
目の前で起きている事が世界中で一番面白いという感覚を味わったことがあるだろうか? ないのであれば、関西のライヴ・ハウスやクラブで開かれているオールナイト・イベントへ行って欲しい。なるべく地下にあるハコの方がいい。「ボアダムスの末裔」とも謳われる関西ゼロ世代のミュージシャン達(もっとも当の本人たちは全く意識していないのだけれども)が、今日も何かを企んでいる。まだ誰も見たことが無いものを一早く見つける為に、目を光らせ感覚を尖らせているはずだ。「そんな大げさな!」と思う方は、試しに右にある試聴ボタンを押してみて欲しい。『KUMARU EXPO 2010』を聴けば、関西でも特に異彩を放つブレイク・コアやエレクトロのデジタル・シーンで今何が起こっているのか、その全ては伝わらなくとも事の大きさぐらいは伝わるだろう。
「KUMARU RECORDS」とはDJとして活躍するとによって立ち上げられたレーベルだ。今回のオムニバスは彼らと親交の深いアーティスト、もしくは本人参加のユニットの曲を集めた相関図コンピレーションとなっている。収録アーティストには(from )、岡本右左無(from )、BIOMAN(from )、GULPEPSH、スズメンバ、KOVSKE。この面々を見れば主宰の二人が今の関西音楽シーンにおいて重要人物である事がよくわかる。面白いことが起きているド真ん中で活動をする二人が面白いと思うものを集めたのだ。

このアルバムにはおもちゃの様に愉快な音と刃物の様に尖った音が、交互に、時に重なり、ぶつかりながら流れている。この調和から、純粋に面白いものを追求したい子供の様な無邪気さと、それを生むことに対するストイックさを兼ねそなえた彼らの音楽に対する姿勢を感じることが出来る。実験的に鳴らされている様で計算し尽くされているこれらの音に、じっと耳を集中させて聴いていると、あまりにも音の色彩が奇抜で光の回転が速く、頭の中が対応しきれずチカチカしながらも、まだ聴いたことのない音に出会えて嬉しくなる。
冒頭の質問に戻るが、目の前で起きていることが世界で一番面白い事だと自信を持って言えるかどうか。おそらくこのアルバムに収録されているアーティスト達は即答できるだろう。常に誰の目にも触れていない新しい事を模索し続け、それによって出来たものを発信し続ける。そんな人間が自分の半径10メートル以内にわんさか居る。こんなに刺激的な事は他を探してもそうそうないだろう。お互いがお互いを触発し合う、その連鎖が絶えず高速で起きている関西アンダーグラウンド・シーンからはまだまだ目を離せそうにない。(text by 水嶋美和)
→「KATATSUMIRU KIRAMEKI REMIX」のフリー・ダウンロードはこちらから(期間 : 2/4〜2/11)
PROFILE

shabushabu
京都生まれのプロデューサー、トラックメイカー、ラッパー、ビートボクサー、DJ、ダンサー、そして芸人など多くの顔を持つマルチ・アーティスト。1998年にJamie Liddelも在籍していたUKテクノ・ユニットSUBHEADに手渡したデモ・テープが認められ、彼等のレーベル2CBのコンピレーションに「亀より硬く」が収録される(当時のユニットみやびにて)。その「亀より硬く」をAndrew WeatherallがDJプレイ! '03年ウリチパン郡のOORUTAICHIと共にObakejaa(おばけじゃー)として活動開始、'04年03月にモロヘイヤ・レコードとオキミ・レコードの共同リリースで『Obakejaa』をリリース。'05年、UKのThe Marcia Blaine School For Girlsとのスプリット12"がスタッフ・レコーズよりリリースされ、ECDやCOLDCUTが自身のチャートに入れるなど高い評価を得た。'07年にshabushabu名義初ソロ作『all in one pot』をリリース、'09年9月にはAWDR/LR2より2ndアルバム『SONO FX』をリリースした。他にgulpEpshとのヒューマン・ビートボックス・ユニット : ガルシャブ、OVe-NaXxとのSOTOKAN 170、neco眠るのドラムス岡本氏とのAGYOUなどでも活躍。世界最新のビート/トラック・メイキングに独自の和/和み/盆踊り的な上モノという完全にオリジナルな世界は、ミュージシャン、プロデューサー、DJ達を中心にアツイ注目を浴びており、2009年11月にはヨーロッパ・ツアーを行ったばかりであり、特に海外での評価が高い。

LAKILAKI a.k.a. 真保☆タイディスコ
亜熱帯のタイランドで金色ラメ色タイ・ディスコに出会い、そのパワーに圧倒され“こんな素敵な音を独り占めはもったいない"と、2000年夏、DJを決意する。手に入れたCDは5000枚、曲数にして80000曲。タイ・ディスコはタイ人が欧米のクラブ・ミュージックを完全アジアに消化した音楽。そのにおいは日本にはとても薄くて、いつもアジアの雑踏にみんなとまみれていたいからタイディスコをかけつづけるのだと、彼女はいつも言っている。DJ中は蛍光ピンクとラメ色を身にまとうも、タイディスコを抱えて巡った、福島→シンガポール→大阪→東京→京都で吸収した土地のメロディーや言葉を録りためる。泥臭いにおいのする土色、深緑ヶ森色、夜が明けたばかりの東京の灰赤色の空などを、自身の音楽にもりこむ。日本のゆっくりでどっしりとした重心低い音色、それを全部きれいに仕上げたあとでぶっ壊したいと日々、音楽活動に研鑽をかけている。今までDJ MIX 2タイトルをリリース、どちらも発売一年で完売状態となった。
EVENT SCHEDULE
- 4/3@大阪 地下一階
DJ : DJごはん、BIOMAN
- 4/9@京都 METRO
DJ : KAZUMA、波浪計画(ハロープロジェクト)[member BIOMAN、置石、自炊 produced by DJ威力]
VJ : Sekitani La Norihiro
無国籍デジタル・ミュージック
All in one pot / shabushabu
シャブシャブ待望の1stアルバム。伝説のクラブ・イベントSOONDIE(スーンダイ)に始まる、決して短いとは言えない彼の音楽歴の中で、あらゆるミュージック・シーンを浮き袋片手に徹底的にシュノーケリングしてきた彼の活動の集大成。海外でのシングル・リリースやコンピレーションへの曲提供など、水面下で発表されてきた名曲は数知れず、しかし今回のこのアルバムはあくまでグローバルなダンス・ミュージックへの視点とテクニックに裏打ちされたトラック・メイキングに加え、彼の押さえきれない創造性が絶妙なバランスで結合した、文字通りの最高傑作。冒頭や途中に現れる老婆の語り、子供浪曲師を思わせる、か弱くも粘りの効いたボーカル、どこかロンリネスを感じずにはいられない多彩で奇抜なサンプル音たち、果てはミックスからマスタリングまでも骨太にこなし、そのサウンドはどこをとっても金太郎飴のごとくDJシャブシャブそのもの。
1119住mばsyo着るmの絡まって / 真保☆タイディスコ
ユニークなタイ・ディスコDJ&MCスタイルとキャラで、フロアにいる誰もが笑顔でダンスしてしまう空間を作り上げる、唯一無二なプレイスタイルの女性DJ、真保☆タイディスコの正式ソロ・アルバム。全てオリジナル楽曲で構成された本作は、テクノ/グライム/エレクトロニカ/ヒップホップ等クラブ現場での体感を独自の解釈で融合させ全く別次元へと高めたオリジナル・トラックに、タイ・ディスコ・スタイルなボーカルが乗る。一度聞くとその世界から抜けられなくなる新型POPクラブ・サウンド。
SONO FX / V.A.
伝導バイクで巡る東海道五十三次!? 前人未到の未開拓ビーツ〜しびれクラゲの盆踊りまでをひとつのポットに! 京都が世界へと誇る、これぞ奇天烈メイド・イン・ジャパン! ゲストには盟友、ウリチパン郡のオオルタイチをはじめ、元SUBHEAD(サブヘッド)のJason Leach(ジェイソン・リーチ)などが参加しているほか、現場で大きな支持を得ているKABAMIX(カバミックス)がマスタリング、元CITRUS(シトラス)で現在は、yoga'n'ants(ヨーガンアンツ)としても活躍中のtone twilight(トーン・トワイライト)の江森丈晃(エモリ・タケアキ)が前人未到のアートワークを手掛ける完全布陣。
Drifting my folklore / OORUTAICHI
ウリチパン郡ではギタリスト、ボーカリストとして活躍するOORUTAICHIの2002年に発売されたアルバム。ヴァイナル・レコードで発表され現在では入手困難になっている曲を含めた6曲から構成されており、初期のトラックから最新の曲までを網羅したベスト・アルバム的な内容です!
Sus Cumbias Luna'ticas Y Experimentales /Dick El Demasiado
デジタル・クンビアの生みの親「デジタル・クンビアのゴッド・ファーザー」Dick El Demasiadoの日本独自企画盤。前代未聞の発想で生みだされたそのキテレツなサウンドに日本の音楽業界でも中毒者が続出した作品。
・ Dick El Demasiado インタビュー : https://ototoy.jp/feature/20090720