今最も面白いのは、溢れたポスト・ロックから抜け出し自分達にしか出来ないサウンドを確立しようと躍起になっているバンド達だ。歌に主軸をおくもの。クラブに傾倒するもの等様々。名古屋のSU:sgt.やstim。海外では、バトルスや先駆者であるトータスだってそうだ。常に変わり続けなくちゃならない。そんな試練を背負ったバンド達が新しく進む道は様々で、そのあがきはとても肉体的で美しい。ポスト・ロック全盛のまっただ中で生まれたLITEもまた、自分達の新たな存在を打ち出そうとしている。そこにはミニットメンの中心人物で、現在イギー・ポップ率いるストゥージズへの参加で知られるパンク・シーンのレジェンド、マイク・ワットとの出会いが、大きな影響を与えているようだ。会心の一作、NEW EP『Turns Red EP』の発売に際して、インタビューを試みた。

インタビュー&文 : 飯田仁一郎

新しいLITEのサウンド

—前作『Phantasia』から、大きく音が変化しましたね。

武田 信幸(以下N) : 今までやってきた音楽性に興奮しなくなっちゃったんです。常に新しいものを作ろうというモチベーションでバンドを続けてきたのですが、同じことの繰り返しになった。何を聴いても何かっぽいと思ってしまって、やりたいことがわからなくて。曲を作ろうと思ってスタジオに入っても、新しいものは生まれず、悶々とした状態が続いちゃったんです。
このままじゃまずいと思って、自分達にとっての新しいことをいろいろ試してみたんです。ピアノを入れてみたり、メンバーそれぞれ2人でスタジオに入るという風に、曲作りの方法を変えてみたり。あと歌をのせてみたり。で、以前バンドであわせてみてしっくりこなかったお気に入りのフレーズをシンセサイザーで弾いてみたら、「これはいい! 」って発見したんです。

—「何を聴いても何かっぽい」という何かは、以前の自分達の曲? それとも、他のアーティストの曲ですか?

N : 僕たちの曲ですね。新鮮と思えなかったんです。自分達にとっての新しい音楽を作ることが楽しかったのに、それを感じられなくなってしまったんですね。

—世の中にとって新しい音楽をつくるって意識は、持っていますか?

N : なくはないんですよ。でも結局聴いたことのない音楽は沢山あるから言ってもきりがないと思っています。世の中にある曲でも全く同じものはないわけで、自分達にとって新しければそれが自然と世の中にとって新しいものになるんじゃないかなと。

—何故、シンセサイザーだったのでしょうか?

井澤 惇(以下J) : 同じフレーズでも、音色が違うと雰囲気が変わる。その単純なことが、楽しかったんです。シンセはちっちゃいmicroKORG。ライブでは、けっこう前から導入しています。これを買う前は、スタジオのシンセを引っ張りだして使っていたんですけど、楽曲の中でシンセが必要不可欠になってきたので、改めて購入しました。

—サウンドの新しいキーワードとしてシンセサイザーを見つけ出すまでに、どれくらいかかりましたか?

N : 1年くらいかかりました。
J : 気持ちが悶々としていた時期は長いけれど、そこを抜け出したのは、結構最近の話。去年は、本当に大事な年だったんです。第1期LITEが終了して、新しいLITEが始まったような感じがしています。

パトリック・・・ マイク・ワット・・・

—海外に出ようと思ったきっかけはなんですか?

N : ずっと海外でやってみたかったけれど、実際のところどうしたらいいのかわからない。そんな時に、アイルランドからたまたま旅行に来ていたパトリックという人物に出会ったんです。彼は、僕等のライブをネットで調べて観にきてくれた。終わった後に「感動したよ」って声をかけてくれて、滞在中に何度もライブに足を運んでくれたんです。で、大晦日に呑み明かした時に、「俺、レーベル作ろうと思うんだ。第1弾は、お前達を出したい! 」って言い出して。その話がとても嬉しくて「じゃぁ、やろう! 」となったんです。それから、実際にリリースして、ツアーも実現したりと関係が3年間続いているんです。

—ヨーロッパを中心にまわったの?

J : 最初は、イギリスとアイルランドだけ。その2カ国だけを2年続けて、去年やっとヨーロッパ全土とアメリカをまわることが出来たんです。
N : ヨーロッパはパトリックがエージェントと話してくれて、8カ国まわりました。日本とは全く違うお客さんの層で、たくさんの人に受け入れてもらえた時もあれば、田舎町の広大なスペースにぽつんとあるクラブで、数十人のお客さんの前でやった時も。でも、みんなウェルカムで温かかった。

—アメリカは、どういうきっかけで?

N : アメリカは、マイク・ワットですね。あの人は最高。
J : 世界観が大きく変わりました。人との繋がりだけで生きているんです。誰にでも好かれる性格だし、誰もが彼をかっこいいと思う、そんな生き方をしているんです。

—マイク・ワットとツアーをまわるようになったきっかけは?

J : やっぱりそれもパトリック。パトリックが、マイクのファンで知り合いだったんです。マイクがラジオ番組を持っていて、そこにパトリックが「僕のレーベルの第1弾アーティストなので、聴いてみてくれないか? 」って音源を送ったら、気に入ってかけてくれた。そうこうしているうちに、The Go! TeamのKaoriさんとマイクのユニットFUNANORIと一緒にスプリットを出さないかって話になって、そこからの繋がりなんです。とは言え、彼のことを何も知らないのに、いきなり14日間一緒に日本ツアーをまわることになって。最初はどういう人かわからないし、凄く不安だったし怖かったんですよ。でも会って2日後には、この人となら楽しくツアーが出来るって思ったし、本当に楽しかったんです。

—井澤君が、レーベルを始めたきっかけは?

J : イギリス、アイルランド・ツアーの時に凄くかっこいいバンドと出会ったんです。それが、今度日本にも来る、Adebisi Shank。彼らに出会った次の年に僕等は2nd album『Phantasia』をリリースしたんですが、そのレコ発ツアーに誰かゲスト・バンドをって考えた時に、彼らをよんでみようって思いついて。声をかけてみたら、とても快くオーケーしてくれた。でも、ただツアーをするだけだったら彼らの金銭的リスクが大きいので、物販用にCDを作って、せっかくなので流通させようって始めたのが、Parabolica Records(パラボリカ・レコーズ)なんです。
N : そのAdebisi Shankの前回のアルバムのプロデューサーが、僕等の今回のEPをレコーディングしてくれたJ・ロビンス。彼には、アメリカ・ツアー中にボルチモアで録ってもらったんです。
J : パトリック、マイク、Adebisi Shank、そしてJ・ロビンス。ほんと人の繋がりだけでここまでやってこれました。

LITEの核

—新しいサウンドに影響を与えたアーティストはいますか?

J : マイクのように精神的な影響を与えた人はいますけど、サウンドに直接影響を与えたアーティストはいないですね。
N : 実は今までのほうが確信があったんです。今回は挑戦したサウンドなので、世の中的な評価が怖かったんですけど、逆に自分達はこれだって吹っ切れもして。だから、今は自信を持ってリリース出来ている。

—自分達のこれだって思うことは何ですか?

N : 今回の新しい曲にも、LITEって言う要素はちゃんと残ってる。曲の構成とか、個人の出す細かいニュアンスだったり、そのバンドのくせみたいな部分だと思うんです。そのくせがあって始めて、変なことも新しいことも出来ると思うんです。
J : メンバーを増やそうと考えたこともあったけれど、この4人でしか出せない音がまだまだあるし、どんどん新しく変えていける。だから、この4人でやろうって再確認したのが大きかったですね。
N : そして「自分達がよければよいや! 」って思えるようになったんです。

LITEは今後どのように動いていきたいですか?

N : この新しい音楽性を大成させたいですね。自分達にとって今までにはなかったサウンドだと納得出来る作品を作りたい。そしてもっともっと世界各国でやってみたいですね。
J : 今度ツアーをするtera melosやAdebisi Shank等の交流しているバンド達と共に、時代のシーンを作っていきたいですね。「そういう世代があったんだぜ」って言われるような、そんなシーンになればよいと思っています。

LITE自主レーベル「I want the moon」第一弾作品


Turns Red EP / LITE
FUGAZIのイアン・マッケイと共にUSハードコア・シーンの立役者であるJawboxのJ・ロビンズをエンジニアに迎え、バンド初となるアメリカ・レコーディングを敢行。新しいサウンドをダイレクトに届けるべく、自主レーベル”I want the moon”を立ち上げリリースする今作は、LITEの第二章の幕開けともいえる作品。これまでのポスト・ロック、マス・ロックやプログレ的なアプローチに、バンド史上初のシンセを導入、ニューウェイヴ/エレクトロなどの要素を加えたロック+クラブ・ミュージックとなっています。

LIVE SCHEDULE

  • 10月26日(月)【Parabolica Jam '09 】@心斎橋CLUB QUATTRO w/tera melos(from U.S.), Adebisi Shank(from IRELAND), DJ BAKU
  • 10月27日(火)【Parabolica Jam '09 】@名古屋CLUB QUATTRO w/tera melos(from U.S.), Adebisi Shank(from IRELAND), toe
  • 10月28日(水)【Parabolica Jam '09 】@渋谷CLUB QUATTRO w/tera melos(from U.S.), Adebisi Shank(from IRELAND), OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND, NATSUMEN
  • 11月3日(火)@柏ALIVE w / lostage / deepslauter / WE ARE !
  • 11月23日(月)【SPECUTRUM vol.5 】@下北沢ERA w / 9dw / rega, and more...
  • 11月24日(火)【SPECUTRUM vol.5 】@下北沢ERA w / avengers in sci-fi / papier tigre(from FRANCE), and more...
  • 12月9日(水) @千葉LOOK w / VOLA & THE ORIENTAL MACHINE / camellia

PROFILE

LITE
2003年結成、4人組インスト・ロック・バンド。2005年に1stミニ・アルバム『LITE』、2006年に1stアルバム『filmlets』をリリースし、独特のプログレッシヴで鋭角的なリフやリズムからなる、エモーショナルでスリリングな楽曲は瞬く間に話題となり、新人ながらELLEGARDEN、ストレイテナーやTHE BACK HORNと共に出演など、国内での注目を集め始める。その年、1stミニ・アルバムと1stアルバムが、UKのインディー・レーベル「TRANSDUCTION RECORDS」よりヨーロッパ・リリース、初のヨーロッパ・ツアーを成功させる。これまでにDEERHOOF、Sleeping People、31knots、Mike Watt、Joan of Arc、ALOHA、Collections of Colonies of Bees(ex.Pele)、PELICANやAdebisi Shankなどの来日ツアーのサポートを勤めるなど国内外を問わず多くのバンドからの支持も得ている。2007年、LITEのサウンドに惚れ込んだアメリカの西海岸パンクのレジェンドのMike Wattより、SPLITの指名を受け、Mike WattとThe Go! TeamのKaoriによるユニットFUNANORIとのSPLIT『A Tiny Twofer』をリリースし、その年のFUJI ROCK FESTIVAL 07への出演や、2度目のヨーロッパ・ツアーを行う。2008年5月に2nd album『Phantasia』をリリースし、国内外の大型フェスへの出演や、3度目のヨーロッパ・ツアーを行う。そのイギリス・LEEDSで開催されたBrainwash Festival 2008をライブREC、配信限定『LIVE IN LEEDS』をリリース。2009年にはMike Wattからのオファーで、バンドとして初となるUSツアーを行い、その初日のNew York公演をライブREC、1週間の最速スピードでiTunes Storeより『LIVE IN NEW YORK』を配信限定でリリース。

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