2016/06/23 16:52

期待の新人・中村月子の極上の歌声を3本のマイクで録音し、その違いを聴き比べてみよう!

期待の新人シンガーソングライター中村月子。彼女は、極上の歌声を持つ。そんな彼女のライヴを、ハイレゾの祭典〈HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL〉にて、エンジニア高橋健太郎がKORGのMR-2000Sを用い録音するイベントを実施した。

このページでは、その日彼女が歌った曲「その時世界が」を、RCAの44Bという1940年代のリボンマイク、ノイマンのU67という真空管式のマイク、ゼンハイザーのMH416というガンマイクの3本のマイクでレコーディングし、各マイクのみのトラックをフリー・ダウンロードで提供する。ぜひ、その3本のマイクで録れた極上の歌声の違いを聴き比べてほしい。

また、中村月子のオリジナル楽曲3曲を収録した『Experience』をハイレゾ配信する。1曲目の「エンジェル」は本当に名曲で、『Experience』は記念すべき彼女の初作である。中村月子と高橋健太郎によるレコーディング当日のお話、そして中村月子の初インタヴューを読みながら、その極上の歌声と才能を堪能して欲しい。彼女が羽ばたく日は、もうすぐだ!

インタヴュー・文 : 飯田仁一郎
写真 : 大橋祐希

「スパイラル」の9Fラウンジに響き渡った中村月子の歌声をハイレゾで

中村月子 / Experience
【Track List】
1. エンジェル
2. その時世界が 416 ver.
3. 夜を越えて

【配信形態】
24bit/48kHz (WAV / ALAC / FLAC) / AAC
>>ファイル形式について

【価格】
まとめ購入のみ 500円(税込)
※特典としてデジタル・ブックレットがついてきます。

【中村月子『Experience』作品クレジット】

All Songs Performed by Tukiko Nakamura
Recorded at Spiral Hall
Recording / Mixing Engineer : Kentaro Takahashi
Project Director : Jinichiro Iida(OTOTOY)
Supported by KORG / Phile-web

彼女が歌った曲「その時世界が」を、3本のマイクで聴き比べてみよう。

中村月子 / その時世界が(聴き比べ音源)(24bit/48kHz)
【Track List】
1. BABY 418
2. BABY U67
3. BABY 44B

【配信形態】
24bit/48kHz (WAV / ALAC / FLAC) / AAC
>>ファイル形式について

【価格】
まとめ購入のみ 0円

INTERVIEW : 中村月子 × 高橋健太郎

中村月子

年代や作り方の違うマイクを使ってそれぞれ違いが出るようレコーディングした(高橋)

ーーハイレゾフェスでのライヴはいかがでしたか。

中村月子(以下、月子) : 恐ろしいくらい緊張しました。長く演奏している気分になって途中で飛んじゃったり、お客さんの顔も見えてたから「あれ? 飽きられてる?」って恐怖心に襲われだしたりして。こじんまりとした雰囲気だったのも、逆に緊張しちゃって。

ーー今回、異なる3本のマイクでのレコーディングを行いましたが、そもそもこの企画はどのようにして生まれたのでしょう?

高橋健太郎(以下、高橋) : あの部屋で録音しようって話が上がったときに、1番面白いことは何かを考えたんです。あそこはスタジオではなくて、空調の音も入るような普通な部屋なので、一発でクオリティと緊張感のあるものが録るにするには、マイクを普通に立てるんじゃなくて、1本でその場の音を全部録ってしまうのはどうかなと。ただ、それだけだと面白くないから、年代や作り方の違うマイクを使ってそれぞれ違いが出るようにしたら面白いかなって。

左上から、44B、U67、MH416

ーーそのマイクについて教えて頂けますか。

高橋 : 1つはRCAの44Bという1940年代のリボンマイク。ビリー・ホリデイなどのジャズ歌手が使っていたもので、この中では1番古くて大きいマイクですね。それからノイマンのU67という真空管式のマイク。1960年代のものだけど、今も有名な人たちはこれを使うことが多いんじゃないかな。スタジオで女性シンガーとかによく使われています。それとゼンハイザーのMH416。これはガンマイクといって、周りの音をほとんど拾わないんです。例えば外で使ったときに、小鳥の声を録ったりできます。基本はその3本で、少しだけ下の方に立てて、左右の音を拾うようにしたAKGの414ULSと遠くに立てたアンビエンス用のゼンハイザーのMD421Nをミックスの時にまぜています。

ーーこのガンマイクで歌を録るなんてことはあるんですか?

高橋 : あんまりないですね。

ーーこれってテレビ局の人とかが使うやつですよね?

高橋 : そうそう。テレビ局の人が上からかざすマイクです。なんでそんなマイクでやってみようと思ったのかというと、NPRのタイニー・デスク・コンサートってあるじゃないですか。あれ、オフィスで録っていて、マイクどうしてるんだろう?と、よくよくみてたら、下の方にガンマイクが1本出てるんですよ。オフィスって向こうでは空調が回っていて、こっちではPCの音が鳴っていても、ノイズだらけでしょ。でも、ガンマイクならあんまりその音を拾わないから、弾き語りの人に割と遠くから向けているだけでも大丈夫なんだな、これは面白そうと思って、入れてみました。

ーー実際に録ってみていかがでしたか?

高橋 : どれがいいっていうより、それぞれ違う雰囲気で録れて面白かったです。月子さんはどうでした?
月子 : 普段は1本しかないから、すごい緊張しましたね。

ーー各音源を聴き比べてみましょうか。

(〜試聴タイム〜)

>>BABY(聴き比べ音源)のダウンロードはこちらから

月子 : 私はMH416で録れた音が好きですね。生音っぽい感じがします。

ーー僕は温かみのある44Bで録れた音が好きでした。

高橋 : 44Bで録れた音は、今CDとかで聞かない感じの音だよね。
月子 : 声がくぐもった感じで、昔のジャズの雰囲気があっていいと思いました。

ーー聴き比べてみると違いがはっきりしていますね。

高橋 : ガンマイク(MH416)は他の音が入ってこないから、歌っている人は自分の感じに1番近いのかもしれないですね。
月子 : 確かに。
高橋 : 44Bで録れた音は録音したものを聴いているというより、少し離れたところで聴いているような感じ。U67で録れた音は1番CDに近いかもしれない。どのマイクが1番合うのかは環境に応じて調べないと分からないものなんですが、今回は3本全部良かったですね。U67はこの中では1番高いマイクで、ウチのスタジオでも皆1番使いたがるんです。
月子 : そうなんですか。
高橋 : 合わない人は合わないけど、合う人にはものすごく合う。ガンマイクで録ったのは初めてだったけど、面白いものが録れたし、44Bは思った通りの感じに録れた。

ーー変わったレコーディング方法でしたが、録音はスムーズにいきましたか。

高橋 : ストロークの曲はギターの音が大きくなって歌とギターが混ざるのと、曲の中でもそのバランスが変わるので、ワンマイクで録るのは少し難しかったですね。本当は曲ごとに少し位置を変えたりしたかった。「その時世界が」はアルペジオなので、どのマイクでもバランスが取れていて、音や声の違いが1番わかりやすいと思います。

小学生の時、ジミヘンに衝撃を受けたんですよね(月子)

ーー曲についても伺いたいんですが、「エンジェル」はとてもいい曲!

月子 : これは父が私に贈ってくれた曲なんです。最近になって父と頻繁に連絡をとるようになって、そのときに父がこの曲を歌っていたことを思い出しました。「できるだけ一緒の時間を過ごそう」って歌詞が好きで、最近歌い始めたんです。
高橋 : お父さんもシンガー・ソングライターなんですか?
月子 : バンドマンで弾き語りもやっています。滋賀のバンドで、地元でフェスとかをやったりしていて、渋くてめちゃかっこいいお父さんなんです。
高橋 : 1回、お父さんの歌も聴いてみたいなあ。
月子 : 父から譲り受けた曲なので大事にしています。

ーー「その時世界が」はどういった曲ですか?

月子 : 自分が何のために歌っているのかを考えていて、部屋で1人「この人のために歌えたら十分だな」と思ったときに書きました。2ヶ月くらい前にできた曲なんですけど、最近は雰囲気を変えてやっています。「夜を越えて」も同じくらいの時期に作って、吹っ切れた瞬間にできた曲です。

ーー何に吹っ切れたんですか?

月子 : くすぶっていたんですよね。2年前に上京して、レコーディングをしたりもしていたんですけど、頓挫してしまったことがあって。でもこの1年くらいひたすら曲作りとライヴを繰り返していく中で、気持ちがシンプルになっていって、初心に戻ったというか。見失っていた自分と久しぶり会えたという感じです。
高橋 : もともとどうして曲を作り始めたの?
月子 : ジミヘンが凄い好きだったんです。

ーーえ? ジミヘンですか?

月子 : 小学生の時に衝撃を受けたんですよね。揺さぶられる瞬間があった。
高橋 : お父さんもジミヘンが好きなんですか。
月子 : もちろんジミヘンも好きだとは思うんですけど、お父さんは清志郎とかが凄い好きで。レコードをいっぱい聴かせてもらってて、トム・ウェイツとかもあって、そのうちにジミヘンを聴かせてもらったんです。そこで「かっこいい!私ブルース・ギターをやりたいわ」と思ったんです。それで滋賀県で有名なブルースのおっさんがいるんです。知ってますよね?

ーー知りませんよ(笑)。

月子 : マジで有名なんですよ(笑)。その尊敬するブルースのおっさんにリフや曲を教えてもらって、それに日本語で歌詞をつけてみたんです。それが凄い面白くて、そこで味をしめて「自分の気持ちをのせてみたらどうなるんだろう?」と思って、それこそ小学生なので「運動会だ!」とか「テストだ!」とかそういう簡単なことから曲にしていきました。

ーー小学生の頃から曲を作っていたんですか?

月子 : 作っていました。だから昔は滋賀県の期待の星だったんですけどね(笑)。
高橋 : その頃から人前に立っていたんですか?
月子 : 小学4年生の夏に初めてステージで演奏しました。お父さんのフェスでジミヘンの「リトル・ウィング」を。

ーー小4で「リトル・ウィング」(笑)。ご自身の曲はどのくらいあるんですか?

月子 : 昔のものも含めたら80曲くらい。愛のことばかり歌いたいと思っています。色んな曲がありますけど、結局は私の曲は愛の歌ですね。

ーーそこに行き着くのは何故なのでしょうか?

月子 : 愛を信じていたいから。私、人を凄い好きになるんですよ。どんな人でもめっちゃ愛しちゃう。ただその分感情の起伏は大きいので、自分の中に渦巻くものと戦いながら曲を書いてます。感情が動いたときに曲が書けるんですよね。

ーーなるほど。でもそれくらいな人の方が、人を惹き付ける曲をかけると思います。

月子 : そうだと良いんですけど。頑張ります。
高橋 : いやいや、月子さんは、歌も曲もぜんぜん凄くて、超期待の新星だと思いますよ。

〈HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL〉で録音された音源達


大木和音 / Latina -内なる印象

ピアノの原型となった鍵盤楽器、チェンバロの奏者として世界で初めてDSD11.2MHzレコーディングを行った大木和音が〈HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL〉でライヴ・レコーディングに臨んだ。しかも今回は、同じDSD11.2MHzレコーディングといっても、オーデイエンスを目の前に極限の緊張感をまといながらの録音。彼女の新たな挑戦ともいえるレコーディング作品をOTOTOYで独占配信中。

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Suara×真依子 / 声と箏

〈HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL〉で実現したアニメ・ゲームソングのハイレゾ配信の先駆者〈F.I.X.RECORDS〉所属のSuaraが、和楽器の「箏」を奏でる真依子と共鳴。このプレミアムなセッションの模様を高音質フォーマットで収録。公開レコーディングの緊張感の中に響き渡る、圧倒的なSuaraの歌声と真依子の繊細な箏の音色が生み出すハーモニーを、ぜひハイレゾで体験して欲しい。

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蓮沼執太 / Spiral Ambient

「HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL」の初日となる2016年3月11日に、サウンド&レコーディング・マガジン編集部プロデュースのもと行われた蓮沼執太の公開録音、〈Spiral Ambient〉。スパイラルホールの中央に設置されたバイノーラル・マイクによって、音楽だけではなく、当日の現場の空気感や気配までもがパッケージ化された作品となった。ぜひヘッドホンを使ってお楽しみください。

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PROFILE

中村月子

滋賀県生まれ現在東京在住。

自分の言葉で愛を
うたい生きている

さよならとこんにちはに口ずけを
これから会うあなたにとどける
ラブソングを
そしてまたあえるあなたにも
ラブソングを

その日にしかないその日を受け取ってください

[インタヴュー] 中村月子

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