気持ちが落ち込んでいるときに、私に元気をくれるのは音楽だ。聴いているだけで幸せな気持ちになったり、笑顔になったりできる、まるで太陽のような存在。1995年に幼なじみの3人で結成され、今年で結成15年を迎えるWATER WATER CAMELが、3rdアルバム『さよならキャメルハウス』をリリースした。彼らはライブ・ハウスのみならず、お寺、学校、さらにはプラネタリウムなど、様々な場所でライブを行っている。人を元気づける力を持った、温かくて幸せな音を各地に届けている。さあ、『さよならキャメルハウス』を聴いて、ライブへ行って、元気を貰おう。みんなで幸せを分かち合おう。

インタビュー&文 : 小林美香子

INTERVIEW

—今作『さよならキャメルハウス』には、敗北と再生というテーマがあると伺いました。敗北と再生を意識したのは何故なのでしょうか?

齋藤キャメル(以下S) : そもそも今日の音楽というものは、特に敗北者の為に在るというひとつの考えが僕にはあります。ですからそういう意味では、これまでのアルバムもまた「敗北と再生を意識している」と言えます。ただ今作『さよならキャメルハウス』に限って言える事があります。それは収録されている多くの楽曲を生み出す段階の僕は、酷く疲弊し、あるいは傷ついていた、ということです。僕自身を救う為に、再びいつも笑顔で生きてゆく為に、僕はこれらの歌を生み出さなくてはならなかった。今作はそういった「生まれてきたワケ」を持つ歌が多い。ですから敗北と再生をテーマ(のようなもの)として特に意識していると言えると思います。

—レコーディングはどのようにして行われましたか?

田辺玄(以下T) : 制作開始時は、キャメルハウスでほぼすべてのレコーディングをしていましたが、間に引っ越しがあって全員バラバラの生活になったので、それ以降はそれぞれの場所で、あっちいったりこっちいったり、参加してくれたミュージシャンの家に泊まり込んで録りにいったりもしました。キャメルハウスは、6年間メンバー3人で共同生活をしていた東京郊外にあった騒がしい一軒家。ほんとにいろんな人が出入りしていて、いつも音楽に溢れていました。生活と音楽が入り乱れた不思議な空間。

—アルバム・タイトル『さよならキャメルハウス』の由来を教えて下さい。

S : メンバー3人が、6年間東京で共同生活していたんですけど、その家を誰からともなくいつのまにか「キャメルハウス」と呼ぶようになったんです。まもなくキャメルハウスでの騒がしい生活が幕を下ろそうしていた頃、今作の最後に収録されている歌「さよならキャメルハウス」を書きました。聴いてもらえれば分かると思うんですけど、とても象徴的な歌です。静かで小さな、でも強烈な力を持った歌です。それはアルバム・タイトルとしても、魔法のようにしっくりくる歌でした。

ー「運命のアラサー」では、丸の内の地名が出てきたり、OLの皆さんがコーラスに参加しています。なぜ丸の内を選んだのでしょうか?

S : なぜ丸の内かと問われると、一言で回答するのは難しい。あえて一言で答えるなら、「丸の内が好きだから」。丸の内は、目的を欠いた今日の資本主義の、大いなる茶番の、聖地であり象徴。年中リゾート感覚でフワフワ浮かれてて、スタイリッシュで、ドでかいマルゼンがあって、素敵な食事ができる街。スマートで有能で、終わりある人生を省みない雄々しいアラサーたちが、その小さな力で想像を絶する巨大な世界を動かしはじめるドラマチックな街。僕にとって丸の内は、「スキ! キライ! でもスキ!! 」的な、はがゆい特別な感情を持った街なんです。

WATER WATER CAMELのサウンドは、キャッチーで誠実で、幸せなイメージがあります。曲を作る際に意識していることはありますか?

S : 曲づくりの段階でキャッチーであることとか、幸せなイメージといったことを意識することはないです。というよりもそういう器用な曲づくりはできない。僕自身が、象徴的なパワーを持つキャッチーなフレーズが好きだし、音楽に救われたい、ハッピーにしてもらいたいと思っている。

ー前作『花がよくにあう』では打ち込みなども取り入れていましたが、今作はシンプルなバンド・アンサンブルが前面に出ています。演奏やアレンジ面に変化はありましたか?

T : 今回は生楽器の息づかいが聴こえる、隙間を感じるアルバムにしようという話はしました。特に「敗北と再生」をテーマに、という話をしたわけではないのですが、なんとなくそういった質感をイメージしながら作業したらこんな感じになりました。電子音のような打ち込みは前作よりも減っていますが、生音のエディットや打ち込みは結構使っています。何を使うのかより、どういう気持ちで音を鳴らすのか、ということが出音には大きく表れるんだなというのを改めて感じました。

ー皆さんは山梨と東京を往復して様々な活動をされていますが、山梨で活動することは、バンドにどのような影響を与えていますか?

T : 山梨でのライブはいつも音楽を始めた頃の、あのソワソワした感じを思い出させてくれます。東京がすべてじゃない、山梨がすべてでもない、音楽がすべてでもない、ほどよい規模でほどよい視点から、世の中や自分を見つめるためにとっても必要な場所です。

ー今年で結成15年を迎えられますが、ずっと続けていられる秘訣があれば教えて下さい。

S : 共生の為に誠実に努力する事。それと「どうせいつか死んじゃうわけだし」という後ろ向きな真理を前向きに忘れないこと。
須藤ヒサシ : 良い距離感とリスペクト!!
T : バンド始めた頃の胸キュンを忘れない事。

ー今後のWATER WATER CAMELの展望について教えて下さい。

S : これまで通り。正直で自由できちんと幸福でいられる音楽活動を望んでいます。

温かなうたものをレコメンド


合奏 / ハンバートハンバート
佐藤良成と佐野遊穂による男女デュオ。スコットランドのフィドラーズ・ビドを迎えてレコーディングされた今作は、9月公開の映画「プール」主題歌原曲「妙なる調べ」、小田急電鉄CM曲「待ち合わせ」を収録。ゆるやかで伸びのあるヴォーカルが心地良い一枚です。先日行われたSHIBUYA-AXでのワンマン・ライヴもソールド・アウトするなど、じわじわと人気を博しています。


夕焼け / ウミネコサウンズ
ウミネコサンライズ名義で活動してきた古里おさむが、ウミネコサウンズとして再始動第一弾としてリリースされた作品。「夕焼け」「寄り道した公園」「緑から赤へと変わった木の葉」と、日常を連想させる歌詞と、あたたかくて力強い歌声が耳に残る、ネガティブな要素が見当たらないポップ・ミュージックです。


だからゆくのさ / mojoco
園部 信教と山崎 “paul” 貴博の二人組。何といっても彼らの持ち味は、日中のあたたかさと夜中の静寂さをあわせ持つ世界観と、日常を切り取る歌と透き通った声。日々の暮らしに寄り添う、待望のファースト・アルバムです。

PROFILE

WATER WATER CAMEL
物語を綴るようなドラマチックなサウンドと曲構成。齋藤キャメル、田辺玄、須藤ヒサシの幼なじみである3人で、1995年地元山梨の中学校にて結成。東京築地本願寺などの寺院ライブや、AppleStoreでの音楽制作ワーク・ショップの他、「空中クロール」をメインに多くのイベントを主催するなど多彩な活動を展開している。レコーディング・スタジオと化した東京の一軒家で共同生活をしながら綴られたファースト・アルバム『AIRSHIP』は、宅録の未知の境地を見事に切り開いた。齋藤キャメルの自然で正直な生活の中で、理由を持って生まれてきた美しい詩とメロディ。それは半生を共に過ごす田辺と須藤によって、例外なく運命的な肉付けが施され、普遍の巨大なパワーとなっている。
WATER WATER CAMEL web : http://waterwatercamel.com/

LIVE SCHEDULE

  • 11/23(月)@新星堂 甲府駅ビル店 4F
  • 11/28(土)【CRJ-tokyo presents "SOUND SURFIN' vol.26" 】@下北沢BASEMENT BAR
  • 12/11(金)@タワーレコード新宿店 7F イベントスペース
  • 12/25(金)【星空ライブ「ほし・うた・からだ」 CAMEL&NUUと歌おう】@山梨県立科学館 プラネタリウム内
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