2022/05/20 20:00
この連載は、心にモヤモヤを抱えながら所謂“モラトリアム” な時期を過ごす大学生の私が地元などで参加したライヴで思ったことや感じたこと、考えたことをお届けするコラムです。気楽に読んでただけると幸いです。
第二回目となる今回は、2022年5月19日(木) 渋谷CLUB QUATTROにて行われた〈ドレスコーズ+betcover!!〉のレポート。
今回のライヴはシリーズ化されるというドレスコーズ主催ツーマンイベントの第一弾。記念すべき初回は、ガレージロックからソウルまでジャンルレスの壁を超えた独自の才能で注目を集めているbetcover!!との共演となった。
開場されてフロアの中に入ると1人1マスの立ち位置が設けられており、等間隔に距離を保てる仕様となっていた。そんな中でも開演間近となると、フロア内はたくさんの観客でいっぱいになった。ライヴハウスにこれだけ多くの人が集まる光景を見るのはいつぶりだろう、と嬉しい感傷に浸っているとbetcover!!のパフォーマンスが始まった。
渋いスーツ姿で登場した彼らは40分間、圧巻のパフォーマンスを披露して多くの観客の心を鷲掴みにした。体に振動が伝わってくるほどの音圧、ときに浮遊感を感じさせるメロディと歌声、そしてボーカル・柳瀬二郎の予測不能な動きがたくさんの人を惹きつけた。
そしてドレスコーズの登場。約9ヶ月ぶりのライヴということで、どんなバンド編成や衣装でパフォーマンスが行われるのか、ファンの期待が高まる。一曲目はアルバム『ジャズ』より「ニューエラ」、後ろから明るいライトがバンドメンバーを照らし、朝が来たかのような清々しい始まりを感じさせた。そして人気曲から菅田将暉の提供した「りびんぐでっど」のセルフカバーまで、あまりライヴでは聴くことができないレア曲を演奏してファンを沸かせた。
ライヴ中盤には新曲「エロイーズ」が初披露された。ボーカル・志磨遼平は昨年より音楽劇『海王星』の音楽監督を務めており、その経験を経て気持ちが新しくなったのだと語ってこの曲を紹介した。一周回って新しい気持ちになっても尚、切ないラブソングを歌う姿にドレスコーズらしさを感じることができた。
そして本編最後にはファンおなじみの名曲「愛に気をつけてね」が披露された。曲前に志磨は「お体には気をつけてね、まだまだ、まだまだ気をつけてね」とフロアに語りかけ、続けて「あと、愛に、愛に気をつけてね!!」と叫んだ。観客の歓声は無言でありながらも会場のボルテージは最高潮に達し、アンコールも加えられてライヴは終了した。
ライヴハウスを目指して電車に揺られたり、チケット画面を用意したスマホを握りしめて整理番号が呼ばれるのを待ったり。コロナ前は普通だったこが、今では一つひとつが新しい特別に思えてくる。久しぶりのライヴだったドレスコーズも同じような気持ちだったのではないだろうか。
段々とコロナ前の生活に戻りつつあるけれど、当たり前のように過ぎる毎日をもっと大切にしていたいと思う。今日は当たり前だったことが明日には無くなっていて、いつまでも取り戻せないかもしれない。だからこそ、またライヴハウスでドレスコーズの熱い対バンが見られるように、自分自身の日常を大切にしていこう。
文・写真 田代芽生