2024年3月に2年半ぶりの日本での公演を控えるBlume popoによる2024年1月3日リリースの最新シングル『逃現郷』。前作『少年時代』のリリースの後、香港/中国でのツアーを経たBlume popoの今が現れた一曲。
本楽曲の制作は、前作『少年時代』に引き続き、ドイツ・デュッセルドルフ在住のコンポーザー横田と、日本にいるその他のメンバーによって、国境を越えた二拠点で行われた。レコーディング/ミックス/マスタリングは過去作に引き続きエンジニア田村雄平による仕事で、独自のサウンドデザインに磨きがかけられている。
本作でBlume popoが描いたものは、"どこにもない理想郷"とされる"桃源郷"(="ユートピア")ではなく、すぐそこにある[現]実から[逃]げるための場所、"逃現郷"だ。優しく温かい歌詞には、作詞を担当したボーカル野村美こにとっての"逃現郷"が体現されており、その表現によって、この曲自体がリスナーにとっての"逃現郷"になるだろう。外の世界から閉ざされた、内側の安全な世界への憧憬を歌った本作品は、昨今のBlume popoの作品に一貫するテーマである『自己の境界線の揺らぎ』にやはり通底している。
ジャケットはドイツ・ベルリンを拠点に活動する写真家、Taichi Hishikawaによる作品。多重露光による曖昧な輪郭を描くことで、視覚的にも『自己の境界線の揺らぎ』やその曖昧性のようなものを描いているようだ。
シューゲイザーやオルタナティブをバックボーンとし、8年間のキャリアで身につけた揺るぎないBlume popo独自の音像に本作ではさらに磨きがかけられ、リスナーはこれまで以上に高い解像度で作品を受け取るだろう。そして、その表現に包まれたBlume popoの哲学が強く、固くなっていることがすぐに感じられるだろう。
本作が日本のオルタナシーンの一時代を牽引する一曲になると、確信を持って宣言する。