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2025/03/21 12:00

 

【ライヴレポ】えびちゅう、15年の歴史を背負い、さいたまスーパーアリーナに再び立つ──〈私立恵比寿中学 15th Anniversary大学芸会2025〜LOVE&BRAVE 〉

 

「最強の私立恵比寿中学」とはなにか?それは「最新の私立恵比寿中学」のことである。

2025年3月20日にさいたまスーパーアリーナで開催された〈私立恵比寿中学 15th Anniversary大学芸会2025〜LOVE&BRAVE 〉は、まさにそれを体現するライブだった。

さいたまスーパーアリーナ。そこは私立恵比寿中学(通称、えびちゅう)の歴史においては重要な場所である。2013年12月8日、彼女たちはメジャーデビューから1年7カ月(日本人史上最速)で単独公演を行い、グループの名を大きく知らしめた。グループとしてはこの場所に立つのは、2015年にも再び単独公演を行って以降実に10年ぶり。本当にいろんなことがあった10年を経て、えびちゅうはこの場所に帰ってきたのである。

えびちゅうは、2022年からこのさいたまスーパーアリーナに再び立つことを目標に掲げて、努力を重ねてきた。しかし、それは大きな挑戦でもあった。昨年2024年4月20日さいたまスーパーアリーナでのライブが発表されたとき、不安な気持ちを抱いていたファミリー(ファンの総称)は少なくなかったかもしれない。しかしメンバーのまっすぐな想いとファミリーの応援する気持ちとが結実し、チケットは完売。この日、夢のステージを満員で迎えることとなったのである。

定刻を迎えると、ステージに用意されたスクリーンには、オープニングムービーが流れ出す。そこには過去のさいたまスーパーアリーナ公演の映像を見る安本彩花の姿が。そして歌いながら歩く安本に、他のメンバーも合流。えびちゅうが再び、さいたまスーパーアリーナへとたどり着いたことを感じさせる演出に、胸が高まる。そして、「私たち、私立恵比寿中学」というナレーションとともに、〈私立恵比寿中学 15th Anniversary大学芸会2025〜LOVE&BRAVE 〉の幕が開いた。

セットリストの1曲目は、“サドンデス”。えびちゅうのなかでもかなり消費カロリーの高いこの曲をライヴの一発目に持ってきたことに、まず彼女たちの気合いを感じた。また“サドンデス”は、途中のダンスのパートで次々とメンバーが脱落していくのが恒例なのだが、今回最後まで残ったのは、グループのなかでも在籍歴が長い、真山と安本のふたり。ふたりは、「あたしね今日アイツの分も頑張らなきゃって、みんなで行くって言ったのに何で!?」「彩ちゃん、それ以上は言わないで。アイツが一番よく分かってるから!」と、いろいろあったこの1年間を振り返る寸劇を披露。これはもうある種の優しさであり、爆笑しながらもどこか感動してしまった。

ライヴは、さらに“イート・ザ・大目玉”、“キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~”、“シンガロン・シンガソン”と序盤から、かなりアグレッシヴなセットリストで進む。まさに戦闘モードなパフォーマンスに、ファミリーも呼応するように大きな掛け声が轟き、とんでもない一体感が序盤から生まれていた。

続いてのブロックは“未確認中学生X”でスタート。スクリーンには、2013年と2015年のさいたまスーパーアリーナにて、この楽曲をパフォーマンスする姿が映し出され、それがさらに2025年の現在へのリアルタイムの映像へと繋がる。まさに過去と現在の橋渡しとなるような演出だった。続く“ラブリースマイリーベイビー”では、メンバーはそれぞれ期ごとにトロッコに乗り、アリーナを周回。広いさいたまスーパーアリーナに集まった満員のファミリー全員と目を合わせるように、ラブリーなスマイルを振りまいていた。

“オメカシ・フィーバー”で中山莉子がパワフル・アイドルとしての真骨頂を見せると、ダンス・セクションを挟んでここからは、先日リリースされた最新シングルに収録されているユニット曲のコーナーへ。

1番手は、桜井えまと仲村悠菜の「エマユナ」コンビによる“すたーてぃん”。そのフレッシュで真っ直ぐな歌声からは、えびちゅうの輝かしい未来を感じさせた。続いて登場したのは、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香の「ココユノノカ」トリオ。3人は、ナレーター(桜木) 、王様(小久保)、美容師(風見)という役割を演じながら、“王様の耳はパンの耳”を元気いっぱいにパフォーマンス。その耳にこびりつくようなコミカルな「パン パ パン パン パンの耳」という歌詞は、間違いなくえびちゅうのDNAだった。

3番目は、小林歌穂と中山莉子の「かほりこ」コンビ。ふたりは“君のそーゆーとこ”で、フリーキーな掛け合いで楽しさを全開に。曲の終わりには、「いつか孫をお互い見せ合いっこしようよ」と話すシーンもあり、いつまでもこの友情が続いてほしいとさえ思う、彼女達らしいひとときだった。ユニットコーナーのラストは、真山りかと安本彩花。ふたりは“明日”という楽曲を、冒頭からアカペラで美しいハーモニーで歌い上げる。えびちゅうは今でこそ歌唱力の高いグループとして知られているが、それは彼女たちが努力して礎を築いたからこそ。その圧巻の歌声がさいたまスーパーアリーナに温かく響き渡っていた。

ユニットコーナを終えると、会場のスクリーンには、メンバー全員が学校の制服を着て、えびちゅうの歩みを辿るヒストリームービーが映しだされる。さらにそこから「2010年に生まれた曲、全てはここから始まった」という言葉とともに、“ebiture”が流れ出し、2010年に発表された初のオリジナル曲“えびぞりダイアモンド!!”をパフォーマンス。真山が「私たちと一緒にえびちゅうの歴史を振り返っていきましょう!今日からみんなも古参の仲間入り!」と呼びかけ、これまでの歴史をエピソードとともに振り返りながら、“チャイム!”、“売れたいエモーション!”と初期の楽曲を立て続けに。そして現在TikTokでの総再生回数が5億回を突破し、時を超えたバズヒットを飛ばしている、メジャー・デビュー曲“仮契約のシンデレラ”を披露すると、観客のテンションは最高潮に達した。こういった過去の曲をセットリストに入れてもオーディエンスがしっかり盛り上がっていたのは、えびちゅうがこれらの楽曲をライブで歌い継いでいたからこそ。15年という歴史を感じさせる、素敵なブロックだった。

さらに続いてのブロックでは、“靴紐とファンファーレ”という楽曲を披露。この歌唱中には、学校が取り壊されるのを阻止する為に、奮闘するメンバーたちの映像がスクリーンに映し出される。この映像のなかでは、署名活動を通してどうにかしようと頑張るが、結局は学校の取り壊しが決定してしまう。どれだけ努力しても、大人の事情や覆すことのできない現実や報われないことを、残酷なまでに描きだしており、そのストーリーはこれまでの私立恵比寿中学の歩みにも重なる部分である。

結局この映像は「安本が夜見た夢だった」というところに決着するのだが、長くファミリーであればあるほど、こういった私立恵比寿中学のピンチに触れた人は多いだろう。そんなファミリーに向けて、彼女達は「人騒がせなグループで、ごめんね」と前置きしつつ、いままで着いてきてくれた人に感謝の想いを伝える。こういったメッセージをわざわざ伝えるところに、私立恵比寿中学というグループの不器用な誠実さを感じた。

そしてライヴはここから後半戦へ。“手をつなごう”で、特大のシンガロングを巻き起こすと、続く“フレ!フレ!サイリウム”では再びメンバーがトロッコに乗りこみ、会場を周回。光の海のようなサイリウムの輝きが、会場中を照らしていた。ライヴはさらに“星の数え方”、“感情電車”といったエモーショナルな楽曲を続けて披露。“感情電車”の大サビでは、小林歌穂がひとりでセンターステージに向かって花道を歩き、「その空」のパートを熱唱。今日の公演のなかでも、特に後世まで語り継がれるであろう忘れられないシーンのひとつとなった。

感情を揺さぶるブロックのあと、メンバーはサングラスを装着し“TWINKLE WINK”でさいたまスーパーアリーナをダンスフロアに変える。次の“YELL”ではメンバーからファミリーへの感謝の直筆のメッセージが、スクリーンに映し出され、その飾らない想いが胸に響いた。本編最後の曲は、仲村による「次の曲は、私立恵比寿中学の15年間の想いが詰まった、大切な大切な曲です。私たちもこの曲に背中を押してもらえましたし、歌い続けることで皆さんの背中も押すことができると信じています。過去も未来への想いも全て込めて歌います、私たちからの愛を受け取ってください。」という言葉から始まった、最新シングル“SCHOOL DAYS”。これまでのグループの歴史を元に、未来への決意が込められた歌詞が、優しい歌声に乗って、温かな空間を作り出していた。

本編を終えると安本が「えびちゅうファミリーの皆さんがいてくれたからこそ、ここまで来ることができました」と、支えてくれたファミリーへの思いを伝えた。さらに、観客の中にはファミリーが連れてきた友人や恋人、仕事仲間など、初めてえびちゅうのライブを訪れた人も多くいることに触れ、「私たちを信じてライブに足を運んでくれて、本当にありがとうございます」と感謝の言葉を重ねる。そして「私たちはこれからもどんどん成長していく自信があります」と力強く宣言。「これからも、素敵な歌やパワフルなパフォーマンス、ちょっとおかしくて元気いっぱいなえびちゅうらしさを届けられるように頑張ります」と観客にメッセージを送り、会場は温かい拍手に包まれた。

「未確認中学生X & 仮契約のシンデレラ」のREMIXダンスバトルで始まったアンコールは、続いて“ボイジャー”へ。メンバーは客席に降りたち、サイリウムをまるでバトンのように繋いで、歌を紡ぐ。そしてここで、2023年の春ツアーの際にファミリーたちと交わした約束の“メッセージ入りのゴールテープ”を切った。がしかし、さいたまスーパーアリーナでゴールテープを切ったとはいっても、ここがゴールではない。桜井えまと仲村悠菜が「えびちゅうはまだまだ終わりません!」と大きくメッセージを伝えると、歌われたのはグループにとっても大切な曲“なないろ”。青いサイリウムが会場中に輝くなか、真摯な歌声がいつまでも響いていた。ラスト・チューンは“青い青い星の名前”。これまでのあらゆる歴史を全て背負って連れていくような覚悟が見える選曲に、どこか胸が熱くなった。

最後に真山は「ここからさらに次の目的地へと進んでいきます!皆さん、ついてきてくれますか?次はアリーナツアーを目指します!」と力強く語る。その顔は、どこか自信に溢れていた。なぜ「最新の私立恵比寿中学」が最高なのか。それは過去の私立恵比寿中学の歴史があるからであり、彼女達が紆余曲折ありながらも、あらゆる困難を乗り越えてきたからである。15周年を迎え、私立恵比寿中学はこれからも上を目指し、旅を続けていく。何が起きるかは誰もわからない。しかし彼女達ならきっとどんな困難も乗り越えられるはず。だって、さいたまスーパーアリーナでこんな素敵な景色を見せてくれたのだから。

取材&文:ニシダケン
撮影:中島たくみ、Masanori Naruse 、藤川一耀

Photo Gallery
ライヴ情報

「私立恵比寿中学 15th Anniversary 大学芸会2025~LOVE&BRAVE~」セットリスト
2025年3月20日(木・祝)さいたまスーパーアリーナ
セットリスト

M1. サドンデス
M2. イート・ザ・大目玉
M3. キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~
M4. シンガロン・シンガソン
M5. 未確認中学生X
M6. ラブリースマイリーベイビー
M7. オメカシ・フィーバー
M8. すたーてぃん   桜井えま×仲村悠菜ユニット曲 
M9. 王様の耳はパンの耳  桜木心菜×小久保柚乃×風見和香ユニット曲
M10. 君のそーゆーとこ  小林歌穂×中山莉子ユニット曲
M11. 明日        真山りか×安本彩花ユニット曲 
M12. えびぞりダイアモンド!!
M13. チャイム!
M14. 売れたいエモーション!
M15. 仮契約のシンデレラ
M16. 靴紐とファンファーレ
M17. 手をつなごう
M18. フレ!フレ!サイリウム
M19. 星の数え方
M20. 感情電車
M21. TWINKLE WINK
M22. YELL
M23. SCHOOL DAYS

EN1.未確認中学生X & 仮契約シンデレラ REMIX ※撮影タイム
EN2. ボイジャー
EN3. なないろ
EN4. 青い青い星の名前

アーティスト情報
オフィシャル・ウェブサイト:https://www.shiritsuebichu.jp/official/pc/
X:https://x.com/ebichu_staff

[ニュース] 私立恵比寿中学

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