2014/04/12 20:35

名エンジニアの“最期の手紙”がハイレゾで蘇る――佐藤正治(ヒカシュー)率いるMASSA、過去作をハイレゾ・リリース

ヒカシューの佐藤正治を中心に結成された3人組、MASSAが過去2作をハイレゾ・リリース(『MASSA1(24bit/96kHz)』、『MASSAⅡ(24bit/192kHz & DSD5.6MHz dsd + mp3)』)。ダイナミックで情熱的でありながらロマンチック、ジャンルの枠に囚われないサウンドで幅広い層に支持されている彼ら。名エンジニアを迎えて制作された作品を是非ハイレゾで、音の深みも広がりもそのままのサウンドを体感してみてはいかがでしょうか。メンバー3人へのインタヴューと合わせてご堪能ください。

『MASSA1』『MASSAⅡ』をハイレゾ配信開始!

MASSA / MASSA1
空間を旅する三つの心が“MASSA”という音となった
遥かなる声、大地のリズム、彩りを操る鍵盤、空駆ける擦弦
その音は激情的で暖かく、ロマンチックでパワフル

【収録曲】
1. 歌う満月
2. I Climb Your Mountain
3. APOLOGY 2005
4. Meet Your Child
5. 風の掟

【配信価格】
alac / flac / wav(24bit/96kHz) : アルバム購入のみ 2,160円


藤井暁、オノセイゲンを迎えて制作された『MASSAⅡ』をDSDで

MASSA / MASSAⅡ
呼吸という名の振動が光の中に交差する
躍動する記憶、起動する未来
それぞれの物語は音となり溢れ出す

【収録曲】
1. ディライル―
2. 見つけた時間
3. 光る風
4. 八月の雨
5. Dance of Ratnaraj
6. Just a Little Bit Harder
7. 微風
8. 風の歌
9. Listen
10. 風のまなざし

【配信価格】
(左)
alac / flac / wav(24bit/192kHz) : アルバム購入のみ 3,240円
(右)
DSD5.6MHz dsd + mp3 : アルバム購入のみ 4,320円

INTERVIEW : MASSA

左から、細井豊、佐藤正治、太田惠資

ヒカシューのメンバーとして活躍する佐藤正治(Per / Vo)が率いるバンド、MASSAの2作品(『MASSA1』、『MASSAⅡ』)がハイレゾで解禁された。さまざまな楽器の音色を取り入れ、変拍子などの巧みなテクニックを使いながら、それでいて奇をてらった感じは一切ない。特筆すべきはDSD 5.6MHz、PCM 24bit/192kHzでリリースされる『MASSAⅡ』で、同作は生楽器の音色が最大限に活かされた、絶対にハイレゾで聴くべき1枚と言えるだろう。また、そんな『MASSAⅡ』にはもうひとつの聴きどころがある。ミックスに藤井暁(※昨年11月に急逝)、マスタリングにオノセイゲンを迎えたこの作品は、世界的に活躍する2人のエンジニアの間で交わされた、音の手紙でもあるのだ。MASSAの音楽について、ハイレゾ配信について、そして藤井暁とオノセイゲンについて、メンバーに話を訊いた。

インタヴュー & 文 : 長島大輔

やっぱり結局は自分の感性が滲み出てしまうんですよね(太田)

――MASSAの音楽って、基本的にはジャズとかラテンがルーツかなと思うのですが、ひとつのスタイルに括りきれないですよね。いろんなものに影響を受けているんだけど、それが絶妙にブレンドされているというか。率直に、MASSAの作品のベースになっている音楽ってどんなものなのでしょう?

佐藤正治(以下、佐藤) : 聴いてきたものはすべて空気と同じなので、影響は受けています。ただ大事なのは、この3人が人として集まってることです。音楽でも絵でも舞台でも、それをやる人がどのくらい魅力的かっていう部分にかかってると思うんですよね。だから、ジャンルというものに囚われないのはもちろんですし、逆にジャンルを取り払おうって気もないんですよ。僕らは音で会話をして、そこに自然と現れたものを届けたいだけなので。

細井豊(以下、細井) : たとえば『MASSAⅡ』に入っている「微風」っていう曲は、ポール・サイモンの「Night Game」の間奏にクロマチック・ハープが使われてて、「これは何だ?」って思ったところから始まってるんですよね。だから、特定のジャンルに影響を受けるというよりは、そういう些細な好奇心から曲が生まれることもあります。

太田惠資(以下、太田) : もちろんそれぞれのルーツはあると思いますが、最終的にはその人がどう感じてどう弾くかっていうことだけ。いろんな音楽を聴いてきたけど、やっぱり結局は自分の感性が滲み出てしまうんですよね。

佐藤 : 極端な話、この3人がまったく違う楽器を弾いてもいいんですよ。この楽器が必要だから誰かがいるんじゃなくて、その人がいるからこそ、それぞれの楽器が鳴っているというか。

様々な楽器を用い、ライヴは展開される

――特定のジャンルや音楽を参照するのではなくて、あくまでも自然体ということですよね。とはいえ、MASSAの音楽は変拍子が多用されていたり、アレンジにすごく力が入っていますが、そういったアイディアはどこから出てくるのですか?

佐藤 : 曲を書いたらいつの間にか変拍子になってることがあるんですよね。だからわざとらしさがないと思います。よくよく聴いてみたら4拍子じゃなかったみたいな。そういう音楽って世界中にいっぱいありますよね。僕はもちろんいろんなジャンルの音楽を聴くけど、音楽以外の音から受ける影響も大きくて。日常の中に存在してるリズムって、4拍子じゃないものが普通じゃないですか。

――なるほど。具体的に教えてもらえますか?

佐藤 : たとえばお囃子って、平気で変拍子が入ってくるんですよね。しかも、それがものすごく自然なんです。だから、自由な拍子で自分たちがいちばん気持ちいいようにやるのがいいかなって。

もっと音楽っておもしろいって思ってもらうために、なるべく生に近い音で聴いてほしいなと(佐藤)

――今回配信されるタイトルはすでにCDでリリースされているものですが、なぜあらためてハイレゾで配信することを決めたのでしょうか?

佐藤 : もともと高音質で録音しているわけで、CDは、立体ジャケットも含め、ひとつの素晴らしい作品になっていると思います。でも、CDではどうしても表現しきれない音の領域があるんですよね。音楽家として、少しでも録音現場に近い音を届けたい。やっぱり空間の広がりとか深さがぜんぜん違いますから。で、ここに広大なダイナミック・レンジを表現する方法がある。そういう音で聴いたときには、「音楽って素晴らしい! いろいろなイメージが広がる!」っていうワクワクドキドキ感は倍増すると思うんです。僕自身、圧縮音源ばかり聴いていて、音楽を聴きたい欲求がなくなっていくことを経験したことがあって。だからこそ、もっと音楽っておもしろいって思ってもらうためにも、なるべく生に近い音で聴いてほしいなと。

細井 : まあレコード世代ということもあって、やっぱり音の奥行きなんかは大事にしたいですよね。

太田 : アナログがいちばんいろんな音が出ているわけで、その波形になるべく近いものを聴くべきだとは思いますね。

佐藤 : ハイレゾだと音にとろみがあるよね。

細井 : 小さい音から大きい音まで、幅も出る。

佐藤 : 生楽器のダイナミックスはね。CDでは、入りきらないんですよ。みんなそこに詰め込むためにいろいろやっているわけだけど、詰め込めばそれだけ、世界感は失われていく。ハイレゾの場合はその面でのストレスは少ないですね。出音の微妙なタイミングまで違って聴こえるんですよ。

――タイミングまで?

佐藤 : うん。打楽器なんかは特に。波形が変われば音の飛んでくるスピードも変わるからかな、と思いましたけど。3人の繊細なタイミングのやり取りも見事に表現されてます。素晴らしい!

信じられないですね。仙人みたいな人でした(細井)

――『MASSAⅡ』は藤井暁さんという、知る人ぞ知る名エンジニア(※2013年11月、同作を手掛けた直後に急逝)が参加したと聞きました。どんな方だったんですか?

佐藤 : もともとはクラシックのエンジニアリングをやっていたそうです。半分くらいは海外で仕事をしていた人なんですよね。でも音楽が大好きで、クラシックから民族音楽、ロックまで、音楽であれば何でもいけるみたいな。

細井 : KORGのキーボードとかに収録されてるピアノ音源のサンプリングをやったりね。

佐藤 : とにかく驚くほど耳がいいし、音楽がなぜ存在するのか、優れた音楽がなぜ優れているのかっていうことを感覚的にわかっている人でした。この作品は藤井さんに録音とミックスをやってもらって、オノセイゲンさんにマスタリングをお願いしているんですけど、2人の世界的エンジニアの間で交わされた最後の手紙みたいで、ぐっとくるものがあります。セイゲンさんも、「これって僕がマスタリングすること藤井さんは知ってました?」って気にされてて。「知ってましたよ」って言ったら、「そうですか」って。すごく気合いを入れてくれたみたいです。藤井さんにとっても、セイゲンさんがマスタリングをするからには、っていう想いがあったみたいですね。「あえてセイゲンさんが手を加えるところを残してある」って言ってました。ミックス→マスタリングっていうただの作業ではなくて、たぶん僕らにはわからない音のやり取りがそこで行われていたんだろうと思います。

――『MASSAⅡ』が藤井さんの遺作になってしまったんですね。

佐藤 : おそらくそうだと思います。訃報を聴いたときは本当にショックでした。亡くなったときにTwitterで、「400歳くらいまで生きると思ってた」とか「天使みたいだった」っていうコメントを見かけましたが、本当にそういう言葉がうなずける人だったんですよね。

細井 : 信じられないですね。仙人みたいな人でした。

――浮世離れしているというか?

佐藤 : まさにそうです。真冬でも半袖だしね(笑)。人生で1回だけジャケットを着たことがあるけど、買った日にどこかに置いてきて、やっぱり俺にはいらないと思ったとか言ってたな(笑)。

太田 : 僕は藤井さんとは長い付き合いだったんですけど、「うわぁ、いい音だなぁ」って思ってブースに目をやると、藤井さんがにやっと笑ってたり(笑)。あとは変なライヴで偶然会ったりね。

――そんな人が最後に残した手紙が『MASSAⅡ』なんですね。

佐藤 : そうですね。本当に全力を注いでくれました。信じられないくらいすばらしいミックスをしてくれて、「だって音がこういうふうにしろって言ってるから」って。「いつもこういうのだと楽なんだけどなあ」なんて言ってくれましたね。そういう意味でも、絶対にハイレゾで聴いてほしい作品です。

ヒカシューの過去作をハイレゾで!

ヒカシュー / 万感

束芋とのコラボ『うらごえ』から1年半。カナダ4都市の公演後、前作同様ニューヨークで録音されたヒカシューならではの度肝を抜く歌と超絶演奏の数々。そのゴージャスは屍を飛び越えるスキル。ナボコフの蝶が舞う部屋で、インデックス・カードから生まれた激烈な音楽。ヒカシュー渾身の大傑作誕生。

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ヒカシュー / うらごえ

2011年は、ニューヨークからモスクワ、そしてシベリア・ツアーを敢行し、驚愕のオベーションを受けての帰国。日本では世代を越えたリスペクトを受け、さらに進化した現ヒカシューの音楽は、強力この上ない。 今回は、束芋によるオリジナル・ドローイングとのコラボレーションがまた豪華。ヒカシューの歌と即興で美しく煮えたぎる超絶盤が完成した!! 全13曲 全ニューヨーク録音。

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LIVE INFORMATION

2014年4月23日(水)@代官山 Simple Voice
OPEN 19:00 / START 19:30

PROFILE

MASSA

2004年より、佐藤正治のソロ・ライヴとして活動開始。このメンバー(佐藤、細井、太田)でしか創れない音の世界をもっと多くの人に、もっと知ってもらいたい。そんな思いから、2005年11月にバンドMASSAが結成された。

MASSAの特徴として、子供から、お年寄りまでと幅広いファン層がおり、ジャズ、ロック、ポップ、ジャンルや年齢の垣根を超えた音がMASSAの魅力だ。小さな公民館から、カフェ、ホール、野外ライヴまで、彼らは何処でも、その音たちを届けに行く。音は、人となり… 聞けばこの3人がどれだけ音を愛し、人を愛しているのか、その人柄に触れる事ができる。心を揺さぶる大地のリズム、彩りを操る鍵盤、空駆ける擦弦、その音は激情的で暖かく、ロマンチックでパワフル。聴く人それぞれの物語は、音となり目の前に溢れだす。

>>OFFICIAL HP

[インタヴュー] MASSA

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