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2020/10/16 18:00

 

【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』第34回

 

第34回「秋の猫」

肌寒くなってきて、人肌恋しい季節になった。

人肌が恋しいのは人間だけでなく、猫もなのか。とわたしのお腹の上に寝ている黒猫を見る。お腹にじんわり猫の体温を感じる。猫肌も良いな。と独り言を言ってふわふわした黒い毛で覆われた体を撫でる。

部屋が冷え込んできたので、そばにあるエアコンのリモコンを手に取り、スイッチを入れる。ピッという稼働するときの音が鳴る。すると、さっきまで甘えるようにお腹の上にいた猫が、サッと素早く動き、エアコンの暖かい風のあたるところへ移動し、丸くなった。

え…。暖かければなんでもよかったのか…。

ただ単に、部屋の中で1番暖かいのがわたしのお腹の上だったのだ。

なーんだなんだ。と拗ねて見せても、なんの反応もない。

仕方がないから、自分から猫に顔を押しつけて甘える。猫はじっとがまんする。嵐が過ぎるのを待つように、仕方がない現象を過ぎるのを待つ。

人間のわたしは猫に甘えたいのに、猫は甘えさせてくれない。

猫はわたしに甘えてくるのに、不公平じゃないか。

いや、待てよ。猫は甘えているという感覚がないのか…?猫の”甘える”と人間の”甘える”が同じとは限らない。というか同じである可能性は低い。人間から見て”甘えている”仕草なだけであって、猫はぜんぜんその気がないのかもしれない。

人間はやっぱり弱くて甘えん坊なのだな。寒くなっただけで、誰かに抱きしめて欲しくなるなんて。

文と絵:白波多カミン

白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/

★【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』アーカイブ
https://00m.in/KPVd8


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