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2024/03/01 17:00

 

【ライヴ・レポート】草野華余子の人生は、“ここからまた、まだまだ”続いていく──「草野華余子presents 産地直送プレミアム ~人生四十周年大収穫祭~」

 

2024年2月25日。東京、渋谷Spotify O-EASTにて「草野華余子presents 産地直送プレミアム ~人生四十周年大収穫祭~」というライヴイベントが開催された。SSWとして活動しながらも、様々な楽曲提供を行ってきた草野華余子。このイベントは、草野のセルフカバーアルバム『産地直送 vol.1』のリリースパーティーと、その40歳の誕生日を祝う誕生イベントを兼ね備えた、いわば草野華余子フェスである。イベントには草野と親交の深いアーティストが出演。その祝いの場を華やかに盛り上げた。

まずトップバッターを務めたのは、草野が完全プロデュースを手がけるアイドルグループ、アキストゼネコ。登場するや、キレッキレのダンスと全身全霊を込めたパフォーマンスで、会場の熱気を序盤から一気に上げていく。そのほとばしる熱いパッションには、間違いなく草野華余子イズムを感じさせた。

2番目に登場したのは、ARCANA PROJECT。interfmで毎週放送中の「相思相愛レディオ」でも、草野と親交の深い彼女たち。さきほどアキストゼネコとはスタイルの異なる、クラシカルなヴォーカルで観客を魅了していく。ARCANA PROJECTは、草野が手がけた“天運ヘキサグラム”、“快晴のエスタリスタ”、“慟哭のトルメンタ”といった楽曲を披露。この日ならではのセットリストで、客席を自分たちの色に染め上げた。

続いてステージに現れたのはuijin。uijinは2020年に一度解散し、その後2022年に再結成。その後もあらゆるイベントに出演し、熱量の高いライヴで観客を魅了しているグループである。彼女たちが1曲目に披露した“ignition”は、草野が人生で初めて1曲を丸々プロデュースしたという始まりの楽曲だ。uijinにおいても草野においても重要な楽曲を、エモーショナルに歌い上げた。uijinはその後も観客の心を震わすパフォーマンスを畳み掛けていく。最後は、草野が再結成後に提供した楽曲“リミライチューン”を披露。新たな未来の到来を予感させた。

アイドル・グループ3組のあとは、ロック・バンド、岸田教団&THE明星ロケッツがステージへ。岸田教団は、草野とはこれまでも何度も楽曲を共に作り上げてきた盟友だ。楽器同士のぶつかり合いのようなバンド・サウンドと、ichigoの客席全てを巻き込むヴォーカルで、一気にヴォルテージを上げていく。岸田教団はライヴ後、グループ初のチェキ特典会も行うという、このイベントのための気合いも十分。気合いが入りすぎたのか、ichigoの衣装のチャックが空いてしまうというハプニング(?)も見られた。岸田教団は最後にゲスト・ヴォーカルとして草野を呼び込み、彼女と共に作り上げた“Reboot:RAVEN”、“nameless story”の2曲をコラボで披露。パワフルなツイン・ヴォーカルが、まさにここでしか見れない景色を創出していた。

岸田教団&THE明星ロケッツの次は、漆黒のドレスを身に纏った鈴木このみが登場。1曲目から草野が提供した“命の灯火”で、ヴォーカリストとしての圧巻のパワーを見せつける。鈴木は途中、振り付けをレクチャーし、客席みんなを巻き込んで踊ったりとフロアとの一体感も抜群。ここにいる人全員を楽しませたい、という想いが伝わってくるようだった。明るい笑顔とスキルフルな歌声が、渋谷Spotify O-EAST全体に響き渡っていた。

と、ここまで5組のアーティストが出演したのだが、これだけジャンルの違うアーティストが大集合する機会を作ることができるのは、やはり草野華余子の人徳があるからこそ。また、この日は客席のテンションやヴォルテージがほとんどと言っていいほど、変わらなかったのがすごかった。このフロアの空気を作り出していたのは、草野の楽曲の求心力によるものだと思う。

そして最後にステージに立ったのは、この日の主役、草野華余子だ。草野はアコースティック・ギターをかき鳴らしながら、まずは“Trigger”を熱唱。歌詞に込められた言葉のひとつひとつが胸に刺さるような歌声で、聴く者の心を鷲掴みにしていく。草野は続いてセルフ・カバー・アルバム『産地直送 vol.1』にも収録されている、西川貴教への提供曲 “一番光れ!-ブッチギレ-”、Fairy Aprilへの提供曲 “スリルを頂戴”(リズムゲームアプリ バンドやろうぜ! 挿入歌)を立て続けに披露。作家として素晴らしいメロディーを生み出すことに定評のある草野だが、ヴォーカリストとしての実力も群を抜いている。ハードなロック・サウンドと力強い歌声が、勇気を与えてくれるようだった。

今回の草野バンドは、はやぴ~(Gt/岸田教団&THE明星ロケッツ)、堀江晶太(Gt/PENGUIN RESEARCH)、イガラシ(Ba/ヒトリエ)、モチヅキヤスノリ(Key)、みっちゃん(Dr/岸田教団&THE明星ロケッツ)、坂井伽寿馬(Mani)というメンバー。なかでも、普段PENGUIN RESEARCHではベースを弾いている堀江晶太と、はやぴ~のツインギターはこのライヴでしか見られないかなりレアな布陣だ。

草野のライヴはここからコラボコーナーがスタート。1曲目は、アキストゼネコとともに歌う“endless pulse”。まさに師弟といった関係性が、眩しく目に映る。続いては、uijinと共に“ignition”を熱唱。“ignition”という楽曲はuijinが終焉へと向かうときに作られた楽曲なのだが、この日歌われたこの曲は、どこかまだ見ぬ未来へ向かって全力で走り出している印象があった。こういった楽曲に新たな彩りを加えられるのも、今回のコラボステージの醍醐味だ。3曲目はARCANA PROJECTと共に歌った“たゆたえ、七色”。 6人の美しい歌声が、会場全体を優しく包み込んでいた。自他共に認める草野ファンである桜野羽咲は、登場から終始感無量といった感じで、まさに“相思相愛”な関係性が窺える瞬間だった。

3組のアイドルとのコラボのあとステージに現れたゲストは、草野とはプライベートでもかなり親交の深い、SSWのヒグチアイ。そして、ヒグチと草野のタッグで制作した結束バンドの楽曲“あのバンド”(テレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』挿入歌)をふたりで熱唱。作詞担当と作曲担当による、まさに「生産者表示」なスペシャルコラボだ。ヒグチと草野は楽曲を披露したあとも、親友同士のトークを繰り広げており、これまでの教え子たちとの関係性とはまた違った表情を浮かべていた。コラボブロックの最後は、アイドルたちに負けじと華やかな衣装で、鈴木このみが登場。しかし、そのカラフルな衣装とは裏腹に、ふたりで歌ったのはハードなロック・サウンドが特徴的な楽曲“Bursty Greedy Spider”。草野と鈴木は、この楽曲のテーマでもある「最強」感を存分に感じさせていく。シンガーとしての圧倒的な底力を見せつけていた。

コラボブロックを終えた草野が次に披露したのは、LiSAへ提供した楽曲“紅蓮華”。言わずと知れた大ヒット曲であり、草野としても大きな転機となったその曲を、大切に大切に歌い上げていく。草野はさらに “それでも、まだ”を披露。どんなことがあって諦めない、ポジティヴなメッセージを込めた歌が会場全体に感動を巻き起こしていく。草野が最後に歌ったのは、“カーテンコール”という楽曲だ。この曲を演奏する前に、草野はこの曲の歌詞が何度も助けてくれたのだと話していた。草野がまだまだ音楽を歌い続けているのは、この曲が支えになってるからなのだと感じた。

アンコールでは、草野を含む出演者が総登場(鈴木このみは移動のため、ここには欠席)。一組ずつ順番にステージ袖から出てくるなか、最後に登場したヒグチが持っていたのは、なんとケーキだった。バンド陣はそこから、“ハッピーバースデイ”を演奏。その場にいる全員で草野の誕生日をお祝いし、大きな大きな笑顔がそこら中に生まれた瞬間だった。そこから “僕ら死ぬまで旅の途中”という草野の楽曲を全員で。「草野華余子」という太陽が照らす、陽だまりのような温かな空気が会場中に充満していた。

こうして「草野華余子presents 産地直送プレミアム ~人生四十周年大収穫祭~」はタイトル通りの大収穫で大団円を迎えた。草野はMCのなかで、「80歳になっても歌い続けるから」と語っていたが、彼女の底なしのバイタリティーならばそれはあながち無理な話ではないような気がしている。草野はこれからも音楽を作り続け、そして歌を歌い続けていく。誰よりも音楽を愛し、そして音楽に愛される草野華余子の人生は、“ここからまた、まだまだ”続いていくのである。

取材&文:西田健
photo by "SUGI" Yuya Sugiura(@Sugi_Yu7)

草野華余子 presents 産地直送プレミアム ~人生四十周年大収穫祭~ 草野華余子セットリスト
【日程】2024/02/25(日)15:00開場/15:45開演
【会場】SpotifyO-EAST
【出演 Artist】草野華余子(BAND)、岸田教団&THE明星ロケッツ、鈴木このみ、uijin、ARCANA PROJECT、アキストゼネコ、ヒグチアイ
【草野華余子バンドメンバー】Vo&Gt. 草野華余子、Gt. はやぴ~(岸田教団&THE明星ロケッツ)、Gt. 堀江晶太、Ba. イガラシ(ヒトリエ)、Key. モチヅキヤスノリ、Dr. みっちゃん(岸田教団&THE明星ロケッツ)、Mani. 坂井伽寿馬

草野華余子セットリスト
1 Trigger
2 一番光れ!-ブッチギレ-
3 スリルを頂戴
4 endless pulse with アキストゼネコ
5 ignition with uijin
6 たゆたえ、七色 with ARCANA PROJECT
7 あのバンド with ヒグチアイ
8 Bursty Greedy Spider with 鈴木このみ
9 紅蓮華
10 それでも、まだ
11 カーテンコール
EN 僕ら死ぬまで旅の途中 (全員)

[ニュース] ARCANA PROJECT, PENGUIN RESEARCH, uijin, アキストゼネコ, ヒグチアイ, ヒトリエ, 岸田教団&THE明星ロケッツ, 草野華余子, 鈴木このみ

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