2009/12/06 00:00

現在、私は大学三年生で、作曲研究室というゼミに所属しております。我が師匠である教授は、Macintoshを駆使し、プログラミングした演奏装置でインスタレーションを行ったり、斬新な編成や配置でオーケストレーションをしたり、古典の名曲をサンプリングして自分の楽曲に用いたり・・・ と、現代では一般的になった音楽の技法をかなり初期段階から行ってきた、言わば先駆者の一人なのです。石の音をそのまま出す装置を博物館に展示したり、ウインド・マシーンという風の音を出す機械をオーケストラで使ったり、フルートと日本舞踊をコラボレーションしてドイツの国際音楽祭で披露したり、齢61にして非常に精力的に創作しております。師匠の用いる道具は、時には日本古来の楽器を、またある時は完全にエレクトロニックなものをと、古代と現代を行ったり来たりします。私は師匠の作品を観るにつけ、音楽の普遍性というものは変わらないということを痛感させられております。「価値観は時代の潮流によって変わります。変わらないもの、つまり普遍性という物差しに因って、自然淘汰され往くものと、そうでないものに分かれるのですね。」と質問したら、教授が「だからJ-POPは消えるのです。」と教唆して下さいました。だいぶ遠回りしましたが、私は、加藤さんの創り出す音楽にも、この「自然淘汰されない、されるべきではない性質」を感じているのです。

勿論、サックスの演奏も技術、表現力、共に類い稀なる才能を有しておられます。初めて演奏を聴いたとき、最も感動したのは強弱の付け方です。音楽には音の高さ、長さ、強弱という三つの要素が存在します。楽譜には、例えば、エスプレッシーヴォ、カンタービレ、ドルチェやアパッショナート等々、沢山の表現記号が登場します。しかし、奏者が技術的につける変化は、結局のところ、長さや強弱などの変化に尽きるのです。

サックスは、クラシックでは滅多には使用されない楽器ではありますが、私は長年の経験上、数人のサックス奏者の演奏を聞いて参りました。共演して頂いた方々には甚だ失礼なのですが、どの奏者よりも加藤さんの演奏は主体的で、意図が明確に伝わる演奏なのです。時に激しく畳み掛けるように、時に物憂げなため息のように・・・ 加藤さんは、まるで自身の精神を愛器と一体化させるようにして音を操ります。バイオリンは、最も人間の肉声に近い楽器だと言われます。しかし、残念なことに、私は自分のバイオリンよりは加藤さんのサックスのほうが数倍肉声に近いと思います。まったく耳に違和感の無い音楽なのです。それ程迄に、加藤さんのサックスは聴衆を魅了して止まないのです。

更に素晴らしい事に、加藤さんの演奏は、共演者を食ってしまうことも無く、且つ自らも異彩を放ってしまうという、エンタテイナーとしてはこの上ない性分を持ち合わせているのです。これは彼と話をしてみれば直ぐに分かります。品の良い物腰、決して出過ぎない姿勢、少年のような微笑、自然に暖かい言葉選び・・・ どれも私には無いもので敬服するばかりです。至極当たり前のことで忘れてしまいがちなのが、音楽というものがその人の人間性によって、成るべくして成っているということです。故に、彼と共演を願うアーティストが後を絶たないのも無理は無いのでしょう。

さて、音楽を文字で語ることを最も嫌う私が、だーいぶ駄文を垂れ流したところで、実際の演奏に勝るものではありません。皆様に朗報です。本日の主役の加藤雄一郎さんのサックスを、リアルに体験できる機会のご案内です。僭越ながら、私もバイオリンにて共演させて頂きます。場所は福島市大町AS SOON AS。先日、オープン19周年を迎えたお店です。素晴らしく雰囲気の良い店内、オーナー、お客さん、DJ陣に囲まれ、師走の忙しさをサックスの音色で洗い流してみませんか。2ドリンク1500円という破格にオーナーの心意気を感じます。

【independant vol.126】

2009/12/19(土)@AS SOON AS
Start 22:00〜 / Door 1,500yen(2drink)

SPECIAL LIVE : 加藤雄一郎(sax ,electronics)featuring "AYAPONGO"(violin)
DJ'S : BRADLEY SCOTT(PULL、independant) / URI(FLIP COLLET、F.H.C.) / sikaMadness(independant ,Soul Madness) / ABE-K(independant)

info : AS SOON AS(024-524-0750)
http://www.swism.com/as_as/

東京近郊の人のために、加藤さんのサックスの聞ける機会をチェックして頂くべく、ご自身や関連するアーティストのURLを掲載しておきます。直近のものですと、Superfly 初の武道館公演、【Superfly 2009 Dancing at Budokan!! 】なんてどデカいステージも踏まれるようです。12月14日のSuperfly武道館の後が私と福島で・・・ 恐縮です。

加藤雄一郎 Kato yuichiro :
http://you-kt.jugem.jp/
http://www.myspace.com/yuichirokatosax

毎度のことながら、長文失礼致しました。皆様にとって、2010年が素晴らしい年であるよう、心よりお祈り申し上げ、レポートを閉じさせて頂きます。最後までご拝読ありがとう御座いました。よいお年を!

PROFILE

千葉あやa.k.a あやぽんご。9歳からバイオリンを始める。様々なオーケストラやバンドで演奏活動を努める傍ら、地元のオーケストラで子供たちへの指導も行っている。バロックからテクノまで、頼まれたら如何なる演奏も断らない。オーケストラ歴15年、社会人歴5年、バンド歴5年、主婦歴4年、大学生歴3年、人間歴23年の女子。好きな言葉は『民度高い』。『普通に暮らすとロハスになってしまう町』福島で、元気に活動中。趣味は釣りと山菜採り。

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