2021/07/26 03:35
卒業したメンバーふたりが新メンバーとして再加入する——。そんな驚愕の展開となったのが、真っ白なキャンバス(以下、白キャン)が2021年7月25日に開催したワンマンライヴ「Be the IDOL 5」だった。
白キャンは、7月21日から7月25日にかけて5日間連続ライヴ「Be the IDOL」を開催。その5日目、最終日となる7月25日の「Be the IDOL 5」では、白キャンも所属する新たな組織「Atelier IBASHO(アトリエ イバショ)」のオーディション結果が発表された。白キャンの新メンバー、そして新グループのメンバーのオーディション結果だ。
「Be the IDOL 5」の開演前には、まず新グループの最終候補者17人がステージに登場して自己紹介。会場のファンからの投票が完了したところで、いよいよ「Be the IDOL 5」の開演となった。
白キャンは新衣装で登場。「全身全霊」「SHOUT」「ルーザーガール」を歌い踊った後のMCで、三浦菜々子は「リハーサル中のMCから『脱落者は誰誰でしたね』ってふざけてたけど、全員で6公演目に無事に立てて良かったですね」と喜びを語った。
しかし、さらに「PART-TIME-DREAMER」「オーバーセンシティブ」「My fake world」と続いたなかで、「オーバーセンシティブ」の冒頭で立ち位置を間違えたメンバーもいたことは、6公演の過酷さも感じさせた。この7月25日の昼には、7月26日に誕生日をひかえた橋本美桜のために「橋本美桜生誕祭2021」も開催された。つまり、「Be the IDOL」の5日間で、6回もワンマンライヴが行われたことになる。
特にヴォーカルの主軸である小野寺梓と三浦菜々子の負担は大きく、万全とはいえない状況だったはずだが、ライヴが進行するにつれて歌声は熱を帯びていった。歌うことでしか生きられない人間たちの姿がそこにはあった。
そして、「空色パズルピース」「いま踏み出せ夏」から短いMCを挟んで新曲「ポイポイパッ」の初披露へ。内向的な楽曲を歌う白キャンとしては異色の「アイドルっぽい」楽曲であり、振り付けの動きもこれまでになく激しい。
そして、ライヴ終了後にオーディション結果の発表となった。新グループのメンバーの審査は、三浦菜々子により「配信審査と現地投票の合計投票ポイントが一番高かった方が、まず1名、メンバーとして決定します」と説明された。他のメンバーについては、「二次審査、三次審査、性格、伸びしろ、その他すべてを考慮して決定されます」と説明すると、会場からは「性格」の部分に笑いが起き、小野寺梓が「うちらみんな性格いいってことじゃん!」と茶化すと、西野千明と橋本美桜が「いやー」と頭をかく茶番もスムーズに行われた。
三浦菜々子がたっぷりタメをとって発表していくために、思わず小野寺梓が浜辺ゆりなの腕を握りながら「恐い!」と言いだす場面も。そんな状況を経て、れいな、うぉた、無名ちゃん、わた、ゆめの、長﨑千尋、森月音陽の7人がメンバーとして選ばれた。
落選した候補者の過呼吸の声、嗚咽する声が楽屋から静かに響くなか、いよいよ白キャンの新メンバーの発表となった。新メンバーに関しては、合格者がいない可能性もあり、実は当日まで新メンバーがいるのかいないのかも発表されていなかった。
小野寺梓が「新メンバーが加入することになりました。本当に私たちも緊張しているんですけど、発表します。新メンバーのおふたりに登場していただきます」と語ると、ファンの視線が、ステージの袖に集中した。そして、新メンバーが現れた瞬間、会場からは短くも大きな驚きの叫び、信じがたいというような声、あるいはもはや言葉にすらならない絶句が湧き起こり、衝撃と動揺が会場を満たした。
新メンバーが、2020年6月22日に白キャンを卒業した、鈴木えまと麦田ひかるだったからだ。ともに2017年の白キャン結成時から在籍し、そして昨年、白キャンを離れたメンバーだった。
小野寺梓は「もともと私たちと一緒に活動してくれていた、初期メンバーの鈴木えまと麦田ひかるが、新メンバーオーディションを開催したときに受けてくれて。もう一回がんばりたいって決めて受けてくれました。それでメンバーとも話しあって、みんなで入ってもらおうと決断しました」と涙ながらに語った。
鈴木えまは「みなさん、驚かせてしまってごめんなさい。学業が落ち着いて、本気でがんばりたいと思って戻ってきました。自分とひかるが加わって良かったと思ってもらえるようにがんばります、またみんなの前でステージに立ててとても嬉しいです。よろしくお願いします」と頭を下げた。麦田ひかるは、恥ずかしそうに笑って言葉に詰まったが、小野寺梓が「変わるんでしょ?」と優しくうながした。それを受けて、麦田ひかるは「いろんなご意見があると思いますが、またこうやって新メンバーとして、みんなとともにステージに立ててとても嬉しいです。これから精一杯がんばります。よろしくお願いします」と語りきった。
それでも会場のファンからは、目の前で起きている出来事が現実なのかと、「本当に?」などの声が散発的に起きたほどだ。それでも、5日連続ライヴを完走し、さらには新体制となることを選んだ白キャンに、ファンから大きな拍手が送られた。
一般的に、アイドルグループから脱退したメンバーが再加入するのは珍しく、ましてやふたり同時という事例を私は知らない。白キャンの新メンバーオーディションは、狂おしいほどの物語性を帯びながら完結した。
ただ、見方を変えれば「白キャンとは何か」を突きつめた結果だったのかもしれない。OTOTOYで短期連載されたメンバーの個別インタビューで、小野寺梓は、私の「白キャンに足りないもの」という問いに対して、「歌と、えまとひかるにあった儚さとか世界観」と語っていた(https://ototoy.jp/feature/2021072001)。これは、まだふたりの再加入が決まっていなかった時点での発言である。
プロデューサーの青木勇斗は今回の再加入について、公式サイトで経緯を説明しており(https://shirokyan.com/news/651/)、鈴木えまと麦田ひかるから「どうしても一度話を聞いて欲しいということでお話をすること」になったと書いている。しかし、面会を求められたとはいえ、わざわざ青木勇斗は脱退したメンバーと会ったのだ。再加入には、単なるノスタルジーを超えた必然性があるのだ。
ゲームには「強くてニューゲーム」という表現がある。ロールプレイングゲームなどで、前回の強さを引き継いだまま、2周目以降に突入することだ。7人となった白キャンが、そんなグループになることを願った夜だった。
文 : 宗像明将
撮影 : 真島洸(M.u.D)
■OTOTOYでの個別インタヴュー連載「真っ白なキャンバス Road to Be the IDOL」
・コラム「“真っ白なキャンバス”にどんな大きな夢が描かれるのか」
https://ototoy.jp/feature/2021062401
・浜辺ゆりな「不安もあるけど、やるしかない」
https://ototoy.jp/feature/2021062402
・西野千明「目の前のことをコツコツやっていくのが大事」
https://ototoy.jp/feature/2021070101
・橋本美桜「かわいいだけじゃないアイドルがいい」
https://ototoy.jp/feature/2021070801
・三浦菜々子「環境を自分で変えていかなきゃいけない」
https://ototoy.jp/feature/2021071501
・小野寺梓「ファンのみんなが自信をつけさせてくれた」
https://ototoy.jp/feature/2021072001
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