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2019年07月10日18時00分

 
エレファントカシマシ 30回目の野音で魅せたド迫力の圧倒的存在感-OTOTOYライヴレポ
 

「今までも知っていたのに、突然エレカシのファンになった」

ここ数年、何人かからそんな話を聞いた。デビューしてから今年で32年目となるエレファントカシマシは、誰しもが知っている大ベテランバンドだが、いまだに新しいファンを生み出し続けている。そんな彼らの唯一無二で圧倒的な存在感をひしひしと感じることができるライヴだった。

2019年7月6日(土)7日(日)の2日間にわたって行われたエレファントカシマシ恒例の日比谷野外音楽堂ワンマン・ライヴは、今年で数えること30回目。ここでは2日目となる7日(日)の模様をレポートしたい。

朝から降り続く雨の中、当然のように満員となった客席にゆっくりと姿を現したメンバーたち。宮本浩次 (Vo.Gt)石森敏行(Gt)高緑成治(Ba)冨永義之(Dr)に、サポートに細海魚(Key)を加えてのスタート。「こんにちは、よろしくお願いします」と宮本の第一声に続き、「シグナル」で静かに30回目の野音ライヴは幕を開けた。途中から徐々に熱を帯びていく演奏とヴォーカル。歌が上手い! そんな当たり前だろ、と言われてしまいそうなことを改めて思った。宮本の生々しいストラトの音が豪快に刻まれて、キーボードが追随する「愛の夢をくれ」から「孤独な旅人」では、宮本のストロークにスライドギターで石森が加わるものの、宮本は「強く弾きすぎてチューニング狂っちゃった」と中断してチューニング。ゆったりとした空気感はエレカシのホーム・野音ならでは。力強いサビに繰り返しスライドの音色が重なって熱気が客席に広がって行く。「エビバデー!いくぜー!」観客も一斉にステージに向かって右手を上げて盛り上がった。改めて「ようこそー!」と呼びかけると「明日に向かって走れ」へ。続いて小林武史と組んだアルバム『ライフ』からの「面影」等、ミディアム、スローな曲が前半の大半を占めた。

ヒラマミキオ(G)が加わり、「こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい」、ユーミンのカバーながらエレカシのライヴでは聴きどころのひとつ「翳りゆく部屋」で見事な歌唱を聴かせた。「30回目、野音の館長さんともなんとなく顔見知りになりました(笑)」との微笑ましいMCを挟み、ステージには蔦谷好位置(Key)金原千恵子(Violin)笠原あやの(Cello)が登場して、「リッスントゥーザミュージック」を披露。シンフォニックな前半から一点、ド迫力のエンディングへ向けてバンドが高まって行く演奏はまさに圧巻の一言。「彼女は買い物の帰り道」でも弦を加えたスケールの大きなサウンドに圧倒された。そして「笑顔の未来へ」で客席は手拍子が広がる壮観な景色に。

「明日への記憶」はこれまた迫力満点なアンサンブルで、これだけの分厚さの中ではっきり明瞭な言葉を歌い届けられる宮本の歌唱力に心底感動させられた。後半ではチクタク、チクタクと繰り返し巻き舌気味な歌いまわしで興奮を煽る。さらに最新アルバム『Wake Up』からの「旅立ちの朝」では、重低音な冨永のドラムとパワーコードを刻み続けるヘヴィなギターが会場を揺らす。4人にサポートを加えた演奏の数々は、様式美あるプログレバンドの佇まいであった。

ここで、30回目という節目ということもあり、バンドが再スタートを切るきっかけとなった曲「四月の風」のレコーディングでギターを弾いている土方隆行をゲストに招いて同曲が歌われた。「俺たちの大切な曲」、と紹介した宮本。もちろんエレカシファンにとっても大切な曲だ。土方の軽快なアコースティックギターのストロークがまさに四月の風を運んでくれたのか、この曲の間は小雨になっていた。続いて代表曲「悲しみの果て」「今宵の月のように」と、ポニーキャニオンに移籍して以降のエレカシ再ブレイク期を再現したコーナー。「悲しみの果て」では、土方が石森とユニゾンでソロを取り、続けて単独でもソロを披露。「今宵の月のように」は、今は亡きプロデューサーの佐久間正英に土方にギターをお願いしたいと直訴してレコーディングを行ったという。宮本はイントロのギターを任せた土方と向かい合って歌う等、記念すべき30回目の野音ライヴに相応しいコラボとなった。ここで1部が終わりインターバルへ。

5分程でメンバーがステージ戻ると、勢いよく歌い出したのは「RAINBOW」だ。激しい照明の中、先ほどまでとは打って変ったハイテンションで歌う宮本。途中、椅子を持ち出してステージ前方で椅子に乗りながら歌う姿は神々しさを感じさせるほど。日が沈みかけた野音に「月の夜」で咆哮する宮本の声が響く。初期のエレカシにあった、バンドブームの世の中にあって、ジャンルも特定できずどこの何者なのかわからないような、個性が際立ちすぎるアングラな空気が甦った。叩きつけるようなギターの弾き方は強烈で、狂人のような歌いっぷりはまさに宮本浩次の本領発揮といえよう。続いて歌われた「武蔵野」はつぶやくような抒情的な歌詞といなたい演奏の、エレカシならではのオリジナリティのある名曲で日が暮れた野音の景色によく合っていた。

「雨にもマケズに盛り上がってるエビバデ、なんて奴らだ、もう一丁頑張ろうぜ!」そんな呼びかけから始まった「俺たちの明日」では会場中が拳を突き上げて一体に。「雨で髪が濡れると、二枚目に磨きがかかる」と自画自賛する宮本に声援が飛ぶ。冗談めかして言ってはいるものの本当にその通り、異を唱えるものはいなかったであろう。メンバー紹介ではギターの石森を指して「石くん、プロボウラーみたいです」。「友だちがいるのさ」では、その石森と高緑がステージ前に出てきて演奏した。曲が終わると「こんな雨の中、コンサートやっていいのかな?」とポツリと漏らす宮本に「最高!」の声がかかる。最後はサポートメンバー、ゲストが総出演。「思い出深い30回の野音になりました!またいい曲作ります!」との宣言から、「ズレてるほうがいい」へ。3人のギタリストが間奏でフレーズを出し合う。少しでもズレてしまうと完膚なきまでに叩かれてしまう画一的な世の中で、“ズレてる方がいい”と歌うエレカシは素晴らしい。

全員で深々と感謝してステージを後にしたが、アンコールの拍手は止まず。その期待に「so many people」で応える。雨風が吹きすさぶ中での熱狂的なパフォーマンスに、会場の興奮は頂点に昇りつめていく。“求める気持ちを一時も忘れないで”と歌うメッセージにはエレカシがここまで活動してきたからこその説得力があった。観客がまだまだ席を後にしないと見るや、ダブルアンコールへ。「ファイティングマン」、そして最後は宮本と石森が肩を組んで「歩こうぜ 歩こうぜ」と歌う「星の降るような夜に」で締めくくった。

最後まで降り続いた雨の中、3時間で26曲たっぷりと魅せたこの日のライヴ。途中のMCやゲストからもわかったように、エレカシにとって再出発となったポニーキャニオン期からの楽曲に焦点が当てられており、いかに彼らにとってその時代がバンドを続けてくる上で重要だったかを感じさせた。30年以上のエレカシの歩みと、これからまだ続く道を思わせる心に染みるエンディングの余韻の中、エレカシには40年、50年と活動し続けてほしい、そう思いながら帰途に就いた。

取材・文:岡本貴之
写真撮影:岡田貴之

エレファントカシマシ「日比谷野外大音楽堂 2019」
2019年7月7日(日)日比谷野外音楽堂
〈セットリスト〉
1. シグナル
2. 愛の夢をくれ
3. 孤独な旅人
4. 明日に向かって走れ
5. 面影
6. こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい
7. 翳りゆく部屋
8. リッスントゥーザミュージック
9. 彼女は買い物の帰り道
10. 笑顔の未来へ
11. ハナウタ~遠い昔からの物語~
12. 明日への記憶
13. 旅立ちの朝
14. 四月の風
15. 悲しみの果て
16. 今宵の月のように

17. RAINBOW
18. かけだす男
19. 月の夜
20. 武蔵野
21. 俺たちの明日
22. 友達がいるのさ
23. ズレてる方がいい

アンコール
24. so many people
ダブルアンコール
25. ファイティングマン
26. 星の降るような夜に

獣ゆく細道

椎名林檎, 宮本浩次, 椎名林檎と宮本浩次

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