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2014年12月13日13時00分

 
振り絞る言葉×ノイズ×パフォーマンス! 非常階段、QP-CRAZY、SIMI LABが競演した〈自家発電Vol.4〉ーーOTOTOYライヴ・レポート
 

イベント・オーガナイザー、Gokaと、彼女が所属するCD / DVD流通会社「BM.3」、そしてライヴハウス「四谷アウトブレイク!」の協力によって開催されているイベント〈自家発電〉も、ついに通算5回目! ジャンルを問わず様々なカルチャーへの愛を異種格闘技的ブッキングにて昇華させ、その結果、アイドル×ノイズという新たな方向論を提示するまでに至ったこのイベント。“speak & spell”と名付けられた今回のテーマは、“hip-hop”との融合!? イベントの新たな可能性を垣間見た濃密な一日をレポート!
 
■第一部〈映画『ビッチ』上映&トークショー〉

今回の自家発電は、前回に引き続き、性をテーマにした映画との2本立てとなった。前回の『テレクラキャノンボール2013』が、AV男優によるナンパ&カーレースでの悲喜こもごもが謎の感動をもたらす内容であったのに対し、今回の『ビッチ』は、女性の性に真摯に迫ったドキュメンタリー作品である。『テレキャノ』に限らず、男性向けの性風俗や文化はある程度大っぴらにしても許される土壌がある中で、女性自身の性生活や女性向け性風俗に関してはまだまだ公にはしづらい状況がある。だが、ネットの普及を出発点に、徐々に状況は変化しつつあるのではないか――そうした女性における性の現状を、女芸人である椿鬼奴が探るというもの。

シモネタ嫌いである椿鬼奴の視点というのがこの映画にとって意外にも重要で、メインテーマと彼女に距離があることで、女性の性生活に疎い男性や、鬼奴と同じくシモネタ嫌いの女性でも鑑賞しやすい間口の広さが生まれている。実際に取り上げられている内容としては、男性との経験人数や交友関係に関する赤裸々なインタヴュー、女性におけるマスターベーションの実態から、「レンタル彼氏」や「性感マッサージ」といった女性用性風俗の紹介など。基本的には真面目な切り口であるが、その真面目さが笑いにつながる場面もあり、堅苦しい作りにはなっていない。全体的に駆け足な部分もあり(制作期間がかなり短かったとのこと)、最後は瀬戸内寂聴のお言葉を頂戴して終わるのは若干の「お墨付き」感が拭えなかったが、それでも意義のある作品になっている。

本編の上映が終わると、プロデューサーの五箇公貴(TV東京)、監督の祖父江里奈(TV東京)、映画原作『ビッチの触り方』の作者・湯山玲子に加え、劇中に出てくる「熟女好きトーク」にてロバート・秋山竜次と抱腹絶倒のやり取りを繰り広げた漫画家・東陽片岡が登壇。制作秘話や女性の性生活の現状について、改めてトークを繰り広げた。湯山の冷静かつ客観的な分析と、人妻デリバリーヘルスを経営していた頃の片岡の想い出話という、両極端な内容がトークの中で展開されていく様子は痛快ですらあった。また、〈性感マッサージ〉における過度にロマンチックな未公開映像も上映され、その衝撃は一瞬にして場を支配していった。

〈自家発電〉の根幹には、「日常生活ではなかなか目に入らないが、その実態を知ると興味深いもの」をフックアップするコンセプトが見えるが、『ビッチ』の上映も、まさにそうした流れを汲んで行われたものであると言える。最後は、女性用のマスターベーショングッズを抽選でプレゼントしたのち、主演の椿鬼奴によるビデオ・メッセージで締めくくられた。
 
■第二部〈ライヴ〉

・DOTAMA
第二部は、“speak & spell”というコンセプトの下に集ったアーティストたちが続々と登場するライヴ・パート。先陣を切ってステージに上がったのはDOTAMA。トラックメイカー・デュオFragmentが主宰するレーベル「術の穴」に所属するラッパーで、全国規模のフリースタイル・ラップ・バトル「UMB」でも結果を残し続けている実力派バトルMCである。井上三太原作、園子温監督の映画『TOKYO TRIBE』にも出演するなど、話題に事欠かない彼が綴るのは、10年に及ぶサラリーマン生活で感じた悲哀や憤り。会社員の日常やキモチをラップするユニットというのは今では珍しくないかもしれないが、単なる愚痴や嘆きに収まらず、個と社会の対峙 / そこから派生する社会の矛盾にまでスムーズに内容を飛躍させていくスキルはさすが。

特に、第一部で上映された『ビッチ』へのアンサーとして繰り出された速射砲のようなフリースタイルは、まさに彼の真骨頂だった。一方で、フリースタイル後に「さっき練習していたよりも下手になった」という、オチのようなMCにも可愛げがあって、アイドル・ファン、ノイズ・ファン、hip-hopファンが入り交じるフロアを見事に沸かせていった。

・ドブロク
〈自家発電〉には、四谷アウトブレイク! 佐藤(学)店長イチオシのアーティストも出演するが、今回、殴り込みをかけてきたのは、今年OUTBREAK RECORDSから新作『Do the EMO!!!!』をリリースしたスリーピース・ロック・バンド「ドブロク」。ドラムのメンバー・チェンジを経つつ、その活動歴はすでに16年を数える彼ら。ベースのハラダイス(原田真悟)は、かつて「ミドリ」のサポート・メンバーを務めたことも。サウンドは、シンプルなフレーズの繰り返しからじわじわと熱量を上げていくポストロック的アプローチがなされているが、それにより田中寛司のヴォーカルが異様なまでの存在感を持つに至り、バンドならではの磁場に繋がっている。田中のヴォーカルは、ラップやポエトリーの要素も取り込みつつ、しっかりとした発音で放たれるのが特徴的で、熱の込められた言葉がきちんと意味を伴って胸に迫ってくる。

ベテランだからといって成熟を求めているのではなく、日々変わっていく感情を思い残すことなく伝えようとしている姿勢は、まさにプリミティブでエモーショナル。一方で、そんな言葉に収斂されることを拒むかのような飄々とした振る舞いも印象的だった。
 
・QP-CRAZY
〈自家発電〉は、最凶のアンダーグラウンド・レーベルとして知られる「殺害塩化ビニール」とその主催イベント「殺害サミット」へのリスペクトを掲げたイベントでもある。開会宣言&閉会宣言に文化人や芸能人をブッキングするのはそのオマージュであるし、毎回参加しているDJオッチーも、殺害塩化ビニールからリリースしているジャーマン・ニューウェーブ~テクノ・ユニット「バロムワン」のリーダーだ。

前回は、レーベルの中では若手と言える「流血ブリザード」が見事な暴れっぷりを見せて会場を混乱の渦に巻き込んだが、今回はレーベル・オーナー、ザ・クレイジー・SKB(=バカ社長)率いるQP-CRAZYが久々に登場。のっけから鎌を持ったSKBがおもむろにフロア内を闊歩し、緊迫感が一段と高まった中で、ヘビィでファストなハードコア・チューンを次々と叩き付けていく。そんなサウンドの先導役として、様々な表情を見せるSKBのシャウト。DOTAMA、ドブロクが「伝える」ために紡いでいたのは異なる、刹那的なエモーションを刻むための声――その強靭さはやはり無二であった。もちろんパフォーマンスは勢いを落とすことなく攻めの一手で、火花を豪快に散らしたかと思えば、羽毛をまき散らすライヴハウス泣かせのストロング・スタイル。とはいえ、羽毛→火花の順番であれば確実に引火・炎上しているので、そのあたりの計画性にも彼らの年輪を感じたことは記しておきたい。
 
・SIMI LAB
“speak & spell”と題された今回のひとつの軸として考えられていたのが、神奈川・相模原を拠点とするhip-hopチーム、SIMI LABである。アメリカ人とのハーフであるOMSB'EatsとMARIA、ガーナ人とのハーフであるDyyPRIDEなど、その出自もバラエティに富み、ビジュアルとしても圧倒的なオーラを放っている彼ら。ダークな質感で覆われたトラックと、複数名のMCから繰り出される攻撃的なリリックからは、マイノリティとしての孤独感と悲壮感が滲む。

〈普通って何? / 常識って何? / んなもんガソリンぶっかけ / 火付けちまえ〉
(「Uncommon」 / 1stアルバム『Page 1:ANATOMY OF INSANE』より)

――普通であることが許されなかった、彼らだからこその説得力、エネルギー。そんなSIMI LABの世界に、前回の〈自家発電〉にキラースメルズのメンバーとして登場した菊地成孔も魅了され、自身のバンドDCPRGとのコラボレートも行っているほどだ。

さて、この日のライヴは、6MC+2DJで登場。いわゆるクラブ・イベントだけでなく、数々のフェスやロック系の企画にも出演しているとはいえ、さすがにアウェー感のあるイベントであったはず。だが、そんなことはお構いなしに、闇に潜るかのように深く響くベース・サウンドでまず会場の空気を一変させる。ときに各人のソロ曲も挟みつつ、紅一点のMARIAも含めた6MCでの絶妙なマイクリレーでテンションを高めていく彼ら。やはりそのビートは重くダークであるが、ダンス・ミュージックとしての快楽性は予想以上のもので、心地良い。さらに、「これ青春だね!」とメンバーがつぶやくのも頷けるほどの疾走感もそこにはあった。終盤を迎える頃に見られた、オーディエンスが一体となってハンズアップする光景――それは〈自家発電〉の歴史に刻まれる名シーンになったように思う。
 
・プラニメ
プラニメは、BiSのメンバーであったカミヤサキと、いずこねこの茉里(ミズタマリ)が新たに結成したユニット。今年惜しまれながらも解散したBiS / いずこねこはどちらも過去の〈自家発電〉に登場しており、出演自体は二度目となる。オープニングからEDMテイストのアグレッシブなダンス・チューン(プロデュースはBiSも手がけた松隅ケンタ)を連発。そのアッパーなサウンドに呼応するように、ふたりも躍動的でキレのあるダンスを展開していく。その動き、まるで獣のような激しさ。BiS、いずこねこの“幻影”を切り離して活動するにはまだまだ時間がかかると思われるが、「これからがスタート」と言わんばかりの、フレッシュで気合いの入ったパフォーマンスが印象的だった。一方で、ファンと軽妙なやり取りを見せるMCには余裕があり、これまでの場数の多さを感じさせるものだった。
 
・初音階段~非常階段
プラニメが再び登場することを約束してステージを去ると、「初音ミク」と非常階段とのコラボユニット・初音階段が登場。白波多カミンに代わり3次元初音ミクを引き継いだ二代目ミク=るしゃと、JOJO広重、T・美川がステージへ。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド「宿命の女」やジャックス「からっぽの世界」といったレジェント・クラスの楽曲を、3人はノイズとヴォーカロイドで解体・再構築していく。突き詰めれば電子音でしかない無機質なヴォーカロイドの声も、JOJOと美川から放たれるノイズと折り重なることでその質感がリアルタイムで変化し、結果的に生命力を帯びていくようであった。また、るしゃによるミクにも場を引き寄せるオーラがあり、彼女がセンターに位置することの重要性も改めて感じたライヴだったと言えるだろう。perfume「エレクトロ・ワールド」のカヴァーは意外でありながらもハマっていたし、ラストに披露された裸のラリーズ「白い目覚め」は、ロックとしてのダイナミズムに満ちた名パフォーマンスであった。

その後、一旦るしゃがステージを降りると、JOJOと美川のデュエット編成による非常階段での演奏がスタート。JOJOはギター一本でで、対する美川は“speak & spell”のサブ・タイトルに合わせ、同名の玩具(※元々は1970年代後半にアメリカで発売された、英単語勉強用の教育玩具。シンセが英単語を“喋る”構造で、電子楽器とも言えた)をサーキット・ベンディング(簡単に言うと改造)したマシンも用い、ノイズを生み出していく。岡野太のドラムもJUNKOのスクリームもないスタイルははじめて観たが、その迫力と殺傷度は変わらず高いし、ビートがない分、よりノイズに溺れることができた。そこには、同じ非常階段といえど、前回の〈自家発電〉でのパフォーマンスとの対比も明確にあり、見応えがあった。
 
・プラニメ×初音階段
そして衣裳チェンジしたるしゃとプラニメのふたりがステージに戻ると、今回のラストを飾るプラニメ×非常階段とのコラボレートが。楽曲も、「ハッピーシンセサイザー」や「残酷な天使のテーゼ」といった、アニソン~ボカロオリジナル曲で攻め、本編ラストには、プラニメのふたりがコスプレをしていたアニメ『ラブライブ!』から、「僕らは今のなかで」(μ’s)が披露された(ちなみにこのときのコスプレ衣裳は、カミヤサキ手作りのもの)。ラブライブ! 楽曲と非常階段のノイズが交わるという、字面だけ追えば不可思議としか言いようがない状況であったが、現場ではそれが成立していたのは確かである。ノイズは成熟という概念を拒否するものだと思っていたが、やはりそれを生み出すのは人間である。アイドルとのコラボを重ねるうち、非常階段のノイズにもフレキシブルに色合いを変えていくような包容力が高まっているように感じたのも、当然と言えるかもしれない。アンコールではもう一度「残酷な天使のテーゼ」を演奏。第一部と同じく閉会宣言として椿鬼奴のVTRが上映され、〈自家発電〉はフィナーレを迎えた。

・インタレスティングタケシ~DJオッチー
 今回のお笑い枠として幕間に登場したのはインタレスティングタケシ。極度の吃音である彼の日常から生まれた、切なさしかないネタの数々。替え歌を通してもネタが披露されるが、そんな喋りからは一転、ギターを弾きながら歌い始めると至って普通というギャップには萌えてしまった。ドブロクとQP-CRAZYの間、そしてQP-CRAZYとSIMI LABの間という難しい時間でインパクトを残せたのは、ひとえに彼の実力だと言えよう。また、第一回目から〈自家発電〉のレジテントDJとして参加しているオッチーも、今回のイベントコンセプトに沿い、ジャパニーズhip-hop多めのセレクト。ジャンルレス感が回を増すごとに高まっているイベントの中で、「流れ」や「ムード」を生み出す職人ぶりは今回も充分に伝わった。

フロアにぬいぐるみをばらまいたり、フードにキワドイネタを入れて買いづらくしてみたりと、イベントを日常とは違う異空間にしようとする意図は今回もうかがえた〈自家発電〉。もし、このイベントが2、3回で終わっていたら「変わったイベントがあったね」というポジションでしかなかっただろう。だが、もう5回も開催したのだ。ちょっとした伝説を拒否して継続性を選んだわけで、その継続が生み出すムーブメントに僕は期待したいと思う。(森樹)

〈自家発電 vol.04〉

2014年11月23日(日)四ツ谷アウトブレイク


〈第一部 : 『ビッチ』上映会&トーク〉

OPEN 13:30 / START 13:50

◆トーク出演 : 湯山玲子 / 祖父江里奈(監督) and more!!
『ビッチ』(70分)

出演 : 椿鬼奴、瀬戸内寂聴、上野千鶴子、岩井志麻子、秋山竜次(ロバート)

監督 : 祖父江里奈

第5回沖縄国際映画祭出品作品 ©2014 テレビ東京 / 吉本興業



〈第二部 : ライヴ&ショウ〉

OPEN 17:00 / START 17:30

◆出演 : 初音階段 / QP-CRAZY / SIMI LAB / DOTAMA / プラニメ / ドブロク / インタレスティングタケシ / プラニメ×初音階段 / DJ オッチー


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