2019/07/25 18:30
7月24日に遂に発売となった相対性理論 初のライブアルバム『調べる相対性理論』。
早くも大きな話題を呼んでいるこのアルバムの、特別映像第2弾がみらいレコーズ オフィシャルYouTubeチャンネルにて公開された。
今回の映像は、やくしまるえつこによるドローイングを用いた「調べる相対性理論」アートワークを基にして作られており、相対性理論のライブ特有の神秘的・異次元的な空間が表現されている。本映像では「調べる相対性理論」収録の『ウルトラソーダ』『キッズ・ノーリターン』『わたしは人類』の一部を聞くことができる。
さらに、このアルバムを聴いた作家・古川日出男から寄稿された「調べる相対性理論」推薦テキストも公開。相対性理論のライヴに何度も足を運んでいる古川によるこの推薦テキストは、1000文字以上にも及ぶボリュームとなっている。
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壮大だ。私はこのライブ・アルバムのコメントを「壮大」の文字で始められることに感動してしまう。この『調べる相対性理論』は、時間と空間を再構築して、もう一つの「世界」を創ろうとする試みなのだった。そもそも音楽とはそういうものだった、とは言える。なにしろ時間芸術が音楽なのだから。時間の操作はもちろん、する。ゼロ秒間に聞こえる音楽は存在しないのだ。それと、歌詞(詩)は、当然ながら言葉に時空を織り込む。しかしだ、『調べる相対性理論』に耳および脳および残りの肉体を委ねていると、なにごとかの年代記を体験しているのだ、という気になる。これは音楽的な歴史生成装置なのだな、と。もしも異論があるならば、ここに収録された「わたしは人類」を聴いてみればいい。この歌詞の、それから音の、届けようとしている熱量はほとんど圧倒的で、あなたは「ああ、フィクションには力があるな」とうなずかざるを得ないだろう。それから、「これはフィクションではないな」と悟って、そのことに愕然とするだろう。あなたはその歴史の実在する「世界」に行って、戻ったのだ。あなたは人類史の外側にあっさりと出たのだ。それと、私は、このライブ・アルバムを聴いて、音楽の進化や退化のことを考えないでいるのも、むしろ難しいのではないかと、そうも思う。この『調べる相対性理論』は(ということは、相対性理論のライブは、という意味でもある)シンプルに「宇宙的だ」と評されると思うが、たしかに音の天球図がインストールされている。全部を入れている、とも言い換えられる。轟音、ストリングスの美旋律、美声、つきはなしたクールなドス声。そして、音(音楽)から声を切り離した時に見えるのは、この世界は韻を踏んでいる、という事実だ。それを知れるだけで、私たちが生きる「現実」は逆照射される。
しかし、こむずかしい語りはもう止そう。たとえばコンクリートの建物の最上階の部屋にあなたがいて、その部屋の、その天井が、いきなりカパッと開いたような。それがこのアルバムだと私は思う。あなたをエンターテインするのに一切うかれていない演奏者たち、それが相対性理論だと思う。そう、ぜんぜん「浮かれていない」のだ。どっしりしている。私は全体主義が大嫌いな人間だから、音楽もほとんど同じ部分でジャッジする。ここには、ライブ会場のほぼ全員を同じポーズで踊らせるような「全体主義」サウンドはない。我々はただただ、天井がいきなりカパッと開いて、あろうことか天上が見えたことに、「うわー」「うわー」と言いながら個人個人で反応するだけだ。
−古川日出男(作家)
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相対性理論の活動当初よりその動向を追い続けている編集者・批評家の松村正人をして「ひとつの高みに達しようとしている。現在の相対性理論の演奏の場には特異なものがある」と賞される近年の相対性理論。
初のライブアルバム『調べる相対性理論』には、武道館公演『八角形』以降の「いつか・どこか」の時空から厳選を重ねた10曲を収録。
やくしまるがバイオテクノロジーを用いて制作し音源と遺伝子組換え微生物で発表、メディアアート界のオスカーとも呼ばれる世界最大の国際科学芸術賞・アルスエレクトロニカ STARTS PRIZE グランプリを受賞した楽曲『わたしは人類』の8分以上に及ぶ圧巻のライヴバージョンや、『わたしは人類』同様にライヴのクライマックス曲として鬼気迫るアンサンブルで魅せる『FLASHBACK』、ストリングスを交えた演奏が大反響を呼んだ『弁天様はスピリチュア』など、ライヴ版音源が熱望されていた数々の楽曲が、待望の初音源化。相対性理論『調べる相対性理論』は好評発売中。 (内)
▶︎相対性理論 オフィシャルサイト
http://mirairecords.com/stsr/
OTOTOYで『調べる相対性理論』のハイレゾ音源をチェック
https://ototoy.jp/_/default/p/410534