地獄を突き抜け、天国へと駆け上がるーーMO’SOME TONEBENDERが今年2作目となるアルバムをリリース
MO’SOME TONEBENDERが前作『Rise from HELL』、通称「地獄盤」から4ヶ月振りとなる対作品、『Ride into HEAVEN』をリリース。前作がドロドロとしたガレージ、ハードコアなサウンドだったのに対し、エレクトロでかつポップな仕上がりに。天国から地獄。この振れ幅を乗りこなしてしまうのはモーサム以外にはありえないだろう。前回は百々和宏にインタヴューを行ったが、今回は藤田勇、武井靖典の2人に「地獄盤」「天国盤」、そしてこれからを語ってもらった。
MO’SOME TONEBENDER / Ride Into HEAVEN
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / MP3 : 単曲 205円(税込) / まとめ購入 1543円(税込)
【Track List】
01. long long long / 02. nuts / 03.wild fancy summer / 04. sparkle music / 05. SPACE KABUKICHO BUDDHA / 06. hit parade / 07. NAKAYOSHI 11 / 08. Kick Out ELVIS
INTERVIEW : MO’SOME TONEBENDER
UK PROJECTへと移籍したMO’SOME TONEBENDERから、地獄盤こと『Rise from HELL』に続く今年2作目のアルバム、天国盤こと『Ride into HEAVEN』が到着した。ハードコア・パンク~オルタナ色の強かった前作に対し、今回はエレクトロニックかつサイケデリックな楽曲が集められ、文字通り天国へと駆け上がっていくような、圧倒的な高揚感を感じられる作品に仕上がっている。そこで今回は、前作リリース時の百々和宏のインタヴューに続いて、藤田勇と武井靖典へのインタヴューを実施。メディアへの露出はあまり多くない2人だが、百々と共にソング・ライティングの中軸を担う藤田はもちろん、近年は創作面においても貢献度が高まっている武井の話をぜひ聞いてみたかったし、何よりモーサムという特異な個の集合体を語るにあたっては、やはり3人それぞれと話をする必要がある。前回の百々インタヴューと併せて読むことで、現在のバンドのモードを感じてみてほしい。
インタヴュー&文 : 金子厚武
写真 : 岡田 貴之
むしろダサいって感じるものの方が熱いって思ったりもする
――まずは『Rise from HELL』の取材で百々さんにしたのと同様の質問をさせてください。2011年にベスト盤が出て、その翌年から百々さんはgeek sleep sheepの活動が始まり、ソロ・アルバムのリリースがあり、一方で勇さんはART-SCHOOLとしての活動が始まりました。あの頃から少しずつ勇さんや武井さんの中でもモーサムのあり方が変わってきたのかなと思うのですが、実際いかがでしょうか?
藤田勇(以下、藤田) : 基本的にはずっと何も変わってないですけどね。みんな昔からバラバラなんで、百々がソロやったりギークやったりしてるのも、「だから何?」って感じだし、僕がアートをやってるのも、なりゆきっていうか。ただ、UK PROJECTに来たときには、「ちょっと頑張んなきゃな」って気持ちにはなりましたけどね(笑)。他の2人がどう思ってるかは知らないですけど、今までは「楽しかったらいいか」ってとこが強くて、今もそういう部分はあるけど… バンドを続けるのって、別に楽しいことじゃないですからね。
武井靖典(以下、武井) : バンドの動き方とかは、キビキビ動くようになった気がします。前よりも目の前にあるものがクリアになった気がして、今はどっちかっていうとメンバー主体で見れてるんじゃないかなって。環境が変わって、スタッフのみなさんも変わって、また一から関係を作っていくような感じだから、お互いわかんない部分をそのときそのとき話しながらやってて、その中で改めてバンドの向かっていく先みたいなものを考えたりはしました。
藤田 : まあ、そのときそのときで考え方変わっちゃうから、「頑張んなきゃな」って思った次の日に、「もう解散したい」とか思ったりもするけど、結局ダラダラやってる(笑)。何でしょうね…。 ちょっと他のバンドとは違うバンドのやり方をしているような気はしますけどね。ホントにみんなバラバラなんですけど、ちゃんとアルバムが作れるって不思議だなって(笑)。「またできちゃった」みたいなところもありますけど。
――だとすると、今モーサムを続けているモチベーションはどこから生まれているのでしょうか?
藤田 : ときどきですけど、「最高だなあ」って思える瞬間があるから続けていけてるんだろうなとは思います。「めっちゃイケてるわ」って感じる瞬間がやっぱりあるんで。
武井 : ライヴにしろレコーディングにしろ、普通に波があって、いいときも悪いときも。割合で言うと、何となく悪いときの方が多い気がしますけど、でもいいときはやっぱり楽しいなって思うんですよね。もちろん、「やらかした!」ってときもある(笑)。でも、それは営みみたいなもんですからね。山があれば谷もあるさっていう。
――では、アルバムについて訊かせてください。これも改めての話になりますが、アルバムを2枚に分けてリリースする意図に関してはどうお考えですか?
藤田 : 全部一緒に同じレコーディング期間中に録ってて、「これは地獄用、これは天国用」みたいなのは後で考えたことなので。まあ、結局「どっちもあるよ」ってことですよね(笑)。今までは全部を一枚のアルバムに入れてたけど、分けることによって、いろんな表情があるっていうことが伝わりやすくなるかなって。
――ハードコア・パンク的な側面が強かった『Rise from HELL』に対して、『Ride into HEAVEN』はよりエレクトロニックで、サイケデリックな側面が強く押し出された作品だと言っていいと思います。中でも冒頭の2曲、「long long long」と「nuts」が象徴的なように、生演奏とエレクトロニクスを融合させて、高揚感のある楽曲を作るというのが、今も勇さんの大きな関心事項だと言えるのでしょうか?
藤田 : 昔に比べると、そういう考え方はだいぶ減りましたね。もう何でもいいとは思ってて、もちろん自分の意識してないところで、今流行ってる音楽だとか、そういうのは影響してるのかもしれないけど、昔ほどは考えてないっていうか、あんまり勉強はしなくなったかな(笑)。
――「ダンス・ミュージックを取り入れよう」みたいな感じではないと。
藤田 : うん、「新しいものをどんどん入れる」みたいなのは自分の中では終わってて、ある程度やりたいと思ったらどうやればいいかわかってきちゃってるし、新しいとか古いとかはどうでもいいと思ってて、むしろダサいって感じるものの方が熱いって思ったりもするし、だからあんまり意識はしなくなりましたね。
――「EDMをやってみよう」とかではないってことですよね。自然とそういう時代感みたいな部分は入ってきているのかもしれないけど。
藤田 : モーサムがEDMやったらうけるとは思いますけどね(笑)。ただ今回の2枚に関しては、もうモーサムが持ってるものをより極端にした感じですかね。
結局、爆音でドーンとやって、それで鳥肌立つ感じが一番好きなのかなって
――「モーサムと言えばライヴ」という側面もありますし、ここ数年ずっと「ライヴの時代」と言われる中で、ライヴを意識して曲を作ったような部分もありますか?
藤田 : ありますね。やっぱり、ライヴでできる曲をアルバムに入れるべきだろうって気持ちにはなってて、「ライヴでやらない曲を何でアルバムに入れるの?」って思います。前の『Baseball Bat Tenderness』の頃からそういう意識は強かったかも。
――武井さんはここ数年でライヴへの意識が変わったりしましたか?
武井 : いや、ライヴはいつも全力全開で、「やったれ!」っていう(笑)。
――近年はますます演出がド派手になっていますが、それに関しては?
武井 : 一時期いろいろやり過ぎて、とっ散らかってんじゃねえかって気もして。やっぱり、演奏とか歌をステージの上でワッとやって、それでお客さんが熱くなってくれるのが一番だから、そこを改めて意識するようにはなったかな。俺のオンステージ的なところもありつつ、より良いステージにするにはってとこですね。
――勇さんはいかがですか? ライヴに対する意識の変化。
藤田 : 昔の方が頑固だったから、自分でセットリストを考えて、それをいじられるのがすごく嫌だったりしたんですけど、今はみんなの意見を聞けるようにはなってきてて(笑)、その上でまとめる感じになってきてるかな。みんなそれなりに自由に言ってくるようになってきて… 前は俺が「言っても変えない」ってムードを出してたのかもしれないですけど(笑)。
――武井さんから見ていかがですか? 勇さんが変わったのか、それとも3人の関係性が変わったのか?
武井 : まあ、丸くなったとは思いますけどね。昔はホントにぶつかって、戦ってきたようなところがあるけど、だんだん軋轢は起こさないように。言い方が難しいけど、いろいろすったもんだを経て、距離感みたいなのは上手く取れるようになったのかなって。もうちょっとで20年になろうかっていうぐらい活動してるわけですからね。
――曲作りに関しても、徐々に一人一人の立ち位置ができていった感じがありますよね。今回の武井さんの曲で言うと、『Rise from HELL』に入っていた「カルチャー」とか「イミテイションシティ」が新鮮かつ印象的でした。
武井 : アレンジや組み立てに関しては投げた部分もあって、例えば、「カルチャー」の歌というかラップというか、あれは百々が考えて来てくれて、「ちょっとやってみていい?」ってやったら、「かっこいいね」っていう。最初の方に勇の家でネタ出し大会みたいなのをやって、そのときに出したネタをいろいろアレンジしていった感じです。
――武井さんはリスナーとしての自分の中での流行りが楽曲にアウトプットされたりするのでしょうか?
武井 : 俺の場合は閃きっていうか、思いつきでやっちゃうところがあって、「カルチャー」のベースラインとかも、テレビ見てて、「それ違うんじゃね?」って思って、「違うんじゃね? 違うんじゃね? 違うんじゃね?」って繰り返してたら、「これベースラインにできるな」って思ったり(笑)。
藤田 : その「違うんじゃね?」をそのままベースラインにすればよかった(笑)。
――勇さんはいかがですか? さきほど「勉強はもうしてない」という話でしたが、リスナーとしてのインプットは自然にあるのかなって。
藤田 : いっぱいあるとは思うんですけど、でも最近はそんなに聴いてないかな… それよりも「モーサムってどんなバンド?」っていうのを意識するようにはなりました。前はそんなの関係ないって感じだったんですけど。
――それって、「最終的にはロック・バンド」みたいな部分でしょうか?
藤田 : そうですね… 結局、爆音でドーンとやって、それで鳥肌立つ感じが一番好きなのかなって。僕的には、実はそういう曲を作るのって結構苦手だったりもしたんですけど。
――シンプルなロックンロール系の曲は、百々さんの印象がありますね。
藤田 : そうですよね。だから、地獄盤に入ってる曲なんかは、結構そっちを意識したというか、バンドっぽさみたいな部分を改めて意識したりはしましたね。
――ちなみに、今回の作品で言うと、ファンキーなリフものの「sparkle music」だったり、クラウト・ロック調の「NAKAYOSHI 11」だったり、やっぱり反復ものってモーサムの特徴のひとつだなって思ったんですけど、こういう曲は誰の趣向性が強いとかってあるんですか?
藤田 : もともと好きなんですよね。フレーズがかっこよかったら、それでオッケーみたいなところがあるから。素敵なコード進行とかって、曲作ってるときは考えますけど、普段音楽聴いてるときはあんまり意識しないじゃないですか? でも、フレーズがかっこいいと、普通に聴いててもガツンとくるから…。 そういうことになっちゃいますよね(笑)。
――歌詞についても訊かせてください。かつてのモーサムの歌詞の中には、百々さんのパーソナルが含まれているときもありましたが、ソロがスタートしたこともあり、今回のモーサムに関してはとにかく幼稚に、真面目にならないように歌詞を書いたとおっしゃっていました。そう考えると、今のモーサムでパーソナルが反映されているのは、むしろ武井さんの歌詞なんじゃないかと思って、ラストの「Kick Out ELVIS」とかは、そういう感じがしたんですよね。まさに「七転び八起き」で、またここから始まっていくっていう。
武井 : そうですね。あの曲は半分実体験に基づいてるんで。まあ、何事もトライ&エラーっていうのはありますからね。それを日々繰り返すっていう、当たり前な感じですけど、でも希望は持ちたいなって。
――ちなみに、『Rise from HELL』も『Ride into HEAVEN』もラストが武井さんのヴォーカル曲っていうのは自然に決まったことなんですか?
藤田 : THE BLUE HEATRSのアルバムも、最後がマーシーの曲だったりするじゃないですか? ニューロティカの最後も修豚だったりする、あの感じですね(笑)。
――なるほど(笑)。では最後に改めて、今回の2作品を踏まえて、今年下半期のライヴがどんなものになっていきそうかを話していただけますか?
武井 : 今地獄盤のツアーをやってて、非常に肉体的というか、バンドが塊でドカッとくるような曲が多いから、そういう部分をどんどん出せたらいいなって思います。熱がステージから客席にダーッと飛び出すような感じになったらいいですね。
藤田 : 天国盤の曲もすでにやってたりするんですけど、シンセが入ってるような曲でも、できるだけ生の感じっていうか、打ち込みで作った曲でも、再生ボタンを押してただそれに合わせて演奏するようなことはしたくなくて、ライヴはライヴって感じですね。CDでもバンド感は意識したんですけど、でもライヴはやっぱり別もので、作った音源をライヴでどう表現するかっていうのは常に考えながらやってるから、ライヴ見に来た人に「やっぱライヴだね」って思ってもらいたいというかね。曲によっては生演奏ほとんどない曲もあったりするけど、そういう曲もモーサムなりに、肉体的な感じでどんどん消化して行けてるんじゃないかとは思います。よりバンドっぽい感じになっていくんじゃないかな。
前作『Rise from HELL』も好評配信中!
MO'SOME TONEBENDERが2015年春夏に連続リリースする天国、地獄アルバムの”地獄盤”。モーサムの攻撃性、獰猛性はそのままに、聴くたびに音量が上がり、テンションも上がっていく、最狂のロックンロールを響かせる。初期のモーサムを彷彿とさせるヘヴィなハードコアやガレージロックを中心としたイーヴィルな一枚。
RECOMMEND
3ピースのライヴ・バンドとして爆発力を増したThe cold tommy。Vo.研井が吐き出す暗号的なワードは、ギラついたサウンドに呼応し、あらゆる感情を縦横無尽にかき乱す。2013年に2枚のミニ・アルバムを、2014年にはシングル1枚、アルバム1枚をタワーレコードのレーベル「SONIC ONE」よりリリース。近年リリースを立て続けにおこなってきた彼等。メンバーのスカパラ好きが講じて、遂に東京スカパラダイスオーケストラ主宰のJUSTA RECORDからメジャー・デビュー!
壊れかけのテープレコーダーズ / Broken World & Pray The Rock'n Roll
2007年始動期より常に「原〈proto〉ロック」を求め奏で続けてきた不動の4人によるロック・バンド、壊れかけのテープレコーダーズ、2年ぶり満を持してのフル・アルバム4作目。つとに知られた完全独自のサウンドスケープはより一層強固に磨きをかけられ、ロックの大いなる歴史の中に自らをデザインした強い作品となった。
>>壊れかけのテープレコーダーズ小森清貴×MO'SOME TONEBENDER百々和宏の対談はこちら
LIVE INFORMATION
「Ride into HEAVEN」発売記念インストアライブ ~トンデル天国~
2015年8月30日(日)@タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIO
Ride into HEAVEN TOUR ~天国に一番近いGIG~
2015年10月9日(金)@千葉LOOK
2015年10月12日(月・祝)@京都磔磔
2015年10月16日(金)@仙台PARK SQUARE
2015年10月17日(土)@盛岡CLUB CHANGE
2015年10月25日(土)@札幌ベッシーホール
2015年10月30日(金)@金沢VanVan V4
2015年11月1日(日)@広島4.14
2015年11月3日(火・祝)@別府Copper Raven
2015年11月4日(水)@福岡THE Voodoo Lounge
2015年11月6日(金)@梅田シャングリラ
2015年11月7日(土)@名古屋CLUB UP SET
2015年11月15日(日)@東京キネマ倶楽部
UKFC on the Road 2015
2015年8月18日(火)@新木場 STUDIO COAST
BAYCAMP 2015
2015年9月5日(土)@神奈川県川崎市東扇島東公園
LIQUIDROOM 11th ANNIVERSARY 『9mm Parabellum Bullet × MO'SOME TONEBENDER』
2015年9月17日(木)@恵比寿LIQUID ROOM
PROFILE
MO’SOME TONEBENDER
MO'SOME TONEBENDERというバンド名は、百々(モー)と藤田勇(サム)の名前を合わせて友人が名づけた。後に百々がTONEBENDERを語尾に付加し完成されたもの。1997年に福岡県にて結成。2001年、メジャーデビュー。その後、フジロックフェスティバル、ロックインジャパン等の大型フェスを経験。ロックンロール、ガレージパンク、サイケデリック~ダンスまで、様々なジャンルを飲み込み、実験的な試みを繰り返す。