噂のヒップホップ・ユニット。幽霊たちが、ついにベールを脱ぐ。

Moe and ghostsのデビュー・フル・アルバム『幽霊たち』がいよいよ発売となった。萌が紡ぐリリカルでシリアスな言魂と、カイムが構築した透明で濁ったカラフルな音魂と、そんな二つの人魂が墓場より招き出した、音楽フリークの夥(おびただ)しい数の幽霊たちが飛び交いあい出現する、夢幻の音楽空間21曲+α。素晴らしいデビュー・アルバムだ。すでに先行配信シングル『新世紀レディ』と『幽霊EXPO』を聴き、彼らの音霊に憑依されて鼓膜を奪われてしまったリスナー諸君、どうぞ大いに期待してくれ。恐らくその期待は良い意味で裏切られる。そして、まだ彼らをHEADZのハイプではないかと訝っている疑り深いリスナーたちよ、まずは雑念を排除して幽霊たちを鼓膜に導き入れてほしい。そうすれば分かる。彼らはFakeでは、虚像 / Phantomなんかじゃないって。彼らはRealな、本物の幽霊 / Ghostだ。このような傑作デビュー・アルバムを作りあげたMoe and ghostsにメール・インタビューを行った。是非、アルバムを聴きながら読んでほしい。

text & interviewed by 青木耕平(一橋大学大学院 アメリカ文学専攻)

Moe and ghosts / 幽霊たち

ラップ担当の萌とトラック担当のユージーン・カイムによるゴースト・コースト・ヒップホップ・ユニット、Moe and ghostsの1stアルバム『幽霊たち』が、佐々木敦主宰のHEADZからリリース。緊張感を持つトラックにのる濃密なラップが、従来のヒップホップを切り裂く。これは、新たな音楽体験だ。

【Track List】
1. われわれ / 2. マンアフターマン / 3. GINGA / 4. Make you groove / 5. 幽霊EXPO / 6. うき / 7. でんでん太鼓が鳴り止まないの / 8. 脳みそクイナ / 9. Scarborough Fair Live at SuperDeluxe / 10. 雪が降るまえに / 11. メルヘラ / 12. ルー=ガルーガール / 13. 潜熱 / 14. チカドゥン / 15. 語るまでもない / 16. GF-909 / 17. 猿人炎上 / 18. 氷解 / 19. 南極点 / 20. LADY OF THE DEAD / 21. OF THE END

All lyrics by 萌
All tracks written, recorded & mixed by ユージーン・カイム
Except for track 09 : traditional English song
Mastered by 西村尚美 / INNER SCIENCE

Track 09 :
Saxophone by 植野隆司(テニスコーツ)
Recorded by 安藤誠英

【価格】
・mp3
単曲 : 150円 / アルバム : 1500円
・WAV
単曲 : 200円 / アルバム : 1800円

閉塞した自分の心にヒップホップが風穴を開けてくれた(萌)

――『幽霊たち』、間違いなく傑作だと思います。初のアルバムをリリースされた今のお気持ちを聞かせて下さい。

萌 : 我が子かわいさと、心配でしびれています。「お父さんは心配症」(※漫画 / 岡田あーみん作)みたいに。

――アルバムを通じて、現状のヒップホップ / 音楽シーンに風穴を開けてやるという意気込みがビシビシ感じられます。相当の自信作なのではないでしょうか?

萌 : 閉塞した自分の心にヒップホップが風穴を開けてくれたと言った方がしっくりきます。この作品が「ヒップホップ」なのかどうか、反応が様々にあるかとは思いますが、何かしら反応したくなるアルバムになっていたら本望です。生身を弾丸のようにぶつける、そのスピードとパワーというものを核にしているので、ビシビシきてもらって良かったです。

――「われわれ」「マンアフターマン」で幕を開け「LADY OF THE DEAD」「OF THE END」で幕を閉じるという構成も魅力的です。デビュー・アルバムをこのような一種のストーリー / コンセプトめいたものにした理由をお聞かせください。

萌 : 去年の2月に初めてMoe and ghostsとして曲作りをしたときに「LADY OF THE DEAD」「南極点」の原型となる曲ができました。これを核として、全曲を通しで聴けるアルバムにしようと思いました。お互いが反発し合うようなエゴの強い曲群であっても、全体を見るとぼんやり像が見える、幽霊が乱反射しているような感じでしょうか。「OF THE END」は、エミール・クストリッツァ監督の『アンダーグラウンド』(※1995年 / カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞)のラスト・シーンのように、嘆いたり、憤ったり、死んだり色々あったけれど、最後は踊りながら幕を閉じる。そのようなイメージを重ね合わせていたのかなとふと思いました。

――コンセプトめいていながらも、各曲はそれぞれ独立して素晴らしいものとなっていますが、カイムさん、萌さんそれぞれの個人的に気に入っているトラックがありましたらお聞かせください。

萌 : 「ルー=ガルーガール」の最後の狼と私の遠吠えの掛け合いですね。
ユージーン・カイム(以下、カイム) : 「LADY OF THE DEAD」「南極点」は完成まで時間がかかったので、思い入れが強いです。「GINGA」も映像的な雰囲気が好きです。

――「ゴースト・コースト・ヒップホップ」と自らを名乗られていますが、カイムさんのトラックも萌さんの歌唱スタイルも、ヒップホップという枠に収まりきらない、そこからはみ出る魅力を感じました。本作で目指した音、Moe and ghostsがこれから目指す音とはどのような音でしょうか?

萌 : キワであっても、自分達なりのヒップホップをしようと思って作りました。ラップは、どれだけ自分をさらせるか、更新できるか。常に自分へ挑むことで、不安なまでのテンション(気迫)を目指しています。トラックは、シンプルにラップを生かすように作りました。スタイルを固定していないので、自分たち自身の変化によって曲も変化していくのでは?

――カイムさんへ質問です。本作は非常にバラエティある音が満ちて鳴っていますが、どのような音楽遍歴を辿られたのでしょうか?

カイム : 本格的に曲を作ったのは今回がはじめてです。音楽はジャンルを気にせず聴いてきましたが、緊張を伴う音楽が好きです。音楽に浸るというよりは、スピーカーを通して音楽家と対面するというか。

――萌さんへ質問です。非常に語彙豊富でリリカルかつユニークなリリックをお書きになりますが、影響を受けた文学作品や文学者、詩人はいらっしゃいますか?

萌 : Moe and ghostsのリリックは、イメージがランニング・ワイルドしているものなので有象無象から連想しています。花輪和一(※『刑務所の中』『朱雀門』『天水』など / 人間の「業」をテーマにした作品多数)や楳図かずお(※『漂流教室』『わたしは真悟』など / ホラー漫画の第一人者)の漫画のように、脳に直列つなぎでイメージが電流のように流れ込んでいったらいいのにと思っています。

――アーティスト名、先行シングル、そしてアルバム名とGHOST / 幽霊という言葉が冠せられていますが、なぜここまで幽霊に拘るのでしょうか?

萌 : 幽霊とは多義的で人によってイメージするものも様々です。例えば「お化け」だけが「ghosts」ではないですし、何度口にしても定まらないもので、だから何度でも言いたくなってしまいますよね。

――最初に「ghosts / 幽霊たち」という単語を目にしたとき、真っ先にポール・オースターの同名傑作小説とアルバート・アイラーの伝説的なサックス演奏を想起させられました。タイトルをつけるときに意識はされましたか?

萌 : 「幽霊」というモチーフは、今は封印された「空気抵抗」という曲からきたのですが、視えないもの / 存在が渦のようにぐわっとまとわりついているようだったのです。オースターとアイラーのghostsも良いですね。でも直接の関係性はここではありません。

――アルバムのラスト三分の隠しトラックで、現状のヒップホップ・シーンへのメッセージめいたリリックがありますが、現状のヒップホップ・シーンに一言お願いします。

萌 : シーンへのメッセージというよりは、自分の心の置き場所、拠り所というものです。私にとっては「声=音」「言葉=音霊」なので、それぞれの歌詞の解釈はおまかせします。ただ、ヒップホップは魅力的な音楽でまだまだ可能性があると考えています。

――お二人は未だ覆面アーティストとして、露出を控えていらっしゃいますが、お二人のライヴを観たいリスナーは非常に多いと思います。ライヴの予定はありますか?

萌 : 覆面ではなく、音楽シーンとの交流がないだけなのです。発売記念ライヴを9月28日(金)に渋谷 O-nestで行うことになりました。

――最後に、リスナーにメッセージをお願いします。

萌 : アルバムを聴いてもらった後にそれぞれのghosts像ができていれば嬉しいです。

配信限定シングル2作も配信中!

彼岸のヒップホップ・ユニット、Moe and ghosts。
先行配信1stシングル。硬直した音楽シーンに風穴を開ける。
ラップ担当、萌。日本語スレスレの濃密ラップ。
圧倒的。一線を画す。
様々な時代、ジャンル。ユージーン・カイム制作によるトラック。
ラップに呼応。ヒップホップの枠に囚われない。ヴァリエーション。音色。リズム。
キーワードは「VISUALSHOCK! SPEEDSHOCK! SOUNDSHOCK!」。

レビューはこちら

レコ発ライヴ決定!

2012年9月28日(金) 渋谷O-nest
詳細未定

PROFILE

Moe and ghosts
ラップ担当の萌とトラック担当のユージーン・カイムによるゴースト・コースト(彼岸)ヒップホップ。2011年に本格的にラップ、トラック制作をはじめる。2012年8月、初リリースにしてフルアルバム「幽霊たち」発売。また、萌は大谷能生と劇作家・中野成樹の共同プロデュース作『みずうみのかもめ』(2010年『長短調(または眺め身近め)』公式サウンドトラック)に限定ユニット「みずうみ」のメンバーとして参加。同じく大谷能生が音楽担当した生西康典の舞台作品『Momo, Momoko, Moe et……the silence between dreams』にも参加。他にもテニスコーツの植野隆司、今井和雄、ククナッケ等とライヴ共演している。

Moe and ghosts official HP

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