2013/11/14 00:00

naomi&goroでの活動、細野晴臣との競演など国内外で高い評価を獲得する音楽家 / ギタリスト、伊藤ゴロー。ジャズ、クラシック、ブラジル音楽など、ジャンルを越境した傑作として、ロング・セラーとなった前作2ndソロ・アルバム『GLASHAUS』。この作品に続く新作として、12月に発売される3rdアルバム『POSTLUDIUM』にも期待が高まるばかりだ。そして、その新作からのシングル『POSTLIDIUM EP』をこのたびリリース。OTOTOYではDSD音源を独占配信する。どこにもない、彼にしか作りえぬ音像をDSD音源にて味わっていただきたい。

《POSTLUDIUM》EPトレーラー
《POSTLUDIUM》EPトレーラー


Goro Ito / POSTLUDIUM EP (5.6MHz DSD+MP3 ver.)
【配信価格】
5.6MHz DSD+MP3 アルバム購入 900円

【Track List】
01. The Isle (EP Version)
02. Luminescence――Dedicated to H.H. at Spiral Hall
03. Glashaus at Spiral Hall

どんなジャンルにも当てはめることのできない強い個性

ソロとして初となるアルバムからのシングル・カットが今回の作品『POSTLUDIUM EP』。伊藤ゴローによるギター演奏、ジャズ、室内楽界の名手である参加ミュージシャンの演奏の曲への立体的に彩り作品を大変すばらしいものにしている。とはいえ、まず最初に今作の“音の良さ”について触れておきたい。いわゆる音の“良い”“悪い”という判断は、ひとそれぞれの感覚、価値観にゆだねられるため、それが個人的な感想になってしまうのは承知である。そして今作の“音の良さ”を、あえて単純ないい方で表現すると“ハっとさせる音”なのである。長ったらしい前置きにもかかわらずこのような表現になってしまったことが申し訳なくも思うが、正直で素直な感想であり、かつ一番端的な表現であると思う。今作の2、3曲はSPIRAL RECORDSの上にあるSPIRAL HALLという広い会場での録音であるが、一聴すれば、録音空間と演奏風景を想像させられるほど、奥行きのある音像である。コードチェンジ時に生じる指と弦の摩擦音、またギターのちょっとしたバズ音までも曲を彩る、まさにその場の“空気”をパッケージしたような録音である。ぜひともDSD音源で録音空間の“空気”を体感していただきたい。

本作の1曲目、「The Isle」は12月4日に発売されるアルバム、『POSTLUDIUM』の収録曲からのショート・エデットである。緊張感をただよわせるシンバル・レガートと、不穏を生み出すギターとピアノから始まり、イントロが終わると同時に一気に加速し、緊張感はそのままに間奏に。そして徐々にエネルギーが放出されていき、アウトロに向け少しずつ収縮、そして音が消えていく。風景のようにおだやかで、曲全体を通して描かれる大きな変化。それらは曲をつかみどころのない、良い意味で曖昧なものにしている。そこにひとつの特徴がある。2曲目「Luminescence」、3曲目「GLASHAUS」は1曲目とは変わり楽器編成がギター、ピアノ、チェロとシンプルな編成での録音。1曲目のようなリズムのエモーショナルさはないが、メロディーから出る揺らぎ、少人数独特の隙間の美しさが印象的な曲であり各楽器が主線、伴奏をいききが演奏を立体的にしている。この3曲すべてを聴いて思うのは、どんなジャンルにも当てはめることのできない強い個性を感じるということだ。それを的確にとらえる説明と表現が見当たらないのがくやしいが、ひとつはっきり言えるのは“ハっとさせる音”がそこにあるということだ。(text by 浜公氣)

関連作品の紹介

Goro Ito / GLASHAUS(DSD+mp3 ver.)

ロングセラーとなった2ndソロ・アルバム。ジャズ、クラシック、ブラジル音楽を基調に描きだされ、あたたかく親密なアンサンブルの極みと、室内楽のような空間美をじっくりと味わうことのできる傑作。

>>>紹介記事はこちら

松田 美緒 + 沢田 穣治 with ストリングス / Canta Jobim(2.8MHz DSD+mp3 ver.)

巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲を、鬼才・沢田穣治がリスペクトを込めてアレンジし、世界を旅する孤高のシンガー・松田美緒が歌う、”ボサノバ”という解釈ではないジョビン名曲集。

V.A / 坂本龍一 NHK session(2.8MHz DSD+mp3 ver.)

2011年元日にNHK-FMで放送された『坂本龍一ニューイヤー・スペシャル』のために収録された演奏。大友良英との、オーネット・コールマンをモチーフにしたピアノとギターによる繊細な即興演奏「improvisation inspired by Ornette Coleman」、坂本が立てる物音と大谷能生のラップがゴダール的な空間を織りなす「adaptation 02 - yors」、ASA-CHANGのエレクトロニック・ドラムで奏でられる「adaptation 03.1 - acrs 〜adaptation 03.2 thousand knives - acrs」、2人の知性派ミュージシャンが相まみえた菊地成孔との歴史的な記録「adaptation 04 - nkrs」、やくしまるえつこの独特な声で「Ballet Mécanique」に新たな息吹を与えた「adaptation 05.1 ‒ eyrs ~adaptation 05.2 ballet mécanique - eyrs」。5人のアーティストとのセッションを、当日の模様を収めたブックレット(PDF)付きで完全収録。

>>>坂本龍一 NHK sessionの特集はこちら

PROFILE

Goro Ito

布施尚美とのボサノヴァ・デュオnaomi & goro、ソロ・プロジェクトMOOSE HILL(ムース・ヒル)として活動するかたわら、映画やドラマ、CM音楽もてがけ、国内外でアルバム・リリース、ライブをおこなう。また、Penguin Cafe Orchestra《tribute》《best》、原田知世《music & me》《eyja》、ボサノヴァの名盤《Getz/Gilberto》誕生から50年を記念したトリビュート盤《ゲッツ/ジルベルト+50》など、アルバムのプロデュースや、故郷の青森にある青森県立美術館5周年を記念した『芸術の青森展』の「私を青い森へ連れてって」に「TONE_POEM青の記憶サウンド・インスタレーション」で参加、2012年同館で開催された『Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語』のサウンドトラックを担当。2012年に〈SPIRAL RECORDS〉からリリースした《GLASHAUS》は高い評価を獲得、ロングセラーとなる。同年の年末には『伊藤ゴロー with ジャキス・モレレンバウム スペシャル・デュオ・コンサート』を草月ホールで開催。近年は原田知世と歌と朗読の会「on-doc.」での全国ツアーや、詩人の平出隆との「Tone Poetry」を開始するなど、多岐にわたる活動を展開している。2013年12月、3rdソロ・アルバム《POSTLUDIUM》を発表。

この記事の筆者

[インタヴュー] Goro Ito

TOP