2012/10/01 00:00

最先端の音楽シーンにおいて、もはや誰もが認める中心人物として君臨するフライン グ・ロータス。ジャズやソウル、エレクトリック・ミュージックにおける過去の偉大な巨匠たちが抱いた野心やヴィジョンを共有し、誰も見たことがない圧倒的な世界観を作りあげた最新作が登場。フライング・ロータス本人曰く「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」として創作された本作『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』(静寂が訪れるまで)。耳をすませてを聴き込めば、その世界にドップリと浸かることが出来るだろう。

Flying Lotus / Until The Quiet Comes

前作に続き、トム・ヨーク、サンダーキャット、そして本作にはなんとエリカ・バドゥ参加!! 歴史はまた、フライング・ロータスによって塗り替えられ、世界は再び、未知なる旅へと誘われる。

【販売価格】
mp3 150円 / 1,800円
wav 200円 / 2,400円

多様な才能をたぐり寄せてくる感性

オウテカのショーン・ブースは「新しい音楽は本当に希望などまるで存在しないような場所から生まれる」と言ったが、マイク・デイビスが『要塞都市LA』で白日の下に晒した高度資本主義の焼け野原のようなディストピア=ロサンゼルスには現在、面白いように新たな才能が次々集まってきている。それは“ブレインフィーダー”界隈のアーティストに留まらない。ただその誰もがフライング・ロータスことスティーブン・エリソンの座を脅かすような事態にはいまだ至っていない。

そのフライング・ロータスの世界中のビート・フリークが注目する4枚目の作品、『アンティル・ザ・クワイエット・カムズ』が遂にリリースされた。活況を呈するLAのビート・シーンの喧噪からは距離を置きたいという心理の現れと思わせるようなタイトルだが、前作『コスモグランマ』でのコズミック・ジャズへの旅立ちから、さらに深遠なスティーブン・エリソン自身のインナー・スペースに潜り込んでいくようなトリップ・アルバムになっている。今作もこれまでと同様、短くなる人々のアテンション・スパンに挑戦するかの如くトラックはシームレスに繋がっており、18トラックを持って初めて一つの作品を成している。イギリスのビート・シーンが同じベース・ミュージックでありながらも「音の隙間」に明確な特徴を持つことと明確に差異化しようという意図もあるのか、キャンパス一杯にこれでもかとばかりに音が散りばめられている。それは前作で母の死を契機に宇宙へと旅立ったスティーブン・エリソンが母の胎内へと回帰し、音のパレットを無邪気にぶちまけているような感覚すら覚えさせる。前作『コスモグランマ』で見せたコズミック・ジャズへのアプローチは、聴き手を一度引きつけたら一気にグイグイと宇宙の果てまで連れて行ってしまうような疾走感のある作品だったのに対し、本作はもう少しチル・アウトしたアンビエンスが漂っている。レイド ・バック感はあるが、音像は極めてカラフルでサイケデリックな陶酔感は強烈だ。

サウンドに関しては、ボトムだけでなく、奇天烈なハイハットだけでグルーブを作り出すヒップ・ホップ・トラックから、アンビエントなエレクトロニカまでその折衷性は極めて高いが、最終的には彼独自のサウンド・プロダクションに落とし込まれており、フライング・ロータスとすぐに分かる記名性の高さは相変わらず。前作の成功により確固たる地位を得たことは、分かりやすい落とし所を持たなくとも、次々に新たな挑戦へと踏み出していく自信を彼に与えたように思う。それゆえ、ブラック・ミュージックの歴史性を踏まえたうえで、インディ・ロックから先鋭的なエレクトロニック・ミュージックまでを融合するという希有な試みに成功しているのだろう。この価値がはっきり分かるのはもう数年先なのだろうが、チル・ウェイヴ以降の米インディー・ロックやアンビエントなR&B/ヒップ・ホップというアメリカの他シーンの動きとの自然な同期やLAビート・シーンの拡張は、音楽の細分化が叫ばれる中、近いうちに大きな何かを生み出す予感すらさせる。多様な才能をたぐり寄せてくる編集者的な感性も持ち合わせるフライング・ロータスは、ヒップ・ホップ界における同様のクリエイティビティの最大の発露者であるカニエ・ウエストとも仕事を望んでいるとの声も聞こえてきており、早く実現して欲しいものだが、その時が来るまではまず、本作『アンティル・ザ・クワイエット・カムズ』の美しい白昼夢に身を委ねることにしよう。(text by 定金啓吾)

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PROFILE

Flying Lotus

L.A.シーンに突如出現した希代のビート・メイカー/プロデューサー、フライング・ロータスは“ワープ”移籍後にリリースしたEP『Reset』(2007年)、新時代のビート・ミュージックの先駆けとして各方面から多大な評価を集めたワープ・デビュー・アルバム『Los Angeles』(2008年)によって、その後世界中で同時多発的に勃発し、波及していくこととなるビート・ミュージック/ベース・ミュージックにおける鮮やかな革命の礎を作り上げた。その後、3部作となる(話題の)プレミア12"リミックス・シリーズ『L.A. E.P』によって、シーンを急速な成熟へと向かわせたのは言うまでもない。数多のフォロワーを生み、当時の予想を遙かに越えた衝撃を世界の音楽シーンに与えたロータスのブレイクによって、更なる注目を集めたL.AのLOW END THEORY(ロウ・エンド・セオリー)周辺のみに留まらず、多彩なビートを打ち鳴らす新世代のフレッシュなビート・メイカー達が世界各地でほとんど同時期に一斉に出現。新たなシーンを形成していく中、ロータスはその中心人物として、ビート・カルチャーの寵児として、そして最も旬なアーティストとして、エレクトロニック・ダンス・ミュージックだけでなく、全てのジャンルの熱心な音楽ファンから常にその動向が注目を集めている。

Flying Lotus HP

この記事の筆者
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