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2024/05/11 12:00

 

忘れらんねえよ、〈全曲LIVE〉で届けた100曲に乗せた想い “言葉より、歌だったら全部伝えられる気がするよ” ―OTOTOYライヴレポ

 

忘れらんねえよが、GWの3日間でこれまで発表したすべての曲を歌う〈「全曲LIVE」~忘れらんねえよの曲ぜんぶやる~〉を2024年4月28日(日)、5月1日(水)、3日(金・祝)に下北沢で開催。見事に100曲(既存の97曲+新曲3曲)を歌い切り、熱いファンと共に歓喜の瞬間を分かち合った。

【day1~day2ダイジェスト&最終日レポート】
day1の下北沢 近道では、忘れらんねえよ始まりの曲である “ドストエフスキーを読んだと嘘をついた” からスタート。力強くも切ない “美しいよ” 、100曲の中からジャンル分けしたというコーナー(“俺の中のドラゴン” “体内ラブ〜大腸と小腸の恋〜” “紙がない”)、タイアップソングの元曲 “Happy birthday! とはいえ俺は誕生会に呼ばれていない”、 オケを使いフロアでリフトされながら歌った”犬人間“等、比較的近年の曲を中心とした構成となっていた。day2の下北沢CLUB QUEでは、最新アルバム収録の“いいから”に始まり、CM曲としても知られる “喜ばせたいんです”、“マイナビバイトの歌 2017”、チャットモンチーのカバー “ハナノユメ”、菅田将暉との共作 “ピンクのアフロにカザールかけて” といったオーバーグラウンドな曲を披露する一方、“ZERO”から “みんなもともと精子”へと繋ぐ哲学的な流れも導入。アンコールの最後にはday1で手ごたえを得たらしき“氏ね氏ね氏ね”を再演するファンサにも好調ぶりが伺えた。

また、両日共にアンコールで新曲も披露。day1では、1人飲みしているときにまわりの女子会から聴こえる元彼品評会的なトークへのレジスタンスと称して歌った “元彼応援歌”、day2では、タイトルを告げるとドッと盛り上がった “いんきゃでわるいんきゃ” を歌い上げ、早くも手拍子と合唱が起こっていた。尚、3日間ともソールドアウトということで、会場からたライヴの模様が生中継され、お客さん目線の臨場感と興奮を伝えていた。

day3(最終日)となる3日(金・祝)は再び下北沢 近道で開催。ロマンティック安田(Gt)、イガラシ(Ba)、タイチサンダー(Dr)がステージ上がりセッティングすると、タイチのカウントから「ワタリドリ」([Alexandros])の演奏が始まった。会場入り口に柴田隆浩(Vo.Gt)が姿を現した。おなじみの「ワタリドリ入場」でオーディエンスに運ばれながらステージに立つと、「じゃあ始めましょうか!100曲ライヴ最終日、こんにちは忘れらんねえよです!よろしく~!」ときっちり挨拶してから、“君は電話に一切出ない”でライヴがスタート。最初からみんな柴田と一緒に歌い出す。失恋呪歌のようでいてじつはピュアなラブソングのこの曲、爽やかな歌い終わりを〈おまえらのことが好きだ〉と歌い変えてお客さんへの愛情を伝えた。続いて “僕らチェンジザワールド”でジャンプ、拳を突き上げながら下ネタを含む歌詞を大合唱。「最高すぎるぞー!」と元気いっぱいな柴田が “YouTuberになればモテると聞いた” でマイクをフロアに向けると、「なんでおまえらこんなマニアックな曲知ってんだ!?」と作者本人が驚くほどの大合唱となった。さらに “今夜いますぐに” でも歌い出しから声を合わせるオーディエンス。間奏でサポートメンバーの安田、タイチ、イガラシが紹介される。柴田と共に3日間100曲を演奏するという偉業に挑む、タフでテクニシャンで面白くて最高にかっこいいプレイヤーたちだ。“夜間飛行”ではバンドの音が1つになって夜空に飛び立っていくようなサウンドスケープを描き出す。 柴田がギターを刻みながら歌った珠玉のバラード “東京” では、安田のバイオリン奏法、タイチの重たいドラム、淡々としたイガラシのベースが、叫ぶように歌う柴田のヴォーカルを熱く支える。

渾身のバラードを静かに聴き入っていたお客さんから拍手が沸き起こると、「うわーっていう曲もあれば、こういう暗い曲もあるんです。暗すぎるよ!」と自虐的に曲を振り返る柴田。「でも全部愛しい曲なんだよ。それをみんながこうして聴いてくれて、俺は嬉しい!」と素直な心境を明かす。再びアップテンポで盛り上がる “これだから最近の若者は最高なんだ” から、「これ、めっちゃ好きなんだよ」と言う “いやがらせのうた” をミディアムテンポでじっくりと歌い上げる。さらに音数の少ない “パンクロッカーなんだよ” で一層深く内省的な世界へと進んでいく。歌い終わると、「いい曲だ……高校生の頃こういう曲聴きたかった。ありがとう俺!」と自画自賛。ここまでの新旧楽曲だけでも、どの曲もメロディがとても耳に残る良い曲ばかりだ。

「おまえら!GWになんの予定もないんですか!?俺もありません!」と叫んで民衆の心を掌握する柴田。“踊れ引きこもり” でアジテーションすると、引きこもりたちは心をひとつにして歌い踊る。後半のパートでは、音源に合わせて歌うオーディエンス、ステージ前に出て舞い踊るタイチの姿で、前衛芸術としての完成度が極まった。GWのど真ん中、下北沢の地下でこんなパフォーマンスが行われているとは、周辺でデートしているカップルたちは知る由もないだろう。文字通りせかされるような歌と演奏が楽しい “時間がないっす” から、“バンドやろうぜ” が飛び出した。ここぞとばかりに大合唱が沸き起こる。「最高すぎる!なんだこれ!?」と柴田が言ったように、お客さんはとにかく終始歌いっぱなしだ。

ここで、連日行われているレア曲のコーナーへ。ボツ曲CDに入っている曲も入れて100曲になるため歌わないといけないとのことで、” 俺は金を借りてないような気がする”を披露。大学時代にサイドギタリストとして所属していたバンド「女殺団」でメンバーと共に書いた曲がもとになっているというエピソードから、タイトルとは裏腹な美メロを歌う。お客さんはもちろん、この日はステージに残ったメンバー3人もその場で聴き入っていた。

「自分の書いた曲を振り返ると、何も変わってないんだなって。1stアルバムのときに「愛されない、愛されない」って言ってて、次に歌うのは4thアルバムの曲なんだけど、さすがに成長しているのかなと思ったら、“いいひとどまり”」との粋なMCから“いいひとどまり”を歌い出すと、ステージに向けて拳を突き上げながら多くの人が歌っていた。「おまえらに、愛を伝える!」と声を掛けて歌い出した “プロポーズ”でも、まっすぐなメッセージをステージ、フロア全体がひとつになったパフォーマンスとなった。一転して泥臭いナンバー “俺たちの日々” では、「GWとかただの平日じゃねえか」と歌詞をもじって歌い歓声が上がる。続く “青年かまってちゃん” は、リリース時に神聖かまってちゃん・の子とネット上で絡んだことで後にツアーに呼ばれたり、昨年の〈ツレ伝フェス〉に出てくれたりという交流が生まれたといい、「バンドやってて良かったなと思った」と柴田。タイトルから “中年かまってちゃん”の影に隠れてしまう曲だが、暗くて重い聴きごたえのある曲だ。スローな流れが続き、”絶対ないとは言い切れない” へ。1番の歌詞に出てくる俳優の名前はアップデートされていたが、後半のベッキーは変えずにエールを送るところは作者のこだわりなのだろう。ユーモラスな前半、本気のメッセージに着地する曲の展開は、忘れらんねえよの王道パターンと言える。

「100曲、全部同じことを言ってるんですよね。愛されませんとか、お金返したくありませんとか、そういうことばっかり歌ってる(笑)。しかもよりによってそれが15年も続いてしまったという。それで言うとつまり俺は、変わりません!だから安心していつでも忘れらんねえよの懐に飛び込んで来いよ!」

そんな熱いMCから、“悲しみよ歌になれ” へ。まさに、忘れらんねえよというバンドそのものを言い換えた、バンドのテーマソングだ。「ずっと変わんねえから!ずっと悲しみを歌にするから安心しろ~!」。そう叫んで歌い終えると、 “世界であんたはいちばん綺麗だ”と、ファンへの想いが感じられる曲が続く。グランジ期に生まれた尖った曲 “ここじゃないけどいまなんだ” のとことん暗くて直情的な歌、ド迫力の演奏は圧巻だった。

ジャンル分けしたコーナーでは、day1のうんこ系、day2のストーカー系に続き、「ちん毛系」という一般的には知られていないジャンルのもとで3曲を披露。“風に吹かれて(毛が)”では、スタジオ音源をさらに太く直毛にした感じのラウドなサウンドを聴かせ、“俺を守りたい”では、イガラシのうねるベースラインと安田のリフから、サビで4人が音の塊と化して突き進むオルタナティヴロックで興奮を煽る。“あの娘に俺が分かってたまるか” では、柴田とお客さんの鬼気迫る掛け合い、コーラスでより一層バンドと一体化。エキサイティングなステージングからガラリと雰囲気を変えて “うつくしいひと” へ。どんな歌も情感を込めた豊かな表現力で歌い上げる柴田と、硬軟織り交ぜて歌に寄り添う安田、イガラシ、タイチの演奏が素晴らしい。〈俺とお前繋げてんのは 心揺らすこの音楽だけ〉と歌う “音楽と人” の歌詞には、そんなバンドマン同士の関係が伺えた。

全曲ライヴ最終日もいよいよ終盤へ。100曲歌うと決められているだけに、終わりが見えてくるのがなんだか儚く感じられる。「いくぞー!」と、 “この街には君がいない” で疾走すると、“サンキューアイラブユー世界” では「おまえらの歌だからな!」と語り掛けながら歌った。

「初日、2日目に来てくれたみんな、今日ここにいるみんな、100曲付き合ってくれてありがとうございます。配信を見ている人もありがとうございます。自分はどうも言葉が駄目なんですよ。言葉より、歌だったら全部伝えられる気がするよ」

そんなMCを受けて始まった終盤がすごすぎた。“この高鳴りをなんと呼ぶ” が始まると歓声が上がり、〈君がいない下北近道で 君が好きだと歌ってる〉と歌う柴田に大合唱、手拍子で会場が一体となる。間奏で改めて3人のメンバー紹介、「そして柴田でした!」と自己紹介して、最後のサビでさらなる大合唱となった。“明日とかどうでもいい” でも、どんどん上がっていくメロディを大合唱。ステージ上もフロアも本当に明日とかどうでもいい、とばかり燃やし尽くすように歌い腕を突き上げる。今どきこんなにもガッチリと拳を握りステージに突き上げる光景は珍しい。ここで満を持して “CからはじまるABC” のイントロが始まると、待ってましたとばかりに「1、2、3、4!」から大爆発。ステージ上の4人は髪を振り乱し、フロアはもみくちゃになりながら声を張り上げて大合唱、怒涛のハイテンションで凄まじいノリで、1人1人が忘れらんねえよになったと言って過言ではない、とんでもない1曲となった。最終日の終盤にしてこのエネルギー、ライヴをやる方も観る方も人間力がすごすぎる。会場の熱を冷ますように “忘れらんねえよ” が歌われると、スマホのライトを掲げるフロアを見ながら「ライブハウスだと距離が近くてめちゃくちゃ綺麗だ!」と感激した様子の柴田。事実上、締めくくりの1曲となったが、ここまでであと2曲を残している。

アンコール、「最近で一番自分の心が動いたことで作った曲です。一生懸命歌います」とひと言添えてから99曲目に歌ったのは、清らかなバラード “知ってら”。安田が弾くピアノに乗せて優しく包み込むように歌い上げる。ときおり掠れた声が、99曲目のリアルさを感じさせた。

「忘れらんねえよは、変わらずこれからも悲しみと喜びを歌っていくから、よろしくね」。最後に新曲 ”そっか、自由か。” を歌いガッツポーズで100曲完遂の喜びを表した柴田は、「最高だった!ありがとうございました!」と、メンバー3人と共にステージを後にした。3日間で新曲を含め100曲、いろんなタイプの曲がある中で、本当に繊細で良いメロディの曲が多いと感じた。ファンの人もいろんなことを思い出したり、このライヴで気に入った曲などもあったのではないだろうか。そういう意味でも、とても意義のある企画ライヴだと思ったし、何よりバンドマンのすごさを見せつけられた100曲のライヴ・パフォーマンスだった。

photo:岩佐 篤樹
取材・文:岡本貴之

〈「全曲LIVE」~忘れらんねえよの曲ぜんぶやる~〉
【day1】2024年4月28日(日)下北沢 近道
〈セットリスト〉
1. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
2. 僕らパンクロックで生きていくんだ
3. おつかれダーリン
4. 夢に出てくんな
5. いいから早よ布団から出て働け俺
6. 氏ね氏ね氏ね
7. 喝采
8. あいつロングシュート決めてあの娘が歓声をあげてそのとき俺は家にいた
9. 歌詞書けなすぎて、朝
10. 美しいよ
11. 俺の中のドラゴン
12. 体内ラブ〜大腸と小腸の恋〜
13. 紙がない
14. Happy birthday! とはいえ俺は誕生会に呼ばれていない
15. 犬人間
16. お前の話は聞いていない
17. ゾンビブルース
18. 俺にやさしく
19. 君は乾杯のとき俺とだけグラスを合わせなかった
20. 寝てらんねえよ
21. ばかもののすべて
22. 7.1oz
23. 愛の無能
24. 花火
25. おしぼりを巻き寿司のイメージで食った
26. バレーコードは握れない
27. 犬にしてくれ
28. 戦う時はひとりだ
29. 別れの歌
30. 君の音
31. 俺よ届け
アンコール
32. 元彼応援歌(新曲)
33. 北極星

【day2】2024年5月1日(水)下北沢 CLUB QUE
〈セットリスト〉
34. いいから
35. 明日晴れるといいな
36. 喜ばせたいんです
37. あんたなんだ
38. ロックンロール体操
39. 中年かまってちゃん
40. 運動ができない君へ
41. マイナビバイトの歌 2017
42. だんだんどんどん
43. 2時間なんもしなかった
44. そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
45. 戦って勝ってこい
46. ZERO
47. みんなもともと精子
48. アワナビーゼー
49. あなたの背後に立っていた
50. ブログを覗き見る
51. 眠れぬ夜は君の名をググるよ
52. 月に代わってお仕置きしてくれないか
53. バンドワゴン
54. ありのままで受験したら落ちた
55. 慶応ボーイになりたい
56. ピンクのアフロにカザールかけて
57. タイトルコールを見てた
58. なつみ
59. ばかばっか
60. スマートなんかなりたくない
61. ハナノユメ
62. アイラブ言う
63. だっせー恋ばっかしやがって
64. 新・俺よ届け
65. まだ知らない世界
アンコール
66. いんきゃでわるいんきゃ(新曲)
―. 氏ね氏ね氏ね(day1と重複でノーカウント)

【day3】2024年5月3日(金祝)下北沢 近道
〈セットリスト〉
67. 君は電話に一切出ない
68. 僕らチェンジザワールド
69. YouTuberになればモテると聞いた
70. 今夜いますぐに
71. 夜間飛行
72. 東京
73. これだから最近の若者は最高なんだ
74. いやがらせのうた
75. パンクロッカーなんだよ
76. 踊れ引きこもり
77. 時間がないっす
78. バンドやろうぜ
79. 俺は金を借りてないような気がする
80. いいひとどまり
81. プロポーズ
82. 俺たちの日々
83. 青年かまってちゃん
84. 絶対ないとは言い切れない
85. 悲しみよ歌になれ
86. 世界であんたはいちばん綺麗だ
87. ここじゃないけどいまなんだ
88. 風に吹かれて(毛が)
89. 俺を守りたい
90. あの娘に俺が分かってたまるか
91. うつくしいひと
92. 音楽と人
93. この街には君がいない
94. サンキューアイラブユー世界
95. この高鳴りをなんと呼ぶ
96. 明日とかどうでもいい
97. CからはじまるABC
98. 忘れらんねえよ
アンコール
99. 知ってら
100. そっか、自由か。(新曲)

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