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2019年02月13日18時35分

 
MOROHA×四星球ライヴ・レポート、対極を突き進む2組、その異端を極めるバンド同士をつなぐ絆とは
 

2019年2月4日 MOROHA自主企画
『「月金でギンギン!〜職場の死神背負って来い〜」新宿Marble編』

TEXT : 真貝聡 
PHOTO : MAYUMI-kiss it bitter-

表面的には、MOROHA四星球は対極に見える。片やマイク1本、アコギ1本の最小限の演出で、観客を黙らせて緊張感のあるライブをするMOROHA。片やステージに小道具を持ち込み、思いもよらない展開で観客を笑いの渦へ巻き込む四星球。どうして、この2組が対バンをすることになったのだろうか。

——2018年12月、アフロは『SPICE』の「逢いたい、相対。」という自身の連載企画で北島康雄と中目黒の居酒屋にいた。

アフロ : 俺、青春スカトロジーのウワガワ爆発さんとバイト先が一緒だったんです。

北島 : おお、言うてたなぁ。

アフロ : 新宿Marbleへ青春スカトロジーのライブを観に行った時、四星球も出てたんですよね。俺は四星球の出番に間に合わなかったけど、会場にはハッピを着ているお客さんが何人かいたりして「こういうバンドがいるんだな」って。青春スカトロジーの斉藤さんもウワガワ(爆発)さんも、あんまりバンドを褒める人じゃなかったのに、四星球に対しては「アイツらすごいよ」と言ってたんですよ。

北島 : うんうん、確かに最初から褒めてくれたなぁ。

アフロ : 新宿Marbleの時から今のような感じだったんですか?

北島 : どうだったかなぁ? そう言いたいけど、分からんなぁ。

それから2ヶ月後、2019年2月4日(月)に『MOROHA自主企画「月金でギンギン!〜職場の死神背負って来い〜」新宿Marble編』の日は訪れた。トップバッターは四星球。上は素肌にハッピ、下はブリーフ一丁という彼らなりの正装でU太、まさやん、モリスが登場。まさやんが「妖怪泣き笑い」をやりますと宣言して北島を呼び込むと、バラを1輪持ち、全身タイツ、顔面をビニールテープでぐるぐる巻きにした北島がステージに姿を現した。北島が「月曜日、楽しんでいこうぜー!」的なことをフガフガと叫び、いよいよライブがスタートしたかと思いきや、テープで口が塞がっているためうまく歌えず「やっぱり、あかんわ」と演奏を止めて、「これで歌うの不可能ダァー!」的なことをフガフガ言いながらテープをゆっくりと剥がす。初っ端から笑いの空気を作ったところで、本当の本当に演奏がスタート。

曲の終盤では、北島が座るように促して観客全員がしゃがんだ。「『許してくだしぇー 人間しゃみゃー』と歌ったらジャンプですからね」と伝えて「……いよいよ飛ぶぞ」と会場が一体となりかけた時、ガチャと出入り口の扉が開いた。入ってきた観客は「え、え、え?」と状況を理解できていない様子。すかさず北島が「あ、今日こんな感じでやらせてもろうてます。分かりますよね?」と言って、後から入ってきた観客も空気を読んでしゃがむ。「15周年らしいですよ、新宿Marble。潰れかけてると聞きましたので、どうせ潰れるなら皆さんのジャンプで潰してください!」とサビに合わせて観客全員が一斉に飛び跳ねた。冬だというのに、異常な熱気で誰もが汗をかきながら踊っていた。

「『たくさん笑えば 涙が出るなら たくさん泣いたら 笑えるのかな』……とか、言うてますけども!」と間髪いれずに「言うてますけども」へ突入。そしてサビに入ると、再び演奏を止める。「あのぅ、ZIMA持ってヒントあげてたやん! サビで『言うてますけども』って歌ったら、お構いなしに『カッコイイ』ってコールしてください!」と、身勝手なコール&レスポンスを強要。「MOROHAのライブでやったら怒られることをやってください!」と笑いながら伝えた。

「アフロの書くリリックはもちろん、UKのギターも大好きで。今日はサインをもらって帰ろうと思ってて。何か書いてもらえるものないかなと思って探したんですけど……これくらいしかないんですよねぇ」と『週刊文春』を取り出すと、会場中が吹き出した。そしてページをめくり「買ってから気づいたんですけどもぉ、今週号には載ってないんですね。420円損したわ!」と悪態をついた。
そのまま唐突に「……“俺のがヤバイゲーム”って知ってます? え、みんな高校の時にやってないの?」と、お互いに「俺のがヤバイ」とただ連呼するだけのゲームがスタート。記事を読んでいる人がこの状況をどこまで理解できているか不明だが、本当にこんなことが起きていたのだからしょうがない。
「MOROHAの『俺のがヤバイ』って曲がカッコよくて大好きなんですけど『自分はどうなんかなぁ』と考えたら、笑ってもらうことを念頭に置いてまして。笑ってもらえないと、その日の夜に死んじゃいたい気持ちになるんですね。それって、病気やなと思って。この病気、一生治らんでも良いと思ってます。俺のは病!一生よろしくお願いします!」そう言うと、会場から拍手が起こった。

2017年の『ぴあ中部版WEB』のインタビューで、北島はバンドについて以下のように語っている。
「コミックバンドというからには面白くなくちゃいけないっていう。逆にコミックバンドって馬鹿にされて、それをひっくり返す気持ち良さもあります」 “観客を笑わせなければならない”という使命を自ら課している四星球。どうすれば笑顔にできるか、それだけを追求し続けて17年目になる。

中盤に差し掛かり、まだライブで演奏したことがないという「SWEAT 17 BLUES」を披露。「普通にやると1分で終わる曲なんですけど、今日限り歌詞を2行歌って、その歌詞の説明をするという今まで誰もやったことがないことをします。なぜ誰もやったことがないのかと言うと“ダサいから”です(キッパリ)。でも、今日ぐらいは良いかなと思うのでやらせてください」そう言って演奏が始まった。
『“マイノリティー”も“マジョリティー”も“マ”と“リティー”で似たり寄ったり インイチがイチがインフィニティー インチキかイチかバチかのジャーニー』と歌ったところで演奏を止めて「これはですね、マイノリティとマジョリティで少数派と多数派とあるけど、結局は少数派を意識した多数派だったり、多数派を意識した少数派だったり、意識した時点で一緒ですよと。2行目はインイチがイチというのは、僕やあなた1人1人が無限の可能性を秘めているので、少数も多数も関係ないのではないでしょうか、という歌詞になっております」言葉の通り、この後も2行歌えば、2行解説という実験的な演出を見せた。

さらに新曲「いい歌ができたんだ、この歌じゃないけれど」では「ステージをねり歩きまーす」と言って、カメラを持ったスタッフを従えてフロア内を歩く北島。「カメラマン、こっちちゃうわ! UKはあっちや!」と叫んだ。

終始温かいムードの中、8曲目に「ラジオネーム いつかのキミ」という思いがけないバラードを投入。本屋さんと仮面ノリダーになりたかった5歳の頃、受験勉強をしながら深夜ラジオでDragon Ashの「陽はまたのぼりくりかえす」を聴いていた15歳の頃、バンドマンになってお金がないから賞味期限切れのパンを食べていた25歳の頃、気づけばフラワーカンパニーズが「深夜高速」を作った時と同じ年齢になった35歳の頃、そんな自分へ現在の自分が手紙を送る、北島自身の人生を振り返る歌だ。

笑いから感動へ会場の雰囲気を変えた後、「アフロに『今日はMCするな』と言われたんですけど、喋っちゃいますわ」と言って過去の話を始めた。
「数年前、青春スカトロジーの斉藤さんがアフロに『四星球は良いバンドだから、ライブ観にこいよ』と言ったけど、あいつが来た時には終わってたらしいんですよね。だから今日は、僕らがどんなライブをしてたのか観てもらおうと意識してやりました。こういうライブをしておりました! 調子に乗って話しますけど、あの頃『もう四星球には勝てません』と言って去っていったバンドが新宿Marbleにはたくさんいます。あの人たちのことを思って、ずっとライブをしておりました。そういうバンドがたくさんいます。そういう人たちに今から2分間の黙祷を捧げます」そう言って、ラストスパート「クラーク博士と僕」へ。
北島は汗まみれでダイブ、U太は客にベースを差し出してバンバン触らせて、まさやんはフロアに頭から突っ込み犬神家状態。残りのエネルギーを全身でぶつけた。

2016年のrockin’on.comでDragon Ash・Kjは、四星球と鼎談した時に以下のように語った。「バンドマン以外の人から見たら、すごい違和感ある組み合わせに思うのかもしれないけど、バンドマン人気はめっちゃ高いからね。パンイチでふざけてるやつらを観て、名だたるバンドが袖で号泣してるっていう」本気で音楽をやっている同士だからこそ分かり合える。だからこそ、スタイルが違えどMOROHAはオファーを出したのだろう。11曲を披露して笑いと拍手に包まれながら四星球は使命を全うした。

いよいよMOROHAの出番。UKは静かに台の上に座りギターのサウンドチェック、アフロは足や腕をパンパンと叩き集中力を高めていた。ゆっくりと照明が落ちて「MOROHAと申します。よろしくどうぞ!」の合図から1曲目は「それいけ!フライヤーマン」でライブがスタートした。

ハアハアと息を吐きながら、マイクを口元へ運び「お前がやるって決めたんだろ。お前がどうしてもやりたいって、そう思ったんだろ。そう思って18歳の時に長野のクソ田舎を蹴っ飛ばして東京に出てきたんだろ。お前が、お前が、お前がやるって決めたんだ。やるからにはさ、いつまでも伝説をのさばらせるなよ。俺たちの時代だぜ、俺たちの時代だ。いつまでも、あの伝説は素晴らしいとか、あの伝説のフェスは素晴らしいとか、あれに出たいとか。そんなこと言ってんなよ。やるからには、お前が、お前たちが時代をブチ抜け」そう言って、鬼気迫る眼差しを向けたまま「上京タワー」を演奏した。
『進行形 以外 信じない 恥ずかしげもなく叫ぶ新時代 ハイスタ 復活 よりもぶち上がれ』『もう ゆるく楽しむは遠慮しとくよ 寝て天国より起きて地獄を』自らいばらの道を選んだ2人。彼らにとって時代をブチ抜くとはどういうことなのか。2017年に『CINRA』の企画で馬喰町バンドと対談をした際、UKはその答えを明快に話している。

UK : 今の形で、もっとちゃんとした結果がほしいなって思うので。

武 : 結果というのは?

UK : 地位と名声ですね。

武 : なるほど。今のMOROHAに地位と名声はないですか?

UK : 自分たちが納得いくまでは、まだまだ足りないです。

そして2018年7月のF.A.D YOKOHAMAのワンマンで、アフロもこんなことを言った。
「『良かったですね、遂にMOROHA売れましたね』なんて言ってきたインタビュアー。お前さぁ、Mr.Childrenって知ってるか。AKB48って知ってんのか」2人が目指すのはメジャーシーンでしっかりと結果を残すこと。それが「時代をブチ抜く」の意味なのだと思う。

3曲目「スタミナ太郎」を歌った後、MCでアフロがらしくないことを口にした。

「先ほど『MOROHAでやったら怒られることをやるのが、四星球のライブだ』と言っておりました。……その通りでございます。あのノリをやったらぶっ飛ばす。しかし諸事情がございまして、ウチのUKくんはメンタルが弱ってるんですね。今日に限ってはカッコイイコールを解禁します」そう言うと客席から「カッコイイ! カッコイイ!」とコールが起きた。そして、アフロが客席を指差し「これがMOROHAのMCだよ」と発すると、その視線の先には客に混じってステージを観る北島の姿があった。「あんた! 言わせてもらうけど、客の方にマイクを向けちゃいけないって約束を破って、MCをしちゃいけないって約束を破って、『同じ持ち時間60分をありがとうございます』と言って65分やってるからな! ……だけど、四星球の康雄さん? 『カッコイイ! カッコイイ!』」そう言って誘い水を出すと、観客もすかさず北島にコールを捧げた。「鮮度のあるUKの後にやられたら無理やわ!」と恥ずかしげに言う北島、それを見てニヤけるアフロにUKは「なんでワクワクしてんだよ」とツッコミを入れる。穏やかな状況のまま「ハダ色の日々」を演奏。この日は、そんな緊張と緩和のあるステージだった。

「四星球と同じことを思いました。たくさんのバンドがいたけど、たくさんいなくなったなと思いました。なんで俺たちは続けられたんだろう、って考えたんですけど『才能があったから』『人気があったから』『たくさんの人に求めてもらえるように努力したから』いろいろと頭の中に浮かんだんですけど、どれもしっくりこなくて。俺たちは多分、他の人よりも欲深かったからだと思います。欲しいものを欲しい、と胸を張って言ってた。欲しい、どうしてもそれをよこせって、どけ、邪魔だ、それは俺のだって。そう言い続けたから、ここに来たんだと思います」にこやかだった観客が、真剣な眼差しでアフロの言葉を聞いている。
「『ライブできる場所』とか『人気が欲しい』とか『たくさんの人に求められる瞬間』とか、たくさん欲しいものはあったけど。その中に1つ、欠かせなかったもの。今日、俺たちがライブをする理由の1つ。俺たちが欲しいのは…………金だ」UKが「米」の演奏を始めると、アフロはふっと笑みを浮かべた。でも、それは冗談を言った笑みではなく、正直で混じり気のない表情に見えた。
『拝啓 業界の関係者各位 これを聴いているお偉いさんへ 名刺もメシの差し入れも要らねえ 仕事をよこせ』『夜な夜な銭を数えてた これで生きてく これで米を食う 10円なめたら血の味がした』あまりにリアルな歌詞を聴いて、2018年5月に業界関係者の前で行われたコンベンションの様子を思い出した。
——その日は、MOROHAのライブを観て気に入れば「CMやテレビ出演を考えてくださいね」という、まさにお偉いさんが集まるプロモーションの場だった。そこでアフロは「ストロンガー」を歌いながら叫んだ。「気に入らねぇもんがあるんだろ? 腹が立ってるんだろ? ぶっ壊せ! 俺たち使え! 俺たち使って壊せ!」いつもどんな人の前だって臆することなく欲望をむき出したからこそ、今のMOROHAがあるのだろう。

後半戦になると、アフロはまさやんが段ボールで作ったカメラを手にして「奇しくも我々にカメラの曲がございまして。奇しくも『カメラはこうやって使うんだぜ』と言う曲がございまして。この曲がアノ記者たちに巡り巡って届きますように」そしてUKの優しく温かい音色とともに歌われたのは「エリザベス」。これは彼らを長年撮り続けている映像作家・エリサベス宮地をモチーフにした楽曲だ。

そういえば2017年に『ミーティア』でインタビューした時、エリザベス宮地に尋ねたことがある。

――こうしてインタビューしてる時も宮地さんは2人(アフロ・UK)にカメラを向けてるじゃないですか。それってなんでですか?

宮地 : え?

——『其ノ灯、暮ラシ』を作り終わったから、もうカメラを回さなくても良いじゃないですか。

宮地 : ドキュメンタリーをナメんな! そんなので作ってないから。もちろん、締め切りとかリリース予定が決まっているなら、さらに回すよ。だけど、俺はいつだってカメラを回すから。

――「作品が出来たから撮影が終わり」じゃないんですね。

宮地 : 終わりなんてないよ。

「終わりなんてない」彼はこの言葉の通り、いつだってMOROHAにカメラを向けている。もちろん、この日のステージも。

ラストに演奏されたのは「五文銭」だ。アウトロでUKが演奏を続ける中、アフロは最後の言葉を発した。「夢を諦めたから人生は終わるわけじゃなくて、夢が終わったからって人生は終わらない。『どこへ?』『なぜ?』『どうして?』『何を持ってそこまで?』『誰のために?』『何のために?』そんな問いかけは、生きている限りずっと続くんだ。問題はその問いかけ続ける自分の姿を、自分自身が愛してやれるかってことだと思うんだ。俺はたくさん負けてきたし、たくさん裏切ってきたけど、俺はいつか自分のことを許してやりたい。『よく頑張った』って、最後まで逃げなかったって褒めてやりたい。そして、いつか俺は俺のことを、俺は俺のことを、俺は俺のことを……」息を吸った後、声を振り絞るように叫んだ。「幸せにしたい」こうしてMOROHAのステージは幕を閉じたのだった。

——北島はアフロから言われて忘れられない言葉があるという。

北島 : MONSTER baSHの楽屋で「みんなが相撲を取っている時に、四星球はトラックを持ってきて土俵を作ってる」と言ってくれて。それだけやったら普通のありがとうやけど、アフロは「俺も土俵を作ってきた自負はあるので」と言ってくれた。それで僕は「MOROHAと同じだけのことをやれてたんやな」と嬉しかった。メジャーへ行く前は人と違うことをしようと、そればっかり考えてたけど、今は人のやってないことを探すんじゃなくて、自分のやりたいことをやった結果、誰もやってないことなら最高やなと思ってる。

MOROHAと四星球、異端な2組の旅はまだまだ続く。 (内)

【リリース情報】
MOROHA
ニュー・アルバム『MOROHA Ⅳ』
2019年05月29日(WED)発売

四星球
ニュー・アルバム『SWEAT 17 BLUES』
2019年02月20日(WED)発売

【ライヴ情報】
MOROHA「単独」
2019年07月13日(SAT) 日比谷野外音楽堂

四星球
「SWEAT 17 BLUES 完成CELEBRATE? TOUR」
2019年03月08日(SAT)徳島club GRINDHOUSEよりスタート

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