2010/06/08 00:00


現在USインディー・シーンの最重要レーベルであるWoodsistから、二つの良質な作品が届いた。一つはROCKIN'ON誌で今年注目の15組に選ばれ、PITCHFORKの年間チャート20位にも輝いたREAL ESTATEのデビュー・アルバム『Real Estate』。もう一つはメンバーがWoodsistのレーベル・オーナーであり、日本のUSインディー好きからも評判の高いWoodsの超傑作『At Echo Lake』。両バンド共、新気鋭の超優良レーベルWoodsistの双璧を成す存在であり、また現在注目が高まるローファイ・ムーヴメントをど真ん中で牽引しているバンドだ。

REAL ESTATEは、ニュージャージー、ガーデン・エステート出身の4人組。今作は彼等のデビュー・フル・アルバムである。透き通る様なたゆたう音像と優しく寄り添うヴォーカル。厳選されたシンプルな楽曲を、ドリーミーかつドラマティックなバンド・アンサンブルに仕上げているのは、自らがこの時代に鳴らすべき音を理解しているから。どこか牧歌的な雰囲気の中に気怠さと狂気が入り乱れ、シニカルな詩を語りかけてくる透き通るような歌が、聴くものを桃源郷に連れて行く。

REAL ESTATE

Woodsは、USインディー・シーンの最重要レーベルのオーナーで、Not Not Funから画集もリリースしている奇才Jeremy Earlと、Christian Derockが中心となるNYのローファイ・インディー・フォーク・ロック・バンド。彼らは、傑作と誉れ高い前作『Song Of Shame』に続く超傑作『At Echo Lake』で、通算5作目にして日本盤デビューを果たす。既に耳の早いリスナーには知られている彼らだが、今作が日本デビュー盤ということもあり、今後は日本でもアメリカと同等の高い評価をされるだろう。美しく極上の幽玄ファルセット・ヴォイスとサイケデリックでフォーキーなサウンドは、前作よりもポップになりながら、ノイジーでよれたギター、シンプルなリズムと美しいメロディーで心を鷲掴みにし、聴く者をWoodsワールドにいざなう。ローファイ、サイケ・ポップ、フォークやヴァセリンズ辺りを聴く方々には、感涙の極上ミュージックなのだ。

Woods

「ローファイ」という言葉には、様々な意図があるが、前述した二つの作品は、紛れもない音を操るクリエイター達の純度の高い感性が詰まった、恐ろしくクオリティーの高い作品。今年来日したDaniel Johnstonの素晴らしいプレイには感激したものだが、アーティストがアーティストとして表現するクオリティーというのは、ローファイ・ムーヴメント然り、USインディー・シーンに渦巻くリアルな手触りを、いかにクリエイトしているかということに尽きる。既存の音楽にはない「音」を、作り手も、聴く側も渇望し探し求めている中で、今回のREAL ESTATEWoodsの二作品は、少なからずお腹を空かせたリスナー達の腹を満たしてくれるに違いない。またそんな作品群を産出するWoodsistというレーベルのこれからの動向には目が離せないのだ。(text by 内田武瑠)

アメリカン・オルタナティブの刺客達

アメリカが生んだシンガー・ソングライターの最高峰、ダニエル・ジョンストンの2006年スタジオ・アルバム。ビートルマニアである彼ならではのリスペクトっぷりが伺える「The Beatles」、孤独と絶望を痛快な曲調で歌い上げた「Lonley Song」など、44歳になってもその溢れる才能は衰えることを知りません。

現在KILL ROCK STARSの中で最もキャリアの長いバンドであるアヴァンポップバンド"DEERHOOF"! ジャキっと攻めたギターとリズムでキテレツな展開を施すバンドですが、なんといっても日本が誇る女性ボーカル「Satomi」によるメルヘンかつ魔法が使えそうな歌声がフワフワしていて最高!

大ヒット作 『Hissing Fauna, Are you the Destroyer?』で一気にインディーズ・スターダムのトップへと上り詰めたOF MONTREALのアルバムはPaste、Pitchfork、Rolling Stoneなどを含むメジャーの年間アルバムチャートで30位以上にランクインし、10万枚以上を売り上げた。1年半後、OF MONTREALが、2008年最も熱く待望されていたアルバムのひとつとして 『Skeletal Lamping』 を携え戻って来た! 米国ジョージア州アセンズ出身のサイケな音の魔術師、ケヴィン・バーンズ率いるオブ・モントリオール。97年のデビュー以来、ローファイでありながらカラフルで、奇天烈で、ダンサブルで、超ポップなサウンドで米国インディー・ポップ界を代表するといっていいほどの圧倒的な存在感を放っており、彼らに影響を受けたバンドの数は計り知れない。

来日公演も大盛況であった、Yoni Wolf/ヨニ・ウルフ率いるUSインディー界でも大人気のバンドWHY?/ワイ!の4枚目となるアルバムが完成! 1年半前にリリースされた大傑作アルバム、Pitchforkレコメンドにも選出された『Alopecia』と同時期にレコーディングされた作品。ナッシュビルでLambchopのMark Nevers (Silver Jews, Bonnie Prince Billy, Calexico)によりプレミックスされ、『Alopecia』のエンジニアEli Crewsによってミックスが施された、WHY?の作品の中でも極めてサウンドの生暖かさが残った仕上がりとなっている。

WOODS profile

Woodsistのオーナーで、Meneguarのメンバーでもあり、Not Not Funから画集もリリースしている才人、Jeremy Earlと、Christian Deroeckを中心としたNYのローファイ・インディ・フォーク・ロック/ポップ・バンド。現在は主に4人で活動している。4作目である前作『Songs Of Shame』はPITCHFORKで8.3点を獲得し、年間チャート50位に輝いた。リリースごとに知名度、人気を伸ばし、現在はローファイ・ムーヴメントの中心的バンドとしてシーンを牽引している。

REAL ESTATE profile

ニュージャージーはガーデン・ステート出身の4人組。ヴォーカル/ギターのMartin Courtneyを中心に、Ducktails, Predator Vision, The Parasailsとしても活動している才人ギタリスト、Matthew Mondanile、そして同じくPredator Visionでも活動しているAlex Bleekerがベース、Etienne Duguayがドラムを務めている。かつてはWEEZERのファーストのコピー・バンドをしていたいうユニークなエピソードを持つ。WOODSとの、ジョイント・ツアーも秋〜初冬頃に開催を計画中!!

[レヴュー] Real Estate, Woods

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