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2013/01/04 14:02

 

Magdalaが教会を舞台に心洗われるスペシャル・ライヴを披露――OTOTOYライヴレポ

 

夢中夢」のボーカリスト、ハチスノイトと、ロックバンド「Aureole」の中心人物でkilk recordsを主宰する森大地によるユニット『Magdala』が、東京都内にある教会、ルーテル市ヶ谷の礼拝堂でオーケストラ編成によるスペシャル・ライヴをおこない、その心洗われる世界観で観客を魅了した。

11月中旬からスタートした『Magdala』レコ発全国ツアーのファイナルとして用意された場所は、マグダラが創り出す音楽の世界観を表現する上で、これ程相応しい場所は無いであろう、教会の礼拝堂。このライヴの為に編成された〈Magdala with Cocoon Orchestra〉として、森とハチスノイトの他、バイオリン、ビオラ、コントラバス、マリンバ、コーラス隊2名、ドラム、ピアノというオーケストラを加え、総勢10名の大編成でのステージとなった。

共演者達の演奏が終わり、午後9時近くに始まったMagdalaのライヴは、アルバム『Magdala』の1曲目「ユリイカ / Eureka」からスタート。打ち込みで流される音が礼拝堂に設置されたパイプオルガン(かつてオルガン設置時にはヴェルサイユ宮殿礼拝堂オルガニスト、ミシェル・シャピュイ氏を招き記念演奏会もおこなわれたという)から出ているかのように荘厳さを演出する。オープニングから既に音楽と会場がマッチしているのがわかる。そしてハチスノイトの歌声は、礼拝堂の高い天井から降り注ぐ柔らかい光のように客席に届けられる。2曲目、一転してドラム、マリンバ、ピアノが激しく競い合うかのようなビートを刻む、プログレッシヴなナンバーへ。森の挟み込むヴォイスも相まって、70年代初期のピンクフロイドを彷彿とさせる不穏な印象を醸し出していた。

再び小春日和のようなゆったりとしたサウンドにハチスノイトが伸びやかなヴォーカルで周囲を包み込む「ゆめの蜜 / Seiren」。教会特有の残響音がハチスノイトのハイトーンでありながら柔和な声質をより際立たせている。時折カオスパッドで色を付けるのもユニークだ。そして「記憶のかえるところ / memories」へ。アルバムのリード・トラックであるこの曲はMagdalaの楽曲の中でもポップで親しみやすく、耳に残る曲だ。

ライヴはアルバムの曲順通りにおこなわれ、曲間にハチスノイトが「ありがとうございます」という他はMCは無し。全体が一つの組曲のように進んで行く。それをコントロールする森の表情から、参加ミュージシャンへの信頼感が見て取れる。続いてハチスノイトのスキャットとともに、激しいビートが雷鳴のように響くドラムのアレンジが目立った「希求 / seek」。アルバムの中では調和されていて控えめに思える打ち込みのビートが強調されていた。優しいメロディがハチスノイトを聖母マリアのように映した「揺籠 / cocoon」を挟み、静と動の対比で一際力強い響きをもって演奏されたのが7曲目の「境界の迷宮 / Labyrinthus」。心臓の鼓動のように打つバスドラと、マリンバ、ピアノの絡みが生み出すリズムに乗って運ばれるハチスノイトの高音ヴォイスが聴く者の気持ちを高揚させる。

そしてアルバムのハイライト、「アン / Ann」へ。ハチスノイトのポエム・リーディングは礼拝堂という場所もあいまって、救いを求めて教会に集まった人々を前に何かを説いているかのようだ。次々と展開する物語に合わせて演奏も景色を変えていく。演奏が止まり「10、9、8、7…」静まりかえった礼拝堂に数字を数えるハチスノイトの声がゆっくり空気を震わせる。思わず息を飲んでしまった。そしてエンディングの短いインスト曲「何度でも、 / forgiveness」へ。演奏が終わり10人のメンバーがステージ前方に揃うと、客席からは大きな拍手が沸き起こり、しばらく止むことがなかった。

オーケストラ編成でのライヴということもあり、しっかりと作りこまれたアルバムの再現となっていたことに加えて、アルバムの楽曲が本来持っているビートが、ドラム・ベースというバンド形態のボトム楽器が入ることによりライヴではクッキリと輪郭を持って表れる所が実に面白いと思えた。そして、今年一年を締めくくるに相応しいシチュエーションと心洗われる音楽を堪能できた素晴らしいスペシャル・ライヴであった。来年以降もMagdalaとしてアルバム制作・ライヴ活動共に精力的に活動してくれることに大いに期待したい。 (岡本貴之)

〈Magdala 全国ツアー・ファイナル〉
2012年12月29日(土)東京 ルーテル市ヶ谷(教会)
OPEN 17:30 / START 18:00

出演 : Magdala with Cocoon Orchestra / KASHIWA Daisuke × 高橋英明 / Yasushi Yoshida Chromatic Septet / cokiyu

〈Magdala with Cocoon Orchestra〉セットリスト

1. ユリイカ / Eureka
2. 翳(かげ)はおどる / Tanz der Schatten
3. ゆめの蜜 / Seiren
4. 記憶のかえるところ / memories
5. 希求 / seek
6. 揺籠 / cocoon
7. 境界の迷宮 / Labyrinthus
8. アン / Ann
9. 何度でも、 / forgiveness

Magdala 特集ページ
http://ototoy.jp/feature/index.php/2012120601

[ニュース] Aureole, Magdala, 夢中夢

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