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2024/09/04 21:00

 

DURAN、”ロックンロールを殺すな!” ツアーファイナルで爆発させた音楽愛とスピリット―OTOTOYライヴレポ

 

ギタリスト/シンガーソングライターのDURANが、2024年8月30日(金)恵比寿LIQUIDROOMにて〈The Venomous Rift in Humanity Tour〉のファイナル公演を開催。ほぼノンストップで2時間、爆発的なバンドサウンドと歌で観客を熱狂させてツアーファイナルを締めくくった。

短いスパンで発表された2枚のフルアルバム『Electric Man』と『30 Scratchy Bckroad Blues』で、ますます研ぎ澄まされた音楽を表現したDURAN(Vo.Gt)。バンドメンバーのShiho(Dr) 、MASAE(Ba)と一体になったスリリングな演奏は、強烈な波動を放ち魂に訴えかけてくる、まさに今この一瞬でしか感じることができない“ライヴ”そのもの。初のワンマンライヴ出演となる恵比寿LIQUIDROOMは、開演前から異様な熱気に包まれていた。

場内が暗転すると、一斉にステージに走り込んできたメンバー3人。思わぬ登場の仕方にドッと歓声が沸く。DURANがテレキャスターを持ちコードを鳴らしてドラムセットに向き合うと、いきなり爆音を炸裂させる3人。低音のギターイントロで始まったのは「Raging Fire」。一発目から、クリア且つ太い出音で殴られたようなオープニングだ。DURANを象徴するカラーとなっているグリーンの照明がステージを包み込む中で歌い、テレキャスが雄叫びを上げる。曲の終わりからギターの音が下降線を描き戻ってくると、豪快にストロークしながら「Moldy Chips」へ。タイトなリズムを叩き出すShiho、その横にピタリと寄り添いビートを刻むMASAE。淀みないグルーヴが音の塊となって迫って来る。DURANがクラップを求めると、フロアは一斉に両手を上げて応えた。

Shihoが叩くリズムに乗せてDURANとMASAEがユニゾンで弾くケンドリック・ラマー「HUMBLE.」(Be humble=謙虚になれ、と歌う曲)のトラックをしばし演奏して、「Sapient Creature」へ。グイグイと前のめりに主張する歪んだギターリフが延々と続く。MASAEがベースでリードする中、DURANはステージ上手に行き、オシレーターでスぺーシーなサウンドを加える。後ろを向いてShihoに手を上げると、どんどん加速していくリズム隊にDURANがギターで加わるインストのセッションから、ピタっとブレイクすると空気を切り裂くようにDURANが弾いたフレーズは「Voodoo In Me」。リフをブレイクさせる瞬間ごとに、客席からは「Hey!Hey!」と合いの手が入る、ライヴで愛されていることがわかるシーンも。疾走しながら歌う骨太なヴォーカルも特筆ものだ。MASAEのビリビリするように歪んだベースが前面にフィーチャーされ、ジャングルで絶叫するようなDURANの声が宙を舞う。ドラムセットの上に立ち上がり、右腕を上げてフロアにアピールすると、混沌としたサウンドから再びリフに戻った。曲のアウトロの余韻を引き継ぐように、MASAEがファンキーなフレーズを繰り出して、「Put The Gun Down」へと、2ndアルバム『KALEIDO GARDEN』からのライヴ定番曲が続く。ダンサブルなリズムがオーディエンスの身体を揺らし、演奏が変幻自在に変わっていき、つかの間のセッションを聴かせて着地した。

続いて始まったのは、多くのロックバンドがカバーしていることで知られるブルース・スタンダード「Baby, Please Don't Go」。MASAEのベースが繰り返す重たいリフを中心に、暗い情念を感じるほどマイナーでサイケデリックなアレンジとなっていた。この曲はブルースアルバムには収録していないものの、度々ライヴで取り上げているナンバーで、この日はブルース・コーナーへの橋渡し的な役割を担っており、ここからは、『30 Scratchy Bckroad Blues』からの数曲が披露された。さりげなく繋げていった軽快な「They're Red Hot」で雰囲気を変えて、アコースティックギターに持ち替えた。アルバム冒頭を飾る「Look Behind You」で流麗なリックとスライドギターを聴かせると、その見事な演奏に驚嘆の声が上がる。MASAEがウッドベースで先導する「Jojo's Echo Blues」では、Shihoもブラシに持ち替えて、繊細な楽器の音が広がっていく。アコギでスローなソロを聴かせると、シャッフルでチェンジ・オブ・ペース。粋な楽団といった風情の1曲で、息のあった演奏に拍手喝采が起こった。

そのままアコギを弾いて始まったのは、『KALEIDO GARDEN』収録曲「Revive」だ。オリジナルは狂気を感じるような激しさを秘めた曲だが、アコースティック楽器でのブルース・バージョンがかなり新鮮に聴こえた。Shihoがマレットでフロアタムを叩きボトムを支えると、フリーキーなソロを聴かせるDURAN。曲を歌い終えて再びテレキャスに持ち替えて鳴らしたのを合図に、Shihoのフィルインから、レッド・ツェッペリンのカバー「Moby Dick」に突入した。DURANがShihoに向き合い何度も音を叩きつけるように合わせると、「何回やってほしい?」と客席に語り掛ける。よく考えたら歌以外でこの日の第一声はこれだった。DURANがドラムセットを挟んでShihoと対峙するライヴの名物シーンが今日も繰り広げられた。

曲はジミ・ヘンドリックスのカバー「Red House」へ。ライヴ定番のこの曲は、今回のブルースアルバムで初めて音源化された。間奏では、ルーツを垣間見ることができる、まさに本領発揮の “エレクトリック・ブルースマン”なギターソロを披露した。雄弁に喋るようにフレーズが繰り出されて、チョーキングで咆哮すると自然に歓声が沸き上がる。スローブルースは、ゆったりとした空気感の中でも3人の波長がピッタリ合っていることがわかる。爆裂パンクチューン「2AM Love's Code and Law」で加速して昇り詰めると、再び「Red House」にリターン。地を這う轟音によるブルース沼から、エレキに持ち替えていたMASAEがウッドベースに戻り、DURANもアコギに戻ってブルースバージョンの「Shades Of Night(Bluesy)」へ。リフに合わせて手拍子が自然発生してステージを盛り立てる。バンドとオーディエンスが一体となったリズムに乗せて、ステージ前に出てソロを弾くDURANはじつに気持ち良さそう。延々と同じフレーズを弾いて歓声を受けると「指が痛い」とばかりにおどけてみせた。

どっぷりと深いマイナーブルースで聴かせたのは「Too Late, You Waste (Bluesy)」。「Shades Of Night」と同じく、『Electric Man』『30 Scratchy Bckroad Blues』の両方に収録されている曲だ。制作時、ロックかブルースか、そのときの気分でどちらのアルバムの曲を録るのかを決めていたという。この日はそれぞれのバージョンを聴くことができ、いかに2枚のアルバムがこの3人でライブさながらにレコーディングされた作品なのかを再認識することができた。エディットして作られた音楽ではなく、とことんこだわりぬいて演奏・録音した楽曲たちだからこそ、こうしてライヴで聴くとより表情豊かに瑞々しく伝わってくる。そんな2枚のアルバムの最後を飾っている曲が、「Through My Hands」。ギターはもちろん、ヴォーカリストとしても魅力的な歌声を持つDURAN。スポットライトの下でギターを弾き歌う姿は、独り部屋で呟いているかのようで胸に迫るものがあった。

「恵比寿!調子はどうだい!?ツアーファイナル、楽しんでってね」。ライヴ後半に差し掛かってからのそんなひと言から、リンク・レイの「Rumble」を経て始まったのは、『Electric Man』バージョンの「Too Late, You Waste」。アップテンポ気味に聴こえるのは、さきほどブルースバージョンがあったせいもあるだろうか。突っ走りながらも粘りのある演奏はスタジオテイクよりもダンサブルに聴こえた。軽快なシャッフルのブルース・インストを挟み、再び「Too Late, You Waste」へ。緊張と緩和を繰り返し、聴く者の感情を揺さぶりまくる。クラップで一体となった「Real Eyes」ではカオティックなソロを弾きまくり、「No In Between (It's Time to Do or Die)」では、割れるようなMASAEのベース音に乗せて叫ぶDURAN。ひたすら突き進むド迫力の演奏に圧倒された「8 Legs, 7 Sins」から、オシレーターを操作してカオスへ誘うと、一転して静寂の中でMASAEのベースがクールに鳴る「Sweet Piñata」へ。ライヴ開始からここまで、音が出ていないシーンがほとんどなく、常に誰かしらが演奏をしている。DURAN はMCで喋ることもほぼ皆無でひたすら歌い、ギターを弾き続けている。

MASAEがベースが鳴らすとフロアが湧いたのが、疾走感満点な16ビートのファンクチューン「Love The Way You Move」。間奏のDURANの超絶カッティング・ソロでは一斉に大きな音のクラップが沸き起こる。エフェクターのギミックも飛び出して、ギターフレーズでのコール&レスポンスで盛り上がり、流れるようにギターソロへと繋ぐと、会場は興奮の坩堝と化した。さらにMASAEがステージ前に出てソロを弾くと、DURANが自ら映像のカメラをスタッフから奪い撮影する場面も。笑いつつカメラに向かって演奏するMASAEもめちゃくちゃ楽しそうだ。続いてShihoがドラムソロを披露すると、ステージ袖から酒を受け取ったDURANが演奏中のShihoに飲ませるサービス。ソロを終えたかと思いきや、DURANに強引に中央に連れてこられたShihoは、センターマイクを掴んで絶叫すると、ドラムセットへ戻って演奏を再開した。リズム隊2人のキャラクターにフォーカスして、バンドのファミリー感を見せたワンマンならではの光景だった。そんな3人の姿が、この日初めて煌々と明るく照らされる中、本編終了となった。

アンコールを求める声に応えてステージに戻った3人は、すぐに音を鳴らす。クドクドとMCをすることもなくどんどん曲を演奏していく邪念のないスタイルが清々しい。曲は、王道のブルースチューン「Got My Mojo Workin'」。比較的ポップなブルースだけあって、明るく軽やかなコール&レスポンスが心地良い。スタジオバージョンの「Revive」から、インスト曲でステージ左右に移動しながらステップを踏み煽るDURAN。「Shades Of Night」で自らクラップを求めてオーディエンスを煽ると、ステージ前に神輿要員を募ってダイブ。ギターを持ったままクラウドサーフかと思いきや、そのままフロアに落下してしまった。後方から見ると人々の群れの中からギターのネックだけが見える状態に。再びギターを手にオーディエンスに担がれると、無事ステージに復帰。雷鳴のような爆音をかき鳴らして、ギターを片手で掲げて天を指さしながら感謝を示すと、最後はステージ前に3人で肩を組んでラインナップ。お客さんたちとの記念撮影を行ってツアーファイナル公演は終了となった。

「今日、台風で来れない人もたくさんいて。それなのに来てくれて本当にありがとう。ロックンロールを殺すな!」

ツアーファイナルに相応しく、2枚の最新アルバムからの曲を中心に『KALEIDO GARDEN』、カバーも織り交ぜたセットリストによるショーで、今や3人でDURANというバンドに映った。ギターを弾く指先と歌う声の振動が空気を震わせて伝えてくれる、轟音で無垢なサウンド。音楽が一過性の話題や数字でのみ語られる一方の世の中で、DURANとバンドの存在自体がアンチテーゼになっているようにさえ思えた。人間が奏でる音楽の素晴らしさを未来に届けるために体現し続ける、まごうことなき本物のミュージシャンの音楽に懸ける愛と情熱、スピリットを観た夜だった。

取材・文:岡本貴之

ライヴ情報
DURAN〈The Venomous Rift in Humanity Tour Final Show〉
2024年8月30日(金)恵比寿LIQUIDROOM
〈セットリスト〉
1. Raging Fire
2. Moldy Chips
3. HUMBLE.
4. Sapient Creature
5. Voodoo In Me
6. Put The Gun Down
7. Baby, Please Don't Go
8. They're Red Hot
9. Look Behind You
10. Jojo's Echo Blues
11. Revive(Bluesy)
12. Moby Dick
13. Red House
14. 2AM Love's Code and Law
15. Red House(Continued)
16. Shades Of Night (Bluesy)
17. Too Late, You Waste (Bluesy)
18. Through My Hands
19. Rumble
20. Too Late, You Waste
21. Real Eye - No In Between (It's Time to Do or Die)
22. Sweet Piñata
23. 8 Legs, 7 Sins
24. Love The Way You Move - Phantasmagoria
25. Lamok
EN1. Got My Mojo Workin'
EN2. Revive
EN3. Only Love
EN4. Shades Of Night

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