2020/12/30 18:00
最終回「引き出し」
引き出しからこんにちは。最終回です。
いままで読んでくださっていたみなさま、ありがとうございました。
最初考えていたこのコラムのコンセプトは、日常生活をしていて感じる驚きや発見を、心の中の引き出しに入れて置いて、その出来事を書こうと思っていた。
でも思ったより人間の心は単純じゃないようだった。少なくとも私はそんなに器用じゃなかった。
考えることは日々ころころ転がって変わっていくし、さっきまで思ってたことですら、本当にそう思うのか分からなくなったり。そんな感じだったから、いつも「引き出し」はどこにあるのかわからなかった。引き出しの中に何もないとかではなく、引き出し自体が見つからなかった。なかった。そんなシステム、私にはついてなかった。
あるとしたら、すごく時間が経ってから、記憶というものに変わって、頭の中に置かれるのだろう。その記憶も自発的に思い出せるものではなく、外的な何かをキッカケにして、引っ張り出されるのだ。
そうなると、なにもないところから文章を紡ぐことになるのだけど、それがとても楽しかった。ほんとうに面白かった。ストックなんて、なにもないから書けるのかもしれない。
私は新鮮なものが好き。だから、自分から出てくる言葉も新鮮でないとつまんない。食べ物に例えるなら、缶詰めより、自分が作るのはサラダのほうが向いてる。
でもいつか、綺麗な缶詰めが作れるようになるかもしれないし、サラダに飽きて、漬け物を漬けるかもしれない。それもまたそれだよね。
何かを、これはこうだ。と決めることは、ハードなことだ。
とくに他人の思いとか、自分がどんな人間かとかを決めつけるのはリスキーだから、いま、この呼吸をしている身体を感じて、大切にして、生きたい。
みんなげんきでまた会おうね。
白波多カミン
文と絵と写真:白波多カミン
・白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/
★【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』アーカイブ
https://00m.in/KPVd8