2021/10/29 17:00

ネットワーク・オーディオをより扱い易く、より高音質に、DELA N100

山本 : さて、そろそろオーディオの話をしましょうか。今回はDELAのミュージックサーバー(NAS)N100のSSDタイプ(2TB)を使いました。健太郎さんは普段どういうNASをお使いなんですか。

高橋 : DELAの製品も使ったことがありますよ。DELAは、OTOTOYのダウンロード・システムの開発時にわりと初期の製品を試用させていただいて。そのときはオーディオ機器とは思えないような質感の銀色の箱で、操作も小さなウィンドウで四苦八苦した覚えがあるんですが、今はデザインもオーディオ機器らしい雰囲気で、洗練されましたね。その後も他社のNASを使ったりしていたんですが、今回使わせてもらった新しいDELAは、音源を流し込こむのもすごくスムーズですし、SSDなので動作音がないのもいいですね。

DELA N100-S20B-J、ブラック・モデルの他にシルバーも

山本 : 僕は15年前くらいにLINNのKLIMAX DSというネットワーク・プレーヤーが出てすぐに飛びついたクチなんですけど。その時にはオーディオ専用NASなんてものはなくて、バッファローの汎用NASを買ってネットワーク・オーディオを始めました。ただ当時はNASに関するトラブルがすごく多くて、突然タブレットから楽曲が見えなくなったり、新しいファイルを入れるとスキャニングに一晩かかったり。わけのわからない動作をすることが多くて閉口しました。その後、2014年にDELAブランドが立ち上がり、すぐにN1AのHDD(ハードディスク)タイプを使い始めました。オーディオ用NASとして驚くべき完成度が達成されていたんです。それまでのNASのトラブルが完全に払拭されていて、何より驚いたのが電源のオンオフが安心してできるってことですね。昔のNASは電源を落とすと大変なことになったんですけど。そのあとにUSB-DACの直接接続機能が付与されて、手持ちのUSB DACにダイレクトにつないぐことができるようになった。NASがネットワーク・トランスポートになったわけです。これも驚きましたね。さらにその後何度もソフトウェア・アップデートで重ねられて、使い勝手が洗練されていって。僕にとってDELAとの出会いは、ほんとうに衝撃的でした。DELAの導入によって初めて安心してネットワーク・オーディオが楽しめるようになりましたから。その後2016年にオーディオ専業メーカーに在籍していた優秀なエンジニアがDELAに加わり、いっそう音質が磨き上げられてきたように思います。電源のノイズ対策とかが徹底されるようになって、完成度がすごく上がったという感じがします。

高橋 : 今回N100を使わせてもらいましたが、上位モデルのN10は電源ユニットが別筐体なんですよね。

山本 : そうです。N100はスイッチング電源内蔵型ですが、上位機種のN10は大きなトランスを積んだアナログ・リニア電源が別筐体になっていて70万円くらいするんですよ。でも、たしかにN10は驚くほど音が良いです。低音の伸びと厚みが断然違う。NASで音が変わるなんて……とお考えの方にぜひ聴いてほしいですね。もっとも70万円で音が良くなかったら詐欺事件ですけど(笑)。

DELA N10

上記N10の写真は左が電源部で右がヘッドユニット。下記がDELA N10の内部写真、左側が3TBのHDDを搭載したヘッドユニットで、右側の筐体が文中のアナログ・リニア電源部、筐体内部の約1/4を占めるトロイダルトランスを搭載


参考 : DELA N10詳細はコチラへ
https://www.dela-audio.com/product/n10/

高橋 : NAS周りを強化すると、低音の感じが変わりますよね。さらにネットワーク周り、LANケーブルやハブを変えるとやっぱり変わるし。

山本 : そう言うことをひとつひとつやっていくのは大変なんですけどね。ネットワークスイッチもDELAシリーズにオーディオ用に特化した良いものがあるんですけど、そういうものを導入すると、音はどんどん良くなります。ネットワーク・オーディオは上流のノイズ対策を進めていくと、明らかに音質は向上しますね。

高橋 : 山本さんクラスのオーディオになると、ハイレゾファイルを聴くためにNASなり電源なりに100万単位のお金をかけられるかもしれないですが、僕らはさすがにそこまでできない(笑)。だけどN100だったら10万円台で購入できるし、なおかつSSDで動作も速い。すごくリーズナブルだと思います。

山本 : 実はDELAシリーズの上位機種N10は、SSDではなくてあえてHDDを採用しています。DELAのエンジニアによると、振動対策とか電源強化をどんどんやっていくと、ハードディスクの方が音がよくなる可能性があるとのことです。N100の現行機種は2TのSSDですが、増設用ストレージも用意されています。同じ箱でE100というモデルがあって、これはHDDですがこれを用いて増設も可能です(E100はすでに完売)。

DELA S100
文中に出てきたDELAブランドのネットワークスイッチ、S100。PC用ネットワークスイッチに比べ、電源回路のノイズが低く抑えられているなど、オーディオに特化した設計がなされている。こちらはシルバー・モデル、ブラック・モデルもあり、下記の背面写真はブラック・モデルのもの。背面には、100Mbps ポートを4ポート、1000Mbps ポートを4ポート、SFP(光ファイバー等に対応した小型汎用)ポートを2ポート搭載。オーディオ機器は 100Mbpsへの接続を推奨している。また本機はネットワークオーディオのみならず、インターネット動画配信サービス楽しむシアターシステムでの使用も視野にいれてた設計がなされている。DELAのネットワークスイッチには上位機種、S10もある。
DELA S100

参考 : DELA S100詳細はコチラへ
https://www.dela-audio.com/product/s100/

参考 : DELA E100詳細はコチラへ(完売商品)
https://www.dela-audio.com/product/e100/

高橋 : へええ、SSDよりもHDDという物理メディアの方が究極的には音が良くなる可能性があるって、オーディオは不思議ですねえ。僕のNASの使い方は、仕事部屋では目の前にPCがあって、RoonやAudirvanaといったアプリケーションでストリーミングを聴くか、自分のNASに入っている音楽を聴くか、という場合が多いんですけど、NAS自体は遠く離れたリビングにあるんです。仕事場ではネットワークにつないでいるPCオーディオ経由、リビングに移るとNASの中身をタブレッドで覗いて直接操作して聴くっていうライフスタイルです。

山本 : リビングでは、NASのUSB出力をDACに直接入力しているということですね。。

高橋 : そうです、DACは各部屋にあって、それぞれアンプとスピーカーに繋がっている。NAS導入のメリットは、どの部屋でもすべてのコレクションに簡単にアクセスできることですよね。リビングではPCを介さず、直接タブレットとかで操作できるのも快適です。

山本 : 僕はリスニングルームでパソコンを開くのが億劫なので、DELAのUSB DAC接続機能を利用しています。

高橋 : デジタル・オーディオを楽しむライフスタイルって色々だと思うんですけど。N100みたいな製品が家の真ん中に一台あることでいろんな楽しみ方ができると思います。それからDELAにはハーフサイズのディスク・リッピング用ドライヴが用意されていますね。

山本 : ええ、D100というモデル。DELA独自の基板が使用されており、DELAで使ってもPCで使っても、音もすごくいいです。

高橋: OTOTOYみたいなところでハイレゾを購入する人は、1台は持っているといいと思います。

DELA D100

DELAシリーズの光学ドライブ、USB接続でN100などのDELAシリーズのミュージック・ライブラリーに直接接続でのリッピングも、PCへの接続ももちろん可能。
参考 : DELAシリーズの光学ディスク・ドライブ・シリーズの詳細はコチラへ
https://www.dela-audio.com/product/opticaldiskdrive/

編集注 : OTOTOYにはDELAシリーズにアカウントを登録すると購入音源を自動的に直接ダウンロードできる便利な機能もあります。

フィル・ラモーン、アナログ時代の代表作

高橋 : さて、“名盤”の方に戻ると、A&Rスタジオは部屋の鳴りがものすごくいいというイメージがあるんですが、でも、当時の写真見ると内部はそっけない造りで、特に豪華なわけではないんですよね。

山本 : 天井が高いのがいいんですかね?

高橋 : それもあると思うんですけど、ビルの内部ですから、それほど特徴的ってわけでもない。

山本 : あとフィル・ラモーンと言えばCDに取り組むのがすごく早かったんですよね。

高橋 : そうだそうだ。最初にソニーがCDにした作品は、フィル・ラモーンが手がけたビリー・ジョエルで。さきほどの話に戻りますが、静けさにこだわる彼がデジタルに夢を見たのは当然なんです。

山本 : そうか、SN比指向ですもんね。

高橋 : デジタルが好きなエンジニアって、「アナログ・テープなんて入れるレベルで音が変わっちゃうじゃん」という考えなんです。逆にその音質変化が好きでアナログにこだわる人もいますが。ただ、デジタルのPCMも、録音レベルが低いと音のコシがなくなったりするんですよ。その点、DSDはレベルによって、ほとんど音が変わらないので、理想的な録音方法だと個人的には考えています。昔、エンジニアの吉田保さんに話を聞いたときに、吉田さんも「アナログなんて嫌い。音が変わらないデジタルが好き」って言ってました。吉田さんは大瀧(詠一)さんとやっていて、大瀧さんはフィル・スペクターとかのアナログ・サウンドが好きなんだけど、吉田保さんは全然そうじゃなくて、むしろ(山下)達郎さんのアルバムみたいな抜けのいい音像、左右にも前後にも広がりのある透明感のあるサウンドが好きだったんですよね。多分フィル・ラモーンもそういうタイプだと思います。だからドルビーもデジタルも早かった。

山本 : 静けさを求めるエンジニアだったからこその選択。

高橋 : とにかくフィル・ラモーンのアナログ時代の代表作といったら、ポール・サイモンの『Still Crazy~』だと思います。

山本 : ポール・サイモンのソロの中でもこれが一番売れたんでしたっけ。

高橋 : 売上げで行ったら、南アフリカへの旅から生まれた1986年の『Graceland』もすごい売れました。でも、ニューヨーカー育ちのポール・サイモンらしい、文学とジャズの香りを持つ代表作といったら、このアルバムになると思います。

『Still Crazy After All These Years』24bit/192kHzハイレゾ版配信中

今回の機材──DELA N100

今回はDELAのミュージック・ライブラリー、N100を中心にしたハイレゾ・オーディオ環境で試聴しました。ミュージックライブラリーとは、ネットワーク・オーディオ・システムの中で楽曲の保存・管理、そしてネットワーク配信、再生機能を備えた、既存の枠を超えた新しい製品のカテゴリー。ネットワーク・オーディオ環境での音源データの保存・管理には、いわゆる汎用のNASでの運用も可能だが、DELAのミュージック・ライブラリー・シリーズは根底の設計思想からオーディオ志向で高音質化が計られ、そして機能面においても音楽再生のために特化した機能の実装や設定の面などでの扱いやすさを追求している。

具体的な機能面では、USB-DACとの直接接続での再生やWEBダウンロード・ストア(OTOTOYも対応)からの直接のダウンロード、ミュージックライブラリーに取り込むためにはUSB接続のディスク・ドライブをミュージックライブラリーに直接接続することでPCを介さず直接取り込み可能(タイトルなどのタグ情報もインターネットから直接取り込んでくれる)など、また機器上のウィンドウの操作はすべてスマホやPCからも可能となっており、高音質化はもちろんのこと、さまざまな機能でネットワーク・オーディオの運用を手軽にもしてもくれる逸品だ。

DELAのミュージック・ライブラリー解説動画


今回使用したのは、2021年春にリリースされたエントリーレンジのミュージックライブラリー、N100 SSDモデル、その新たなブラック・モデル、N100-S20B-J(写真は記事中に)。新開発の鋼板製リジッド・マウンター(1.6mm 厚)を介し、新規選定された2.5インチのカスタム仕様の2TB SSDドライブを一基搭載。大容量とSSD搭載を同時に実現。またソフトウェアは4.2を搭載し、上記の定評ある機能に加えて最新のDAC製品へのDSDマーカーレス再生にも対応。また同モデルは、CDドライブD100と同一のデザイン・サイズに機能が凝縮されている。同モデルのシルバーのN100-S20-Jがある(S20へのモデル・チェンジに伴って生産が終了し在庫僅少状態だが、HDD 1TBのモデル、N100-H10-Jなどもある)。 また同ミュージックライブラリーにはフラッグシップ・モデル、N1Z、同シリーズの往年のモデルを受け継ぐフルサイズモデル、N1A、そして文中にも出てくる、リニア電源ユニットを備えた、新たな設計思想のハーフ・サイズ・モデル、N10などのラインナップがある。

また同ブランドからは、上記のリッピング時に使用できる高品位な光ディスクドライブ(D10、D100)、そしてミュージックライブラリーを中心に、同じく音質に特化した設計思想によって製作された、LANケーブルやネットワーク・スイッチなども用意されており、ネットワーク機器の老舗メルコが培ってきた技術の上に、本気でオーディオの高音質志向を追求し、ネットワーク・オーディオ全体を音質面から構築するという、そんなブランドの志向がうかがえる商品が多数用意されている。(編集部)

その他、N100ならびにDELAブランドの製品の詳細は下記、ブランド公式ページにて
https://www.dela-audio.com/

ミュージック・ライブラリー
N100-S20B-J
価格 税込 198,000 円(参考税別価格 180,000 円)
おもな仕様
容量 : SSD 2TB x 1
Gigabit Ethernet 対応デュアルLANポート
PCファイル共有機能
Twonky Server 8.5によるDLNA/UPnP準拠メディアサーバー機能
USB-DAC接続機能(マーカーレスDSD再生対応)
e-onkyo music/mora/ototoy対応楽曲自動ダウンロード機能
Gracenote対応CDリッピング機能
バックアップ・復元機能(N1、N10互換)
幅215mm、高さ61mm、奥行269mm
本体重量約3kg

『音の良いロック名盤はコレだ!』過去回

第1回ニール・ヤング『ハーヴェスト』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第2回ジャクソン・ブラウン『Late For The Sky』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

著者プロフィール

高橋健太郎

文章を書いたり、音楽を作ったり。レーベル&スタジオ、Memory Lab主宰。著書に『ヘッドフォン・ガール』(2015)『スタジオの音が聴こえる』(2014)、『ポップミュージックのゆくえ〜音楽の未来に蘇るもの』(2010)。

山本浩司

月刊「HiVi」季刊「ホームシアター」(ともにステレオサウンド社刊)の編集長を経て2006年、フリーランスのオーディオ評論家に。自室ではオクターブ(ドイツ)のプリJubilee Preと管球式パワーアンプMRE220の組合せで38cmウーファーを搭載したJBL(米国)のホーン型スピーカーK2S9900を鳴らしている。ハイレゾファイル再生はルーミンのネットワークトランスポートとソウルノートS-3Ver2、またはコードDAVEの組合せで。アナログプレーヤーはリンKLIMAX LP12を愛用中。選曲・監修したSACDに『東京・青山 骨董通りの思い出』(ステレオサウンド社)がある。

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