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2022/06/05 21:00

 

【ライヴレポート】小林私、渋谷クアトロでzAk&平山和裕と構築した世界観

 

小林私が、2022年5月23日(月)東京・SHIBUYA CLUB QUATTROにて開催された音楽イベント〈#UDSF〉に出演してライヴを行った。

〈#UDSF〉は、”Up&Down,Slow Fast.”の略称であり「異なるジャンルのクロスオーバー」をコンセプトとして新たに企画されたイベント。第1回目となる今回は、スカート、柳瀬二郎(betcover!!) と小林によるスリーマンライヴとして行われた。

ほぼマイクスタンドだけの殺風景なステージに、柳瀬に続く2番手として「柳瀬さん、かっこよかったなあ」と呟きつつ登場した小林。冒頭のMCで「車で都内に来るまでに、全く同じ色味のおじいちゃんを3人見ました」と挨拶代わりの(?)エピソードトークからギターをかき鳴らして「光を投げれば」からライヴをスタート。アルバム『光を投げていた』からの1曲だ。

頭上から降り注ぐライトが、歌い出すと真っ赤な照明に変わる。躍動的にリズムを刻むギター、歌に合わせてライティングが生き物のようにが変わっていく。殺風景なステージが無骨な歌声によく似合う。5月21日(土)大阪・味園ユニバースでのワンマンライヴに続き、この日も音響はzAk、照明は平山和裕によるものだ。

4ビートの「HEALTHY」。〈生活習慣 人間関係 どれもそこまで悪くない〉と、明瞭にボーカルが聴き取れて、観客を歌の世界に引き入れていく。着席スタイルの観客がじっと耳を澄ませているさまは、昔のアングラなライヴハウスを想像させて、それがとても小林の持つ歌とビジュアルの雰囲気に似合っていた。5日前ぐらいにできた新曲と紹介された「繁茂」では、短音を爪弾きながら一筆書きを繋げていくような呼吸を忘れたような歌い方が耳に残る。時折ファルセットを交えながら、言葉遊びも感じさせる楽曲で、フロアにミラーボールが回っていたのがとても美しく感じられた。そんなムードは次のミディアムバラード「花も咲かない束の間に」でも繋がっていて、幻想的なシルエットの中で歌い上げた。

MCで、漫画『ジャンケットバンク』の話を熱心に語るものの、お客さんからのリアクションは薄めな様子。「おもろいんで読んでください。大阪は『トリコ』の話をしたんですけど、2人ぐらいしか笑ってなかった」と、自虐的なMCで笑わせた。

ひときわ激しく、情熱的なラテンノリの「目下II」、「biscuit」ではハイテンションでギターを搔きむしるように弾いて歌ったり、ピタッと止まって歌ったりと、変幻自在なパフォーマンス。声もとても出ていて迫力満点で、この日のハイライトとなっていた。歌い終わると「30秒ぐらい息を整える時間をください」と水を飲みながら、スマホを取り出して見る小林に客席からクスクスとざわめきが起こる。「あ、家かと思いました(笑)」と、リラックスしすぎた様子。

「最後まで楽しんでください。小林私でした、ありがとう!」と、お客さんに感謝してから、最後の曲「生活」をささやくように歌い出した。しゃくりあげるような、ともすればひっくり返ってしまいそうな歌声が、儚さと危うさを孕んでいるようで、とても魅力的に映った。イベント出演の短時間のライヴながら、歌詞が聞き取れる明瞭なボーカルと光の演出により、小林私の放つ光と影を感じさせたとても充実したライヴだった。

取材・文:岡本貴之
PHOTO:藤井拓

ライヴ情報
〈#UDSF〉
2022年5月23日(月)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
出演:スカート/小林私 / 柳瀬二郎(betcover!!)
〈小林私セットリスト〉
1.光を投げれば
2.HEALTHY
3.繁茂
4.花も咲かない束の間に
5.目下Ⅱ
6.biscuit
7.生活

ライヴ情報
小林私 東阪ワンマンライブ〈舞台では支配の力は諸君に宿る〉
「舞台では支配の力は諸君に宿る」
ゲスト:清 竜人
2022年6月11日(土) 東京・Zepp Haneda
イープラス チケット先行
https://eplus.jp/watashikobayashi/

アーティスト情報
・小林私 Twitter
https://linktr.ee/kobayashiwatashi

[ニュース] betcover!!, スカート, 小林私

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