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2016年07月13日00時00分

 
【奇跡のあるある3連発】RG階段が魅せた笑いとノイズの融合〈自家発電vol.07〉を客がレポート
 

ノイズとアイドルのコラボ・ユニットBiS階段発祥の地であり、クラウトうどんショー(非常階段 × ゆるめるモ! × 手打ちうどん うどんログマツイ)、ライヴハウス界初(?)のガマの油売り、虫喰い芸人の乱入、などなど、毎回特異な出演者てんこ盛りのカオスイベント〈自家発電〉。

このたび、2016年7月2日(土)に行われた〈自家発電vol.07〉@四谷OUTBREAKの模様を毎回足を運んでいるトップ客の1人であるnong02氏に、現場の目線から本気でレポートしてもらった。

お客さんから観たこのイベントは、一体どんなイベントなのか?! 以下にそのレポートを掲載する。



異種交配によって生み出された熱狂の夜

〜自家発電Vol.07雑感〜

音楽、お笑い、演劇、大衆芸能など面白ければジャンルを一切問わない姿勢を常に叩きつける主催者BM.3と、遊び場をクリエイトすることに長けている四谷アウトブレイクが手ぐすねをひきながら待ち構えているところに、観客も自らの感受性をフル稼働してどれだけ楽しいをキャッチすることができるのか勝負しに行く。〈自家発電〉とは主催者、ライヴハウス、観客がそれぞれの立場で貪欲に楽しさを競い合うような他に類を見ないイベントなのである。

■開会宣言(VTR)

ファンクバンドTHE BASSONSとしての活動もはじめたラッパーのダースレイダーが登場。燃えるゴミであるところの人間がポイ捨てを一向にやめない。このままでは未来はノーフューチャー、ゴミの仕分けがみんなできるようになるか今日のイベントで証明してほしいという予期せぬ角度からの要望をフリースタイルで叩きつけてきた。さながら禅問答のようであるが言ってること自体はおおむね賛同できるので「あ、はい…」と心の中で小さくレスポンスを返した。

■謎の中華料理屋店主よんまが開く混沌とした世界への扉

岐阜県在住のマッドサイエンティストKaseoがこの世に解き放った地獄の電化ネズミ「ピカルミン(音や振動に反応して大谷育○が泣き叫ぶ玩具)」と出前で用いる「おかもち」を改造したモジュラーシンセで構築される異形の電子音楽。ハーシュ、グリッチ、パルスといった雑味の吸着した素材をファニーな味付けに仕立てながらも、ここぞという時にはおかもちを机に叩きつけて邪悪な破裂音をまき散らすというエッジの利いた調理手腕に心がざわついた。サウンドシステムの視覚的な面白さもあわせて〈自家発電〉という混沌を極めた世界の入り口としては最適な人選だったように思う。

■〈自家発電〉の水先案内人DJオッチーが仕掛ける狡猾な罠

ラインナップを見てもらえばわかるように〈自家発電〉は闇鍋感が強いので、転換ごとに気持ちを切り替えることが求められるのだが、DJオッチーはそのことに対して意識的に自らの豊富な音楽知識から親和性の高い選曲で、次の出演者のもとに導いてくれる水先案内人とも言えよう。はやのみこみの前には全く聴いたことがない頭がグニャるようなGOVINDA(ゴビンダ)を流していて、それがあまりにも気になったから直接ご本人に質問をぶつけてみた。
「これってクーラシェイカーですか?」
「いや、浅川マキ」
ひとつの気づきを得た。

■四谷の聖飢魔Ⅱとえっふーの邂逅

Cyclopsはゴブリン(千葉が生んだロック界のリーサルウェポン)、シャーマン(観客の脳髄から消えることのない衝撃を刻み付ける呪術能力者)、スガシカオ(偽者)による打ち込みメタル・バンドである。四谷の聖飢魔Ⅱという異名が示すように、悪魔的なメイクをほどこし、時にコミカルな寸劇を交えながらも、演奏そのものは破滅に向かって加速するツインギターと伸びやかなハイトーンが織り成す純国産の鋼鉄サウンド。彼らの楽曲に何らかのシンパシーを感じたのかもしれないが「えっふー」と呼ばれる絶叫する60度のファンがいち早く彼らのパフォーマンスに反応してフロアのテンションを一気に引き上げたことが強く印象に残っている。そういえばかつてえっふーはI love you Orchestraの放つケミカル・パンクに対してヲタ芸で呼応したという逸話もあるくらいなので柔軟なセンスを兼ね備えている人が多いのかもしれない。

■はやのみこみが舞台上から伝えたかったこと

「肌は白いし、腹は黒いし、戸籍真っ白、お先真っ暗でございます…」
レペゼン東京演芸協会、はやのみこみは自己紹介からガッツリとパンチラインを放りこんできた。風呂敷漫談という触れ込みながら一向に風呂敷を使うことなく序盤は自らの半生を語り出す波乱含みの展開。気がつけば胃に優しい酒の飲み方、過活動膀胱に対する予防策、緊急時のトイレとして使える牛乳パックのポテンシャルの高さ、ストローを使ったダイエット方法にまで話が脱線し狂っている。さながら伊東家の食卓に迷い込んでるような錯覚に陥るが風呂敷芸が全くなかった訳ではない。例えばレジ袋、バケツなどは一枚の風呂敷を巧みに結んで開いてそれっぽいのを作ってしまう。たしかにすごい。ただ誤解を恐れずに言えば彼女の芸の本質は風呂敷芸そのものではないように感じた。おそらくモノを大事にする、ゴミを増やさないという環境問題に対する提言なのではないだろうか。素っ頓狂にも思えたダースレイダーの開会宣言が伏線だったとすればまさにこれ以上の説得力はないだろう。なんて最もらしいことを書いているが、最後になってそれまでの流れをあざ笑うかのように「花の名前を言いたいから言わせて… いくつ出てくるか数えてください…」と吐き棄てるやいなや、速攻で狂気を孕んだ一人芝居が始まった。

「みこみちゃん… 僕のスイセンする青年がいるんだが百聞は一見にシクラメン適当なバショウで会ってみてくれないか… 以下略」

静まり返るフロアに響き渡った180秒にも及ぶロングバースの衝撃。結局のところ彼女が舞台上から伝えたかったことはいろんな花の名前であった。

■人々は何故ヘドバンやサークルモッシュをするのか

はやのみこみが残した強烈な余韻に臆することなくステージに登場したのが絶叫する60度 with 6% is mine。重心の低いパンク・サウンドと少女たちが放つ激情が互いに螺旋を描いてどこまでも強く太く上昇していくのに対して、最前線で戦いを共にする「絶」「魁」なる極太フォントを背中に宿したえっふーも負けてはいない。己の理性というか人間としての尊厳と引き換えにしてまでヘドバンやサークルモッシュで呼応する。

人々は何故ヘドバンをするのか。

リズムにのっているのではない。浴びせられる音楽に全力で頷いているのだ。最上級の全肯定とも言えよう。人々は何故サークルモッシュをするのか。ぐるぐる回ることで音楽と一緒に自分がバターのように溶けてなくなりたいのだ。まさに至高の愛情表現である。何を馬鹿げたことをと思われるかもしれないがあながち大げさでもないような気がする。

■不謹慎という名のフォルダを破壊し続けるバカ社長

亀のギターがかき鳴らす咆哮を合図に、バカ社長の死の絶叫、斉藤さんの優しい笑顔、ロボットのかわいいダンス、コーラスはするが基本的には棒立ちのシェフ、存在そのものがナードコアな外国人、堅実なリズム隊がそれぞれ干渉し合って芸能人の名前や誹謗中傷もろとも自爆上等で突っ込んでくる唯一無二のハードコアパンク。とくにバカ社長という稀代のキ○ガイは何の躊躇もせず観客の心の中で圧縮されている不謹慎という名のフォルダを破壊し続ける。芸能界に蔓延する薬物問題を取り上げた曲のサビで次に捕まりそうな人を勝手に決め打ちしたあげく何度も何度も絶叫しているその光景なんて不謹慎の極みでしかないが、そういったことに対して笑ったり興奮したりするのはもう人間である以上は避けられないことなのだ。つまり何が言いたいかというと猛毒超最高。

■ポイステ、ダメ、ゼッタイ

介護猿として訓練されることもあるというほど高い知能をもつフサオマキザルのジュジュ(女の子・4歳)と猿のコスプレをした彦摩呂似のお兄さんによる猿回しパフォーマンス。キャッチボール、輪投げ、玉乗り、といった定番を可愛い仕草とともに、なんなくこなすジュジュとエネルギッシュに発汗するお兄さんとの対比が凄まじい。いちばんの見せ場となったポイ捨てされたゴミを分別して捨てるという芸の成功率は八割程度だったと記憶しているが、それでも立派なものである。ダースレイダーが仕掛けた環境ビーフに対してはやのみこみとジュジュがそれぞれのスタイルでアンサーを返すという世界線の上で私たちは生きているのだ。

■実の娘もナンパしてしまうレベル・ミュージックの体現者RANKIN TAXI

網シャツ姿でいまだ衰えることのない性欲をアピールしていたり、実の娘と気づかずにナンパしちゃったなんて話もする可愛らしさに事欠かないお茶目なおっちゃんだが、何と言ってもレゲエのリディムに日本語をのせたジャパニーズ・レゲエのオリジネーターという凄まじい経歴の持ち主なのである。緩く聴こえるサウンドにも根底にはぶっとい低音の意志が強く宿っているし、歌詞には体制や政府に対しての反逆・反抗といった思想が色濃く反映されている。音楽に政治性は云々なんて話を目にする機会の多い昨今、ともすればゴリッゴリにストロングスタイルなレベルミュージックとして響きそうなギリギリのところでお姉ちゃんとヤりたいだの気持ちいいのキメたいなんてフレーズをねじ込んでくるバランス感覚に心がふわっと軽くなった。

■非常階段を構成する三本の矢に対しての考察

JOJO広重、T.美川、JUNKOのトリオで始まった演奏は銃弾の初速さながらの恐ろしいスピードで鼓膜を突き破ってきた。激しい耳の痛みと同時進行で逆流する血液が理性と衝突して感情を破裂へと導いてくる。なんとか態勢を整えて雑音の正体を探るべく丹念にステージ上を見つめはじめると三者三様の個性が浮き彫りになってきた。四谷アウトブレイクに充満する気のようなものを右手に取り込んで弦(もしくはピックアップ)に還元させることで瞑想をもたらすような残響を奏でる広重に対して、配備された様々な殺戮兵器の性能を感情に支配されることなく実戦経験で培われた常勝理論によって余すところなく引き出す美川といった感じか。対照的なアンサンブルに挟まれるJUNKOの叫びは意味を見出すことが困難なところまで振り切れている究極の極端。個としての尊さが尋常ではない。猛威を振るう雑音に身を委ねて発狂するもよし、掻い潜った先に広がる音楽的な素養に触れるもよし。全ての音が鳴り止んだ瞬間のカタルシスを願わくばよりたくさんの人たちと共有したいものだ。

■異種交配によって生みだされた怒濤のあるある三連発

非常階段の演奏で冷めやらぬ熱狂の中、それでもなお刺激を求める俺たち欲しがり屋さんの前についにソプラノサックスを手にしたレイザーラモンRGが姿をあらわした。「雑音」と書かれたTシャツに身を包み、両手にはあの方を彷彿とさせる黒い手袋を装着。整い狂った臨戦態勢そのままにノイズ界のレジェンドに対して渾身のブロウが炸裂… するはずだったのだが気負いすぎたのか「ピ〜ヒョロロロ〜」というFAXライクな音になってしまったことはさておき。

コラボの1発目は「ウィー・アー・ザ・ワールド」にのせてノイズあるある。アフリカの飢餓と貧困層を解消する目的のもとに著名なアーティストが集結して作られたキャンペーン・ソングにして世界中が感動した名曲がノイズで塗りつぶされる背徳感に、脳髄が痺れたし微かに聴こえる原曲の輪郭に懸命に手を伸ばしあるあるを紡ぎ続けるRGの胆力に脱帽した。後半のサビではマイクを促されたT.美川がボブ・ディランのパートを熱唱するというサプライズ。サゲは「聴いてると耳が慣れてくる」。

続いて披露されたのが「ボヘミアン・ラプソディ」にのせてライヴハウスあるある。フレディ・マーキュリーの性的指向を暗に示しているのではないかと物議を醸したクイーンの代表曲である。ひたすら「ライヴハウスあるある早く言いたいよ〜」を貫き通すRGに対して、これがテレビの収録現場ならばひな壇芸人から「早く言えよ!」とガヤが入るのだが、そういった約束事を観客が忘れてしまうくらいRG階段は音楽的に機能していた。「よく合わせらますね」と感心するRGに対して「ノイズのプロですから(微笑)」と返した広重の説得力がエグい。サゲは「床がいつもビショビショ」。

最後は「ロマンスの神様」にのせて非常階段あるある。合コンでいい男を捕まえようと企む女性心理をストレートに表現した広瀬香美の大ヒット曲。ノイズとあるあるが世界を救うのかは大いに謎だがフロアにマイクを向けられた瞬間ボーイミーツガールレスポンスが発動する双方向コミュニケーションが無条件に楽しすぎる。いつまでもずっとこの気持ちを忘れたくない。サゲは「楽屋ではめっちゃ静か」。

■閉会宣言(VTR)

パール兄弟30周年コンサートの成功が記憶に新しいサエキけんぞうによる閉会宣言はろくろを回しながら自身の告知に終始するというアナーキーなものであった。脈絡のなさにグッときたが言ってること自体はおおむね興味があるので「あ、はい…」と心の中で小さくレスポンスを返した。

■あとがき

自家発電。この混沌を極めたゴキゲンな催し物の魅力をなんとかして誰かに伝えたいといつも思っている。義務や責任感とは無縁のところで単純にひとりでも多くの人と「自家発電ヤバいよね!」「意味わかんないけど超楽しい!」って感動や興奮を共有したいというのがいちばんの理由。自己本位であることは否めないが、んなこたぁどーだっていいのだ。

いったいどれだけこの稚拙な文章を読んでもらえるかわからないけれど少しでも興味をもってくれた人がいるならばどうか騙されたまま四谷アウトブレイクに遊びに来てほしいと願っている。頭の中を混沌で埋め尽くされるなんてことは自家発電でしか経験できないと断言してしまおう。自家発電はいいぞ。 (text by nong02)

写真 : 月夜野ヒズミ



いかがだっただろうか? イベントのカオスさが伝わったのではないだろうか…? なお、“RG階段”の動画は近日中にアップされるとの事!! 自家発電のTwitter、Facebook等でも告知されるとの事なので、フォローして待つべし。

また、次回の自家発電は2017年1月29日(日)に、ヴィレッジヴァンガードのサポート付きで開催予定。さらなるカオスカルチャーが生まれる瞬間を期待して待とう。

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