2024/01/11 22:35
忘れらんねえよが、〈15周年集大成ワンマン 忘れらんねえよのすべて〉東京公演を2024年1月10日(水)Zepp Shinjuku にて開催。15周年の集大成となる名曲満載のセットリストで怒涛のハイテンションライブを行い、2024年のスタートを切った。
ライブハウスZepp Shinjukuは、日本一の歓楽街・新宿・歌舞伎町に2023年に誕生した新会場。隣接する「東急歌舞伎町タワー」前のデジタルサイネージには、〈15周年集大成ワンマン 忘れらんねえよのすべて〉のライヴ告知と柴田隆浩(Vo.Gt)の顔が繰り返し映し出され、ファンのみならず来日観光客の関心を誘っていた。
開演直前、エイティーフィールド代表・P青木氏による「15周年、忘れられない夜にしましょう!」との煽りから暗転すると、場内に流れたのは「みなさんこんにちは、チャットモンチーです!1曲目「ハナノユメ」」と歌い出す、えっちゃんこと橋本絵莉子の声だった。その歌声にかぶせるように、「イエェー!この曲から始まりました!」と叫びながら、柴田がステージに現れると、橋本の声に重ねて「ハナノユメ」の一節を歌う。サポートメンバー、ロマンチック☆安田(Gt.Key) 、イガラシ(Ba)、タイチサンダー(Dr)がセッティングして、柴田が「今日、集大成ワンマンですよ。みなさんいけますか。仕上がってますかみなさん!?」と観客を煽ると、「ウォォ~!」とこれ以上ない仕上がりっぷりの大歓声が沸き起こった。
「早速コール&レスポンスしたいんですけど、この言葉しかないと思うんですよ!」と、「サンキュー!」「SEX!」のコール&レスポンスから始まったオープニング曲は「夜間飛行」。夜空に飛び立つように上昇していく演奏と歌を、手拍子しながら盛り立てるオーディエンス。ドラマティックな曲に相応しくミラーボールが回っている。間奏で安田、イガラシ、タイチを紹介すると、「そして俺!」と、真っすぐに自己紹介。歌詞に絡めて「夢みたいだな!」と叫ぶ。続く「バンドやろうぜ」の曲中、「今日、声めちゃくちゃ調子良いぞ!」と、お客さんが思っていそうなことを自ら率先して言う柴田。本当に絶好調な歌声だ。「最後は一緒に歌ってもらっていいですか!?ボーカル、おまえら!」と促すと、会場中が〈さあバンドやろうぜ〉の大合唱となった。
「今日は来てくれてありがとう!ここどこか知ってますか?歌舞伎町ですよ。見た感じ、歌舞伎町に似合ってるやつがいねえ!来るまできつかっただろ?」と集まった観客たちを陰キャと決めつけつつも気遣う柴田。平日の夜に仕事や学校、用事を済ませて駆け付けてくれたであろうお客さんたちに、「愛してます」と呟いてから「いろいろ抱える俺と、きっといろいろ抱えてるおまえら、すべてが好きだと言うのさ」と歌詞をもじって歌うと、「アイラブ言う」へ。演奏と手拍子によるバンドとオーディエンスの結束力がすごい。すべてが柴田の歌をバックアップしているようだ。安田のテレキャスがマシンガンギターな鋭いリフを繰り出して始まったニューアルバム収録の新曲「君の音」は、ひたすら前に突き進むバンドサウンドと叫ぶことなく穏やかな柴田のボーカルが対照的ながら気分が高揚する、新しい忘れらんねえよを感じさせる楽曲だ。人気曲の1つ「犬にしてくれ」ではフロアから自然に声が上がる。こんなにも切実な内容の曲が人々の共感を集めていることに、なんだか不思議な安心感すら覚える。終盤の〈犬になって Ah〉とフェイクするボーカルが心に余韻を残した。
「今日は僕ら、一緒に作品を作っているんですよ。15年かけて作ってきた沢山の曲を、15年かけて磨いてきたこの声で、15年の中で一番最高のメンバーで演奏している。それをおまえらが聴きにきて受け止める。その全部ひっくるめて、1つの作品なんですよ。それが俺の15周年集大成のこの空間です。みんな一緒に1つの作品を作るんだよ!」と、今日のライヴに込めた気持ちを伝えると、これまで作ってきた97曲の中から選んで作ったという「15周年スペシャルメドレー」へ。「花火」に始まり、「紙がない」~「この街には君がいない」~「中年かまってちゃん」~「寝てらんねえよ」~「明日とかどうでもいい」と、デビュー作から4作目のアルバムまでの曲で構成されたメドレーを披露。イントロのリフでドッと沸いた「中年かまってちゃん」では、名フレーズとして賞賛を浴びたサビの〈エロサイトの深夜サーバーに負荷がかかって つながらんのは俺がひとりじゃないから〉を歌い、久々の「寝てらんねえよ」、「明日とかどうでもいい」と、隠れた名曲をギュッと詰め込んだ、忘れらんねえよの魅力再発見のコーナーとなっていた。
ギターを置きハンドマイクでステージ前に出て歌った「踊れ引きこもり」は、ジャンプする柴田に合わせてフロアも一斉にジャンプして盛り上がる。女性声パートでは、「今日は、俺らの代表曲やっていいですか!?」と、長く登場SEで使っていた[Alexandros]の「ワタリドリ」を歌い出す。しばらく歌った後に「俺らの曲じゃねえ!」とセルフ乗りツッコミで現実に戻った柴田は、「最高すぎる!」と、引きこもり仲間たちと祝祭空間を分かち合った。
〈絶対俺変わったりしないから〉と会場中が声を合わせて一つになった「俺よ届け」に続くMCでは、人を好きになったときに、その気持ちが変わらない自分に自信があると明かす柴田。「でもそれだけじゃ上手くいかないんだよね。どうして良いかわからん。そんな歌を歌います」と、安田が弾くピアノに合わせてバラード曲「知ってら」を歌い出す。しんと静まった空気、緊張感のある演奏の中、渾身の歌唱で歌い上げた。さらに「うつくしいひと」を披露。想いの籠った2曲のバラードと、それに続いたマイナーな曲調と激しい歌声に引き寄せられた「音楽と人」は、15年を経て今なお新しい歌の表現力を模索する柴田のボーカルへの探求心が伺えた。
「15年もやってると、別れもいっぱいありました」と、デビュー時のメンバーについて触れると、「別れの歌」へ。かつてこの曲が纏っていた悲しみや虚しさは今やなくなって、力強い人生賛歌として響いた。「だっせー恋ばっかしやがって」では柴田が「歌えー!」と呼び掛けてサビを大合唱。誰もが忘れらんねえよ、柴田に自分を投影しているようだった。そんなファンたちに柴田は〈輝け 輝け いつか〉と歌いかけた。忘れらんねえよを結成して初めて作ったという「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」で歌われる〈大好きなベンジーが許さねえ〉は、チャットモンチー同様に忘れらんねえよのルーツがわかるフレーズ。集大成ならではの選曲だった。
28歳の頃、チャットモンチーを見てバンドを始めたことから、「俺はえっちゃんと、チャットモンチーの作品」だという柴田。先日橋本が参加した「CからはじまるABC」のMVでライヴとそのお客さんを見せて「僕はあなたの作品です。ありがとうございました」と感謝を伝えたことで、二度と合わないことを本人に直接宣言したという。戸惑っていたという橋本を前に、「バカだなって思ったけど、思ったことを言う人生でいいんだよ。俺はこれからも思ったことを…ある程度空気を読みながら、思ったことを言っていく。共に、バカになりましょうか!いけますか新宿!?」と「ばかばっか」へとつないでいく。踊り狂う怒涛の盛り上がりから、ギターを置いて千円札を右手に取り出した現金払い派の柴田。フロア後方で待ち構えるP青木氏に向かってワタリドリとなってクラウドサーフすると、「15周年おめでとうー!」と祝福するP青木氏からビールを受け取り、フロア中央で観客に支えられて立ち上がり、美味しそうに飲み干した。轟音でセッション中のバンドの元へ戻ると、「全部ぶつけろー!」とフロアを煽ってカオスに。そのままなだれ込んだ「僕らチェンジザワールド」は、声が枯れんばかりの大合唱とジャンプで大盛り上がりに。さらに「CからはじまるABC」が始まると、ステージ前に人がドッと押し寄せてとんでもない騒ぎに。柴田は飛び跳ねながら歌い、イガラシはステージ前で挑発的にベースを弾き、安田はギターを思いっきりかき鳴らし、タイチはヘヴィなリズムを叩き出して、ハイテンションなオーディエンスと対峙している。〈残された俺たちは 新宿で踊りました〉と歌詞を変えて歌うと、「グォォォ~!」と怒声のような大歓声がステージに向けられ、興奮の坩堝と化した。
「俺は15年間、この高鳴りと興奮がずっと止まらないよ!どんなものよりこれが一番好きで、これが一番気持ち良い。これが一番楽しくて、これで一番悲しくなってる。だから、ずっとずっとやめない。ロックンロールずっと続けていいですか!」と絶叫する柴田に大喝采。ステージとフロアが明るく照らされて「この高鳴りをなんと呼ぶ」を歌い出す。間奏でメンバーの名を1人1人呼ぶと、「そしておまえら、一緒に歌うぞ!」と、〈最後の言葉を探してる それが見つかりゃいなくなる〉を合唱。そして、忘れらんねえよの歌の世界そのものを言葉にしたような曲「悲しみよ歌になれ」で締めくくった。
アンコールでは、「世界であんたはいちばん綺麗だ」が披露され、後半になるにつれ白熱する歌と演奏で真摯なメッセージを伝えた。最後は、「やっぱり、この曲で終わりたいよな!」との言葉から「忘れらんねえよ」へ。デビュー以来歌い続けてきた不朽の名曲だ。演奏を止めて合唱を促すと、会場中をゆらゆら揺れるスマホのライトが埋め尽くして大合唱となった。「ありがとう!俺とメンバーとおまえらで、最高の作品を作りました!」。
エンディングでは記念撮影をした後、ステージ上に「お知らせ」が登場。ツレ伝の新シリーズとして、〈酒クズとツレ伝。〉が6月に開催されることが発表された。また、今後も「嬉しいお知らせがいっぱい」用意されているという。柴田は、「まずは15年間ありがとう!そしてこれからもよろしく!ロックンロールしていこうぜ!」と、改めてお客さんに感謝を伝えて、ステージを後にした。
この日のライブは、MCがしっかりと次の曲へと繋がっており、1曲1曲をいつも以上に意味あるものにして歌っていたのがとても印象的だった。2時間にわたり聴かせた名曲の数々。ファンにとって、忘れらんねえよは誰の作品でもなく、「忘れらんねえよ」だ。
取材・文:岡本貴之
PHOTO: 岩佐篤樹
〈セットリスト〉
1. 夜間飛行
2. バンドやろうぜ
3. アイラブ言う
4. 君の音
5. 犬にしてくれ
6. 15周年スペシャルメドレー(花火~紙がない~この街には君がいない~中年かまってちゃん~寝てらんねえよ~明日とかどうでもいい)
7. 踊れ引きこもり
8. 俺よ届け
9. 知ってら
10. うつくしいひと
11. 音楽と人
12. 別れの歌
13. だっせー恋ばっかしやがって
14. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
15. ばかばっか
16. 僕らチェンジザワールド
17. CからはじまるABC
18. この高鳴りをなんと呼ぶ
19. 悲しみよ歌になれ
アンコール
20. 世界であんたはいちばん綺麗だ
21. 忘れらんねえよ
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