2020/07/31 18:00
第29回「生きているということ」
黒猫3匹と共に暮らしている。
朝はわたしを起こしに来ることが多い。1匹ずつ、顔の周りを「なー、ぅなー、」と声を出しながらウロウロして、わたしの顎やうなじを前足でつんつんしてくる。そのたびに肉球の感覚が肌に伝わる。わたしはいつも「うん、うん…」と言ってぐずぐずしてまた眠る。
エサがなくなってるわけでもなく、何故か、ただ起こしに来る。
今朝はめずらしく諦めずに起こし続けていた猫がいた。諦めないという意思を全面に出しながら、わたしの脇腹に身を収めてこちらを見張っている。
わたしが、「そろそろ起きますか…」と身を起こした途端、猫はもうどうでもいいかのように、ぴょんっとどこかへ行ってしまう。
まぁ、そんなもんだよな。と思いながら、コップに水を汲み、飲む。1日が始まる。
小さい頃、実家でも猫を飼っていた。とてもやんちゃな性格で、いまもその猫が付けた凄まじい爪研ぎの跡が壁に残ってる。実家に帰るたび、もういない猫の爪のあとを見るとふしぎなきもちになる。たしかにここに存在して居たんだなあ。と思う。
たぶん今飼ってる猫たちも自分より先に死ぬ。
ふしぎだなぁ、と思いながら、今日も甘えてきた黒猫の頭を撫でる。あたたかくやわらかい。こいつは今たしかに生きている…と思う。そして、わたしも今たしかに生きているということに気づく。
文と絵とたまに写真:白波多カミン
・白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/
★【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』アーカイブ
https://00m.in/KPVd8
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