2015/01/27 20:06

お笑いコンビ、平成ノブシコブシの徳井健太がハイレゾに挑戦!!

T.K.resolution〜ゼロから学ぶハイレゾのこと〜【第3回】ハイレゾを作っている人に会いに行く

徳井健太 (平成ノブシコブシ)

皆さんお待たせいたしました、「ハイレゾ」を学ぶ、第3回目、最終回です! 前々回前回から引き続き、お笑いコンビ・平成ノブシコブシの徳井健太が頭と体でハイレゾの知識を身につけます。今回は実際にハイレゾを作り出しているSabão(シャボン)のふたりに突撃取材。今まで学んだ知識を正面からぶつけます。さて、どうなることやら…。 いつものように、徳井の導入文をじっくり読んでからスタートです!

エピソード2 (text by 徳井健太)

子供の頃、良くシャボン玉を吹いた。

当時はただ、ふわふわフワフワしてるだけの、子供の玩具だと思ってた。

自分が親になって、自分の子供がシャボン玉を吹いているのを見た。

まぁ、やっぱふわふわフワフワしてた。

シャボンの玉は風に煽られ上に行ったり下へ行ったり、右に行ったり左へ行ったり。
けど、不思議と全てのシャボンが、最後は上の方に上がって散る。

前向きで上向き。

なるほど、散るなら上だ。

どうせ散るなら派手に、上見て、子供達の為、未来の為に。

散ろう。

僕はそう、シャボンとシャボン玉から学んだ。

Sabão (シャボン)プロフィール

元Hysteric BlueのメンバーであるTama(Vo.)と楠瀬タクヤ(Dr.)による新しい表現のかたち。ふたり以外のメンバーを定めず、楽曲ごとに異なるミュージシャンの起用はもちろんのこと、音楽以外の業界とも柔軟なコラボレーションを実現できるようなシャボン玉のようなふんわりとしたユニット形式を目的地としている。

>>Sabão OFFICIAL HP

構成 : 田尻菜穂子
写真 : 松本理加

料理人ですね。ミュージシャンは。

徳井 : この連載企画、3回目なんですけど、前回はハイレゾの知識を勉強したんですよ。今回は実際音を作ってるSabão(シャボン)のおふたりに、ハイレゾで音を作る意味なんかを聞きたいな、と思ってスタジオまでお邪魔してます。お皿に入ってる料理をお弁当箱に詰めかえると、具材自体は変わってないんだけど、お弁当箱に詰めるから本来の味とか雰囲気とかを味わえなかった。でもハイレゾだと弁当箱が倍くらいの大きさの弁当箱になって、玉子焼きもふんわりするしっていう。

タクヤ : お皿と同じ大きさくらいの…。

徳井 : ざっくり言うと。だからいいんだよってことを教わりました。

Tama : そういうことやな〜、要するに。ありのままをっていう…。

タクヤ : はしょらずに。

Tama : ぎゅって! ちっちゃい容量に詰め込まずにできたものをそのままって感じなんで。

徳井 : それは作っている側からすると全然違うんですか?

Tama : 緊張感がある(笑)。

タクヤ : 息とかも入るし、細かい、今まで聴こえなかった音もよく聴こえるとかよく言われますけど、やっぱりはしょってないっていうところが…。

徳井 : ちなみにアイドルも聴いたんですよ。聴いてみたところ、個々の声も聴こえましたよね。

タクヤ : おー! お団子にならずに声が!?

徳井 : ちゃんと歌ってるんだってその時に知りましたね。

タクヤ : この子は欠席してなかったなとか(笑)。なるほど…。

左から、タクヤ、Tama

Tama : そういうズルいことはできひんよな、歌ってないとか。

タクヤ : そういうのも目に見えやすくなりますよね。

徳井 : それって聴いてもらう人にはどうなんですかね? ハイレゾにして欲しいものなんですかね?

タクヤ : 聴き手はそこまで意識してないんでしょうね。僕ら自身が「あらま! 全然違う! 目から鱗だ!」って経験があるので、この先も面白いなって。

徳井 : 料理人ですね。ミュージシャンは。「どこどこ産の鯛です」って言われても、正直食う人からしたら分からないじゃないですか。でも料理人はこの鯛じゃなきゃダメだっていうのがあるってことですよね。

タクヤ : 「このエサで二年間泳がせてました」みたいなね。こだわりの部分まで食べられる、聴けるのがハイレゾだったりしますね。 今回、徳井さんと話させてもらうにあたって、自分もそんなに耳良くないし、芸能人格付けとかでパパって聴いても、そんなすぐ分かるってわけでもないけど、明らかになんか違うなって思ったことが数年前にあって。いつもリハーサル・スタジオで練習するんですけど、ロックは割と音が大きいので、小さな割れない音にしといて録音して家で聴くんですね。昔だとMDとかがスタジオについてて、録って、MDとかCD-Rとかががスタジオについてて、録って、家とかで聴くじゃないですか。でも最近、コンパクトなICレコーダーでハイレゾ録音できるんですよ。

徳井 : ふーん。

タクヤ : SDカードに24bit/48kHzかな。わりとCD音源より細かい解像度をそのお弁当箱の大きさで。

徳井 : でっかい御重なんですね。

タクヤ : はい。それがそのクオリティで録れるのを聴いた時に、僕はドラムなんですけど、ブニュとか今踏んでるとか、ペンって当たったか、ブリってめり込んだかみたいな音がしてたんですよ!

徳井 : うわ! そんなん分かるんですか!

タクヤ : それまでだとMDにせよ圧縮されてるし、どういうプレイをしたかは同じなんですけど、ここ力んでたなっていうのが聴いてわかったの、その時が初めてでそれでも5年前ですよ!

徳井 : なるほど。じゃあもっと進化してるってことですか!

タクヤ : ハイレゾ、ハイレゾって言い出す前で。自分にとってはどこが間違ったかが分かるし、これは便利だなって思ったんですよ。

その線を通した時点でちょっと変わるんです

徳井 : そうなのか~。

タクヤ : お料理を弁当に盛りつける職人みたいな。

Tama : 割りとレコーディングってどんなに下手でもちゃんとできるもの、上手く作れちゃうものやけどライヴは誤魔化し効かないから。

徳井 : そうなんですよ。僕も音楽が好きで観に行ったりすると、全然良くねえなとか…。

タクヤ : しかもライヴで聴いてるのとライヴ・アルバムがまた違いますよね。

Tama : ライヴ・アルバムもちゃんとミックスされたりとか。

タクヤ : ライヴのアルバムはまたCDに落とす音質とか、ゲインのレンジで言うと耳で聴くようになってるけどライヴはハイレゾ以上の生やから音のデコボコもあるし。

徳井 : なるほど~!

タクヤ : こういう種類の音楽ジャンルやったらこういう機材を通してみようって。

徳井 : 通してみよう?

タクヤ : 通すだけで音が変わるんですよ。

徳井 : 何を通すの? スピーカーとか?

タクヤ : 違います! イコライザーとかコンプレッサーとか音を積極的に変える機械がいっぱいあって、どういう風に変えていこうみたいなのがあるんですけど、エンジニアさんとかは通しただけでこんだけ変わるっていう予測がもう立ってる。その線を通した時点でちょっと変わるんです。

徳井 : 線を通して音が変わるんですか!?

タクヤ : はい! その機材に突っ込んで、その機材から出てくるものを次のところにいって音を磨いてるんですね。ミックスとか。

Tama : この人だったらヴォーカルをマイクから取ってとか…。

徳井 : はー。じゃあヴォーカルのマイクの線とかで音が変わるってことですか?

タクヤ : はい! 変わります!

徳井 : 変わるんだ!

Tama : 線でも変わる? マイクは変えることはあるけど、線を変えようっていうのは…。

タクヤ : 現場ではあんまりないんだけど、マスタリング・エンジニアはよくやってますね。

徳井 : 歌ってる側からするとどっちがいいんですか? 生の方が?

Tama : 私は生っぽい方が好きです。パキパキに加工されていると、私じゃなくていいやんってなるから。歌うのは誰でもいいって。ていうかもうボーカロイドに歌わせとけばいいやん的な加工をされると、存在意義がないような感じが…。

徳井 : 個性を削られてますもんね。

Tama : そうしてくれるのはありがたいですけど、人間が歌う意味みたいなのがなくなってくるので。

徳井 : 息づかいがあったほうがいいですよね。

Tama : そういう荒削りの部分がある方がリアルな感じというか。

タクヤ : すごい静かな曲が一曲あるんですけど、それでいちばん効果が出ました(笑)。

徳井 : たしかに静かな方が。そうですよね。

Tama : 音の数がアコーディオンとベース、チェロだけっていう静か過ぎてすごく裸ん坊な感じで。全く服着てない感じで歌ってる気がして、それはさすがに恥ずかしかった(笑)。

徳井 : じゃあ、アカペラが一番?

Tama : いや、アカペラの方がまだやりやすいです。楽器とのバランスを取らなきゃいけないので、静かな音でも。

徳井 : へ~!

Tama : アカペラやと自分本位にいきまくれるけど。

タクヤ : ハイレゾでリリースしますよって前もって分かってると、なかった緊張感があるよね。歌う人もそうだし、録る人もそうやった。

洞窟で松明持ってるエリアだけ見えるみたいな

(スタジオに移動して)

タクヤ : 「MILK」の録音はここでやってるんですよ。Hysteric Blue(以下、ヒスブル)っていうのはメイン・ストリームで大メジャー・レーベルで作ったもんなんですけど、今やってるシャボンっていうのは本当にインディペンデントで、自分たちが作ったものを自分たちで作る。でも自分たちには技術も知識も足りないときは、ミュージシャンを呼んできたりします。

徳井 : 今はなんで音楽をやっているのかと聞かれたら、どう答えているんですか?

タクヤ : 音楽の世界が楽しいからですね。あとは奥が深いじゃないけど、やればやるほど見えてくる、洞窟で松明持ってるエリアだけ見えるみたいな。僕、もともとはドラムしかできなかったのに、作曲したりハイレゾのことを今話してるとか。もっと新しいことを知れたり。それを知ったらさらに新しいことを知れたり。

徳井 : ハイレゾももっと進化しますもんね?

タクヤ : しますね! 僕はこの連載で一個だけ絶対言っとかなきゃあかんって思ったのは、なぜ僕らがハイレゾでリリースしたかっていうこと。割と重たいデータになるのにそれでも録ったのは、実は音の良さのこだわりじゃない。映像の世界を見てると、ブルーレイ以後、4Kとか5Kとか出てて。ネットの回線ももっと速くなるはずだから、どこにいてもその映像を受信できるようになるのはほぼ明らかじゃないですか。それなのに音楽データはいつまでMP3なんだろうって思ったんです。データが軽いからっていう意見はもう違うって。音楽は映像よりデータが少ないのに、なんでミュージシャンやレコード会社はやらないんだろう、って。せっかくインディーズで自分たちのやりたいことやってる人が、リリースができますよ、って状態で録っとかないと、ものすごい差を付けられるなって思ったんです。

徳井 : なるほど。

タクヤ : ジブリのアニメが世界でバーン! って賞取れましたとか、日本のアニメすごいなとか映像技術がものすごく評価されてますってわかった時に、「はい、じゃあその音楽は?」ってなったら、今までMP3で聴いてたんで細かいこと分からないですね、っていう音楽家が増えるとよくないなと思ったんですね。できるだけの技術は使った方がいいって。使っていってこそ研かれるんだって。エンジニアさんやプロデューサーさんとかは、データは重くなるし、パソコンの容量食うわで大変だろうし、歌う人とか演奏する人は緊張感もあるし、そういうメリットやデメリットのようなわざわざしんどい思いをするのはあるんですけど、最初に録る時に自分で決めてるわけですから。技術が上がればもっと良い音で録れるようになって、お弁当箱ほぼ無限みたいな。

徳井 : 皿のまま。

タクヤ : そうです皿のまま。それくらい音楽提供の仕方があまりに遅れ過ぎてるなって思ったのがきっかけでした。

徳井 : なるほど! いいですね。前向きですね。

タクヤ : そうですね、誰のためにもならない前向き。自分がやりたいからやってる。

Tama : それにリスナーがついてきて欲しい。

タクヤ : うん、いいって思って欲しい。

Tama : 音楽自体をあまりちゃんと聴く人がいなくなって、とりあえず、携帯で聴く人が多いから良い音を知らない人はすごく多いんですよね。リスナーの人がもっと聴きやすい環境とかになればいいなって。

徳井 : それ、やってくしかないですよね。ミュージシャンの人がきっと。

タクヤ : 便利にはどんどんなるんですけど、便利な時でも良い音だったらもっといいかなって思ってるから、CDをリリースしてないんです。レコード会社から。配信しかなくて、OTOTOYさんも出していただいてます。でもいまだにCDでリリースしてください、って要望は多くて。

Tama : 形として持っておきたい人もいてってことだよね。

徳井 : ハイレゾが普通になって、CDがちょっと今で言うカセット・テープみたいになればいいってことですよね。

タクヤ : そう! CD自体けっこう定着したフォーマットなぶん「CDの音、悪っ!」って感じがなかなか感じられないものなんで、その先の「プレミアムビールのような贅沢感」はデータでは伝わりづらいです。

徳井 : ポップになったらいいんですよね。みんながやればいいんですよ本来は。CDも残しつつ。

タクヤ : 人によっては、物があった方が良い気がするもんな。

Tama : そうやな! やっぱりファンとしてはね、コレクター魂みたいなのもあったりするやん。漫画は、紙の感じは欲しいな、とか、レコードは針を自分でセットしていって聴くのがいいとか…。 モノとして置いておけるようにしたいとか。

徳井 : 世代できっと変わってきたんですよね。

タクヤ : ちょうど僕らの世代だと思います。15年前くらい。僕らがギリギリ、アナログでレコーディングしてたんですよ。

徳井 : アナログでレコーディングなんてあるんですか!?

タクヤ : カセット・テープではないんですけど、業務用の太い幅のリールで録音してました。

徳井 : あ、映画のテープですか!?

タクヤ : 映画のテープの音楽バージョンがあって、毎日エンジニアさんが同じように聴こえるように調整してから始めないといけないっていうのがあったんですよね。今はほとんどのスタジオがProTools(プロトゥールス)っていうソフトでパソコンで録ってますね。プロデューサーの故・佐久間正英さんが最後の最後まで、テープで録音してました。ハイレゾ論争に似てるんですけど、テープで圧縮なしの方が良い音だし、間違ったらやり直してました。

徳井 : 黒澤明監督ですね! 全通しだ!

タクヤ : ノー・カット! 繋げないんで、それが基本だったんですよね。きっとミュージシャンの人も僕が言うのも変ですけど、上手い。今より集中力がすごかったろうし、気迫めいた空気も収録されてると思います。

徳井 : 収録されてるまさにその時に。

タクヤ : ちょっと僕がつまずいたら、全員一緒にやり直しやった。

Tama : オーケストラと割と近いです。ほんとにすごい。

タクヤ : 音が被ってたりするんで。一人だけ間違えられない。

徳井 : それにしてもこのスタジオ見ると、孤独ですね、この仕事も。

タクヤ : そうかもしれないです。孤独とも言うし、楽園とも言うかも知れないです(笑)。

徳井 : 金魚とか飼った方がいいんじゃないですか? 寂しくないですか?

タクヤ・Tama : (笑)。

徳井 : 音楽、流せないですもんね。

タクヤ : ながら作業は無理ですね。それいつも思います。よくニコニコとかYoutubeで作業用BGMとかありますけど、作業してる時が一番無音にしないといけないので。

徳井 : それね~。音楽好きなはずなのに音楽聴けないって悲しい(笑)。

人間的で味があるのを余すことなく収録できるのがいいな

タクヤ : これ、買い換えなきゃなって思ってて、昔パソコンで音を作り始めた頃、2004、5年に買ったマシーンで作ったセッション、聴いてみてください。

ーーシャボンの「MILK」が流れる

OTOTOY限定リリース!

Sabão /Alliance vol.2(24bit/96kHz)

【Track List】
01.アソビ / 02.環状線 / 03.MILK / 04.アソビ (Instrumental) / 05.環状線 (オリジナル・カラオケ) / 06.MILK (Instrumental)

プロデューサーにはゴールデンボンバーのアレンジや仮面ライダーシリーズへの楽曲提供など幅広い音楽制作を手がけている【tatsuo】、元Waiveのギタリストで、自身のソロ活動と並行して多くの若手バンドのプロデュースも盛んな【杉本善徳】、舞台作品やミュージカル、ライブイベントなどで活躍しているアコーディオン奏者の【えびさわなおき】の三名を迎え、各々がまた全く違ったアプローチで新たなSabãoの魅力を引き出している。

徳井 : お〜!

タクヤ : 息を吸ったり、唾がぺちゃってなってる。楽器はチェロだけです。

徳井 : すごーい! 綺麗!

タクヤ : 録ったまんまミックスして流すと音が綺麗に出るんです。この音をラジカセで入れて聴いたらこんな感じ。

ーーラジカセから「MILK」が流れる

徳井 : なるほど! 全然違うな。

タクヤ : そうですよね。ラジカセだとスピーカーが小さくて低音の迫力が…。

徳井 : 子どもの頃聴いてた感じですね。

タクヤ : スタジオではこういう風に聴いてるので、完成だ! って思っていても、みんなの家ではこう聴こえるってやりつつ。

徳井 : そうなってくるとCDの時代だったら電子音の方が楽だし、いいと思っちゃいますよね。

タクヤ : ハイレゾは、味があるのを余すことなく収録できるのがいいなって思ってます。

徳井 : お〜、生感ですね!

徳井健太、最終回の感想

「映像の世界はビデオテープからDVDになって、DVDからブルーレイになりました。テレビはブラウン管からデジタルになって4Kになって、今も成長が止まりません。なのに、音楽だけはいつまで経ってもCDのまんま。もうCDの時代じゃないのはみんな分かっている筈なのに、やれあれは何枚売れただとか、やれ今週の第何位は何だとか。煽る世間に仕方なく、音楽業界もただただその場に寄り添い、足踏みをするだけ。今はそれで多少の金儲けが出来るかも知れない。でも、それじゃいつか本当の意味での音楽は終わってしまう。本当の音はもっと綺麗で美しくて太くて繊細な筈なのに、世間に流され物欲に目が眩み、わざわざレベルの低い音を世間に届けるのなんて、音楽家じゃない。だから、今僕らはCDを出さずにハイレゾだけを皆さんに提供しているんです。」

シャボン、タクヤさんは言った。

「ハイレゾは呼吸音やその瞬間瞬間の時まで伝えてしまうんです。だから歌い手にとっては実力そのものが出てしまうから少し嫌なんですけど、私はそれで良いと思ってます。機械で音程を整えて、いつでも何処でも上手に歌える歌手なんて、それじゃロボットと変わりません。誰にでも出来ることなら私であるべき必要なんかないし。本来なら絶好調で挑むべきレコーディングも、ひょっとしたらその日は調子が悪いかも知れない。もしかするとその日はどうしても自分の思い通りの結果が出ないかも知れない。それでも、私はその瞬間をハイレゾで皆さんに提供したいと思っています。」

シャボン、Tamaさんは言った。

僕は、数ヶ月に渡りハイレゾを取材してきた。

つもりだった。

弁当箱理論を学び、音への探究心や熱意を感じた。

つもりだった。

でもそれは、本当につもりだった。

生のミュージシャンの生の声を聞いて、ハイレゾってのは音質とかそう言うことだけじゃなくて、もっともっと深い、現在過去未来のしがらみとか、偏見とか、そう言うものとの闘いの火蓋なんだと知った。

本来はもっと高品質な音を届けられるのに、売り上げが不安だから今まで通りにCDを出し続ける。
音楽に携わっている人達は全員、このままじゃ駄目だと気付いているのに、目の前の生活をとる。

悪いことじゃない。

そりゃ、今はハイレゾを聴くための装備も少し高い。
だからCD派の人の方が多いに決まってる。
けどだからって弁当箱理論で知った通り、わざわざ音質の下げたものを、本来はもうそのレベルで提供しなくても良いモノなのに、僕らはこのままその最先端を見ないふりして世間に流され続けるのか?

違う、闘っていかなきゃ。

ハイレゾってのは、音への深い愛なんだ。

自分のこと、自分達の世代のことだけを考えるなら、今まで通りにCDをただただ垂れ流していれば良い。

でも、それじゃ駄目。

例え届かなくとも、世間に本当の音を伝えて、今よりももっと進んだものがあることを伝える。
それがさらなる進化を生んで、さらに連鎖する。

今は自分達が損をするかも知れない。
自分達の世代だけでは、成し遂げられないかも知れない。

でもやる。
それが本当の音への愛だから。

僕は、がむしゃらに闘っているシャボンのお二人を見て、がむしゃらに応援したくなった。
ハイレゾと言う悪魔か天使か、でも絶対的正義を用いて闘い続けるシャボンさん。

その終わりなき旅。

僕らは、ハイレゾで聴く義務を背負ったんだ。

Sabão

Sabão LIVE INFORMATION

Sabão Special LIVE 2015【Re BIRTH】~いつまでも子供のつもりが~

2015年4月12日(日)@新宿ReNY

バック・ナンバー

>>【第1回】ハイレゾって何だ!?
>>【第2回】ハイレゾを聞いてみる

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