2010/04/15 00:00

DOMMUNEとは?

ライヴ・ストリーミングでトーク・ライヴや音楽の配信を続けるスタジオ『DOMMUNE』。このスタジオを個人で立ち上げたのは宇川直宏。現代美術家、グラフィック・デザイナー、VJなど、様々な肩書きを持ち、常に新しいことへの挑戦を忘れない。今では夜毎5000人前後の"観客"を集めるようになったこのスタジオは、3月1日、東京・渋谷に開局した。「週末はクラブへと足を運んでほしい」との思いから、放送は週末を外した、日曜から木曜までの19時から24時の間となっている。19時から21時まではゲストを呼んでのトーク・ライヴ、21時から24時までがDJタイムとなっており、その模様がインターネット上へと、リアルタイムで配信されているのだ。これまで写真家の都築響一、シンガー・ソング・ライターの七尾旅人や、巨匠漫画家の手塚治虫、赤塚不二夫の娘達、 ジャズ・ミュージシャンの菊池成孔、作家の中村うさぎや阿部和重、ele-king編集長の野田努、批評家の佐々木敦など様々な著名人が出演、3月1日の開局から2日目にして、UstreamでのWORLDビューワー数トップを獲得した。

全てがライヴで行われてるという"生"の感覚は、DOMMUNEの魅力のひとつだ。Ustreamでの映像配信に加え、Twitterを利用して放送へのコメントが可能であるため、ほかの閲覧者との一体感もある。実際のクラブのように声を使用したコミュニケーションではないため、情報のやりとりには向いていると言える。文字が溢れ返る様子も楽しめる。(text by 東條剛史)

4/5のDJタイムの様子

DOMMUNE

番組は通常、日曜から木曜の19時から24時まで放送している。視聴は全て無料だ。予約をすればラウンジ・スタジオでの観覧も可能だが、フロア・サイズの関係上、定員は50人限定となっている。現在、倍率は3から4倍程度なので、空気を体感したい場合は公式サイトから応募しよう。

住所: 東京都渋谷区東4-6-5 サンライズビル 地下1階
時間: 19時から24時まで
エントランス: 1000円(コンテンツによって料金が変わる場合あり)
ウェブ: http://www.dommune.com/
ツイッター: http://twitter.com/dommune

DOMMUNEという革命 text by 木村直大

日曜から木曜の夜、勤め人なら翌日の仕事があるからなるべく家にいたい。がしかし、安息を求めて家にいるからといって、「面白いこと」、「かっこいいこと」への探究心を決して失ったわけではない。この当たり前の事実にDOMMUNE以後の我々は気付いてしまった。戦後の高度経済成長期以降、各々の労働から帰宅して過ごす何をするでもない平日夜の時間とは、まだ見ぬDOMMUNEを潜在的に待ちこがれていた自宅待機を意味していたと言っても過言ではない。

開局初日のMOODMANを皮切りに、CLUB黎明期からシーンを支える高橋透やDJ NORIやDJ WADA、メインストリームとアンダーグラウンドの境界を崩し続ける瀧見憲司や川辺ヒロシ、またCMTやDJ NOBU、L?K?Oなどの先鋭的な才能や、COMPUMAやDJ TASAKAなどのスキルとセンスを兼ね備えたトップDJ達が連夜登場、そのプレイの素晴しさたるや日ごと多種多様である。更にはミニマル/テック・ハウスのマイスターであるSTEVE BUGや、現在D&Bシーンの最前線に立つDJ ZINCなどその勢いは海外の頂点をも巻き込んで旋風を巻き起こしている。呪術的魅力が宿る中継映像は、専属スタッフが撮影する三台のカメラ、宇川直宏氏自身の手によるそのスイッチング操作と映像へのリアルタイムなエフェクト処理から成り、ラジオの様に、「ながら」作業をしようとしても思わず見入ってしまう。気付けば放送も後半、佳境で加わる「現場のかわい子ちゃん」が踊っている画に至っては、80年代初頭の伝説的テレビ番組「Graffiti Rock」において「B-Girlなお姉ちゃん」がわんさか踊っている様を想起させ、テン年代的フレッシュさを発して止まない。宇川氏は、マイクの代わりにこれらのハイブリッドな映像によって視聴者を煽動し、まさにマスター・オブ・セレモニーを司るのである。

4/6トーク・ライヴ

ではこの魅力溢れるコンテンツを、我々はどの様に享受するのか。

戦後大衆音楽の発展と共に多様化する音楽シーン上、歴史的インパクトを持った部類のそれには、特にその発生現場において常に、人種や社会的階層といったある種の閉鎖性が伴っていた。ハードコア・パンクしかり、ハウスしかり。ずっと遡れば、ジャズだって例外ではあるまい。しかし(ジャンルとメディアという違いはあるものの)DOMMUNEにおいては、誕生以来一貫してUSTREAMを開きさえすれば誰もがその証人に、そしてTwitterで興奮を呟けば誰もがその一員になることが約束されている。この開かれた形態に加えて、ハプニングですら曝け出すリアルタイム配信、かつリアルタイムでなければ視聴出来ないが故の同時性や一回性が、例え自宅にいながらもクラブの現場で味わうあの刹那的な快楽性を伴って、相互作用的に一つの時間を共有する事の価値を付加している。興味深いのは、DOMMUNEというリアルなクラブが、ネット上の巨大な仮想クラブへと拡張された存在になった時、普段クラブに行かない多くの視聴者が、より身体的な快楽性を求めて、この週末は久しぶりにクラブへ足を運ぼうと盛んにTwitterで呟いている事である。つまり、DOMMUNEを観ればクラブに行かなくても良い気になるという事ではなく、DOMMUNEを観る事でクラブに行きたくなるという現象である。

実際、金土を休信日にして週末はリアルな現場に繰り出すことを促すというDOMMUNEの目論見通り、出演した各DJの週末のイベントには、かなりの増員が達成されているとのことである。ただDOMMUNEから派生するこの事態が、MTVとは違って、決してスポンサーの意向を重視する内容でないからこそ起きているという点を見失ってはならない。当然の事ながら、質を先行させた内容があってこその視聴者数である。またこの質と数との関連性は、クラブへの増員だけでなく、それまで一部のリスナーしか知らなかった部類の音楽を一般的視聴者にも届け、彼、彼女らの音楽的情報量と選択肢を増やし、聴く幅を拡張させるという啓蒙的広報活動としても作用している。願わくば、DOMMUNEを巡るこの現象が、DJ自身やそこで流れる楽曲の広告モデルとして定着すると良い。 L?K?O?の超絶変態プレイに五千人が釘付けになった現実。その五千人の中に、普段は銀杏BOYZが好きな女子中学生がいて、DOMMUNEに完全に感化された現実。Twitterのタイムライン上の呟きから垣間見られる、この驚愕の現実群を一体誰が無視できようか。内容の良いものを、開かれた手段で提示していく。これこそが、広告の原点であるし、あるべき姿ではないか。思えば我々は、今まで特に欲しくもない紛い物を掴まされ過ぎてきた。

まだDOMMUNEを体験していない人の中には、何だかわからないけど既に乗り遅れているから逆に観る気が起きないという考えもあるだろう。兎角エッジの鋭い人間ほど、そう考えるのはよくあることで理解に難くない。しかし、それは話題の対象がハイプである場合においてのみの話であり、ハイプなら元より見る必要などない。だが、DOMMUNEはハイプではない。これは、複製芸術の誕生以来の革命であり、テン年代以降のスタンダードとなる。「笑っていいとも」を、「乗り遅れたから」という理由で観ない平成生まれがいるか。

DOMMUNE出演者の音源

ATAK010 Filmachine Phonics / Keiichiro Shibuya
渋谷慶一郎の、世界初のヘッドフォン専用3D立体音響作品。音がヘッドフォンの中で縦移動する、前方から自分を通り過ぎるなど、既存のサラウンドでは不可能とされていたテクノロジーを最大限に駆使して作曲された、誰もが未体験なipodで体験できるサウンド・アート。音の運動がメロディやコードと同様に緻密に作曲されたことによってヘッドフォンのなかだけで体感出来る、誰も聴いたことの無い音楽。未知の体感と構築の均衡。
※コンピュータにイヤホン、またはヘッドフォンをさしてお聴きください。
single file projectはこちら

Chill Out / DJ Yogurt & Koyasu
アンビエント・ミュージックの復興を宣言し、不朽のジャンルへと軌道修正を果たした名作『CHILL OUT』の発表から20周年。2010年代の幕開けにアンビエント・ブームの到来。

ハイファイ新書 / 相対性理論
Perfume以降の新世代ポップ・シーンを牽引するバンド、相対性理論の新作『ハイファイ新書』発売しました。萌え文化とリンクしながらアンダーグラウンドとも直結。淡々としているけど、突き刺さってくる言葉の群。『00年代後半のうた姫?』センスが逸脱しております。ネクスト・ジェネレーションのナンバー・ガール的存在!


OTOTOYは、DOMMUNEの挑戦を引き続き応援し、今後の動向に注目していきます。DOMMUNE特集をマンスリーの連載企画にしたいとさえ思っています。お楽しみに!

この記事の筆者
東條 剛史 (たけし)

とがるぜ。

緊急レポート DOMMUNEはすごい!

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