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2019年04月23日18時00分

 
君島大空 1st EP発売記念夜会 『午後の反射光』 ―OTOTOYライヴレポ
 

2019年4月19日、下北沢THREEにて、君島大空 1st EP発売記念夜会『午後の反射光』が開催された。

THREEのキャパは170名。文字通りフロアは立錐の余地もない状態だが、それでも、どうしてこの最高なライブをこれだけの人しかみていないのか? そんな、いたたれまれないような感情が湧き上がるくらい、そこは音楽の素晴らしさに満ちた空間だった。その空気をすこしでも伝えられたらと願い、ライヴの模様をレポートする。

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君島大空。高井息吹と眠る星座のギタリストやタグチハナなど多数のアーティストのサポートとして活動する一方、SoundCloudに自作多重録音作品を発表し、また最近ではsora tob sakanaへの楽曲提供など様々な分野で活動中の音楽家。彼が今年の3月13日にリリースしたファーストEP『午後の反射光』がリスナーに与えた驚きと衝撃は、いまだ記憶に新しい。そのEPのリリースイベントとなる今回の「夜会」は、早々にチケットもソールドアウト。制服からスーツ姿まで多様な客で埋まる会場は、開場直後から期待にあふれていた。

石原純平のDJ、ゲストアクトの宗藤竜太を経て、バンド機材が所狭しと置かれているステージに、君島がひとりであらわれる。椅子に座り、傍らの機材に触れると、サウンドチェックと音楽との切れ目が曖昧でもあるような音が会場を満たしていく。

つづけてガットギターを手にし、弾き語りがはじまる。EPでも垣間見えたウイスパー・ヴォイスと静謐なギター。ギターから作られる音がとても美しい。そして単に美しいだけではなく、力強さも徐々に顔をあらわす。君島のギターは、ガットも(後半でプレイされた)エレクトリックも際立って良い。

弾き語りで唄う君島は俯きがちで、閉じた眼も髪であまりよく見えない。が、たまに見開かれる眼が前髪の隙間から垣間見える。その瞬間の表情はとても印象的だ。音も、演者としての佇まいも、透明な風景の中に光を放つ固体が一瞬あらわれては消えていく、そんな印象を抱かせる。

EPと同じ日に楽曲提供作品もリリースされた嬉しさを語り、sora tob sakana 『World Fragment Tour』収録の「燃えない呪文」(君島、作詞作曲編曲)を弾き語りで歌う。sora tob sakanaの原曲と比べ、より清冽なギターアレンジとヴォーカルがとても印象的だった。

ここでギターをいったん置き、音源からのトラックをバックに2曲。“うるさい曲をやろうと思います”といって歌われた「鬼壓床」は、昨年Ano(t)raksからリリースされたコンピレーション『Room Service Vol.1』に収録されている楽曲だ(ちなみに鬼壓床は中国語で金縛りのことらしい)。それまでの静謐さと、「うるさい」と表現された熱さと、アヴァンギャルドとが同居するこの曲で、君島はマイクをスタンドから外し、この日唯一ハンドマイクで歌う(着席のまま)。ヴォーカルには力強さが加わり、身体の動きも増していく。後から思えば、これは、後半のバンドセットへと繋がる光景だったのだ。

ふたたびガットギターを手にして2曲。EPのタイトルともなっている「午後の反射光」が、ここで披露される。このあとにバンドセットがあることを紹介しかけたり、やっぱりやめたり、というMCもありながら、弾き語りパートは終了。君島もいったんステージから下がる。

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君島のMCは、彼の音楽(のある一面)と同じ囁くような穏やかな語り口で、とても誠実なものだ。なぜかこの日のMCでは、しきりに客の心配をしていた。具合がわるくなったら遠慮なく言ってくださいとか、だいじょうぶですか?とか、お客さんどうしで喧嘩してないですか?とか(なぜ喧嘩の心配を?、笑)。人がパンパンだったのは確かなので、心遣いだったのか、それとも本気で案じていたのか……

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後半は、事前に公表されていたとおりのバンドセット・パートとなる。バンドメンバーは、Gt. 西田修大(中村佳穂BAND、ex-吉田ヨウヘイgroup)、Ba. 新井和輝(King Gnu)、Dr. 石若駿(CRCK/LCKS、他)、Cho. タグチハナという豪華な面々。君島と西田はサポートなどで共演もあり、新井とは共に高井息吹と眠る星座に所属する。石若はEPの制作に参加しており、タグチハナは君島自身が彼女のサポートギターを務めてきた間柄だ。皆、君島との関係は深いと思われるが、このメンバーでライブをするのはこの日がはじめてとのこと。

バンドセットでは君島もエレクトリック・ギターを手にする。サウンドチェックの段階で、君島と西田がギターでフレーズを掛け合いながら遊んでいる。君島の楽しげな開けた表情、それまでとは一転し賑やかなステージのムードは、このパートが、先ほどとはまた違った音楽の喜びをもたらしてくれるであろうことを予感させる。

ここからバンドセットで6曲。

ほんとうに最高の時間だった。私的に表現するなら、今年のトップに確実に入るであろうライブ。前半の静謐さを否定するのではなく、そこに、激しさ、楽しさ、多様さ、を大胆に上塗りしていくようなステージ。君島の表情は開けっぴろげになり、身体は動き、ヴォーカルは力強くラフさも加わる。そして最高の音を奏でるバンドメンバーの表情も、みな素晴らしい。いま鳴らしている音楽への実感やその喜びが、音だけでなくメンバーの顔からも伝わってくる。フロアでは観客達が、決して大きくはなく、でも激しく、身体を動かしている。いや、動かされている。正直ぎゅう詰めのためスペースはないのだが、この音楽の中で身体が動かずにいられようか、という光景。

EPのリード・トラックである「遠視のコントラルト」から、本編ラストは「夜を抜けて」。「遠視のコントラルト」ではギターソロが西田から君島に渡される場面がある。その瞬間、バンドに満ちる幸福感。「夜を抜けて」の石若のマレットを使った、たゆたうようなドラムスと君島のヴォーカルが絡み合う様相は、本当に素晴らしかった。

アンコールでは、君島が再びこの夜への感謝を述べたあと、できる新しい曲がないから同じ曲をやる、印象を強めて帰ってもらえれば、と語り、もう一度「遠視のコントラルト」を。それが終わった瞬間思った。いやもう一回やってくれても良いとさえ……

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君島は前半のMCで、あのEPは閉じた作品だと自分では思っていたので(リリースイベントも)こじんまりとやるつもりだった、それがこんなに多くの人が集まってくれて嬉しい、という趣旨のことを語っていた。だがこの日の「夜会」は、君島の音楽がバンドメンバーや観客を巻き込み、より大きなものへと変化していく、そんな光景だったように思う。ステージの上も下も、間違いなく、その音楽その時間の素晴らしさを共有する空間だった。

ライブ後に君島は「またすぐに会えますように」「夜会 vol.2 やりたい」とツイートしている。この豪華なバンドのメンバー達が揃うのは、なかなか大変だろう。が、きっとまた会えると信じている。物語は始まった。これからが楽しみでしかたない。
(高田敏弘)

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セットリスト (君島大空ツイートより)

04/19 THREE 夜会 演目

01. 叙景#3
02. tabi
03. 向こう髪
04. 燃えない呪文 (sora tob sakana)
05. 夏が降る
06. その白さ
07. 鬼壓床
08. 午後の反射光
09. 琥珀の煙景

10. 都合
11. 銀色暁迷
12. 19℃
13. 火傷に雨
14. 遠視のコントラルト
15. 夜を抜けて

Enc.
遠視のコントラルト

(2019.04.25。当初掲載セットリストに誤りがありましたので修正いたしました。


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