
怒髪天からのエールをフリー・ダウンロ—ドで!
震災後、様々なアーティストによるチャリティ・ソングが発表されている中、なんと怒髪天からの決意表明ソングが到着! タイトルは『ニッポン♡ファイターズ』(ニッポン・ラブ・ファイターズ)。「オレがやらなきゃ誰がやる」「まかせとけ! 」「ドンとこい! 」と言い切る様は心強く、復興へ向けて動き出す人々を奮い立たせる力を持っている。さあ、まずは聞いてみてほしい。きっとこの歌は、口ずさんだとたんにあなたの決意表明となって背中を押してくれるはず!
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怒髪天 / ニッポン♡ファイターズ
5月14日より全国22公演を巡る"LIVE LIFE LINE TOUR"に先駆けてリリースされるこの新曲は、ツアー・タイトルもさることながら、新曲も自分自身を鼓舞するべく、
「オレがやらなきゃ誰がやる ファイト ニッポン! まかせとけ
オレがやらなきゃ誰がやる ファイト ニッポン! ドンとこい!」
と日本伝統応援団スタイルで大合唱。
(ダウンロード期間 : 5月2日〜7月11日)
怒髪天×箭内道彦 対談
3月11日に東日本大震災を受け、20日、猪苗代湖ズはチャリティ・シングル『I love you & I need you ふくしま』の配信を開始した。メンバー全員が福島県出身だという彼らのこの楽曲の収益は、全額福島県災害対策本部に義援金として寄付されることとなった。その後、多くのミュージシャンを巻き込み、4月15日までに全部で5パターンもの『I love you I need youふくしま』をリリース。その第三弾目として発表されたのが、怒髪天とのコラボレーション作品だった。
猪苗代湖ズ結成の発起人であるクリエイティブディレクターの箭内道彦の箭内道彦と怒髪天の付き合いは、元々濃いものだった。怒髪天の『ド真ん中節』のカップリング曲、「YOU DON’T KNOW」は箭内が作詞、作曲をし、「怒髪天と箭内道彦」の作品として発表された。また怒髪天も箭内が福島で主催した「風とロックFES 福島」(2009年)「風とロック芋煮会」(2010年)に2年連続で登場している。箭内が手掛けた桃屋のCMにはボーカルの増子直純が出演し、最近テレビで放送され始めた競輪のCMにも、怒髪天の「そのともしびをてがかりに」が起用されている。お互いに寄せる信頼が厚いことは、その活動の中からも十分に窺える。
この度、怒髪天は新曲『ニッポン♡ファイターズ』をリリースする。この作品について、あまり余計なことは言わないでおこう。だって聴けばわかるじゃないか。あらゆるまどろっこしい比喩表現を排除し、伝えたいことはただ一つ。怒髪天の4人と箭内道彦と、届いたばかりのこの曲の完成版を聴き、話を伺った。震災後、何が変わったのか。お互いの作品をどう感じたのか。今後、どう動こうと考えているのか。
進行&文 : 水嶋美和

何かしてあげようじゃなくて、しなきゃいかん
——箭内さんは『ニッポン♡ファイターズ』を聴いてどう思いましたか?
箭内道彦(以下、箭内) : 素晴らしいです。今のところこういう曲は、この一曲しかないですね。日本に。
増子直純(以下、増子) : 言いすぎじゃない!?
箭内 : 今、震災を受けて様々な応援ソングが出てますけど、みんな「頑張れ」と「頑張らなくていいよ」の間の温度調整にすごく困ってるんですよ。被災地には音楽を待ってる人も待ってない人も両方いるから、全員にフィットする音楽なんて存在しない。そんな中で「俺がやらなきゃ誰がやる! 」って強く言い切る男がいて、そういう奴がいるだけで心強いんですよ。この間、色んな所に行って神様と話し合いをしたんですけど… 。
——話し合い? 神様と!?

箭内 : 勝手に語りかけてたんですよ。神様とされるもの全部に。でもみんな僕に黙ってる。サイババも、何で今死んじゃうんですかと。
——死んでる場合じゃないだろうと。
箭内 : 震災のことを大きな教訓だって言ってる人もいるけど、3万人も人が死ぬことと引き換えの教訓なんかあるもんか。そして、否定するなら行動しろよって強く思う。そういう、俺が言いたかったこと全部がこの歌に入ってるんです。見事に言い切ってくれてる。今回のことで、ミュージシャンは大きく二分されました。行動型と静観型。どちらが正しいとかじゃなく。BRAHMANのTOSHI-LOWなんてあんなにカリスマだったのに、今は地上に降りてきて(笑)被災地で力仕事しているし、斉藤和義さんも賛否両論の中であの歌を歌った。でも音楽ってそういうこと言いたくて仕方が無い奴らの集まりだったんじゃないの? ヤバい歌を歌って逮捕されるロック・バンドが10組ぐらい出てきてもいいはずなのに。一音楽ファンとして、そんな歌が充満していない今の状況はやっぱり寂しい。そんな中、増子さんが俺を泣かそうとしてメールを送ってきたんですよ。
増子 : そんなことはない! まさかこれで泣くとは。
箭内 : 福島を支援していく中で、「箭内さん自身が折れそうになった時に口ずさんでくれたらと思ってます。」って、この曲を送ってくれたんです。これが怒髪天からのエールですと。
増子 : 何にでも言霊ってあるから、これを口ずさめば「まかしとけ」って気持にもなるだろうと。
箭内 : 今、僕は「間接支援」という言葉を流行らそうとしていて、支援している人を支援したら、それは支援なんですよ。福島を何とかしたいって思っている俺を怒髪天のみんなが元気づけてくれて、それは福島を支援してることになる。この間Perfumeののっちにニッポン放送で偶然会って「箭内さん、頑張っててすごい」って言われてめちゃくちゃ嬉しくて(笑)、何十年でも何でもやっちゃうよ! って気持ちになって。どう被災地と関わっていいかわからずに無力を感じて自分を責めてる人がたくさんいるけど、何かをしようとする人の背中を押して送り出してあげればそれはもう支援なんですよ。今こそ、音楽はそういう風に機能すべきだと思う。
——増子さんは、震災後の世の中の音楽の流れをどう思いますか?
増子 : 「頑張れ」とか「祈ってます」とかって、よく歌えるなって。被災地の人達は頑張っているんだよ。べらべら余計なこと喋んなって話。お祈りしてますって、祈ったってクソの役にも立たないんだよ。
——今、ミュージシャンにできることは何だと思います?
増子 : いや、現にこんな時に音楽もそうそう役に立たないよ。さっき箭内さんも言ってたけど、待ってる人も居れば待ってない人も居る。だけど俺らこれに誇りもってやってる訳だし、卑下することはない。
箭内 : 待ってない人のことを考えちゃうと待ってる人のところには届かなくなってしまう。
増子 : 望まれりゃあ行く、でいいと思う。歌の内容にもよるし、それぞれの持ち場っていうかネーム・バリューにもよると思うんだよ。全然知らないおっさんが来てギター持って歌ってても、お前黙って瓦礫運べよってなるじゃない?
——それはそうですね(笑)。

増子 : でも小林幸子さんとか石原軍団が来たってなればみんな心が弾むし、癒しにもなる。そこが彼らの出番というかネーム・バリューの一番の使いどころだと思う。俺らは音楽で何をやるべきか、まあ口が裂けても人に頑張れよなんて言えないよ。頑張ってるからね。箭内さんたちみたいに自分達の故郷が被災している人の気持ちって、俺らには計り知れない。その人達も心は被災している訳よ。東京に居るからこそ負い目も感じるだろうし。そこで「俺がやらんでどうする」って言うことで、それが心の杖になってくれれば。これ、応援歌じゃないからね。それぞれのみんなが唄うことでそれぞれの決意表明になるからさ。
——震災後、4人で集まったのはいつ頃ですか?
増子 : 当日は一緒に居たよ。箭内さんも。
箭内 : 競輪のCMを作っている途中で、オダギリジョーさんや長澤まさみちゃんや大森南朋さんも居たよね。怒髪天に「そのともしびをてがかりに」を歌いに来てもらってた。
——すごいメンツですね(笑)。
増子 : 震災後は音楽なんかやってる場合じゃねえだろってなったんだけど、やっぱり俺らのやることはまず曲作ってライブすることだからね。でラジオとかでさ、この曲が流れることによってみんなが自然と「まかせろ」って口ずさんだりして、それぞれの決意表明になって、なんとなく思い込んでくるというかさ。出来なくても俺は出来るって自己暗示にかかって。それぞれ出来ることって言っても大したことないかもしれないけどね。「そこの皿洗いは俺にまかせろ」ぐらいのレベルかもしれない。でも、それでいいと思う。
(一同笑)
増子 : その程度のことでも「まかせろ」なんだよ。何かしてあげようじゃなくて、しなきゃいかん。これは被災地の闘いじゃなくて、自分達の闘いだからね。
清志郎さん、今、絶対生きていたかったと思う
——猪苗代湖ズの行動はすごい早かったですよね。11日に震災があって、『I love you & I need you ふくしま』のレコーディングが17日?
箭内 : 17日から三日間名古屋でレコ―ディングして、そのままTOKYO FMに持ち込んで配信スタートしました。聴き飽きたっていう意見も頂いてますけどね(笑)。聴き飽きた人は、復興が始まった人なんだって思うようにしてます。
——福島の人にはどれぐらい届いてるんですか?
箭内 : かなり届いてますよ。民放4局がACの代わりに流してくれたり、PVを放送開始前と終了後に流してくれてたり、NHK福島でも頻繁に流してくれてる。だから俺、今福島帰るとめちゃめちゃ声かけられる。「みんなトップランナー見てくれてんの? 」って女子高生に聞くと「猪苗代湖ズの人ですよね」って言われて、あ、そっち? みたいな(笑)。ライヴ・ハウスに向かって街を歩いてると信号待ちで停まってる車の窓が次々に開いて、乗ってるおばちゃんとかが「ありがとね!」って言ってくれるんですよ。
増子 : これは銅像立つな(笑)。最後の浜通りが出てくるとことか、風とロックのこと思い出すもんなあ。
箭内 : 風とロック(2009年の「風とロックFES 福島」2010年の「風とロック芋煮会」ほか)って、すごいいいイベントなのに福島県民があまり集まらないんですよ。いっぱい人来てるなって思ってもよく見るとみんな新幹線で帰って行って、福島の人を挑発したくて始めたのに。何か半分県外の人が来て楽しむイベントになっちゃったなーって思ってたんだけど、今、その外からの人達がみんなすごい心配してくれてるんですよ。一度来てるから、この曲を聞いて福島を想像できるようになってるんですね。
増子 : すごいいい思い出になってるからね。
箭内 : みんな浴衣着て、(上原子)友康さんが歌本の1ページから最後のページまで歌いきろうと、6時間弾き語りを続けて事務所の人に止められたりね(笑)。
上原子友康(以下、上原子) : もっといけましたけどね(笑)。
増子 : 俺らにとっていい思い出だから、余計に何とかしなきゃって思った。またああやって笑って集まれるようにしたいと思うね。この曲ですごい感じたのは、これまであった日常の中で聴くと観光PRみたいな曲なんだよ。でも、状況が変わったことでそれぞれの『故郷の歌』になったっていうか、次のことを考えていくための歌なんだなって思う。これだけ福島(ふるさと)のこと好きなんだからどうしましょうか? っていう。
箭内 : 好きじゃなかったですけどね。去年、この歌を風とロック芋煮会で歌った時、俺だけ「ふくしまが好き」のところモゴモゴ歌ってたもん(笑)。でも増子さんが今言ったように、状況があの意味を変えたんです。だから、震災後すぐのレコーディングで生まれて初めて「ふくしまが好き」って言った。だけど不思議なもんで、歌詞に36回「ふくしま」が出てくるんですけど、言えば言うほど好きになっていくんですよね。一生支えたいって言い続けてたら、俺も今までは早く死にたいって思ってた人間なんだけど、長生きしたいって思うようになってくるんですよ。
——本当に福島と結婚した感覚なんですね。この曲には、怒髪天が参加してるバージョンもありますよね?
増子 : 何かやりたいって思ってた時に、箭内さんにお話を頂いて。
上原子 : 原曲ってすごいシンプルで、隙間だらけじゃないですか。それがいいと思ってたから、ここに音を足したくなかった。だけど、録り始めたら迷いなく自然に弾けたんです。あのギター・ソロ、福島を思いながら弾き始めたんですけど、いつの間にか僕の故郷の景色がちらつき始めるんですよね。
箭内 : 二重構造なんですよ。福島を思うことで、自分の故郷を思う。あの曲が出来て怒髪天のみなさんに送って、返って来たメールですごい元気出たんですよ。坂さん(坂詰克彦)のメールは特に、一生保存しようと思った。
増子 : どうせ何かのコピペですよ(笑)。
——(笑)。どんな内容だったんですか?
箭内 : ちょっと探してみますね… あった。「怒髪天をやっててよかったと、今最も思いました」。
増子 : それまで全く思ってなかったのか!?
坂詰克彦(以下、坂詰) : (笑)。
——他にも色んなバージョンが出てますよね。あそこまで展開しようと思ったのはなぜですか?
箭内 : 最初はあそこまで広げるつもりはなくて、あの曲を携帯でダウンロードしてくれた福山雅治さんが、友康さんと同じすかすかだなって印象を持って、「これは箭内さんが俺にギターを弾けって言ってるんだ!」って勝手に思ってくれて(笑)、色んな人がやった方が楽しいって言ってくれたんですよ。だからこれは100%福山さんのアイデアなんです。
増子 : さっすが龍馬だな!
箭内 : まあ、歴史上は龍馬と福島は微妙な関係でしたけどね。
——水前寺清子さんバージョンが一番びっくりしましたね。最初聞いた時、聞き返しました。
箭内 : 実際に福島の避難所を回ってみて、年配の方々にこの曲をもっと喜んでもらえたらと思ったんです。それで翌日、東京戻ってきて、水前寺さんにお願いしてみたら即答でご快諾をいただいて。僕自身も出来上がりを聴いてすごく感激しました。考えてみると、水前寺さんは女版増子直純かも(笑)。増子さんが男版水前寺さんというか(笑)。
——(笑)。清志郎さんも驚きましたね。
増子 : 清志郎さん、今、絶対生きていたかったと思う。「ほらみろ! 」って言ってんじゃない。
箭内 : 原発について唯一たくさん歌ってましたからね。ああいうリーダーがいたら、今の音楽シーンの動きは全然違うでしょうね。今リーダーになれるのは、僕は怒髪天だと思ってるんですけど、石原軍団に比べるとまだ知名度が発展途上なんですよね。足りないのはもうそこだけ。
増子 : 炊き出しか!
箭内 : 坂さん、してそうだもんね。
坂詰 : ヤキソバ焼きましょうか。
箭内 : いま、この時代に怒髪天がいなかったら相当まずいんじゃないですかね。ね、しみさん!
清水泰次(以下、清水) : いや… 大丈夫でしょ!

箭内 : だめだって。怒髪天いないと、俺を励ましてくれる人がのっちだけになっちゃう。
一同 : いやいやいや!
増子 : のっちいたら十分だろ!
箭内 : でも、怒髪天は前からこうでしたよね。いきなり震災が起きて変わったんじゃなくて、「そのともしびをてがかりに」もそういう歌だし、怒髪天は地震を予知してたのかも。
増子 : だったらすごいけどね(笑)。
箭内 : でも、何かあると思うんですよ。俺も福島と5年関わってたのは今こうやって働くためだったのかなって。怒髪天は25年以上音楽やってますけど、シーンの中では浮いてましたよね。果たして音楽なのか人間なのか。その「人間型」っていうミュージシャンが今必要とされてて、怒髪天はかなり早く人間型を掲げちゃってたんで、世の中が戸惑ってたんですよ。
増子 : 歳も歳だからね。
箭内 : 人間型の届ける創造物の必要度数が上がってきてたんだなって。俺も予知してたんですよね。怒髪天は今必要だってずっと言い続けてた。
増子 : 斉藤(和義)くんみたいな、批判する清志郎スタイルはすごいロックでかっこいいけど、あれは俺らのキャラじゃない。怒髪天として、納得いく形でやってこうと思ってずっと曲を作ってたから、今までは分かり辛いものになってたのかもしれない。でもそれが間違いじゃなかったっていうのがここ何年かでわかってきたし、このタイミングで、歌う歌が明確に出てくる様になった。「俺がやらなきゃ誰がやる」正義の味方が言うセリフを遂に俺らが言う時が来たか (笑)。
箭内 : 本当にお鉢だか爆弾だかわかんないけど、回って来た感じはあるよね。
増子 : 回ってきてない時代から俺らの番だってずっと思ってたから。
(一同笑)

増子 : ここ何年かで色んな小さい歯車がカチカチ合って動き始めてて、最終的に動く歯車ってこれだったのか。こんなにものすごいでかいものを動かさなきゃいけないのかと。
箭内 : これ、変な実感ですよね。感じたことないですよ。あれもこれも繋がってた。繋がってなかったものが何もない。あの時にあの人に出会ったのも全部このためだったのか、とかね。
増子 : 福島で音楽番組のMCを1年やってて、毎月福島に行ってて、それが免罪符になって福島出身じゃないけど風とロックに出ることになって、そういう歯車の噛み合い方はぞっとするものがあるね。
——それでも、音楽をやるべきだと思った。
増子 : やるしかないから。でもこれ今、色んなところで色んな人が思ってると思う。今回のことで、みんな価値観変わったはずだよ。その上でこれから、まず、何が大事かってことを考えなきゃいけない。
——価値観は変わっても、怒髪天は今までも、今回の『ニッポン♡ファイターズ』でも、やり方としては変わってないですよね。
増子 : 基本、頑張れ俺だから。それぞれ自分の人生、自分がやらんでどうする。
新しい時代を作ることを、わくわくしながらやって欲しい
——今までと変わらないことを続けていく。では、何が変わっていくんでしょうか?
増子 : 特に俺達のスタンスは変わらないよ。これだけ何が一番大事なのかを考える機会があったのにも関わらず、今回のことを天罰だって言ってるバカに入れる奴が東京にはたくさん居るんだよ。今までと変わらないで、まんまでいいやって思ってるんなら、上等だと。わからねえなら一個ずつ教えてやる。俺らがやってる事を見せて、一つ一つ教えてやる。そう言う風にやっていこうと思ってる。
——箭内さんはどうですか? これからの行動に変化はあると思いますか?
箭内 : 価値観は180度変わりました。でも震災の前に企画してたCMは、今流しても意外とみんなに届けたいものだったりして、そこは怒髪天と変わらないと思います。今回、僕は当事者だったから、人は当事者になるまでここまで分からずやなんだなって反省して、自分のこととなったらこんなに我を忘れるほどに行動することが出来るんだって知って、驚いてます。これを当事者力って呼んでるんだけど、僕のことを昔から知ってる人達には、嫌いって言ってたのを好きだって言ってたり、結婚しないって言ってたのに200万人と結婚するとか、嘘つき!って思われてるでしょうね(笑)。自分でもいつ変わんのかな、誰が自分の切り替えスイッチ押すのかなって思ってたら、ここだったんですよね。
増子 : 今回のことで、みんなの目が開いた。色んなことに危機感を持った人は増えたと思う。それってちょっとずつ何かが変わっていく兆しだと思うから、期待してるよ。
——混沌としている今、どんな言葉を届けるべきだと考えていますか?
箭内 : 確かにまだ混沌としてるけど、この曲(『ニッポン♡ファイターズ』)が出たらきっと大丈夫。
増子 : 俺ら4人、それぞれ考え方があって、それを擦り寄せていくのも難しくて、バンドやってる場合じゃねえって状況もあったけど、俺らがまずやることはバンドなんだよ。鳴らすことで自分達も救われるし、箭内さんやこれを聴いた人にとって多少はためになるんだって自負もあるし。だから、より辛辣で、より毒を持って、より楽しくバカバカしい曲をどんどん作ろうと思ってるよ。
箭内 : 最後の楽しくバカバカしいっていうのがすごい大事で、今、若い人が心配なんですよ。怒髪天はだてにバンド27年やってないから、やはりこんな状況でもタフでいられる。でも今の若い人たちってもっと繊細で、僕らが若い時よりも「人の役に立ちたい」って思う人がはるかに多い世代だなって見てたんですね。だから、このシリアスな現実を体に全部入れようとして、何も考えられなくなったり、とにかく焦ってしまったり、自家中毒を起こす人がたくさん出てきてる。そういう若い人たちの力をちゃんと気楽に出させてあげることがすごい大事で、それを出来るのが怒髪天の音楽だと思う。受け止め過ぎないで欲しいなって思うんです。これから新しい時代を作ることを、わくわくしながらやって欲しい。偽善でも不謹慎でも、のっちに褒められたいから頑張る! それぐらいの気持ちじゃないと、復興する前にみんな倒れちゃう。
増子 : 長い闘いだからね。

箭内 : 福島のことを心配しだすと、今度は東京のことも気になってきたんです。東京出身の人が東京を故郷として思う感覚って、あまり無いと思うんです。半分以上を地方出身者が占める特別な場所になってしまってるから仕方が無いんですけど。でもその気持ちがあれば、他の人の故郷で起きていることに対して、もっと思いを馳せることが出来るんじゃないかなと。そういう東京生まれの人達にとって東京を故郷だと思えるものを、俺は地方出身者だから外側からだけど、作っていかないとダメだと思うんですね。
増子 : おばちゃんたちが買占めをするのも、自分のためじゃなくて家族を生き延びさせるための本能なんだよね。家族愛、それを広げたものが郷土愛。でも、そこをちゃんと教えてあげなきゃ。たぶん、今、家大変なことになってるよ(笑)それ被災地に送れってんだよ。
箭内 : この一カ月、自分も含めて東京は浮足立ってたと思うんです。でもこれから東京がしっかりして、被災地を支えていかなきゃいけない。それこそ、「俺がやらなきゃ誰がやる」じゃないけど、「東京がやらなきゃ誰がやる」ぐらいの気持ちで。
猪苗代湖ズ『I love you & I need you ふくしま』
松田晋二(THE BACK HORN)、山口隆(サンボマスター)、渡辺俊美(TOKYO NO.1 SOUL SET)、そしてクリエイターの箭内道彦の福島県出身4人で構成される猪苗代湖ズ。昨秋、箭内道彦が実行委員長を務め行われたイベント「風とロック芋煮会」にて結成され、その時生まれた曲が「アイラブユーベイビー福島」だ。
3月11日に起きた東日本大震災を受け、続く地震や津波の被災、原発事故への不安など、危機感に襲われる故郷の為に今、何かできないかと、4人は再び集まる。そして17日、音源化されていなかった「アイラブユーベイビー福島」を『I love you & I need you ふくしま』としてレコーディング。節電に配慮し、東京を離れ名古屋のスタジオで行われた。エンジニア&プロデューサーはサンボマスターのBaを担当する近藤洋一。そしてその3日後の20日、配信シングルとして緊急リリースされた。収益の全てが福島県災害対策本部に義援金として寄付される。
その後、福山雅治と井上鑑、怒髪天、忌野清志郎、水前寺清子らが参加した別バージョンを発表。
だっペズとナンバーザ『予定』
だっぺズとナンバーザは、富澤タクa.k.a.遅刻(グループ魂/TOKYO MOOD PUNKS)のバンド、Numer the.による新ユニット。2009年10月に行われた「風とロックFES福島」にて、薄皮饅頭ズ(松田晋二(THE BACK HORN)、渡辺俊美(TOKYO No.1 SOULSET)、箭内道彦)により初披露された『予定』を、富澤タクa.k.a遅刻を中心に新たにレコーディングし『予定~福島に帰ったら~』として音源化。多くのミュージシャン間に支援の輪を広げていく猪苗代湖ズ同様、この曲も収益の全額が福島県に寄付される。岩手、宮城、茨城に帰る『予定』も立っているらしい。また、オリジナル・バージョンに加えて、「自分の故郷にあてはめて歌いたい」という声に応えたカラオケ・バージョンもあり。
PROFILE
怒髪天
増子直純(Vo) / 上原子友康(Gu) / 清水泰次 (Ba) / 坂詰克彦(Dr)
1984年、札幌にて結成。結成から27年目を迎えるも、現在進行形で動員、セールス共に右肩上がりで増員中。3月23日にライブ定番楽曲の完全コンプリートアルバム「D- N°18 LIVE MASTERPIECE」を発売。5月14日(土)新宿ロフトを皮切りに、7月10日(日)ZEPP TOKYOまで全22公演のLIVE LIFE LINE TOURも決定。
■オフィシャルHP
箭内道彦
福島県郡山市出身。クリエイティブディレクター。1964年生まれ。主な仕事に、タワー・レコード「NO MUSIC,NO LIFE.」、ゼクシィ「Get Old with Me.」、東京メトロ「TOKYO HEART」「TOKYO WONDERGROUND」、サントリー「ほろよい」、ケイリン2011、グリコ「ビスコ」、桃屋「味付榨菜」「辛そうで辛くない少し辛いラー油」など。また、同郷のアーティストたちと4人で組んだバンド「猪苗代湖ズ」で、その収益全額を福島県の義援金にすべく『I love you & I need you ふくしま』をリリース。「だっぺズとナンバーザ」名義で『予定~福島に帰ったら~』にも参加。サイト『THE HUMAN BEATS』では、被災地への声と被災地からの声を、地元新聞社福島民報と協同し、避難所の壁に貼り出している。
■猪苗代湖公式HP
■「予定」公式HP
■THE HUMAN BEATS