脳味噌を絶えず刺激する、不可思議なリリックを操る新人PELICAN FANCLUB、DAIZAWA RECORDSよりデビュー

syrup16gをはじめ、THE NOVEMBERSやきのこ帝国らを輩出してきたUK.PROJECTが新たな原石を発掘した。2012年結成のロック・バンド、PELICAN FANCLUB。透明感あふれる真っ直ぐな歌声と眩しい程ドリーミーで浮遊感のあるサウンドスケープ、そしてエンドウアンリ(Gt, Vo)が書く、思考を惹きつける不可思議なリリックに話題が高まるなか、ついに2015年夏、DAIZAWA RECORDSからデビューする。

デビュー作のテーマは"謎(=はっきりわからない感覚/人の中にある痒い部分)"。「表層と根本を同時にみつめる複眼的な視点、楽曲の多様性とジャンルレスな部分も含めて出せる側面を全て出すことができた」と納得の思いからセルフ・タイトルを本作に冠しドロップ。4人のインタヴューとともにお届けする。

PELICAN FANCLUB / PELICAN FANCLUB
【Track List】
01. Chilico
02. プラモデル
03. Dali
04. Variety Mania Talent System
05. Police City
06. ファ
07. Karasuzoku

【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / MP3

【価格】
単曲 205円(税込) / アルバム 1,234円(税込)

「Dali」MV

INTERVIEW : PELICAN FANCLUB

全てを真っ白に染め上げるようなノイジーなギター・サウンドと不思議な浮遊感を持ったリズム・アンサンブルに『The Bends』期のRadioheadを見出せば、その次には、甘いアルペジオと軽快なビートが駆けぬけるインディ・ポップに、80年代のネオ・アコースティック/ポスト・パンクを嗅ぎ取れる。伏し目がちなフロントマンを中心とした出で立ちは、いわゆるJ-ROCKカルチャーでも視線を集めるであろうカリスマ性を持っているが、そのサウンドの成り立ちは、ドメスティックな内向でなく、より多感的で品の良さがある。東京を拠点に活動する4人組ロック・バンド、PELICAN FANCLUBは、きわめてユニークであり、そこが筆者を強く惹きつける。

エンドウアンリが全曲を手がけるリリックにおいても、このバンドは度々立ち止まらせてくれる。「良くない欲がわからない」(「Chilico」)「死ぬことは生きることの反対じゃない」(「Karasuzoku」)など、聴き手が「どういう意味なのだろう」と、つい考えてしまう言葉が、歌詞において頻出するのだ。一方、哲学的な問答だけでなく、メロディにそってライムや言葉遊びを配すことにも意識がさかれており、その歌いまわしは耳にとって大変気持ちがよい。あくまで全編をポップなセンスで貫いていることが実に巧い。PELICAN FANCLUBの音楽は、その表面で快楽を愛でることも、その裏側に用意された不可思議さをとっかかりに、思索への旅と出かけることもできる。

初の一般流通となる今セカンド・ミニ・アルバム『PELICAN FANCLUB』のテーマは"謎"だという。では、彼らのサウンドは、いかなる音楽ピースのもとで成り立っているのか。なぜにエンドウは、聴き手の脳を揺らすような言葉を選ぶのか。このインタヴューでは、PELICAN FANCLUBというバンド自体の"謎"を垣間見ようとした。幸いにも、その試みの一部は成功していると思う。

インタヴュー&文 : 田中亮太
写真 : 大橋祐希

Alvvays、Twentyone Pilots、American Football、刺激を受けたバンド

——PELICAN FANCLUBの音楽を聴いてみて、一筋縄ではいかないバンドだと思いました。

一同 : (笑)。

——と言うのは、このバンドはひとつ発したいことがあるとして、(紙にMと書く)例えばMを伝えようとして、(裏返して見せて)それをWと逆さにして表したりって伝え方をしてるように思ったんですね。今回のミニ・アルバム自体、"謎"がテーマとのことですが、実際物事の薄皮をはがしたところにある、いびつで不可思議なものを音楽で表していこうとする印象を受けました。ゆえに、聴き手は「これはどういうことだろう?」と想像力や脳味噌をたえず刺激される。今回のインタヴューでは、PELICAN FANCLUBというバンドが、なぜそうした表現にトライするのか、そのものづくりの根幹にあるものを、垣間見ることのできるものとなればと思っています。

エンドウアンリ(以下、エンドウ) : すでに僕が言いたかったことを言ってくれたんですけど、すごい的を得ていますね(笑)。だから、逆に、どうしよう何を言えばいいんだろうと思ってるんですけど。

——ありがとうございます(笑)。1番最初に音楽的な要素から解きほぐしていきたいんですけど、メンバーそれぞれがここ最近でもっとも刺激を受けたバンドや曲を教えてください。

エンドウ : そうですね、最近だと、僕はAlvvays。あとすこし前ですがBeach Fossils。邦楽だと、4 Limited Sazabysをめちゃくちゃかっこいいなって思いました。

エンドウアンリ

シミズヒロフミ(以下、シミズ) : Twentyone Pilotsって2人組のユニットがあるんですけど、ヴォーカルとドラムという組み合わせで、とにかくライヴのパフォーマンスが衝撃的で。ドラムのビートのかっこよさ、普通に叩いてる8ビートでもすごいかっこいい。

カミヤマリョウタツ(以下、カミヤマ) : 僕はかなり最近なんですけど、American Footballってバンドが来日しまして。そのライヴに行ったんですけど、それがすごい良くて。一緒に出てたBraidってバンドも最高で。

——へー! 90年代のエモとかも積極的に聴くんですか?

カミヤマ : 好きですね。

クルマダヤスフミ(以下、クルマダ) : 僕も来日行ったんですよ。

——2人で行かれたんですか?

カミヤマ : いや、別の日に(笑)。

シミズ : やばいね、仲悪いバンドと思われる(笑)。

クルマダ : 僕はBraidがめちゃくちゃ好きで、決まった時点で行くしかないって思いました。僕はギタリストがやはり好きなんですけど、ずっと憧れてるのは、小沼ようすけさんで、最近は良くCornell Dupreeを聴いています。出しゃばらないけど良いギターを弾くんですよね。

シミズヒロフミ

——最近の国内のギタリストで良いなと思える存在はいますか?

クルマダ : うーん、オウガ(OGRE YOU ASSHOLE)とか。あとは結構いるんですけど、身の回りすぎるんで(笑)。

——近しい人でもいいですよ。

クルマダ : 逃亡くそタわけってバンド、いまはあんまり活動してないんですけど、すごいギタリストがいます。あとは、sassya-ってバンド。スリー・ピースのDischord直系なHelmetなんかも感じられるバンドで。エフェクトも少ないしシンプルな音作りなのに、なんかすごい音出してるんですよね。あ! あとはTaiko Super Kicksですね。樺山君のギターはここ1番の衝撃でした。

手の届かない痒い部分をくすぐるようなもの。それを"謎"と言ってて

——彼はすごいですよね。なるほど、今回の音源を聴いて、このバンドはどういうルーツなんだろうって気になったんですけど、今の4人の答えを聴くと、わかってきたというかかなり納得できましたね。ギター・ポップ的な弾む魅力もあるし、アメリカン・ハードコア的な複雑さみたいなものもあるし。では、前作の『ANALOG』と比較して、今作『PELICAN FANCLUB』で意識的に差別化を図ろうとした点を教えてください。

エンドウ : 演奏に関しては、バンド感というか、生々しさというか、そのままをパッケージにしたいなと思いました。そこが前作との差別化かな。前作だと、わりとポップソング集というか、自分たちのキラキラしたところをパッケージしたんですけど、今回は対照になってると思います。

クルマダ : 前作を聴いた人はキラキラしたポップ・バンドだと思ってライヴに来るんですけど、ライヴを見た時の反応がおもしろいんですね。「こんなに激しかったんだ!」って。それぞれハードコアとかラウドなものとか、インディ・ロックだけじゃない、いろいろなルーツを持っているので、ライヴではそこが出てるんですよね。前作はわりとひとつに偏ったものだったんですけど、今回は楽しいものもあればすごくシリアスなものもある。

エンドウ : 今までだったら、自分のために作品や歌詞を作ってたんですけど、今回からは前ミニ・アルバムを出した経験をふまえて、人に聴いてもらうって意識がすごく強くなって。人に見せるって前提ができました。さっきもおっしゃってくれましたけど、そのWかと思ったらMみたいな、トリックは散りばめてますね。実際に曲のタイトルと歌詞で書かれてる意味は違う。でも見せかけではそうしてる。それは聴き手を意識したんです。

クルマダヤスフミ

——その狙いは、今作のテーマである"謎"とも絡んできますね。そもそも"謎"というテーマが前景化していった理由は?

エンドウ : "謎"って言っても、いろいろあると思うんですけど、ここで描いたのは、全員が一致する"謎"ではないと思うんです。僕が特に意識したのは、手の届かない痒い部分をくすぐるようなもの。それを"謎"と言ってて。そういうものを表現したい。聴き手のそういう感覚をくすぐりたいってのがすごいあって。

——わかりやすい大文字の感情ではなくて、言葉にすらならないような感覚、言語化できない違和感とか正体不明の恐怖感とかを音楽にしている。で、聴き手にもそれらを喚起したい。

エンドウ : まったくそのとおり。もう僕なんじゃないかってくらい(笑)。

一同 : (笑)。

エンドウ : だから、こういうことですよ。こういう"謎"です。

——でも、そういう"謎"、言語化できない感覚を、自分たちのアートの中核にしていく態度って、どういう風に培われていったんですか?

カミヤマ : あんまり意識して培ったものではないかもです。わりと自然にこうなったというか。

エンドウ : オリジナルってものを作るってうえで、だんだん身についていった気がする。年齢を重ねていくうちに得たものを、じゃあどういう風に表現するかっていうのを各々で考えて身につけた。

曲は全部蓋をはがせば別の表情が見える

——同じ出来事を伝えるにしても、表現者の数だけ伝え方の形はあると思います。そのなかでPELICAN FANCLUBが他ではなく、こういううやり方をしてるってところをもっと掘り下げてきたいと思っています。エンドウさんが、わりきれない、つかみきれない微細な感覚へと焦点を当てることになった契機は?

エンドウ : 聴き手に対して挑発をしたいんです。今回1番わかりやすいものでいうと「Dali」って曲があるんですけど、別にサルバドール・ダリについて歌ったわけじゃない。とある事件について書いたんです。キーワードは、生きている状態と死んでいる状態ということ。それを英語で書くとDeadとAliveじゃないですか。その2つを並べたときに、まんなかに出てくるのがDaliになる。聴き手がそれをわかるかわからないかは別に意識してないんですよ。でも、聴いてくれる人を意識するってところが、こうした表現をするきっかけにはなりましたね。

——今、種明かしを1個していただいたと思うんですけど、そのあたりって他のメンバーは全て知ってるんでしょうか?

カミヤマ : はい。知ってます。歌詞をもらったあとに、これはこうでって事件とか背景とか含めて説明してもらう。

エンドウ : だから、曲は全部蓋をはがせば別の表情が見えるって感じにはなってて。聴き手がすべてを気づくかはわからないんですけど、そういうバランスでちょっとよくわからないけど気味が悪いとか、なんか変だなとか、違和感を感じるとか、そういうのでいいと思うんです。1曲目の「Chilico」って曲は歌詞を見ないとわからない。聞こえてくる言葉と歌われてる言葉が違うんですね。

カミヤマリョウタツ

——そうですね。〈ソーダ水/賽が投げられた〉とのころ〈水彩画〉って歌ってると、ずっと思ってました。

エンドウ : そういう挑発ですね(笑)。画家のキリコの歌かと思うかもしれないけど、実は全然違う。

——加えて、歌詞に曲名が出てこないバンドだと思ったんですね。

エンドウ : あー、確かに。意識はしてないんですけどね。タイトルって見た目じゃないですか。綺麗な人間がいたら気になるように、そういう視点ででタイトルはつけたいんです。言ってるそのものよりかは、言ってるものにぴったりあうことをタイトルにする。

——今回「Chilico」もあるし「Dali」もある。で、PELICAN FANCLUBの表現にもシュールレアリスム的な面があると思うんですね。僕の仮説なんですけど、時代も国も分野も異なる彼らを曲名で冠してるのは、アートの歴史にこのバンドを位置づけてるからだと思ったんですがどうでしょう?

エンドウ : ふふふ(笑)。でも、見せ方としてはそういう風にしたいなとは思ってます。でも、シュールレアリスムと見せかけて、実は全然違うんだよって狙いもあるんです。ちなみに、4曲目の「Variety Mania Talent System」はマグリット風なんですよ。だから、このアルバムには三大巨頭がいるんですね。でも、実は作品とは関係ない。だから、しっかり歌詞を見てはじめて皮膚がはがれるというか、黒かと思って見たら白だったみたいな感じになる。シュールレアリスムってものに寄り添ってるわけではないんです。そこも挑発ですね。

——世の中が大きく動きある昨今、抽象的な表現よりもダイレクトなメッセージのほうが力を持っている、即効性がある傾向があるかもしれません。そのなかで、このバンドが今取り組んでるような、感覚的な不可思議さとか感情の割りきれなさといった抽象的なものを写しだしたアートは、いかなる存在意義があると思いますか?

エンドウ : ダイレクトでストレートな言葉が力を持ってるってのは僕もそうだと思うんですけど、僕はもう少し概念のほうに寄ってほしいなと思ってて。と言うのも、どこの視点から見るかで、ストレートな言葉って変わっちゃうと思うんですよね。例えば主人公を被害者に置くか加害者に置くかで、ストレートな言葉も違うわけじゃないですか。現状この世の中もそうで、例えば14歳未満だと人を殺したとしても、刑法でなく家庭裁判で裁かれる。そういう少年の事例って、どこに感情を置くかで、見え方が変わるなって思ってて。だからストレートに言いようがない。ストレートな風に言ったとしても、それはどっちかに傾いている。だからこそ、僕は概念に重しを置きたいんです。その概念ってなんなのって言うと、今回「Dali」だと、ネタばらしすれば、フランスで起きた事件が背景になってる。それは、宗教テロなんですけど、加害者からすると自分の信仰する宗教を馬鹿にされたからって理由があるし、被害者からしたら、それも表現の自由だって主張ができる。キリがない話なんですよ。で、「Dali」に〈すべては心のせいだ〉って出てくるんですけど、僕はそこなんだよって言いたい。この音楽を通して、そう見てほしいなって思います。感情的になる前に、それってどういうことなのかを考える契機となりたいんです。

LIVE INFORMATION

PELICAN FANCLUB TOUR 2015「MANIA」
2015年8月7日(金)@京都MOJO
出演 : PELICAN FANCLUB / ミニクリプトン / 森山タカヒロBAND / かたすみ

2015年8月8日(土)@神戸SLOPE
出演 : PELICAN FANCLUB / かたすみ / ハロルド / The Gypsies / Newdums

2015年8月21日(金)@Club Lizard Yokohama
出演 : PELICAN FANCLUB / Nina lovegood / WOMCADOLE / CRAZY VODLA TONIC / FOMARE / buzz. / MAD LICK / ピアノガール

2015年9月1日(火)@千葉LOOK
出演 : PELICAN FANCLUB / the quiet room / リコチェットマイガール / Ivy to Fraudulent Game

2015年9月17日(木)@大阪Pangea
出演 : PELICAN FANCLUB / 音の旅crew / The Very Good / DENIMS / Orca Shore

2015年9月18日(金)@名古屋CLUB ROCK'N ROLL
出演 : PELICAN FANCLUB / コンテンポラリーな生活 / Tempalay / Bob is Sick / NeoN

2015年9月30日(水)@広島CAVE-BE
出演 : PELICAN FANCLUB / and more

2015年10月1日(木)@福岡DRUM SON
出演 : PELICAN FANCLUB / GOLDEN AGE / and more

2015年10月2日(金)@岡山IMAGE
出演 : PELICAN FANCLUB / and more

2015年10月4日(日)@高松DIME
出演 : PELICAN FANCLUB / and more

2015年10月21日(水)@福島PEAK ACTION
出演 : PELICAN FANCLUB / and more

2015年10月22日(火)@仙台HooK
出演 : PELICAN FANCLUB / and more

2015年10月24日(土)@北海道Sound Lab mole
出演 : PELICAN FANCLUB / 或るミイ / trash audio / Anger Jully The Sun

PELICAN FANCLUB TOUR 2015「MANIA」TOUR FINAL「CINEMA」
2015年11月9日(月)@渋谷WWW(ワンマン公演)

[その他]
UKFC on the Road 2015
2015年8月18日(火)
出演 : 【FRONTIER STAGE】[Alexandros] / MO'SOME TONEBENDER / ストレイテナー / TOTALFAT / THE NOVEMBERS / and more
【FUTURE STAGE】asobius / Cettia / DATS / LOST IN TIME / PELICAN FANCLUB

PELICAN FANCLUB『PELICAN FANCLUB』発売記念インストアライヴ
2015年9月4日(金)19:00〜@タワーレコード渋谷店 B1F「CUTUP STUDIO」
ゲスト : odol
※参加方法などはTOWER RECORDS(http://tower.jp/)、PELICAN FANCLUB(http://pelicanfanclub.com/)の各サイトをご覧下さい。

PROFILE

PELICAN FANCLUB

2012年に結成。Gt&Voエンドウアンリ、Baカミヤマリョウタツ、Gtクルマダヤスフミ、そして2014年12月にDrシミズヒロフミが加入して4人体制となる。甘酸っぱいメロディーと多幸感、そしてどこかシニカルな歌詞が魅力の2015年期待の新世代ドリームウェーブ・バンド。2014年10月にリリースしたTOWER RECORDS限定シングル『Capsule Hotel』が早耳音楽リスナーのなかでは大きな話題となり注目を集める。そして、2015年1月には1stミニ・アルバム『ANALOG』のリリース。ツアー・ファイナルでは下北沢SHELTERにて初のワンマンライヴを開催。2015年8月5日にはUK.PLOJECTからDAIZAWA RECORDS期待の新人として堂々デビュー!

>>PELICAN FANCLUB OFFICIAL HP

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