…… レーベルについてはあんまり喋りたくないです!(笑)

—わぁ、すみません! まだRATVILLEを知らない人たちに向けて、何かメッセージはありますか?

A : 僕はRATVILLEのメンバーでありながらそれを売る立場でもあって。宣伝しながらこれはビジネスなのか、媚びてるのかと迷うときもあるけれど、今は、アルバムが出るので子どもがもうすぐ生まれるようなテンションなんです。子どもが誰か運命の人に出会えたらいいな、と。何枚売れてほしいって言うより、このアルバム一番好き、って言ってくれるような運命の人と巡り合うための…婚活? みたいな。誰か紹介したって下さい(笑)

M : そうですね。アタマ真っ白にして聴いてもらえたらいい。それか真っ白になってください!

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LIVE SCHEDULE

  • 7月4日 (土) @京都 SOCRATES
  • 7月17日(金) @大阪 OSAKA SHINSAIBASHI CLAPPER
  • 7月20日(月) @京都 METRO
  • 7月25日(土) @山口 RISE
  • 8月1日(土) @大阪 NAMBA ROCKETS
  • 8月22日(土) @京都 Urbanguild
  • 9月21日(月) @名古屋 cafe domina
  • 9月26日(土) @大阪 SHINSAIBASHI HOKAGE


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PROFILE


RATVILLE

2005年京都にて結成された、mix / synth / melodica / sampler / guitar / drumsからなるダブ・ワイズ・オルタナティヴ3ピース。京都・大阪を中心にREBEL FAMILIA、こだま和文、DJ BAKU、KILLER-BONG、54-71、Z、corrupted、NICE VIEWと共演するなど、ジャンル・レスな場で活動し、2006年秋に初音源となる『如才EP』をセルフ・リリース。2008年には『KAIKOO PLANET』(POPGROUP)にTELEDUBGNOSIS(wordsound)によるREMIXを提供するほか、幾つかのコンピレーションに参加するなど活動の幅を広げている。荒削りながらも、そのディープ且つアグレッシヴなダブ・サウンドは唯一無二。Dub + distortion = Beautiful!


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この記事の筆者

[インタヴュー] RATVILLE

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