2022/06/06 18:00

言葉と音が固まりでスコンと入ってくるような音楽を──坂本慎太郎『物語のように』

6年ぶりの4作目、坂本慎太郎の新作『物語のように(Like A Fable)』。ある種のコロナ禍の空気感を封入した2020年年末リリースの7インチ2枚を経てリリースされたアルバムは、ポップなロックンロール・ナンバーがならぶ軽快な足取りのアルバムとなった。OTOTOYでは本作のハイレゾ配信とともに、果たしてこのアルバムはどこから来たのか、大石始のインタヴューをお届けしよう。(編集部)

6年ぶりの新作、ハイレゾ配信中

坂本慎太郎LIQUIDROOMワンマン7月14日開催

LIQUIDROOM18周年を記念して坂本慎太郎ワンマンライヴが7月14日(木)に開催されることが決定。ライヴ・メンバーには、坂本慎太郎、AYA、菅沼雄太、西内徹が参加。イープラスでのプレオーダーは6月6日開始。

LIQUIDROOM 18th ANNIVERSARY
-坂本慎太郎LIVE2022-

2022年7月14日(木曜日)
LIQUIDROOM
開場: 19:00 / 開演: 20:00
前売: ¥4,500(drink代 別)
pre-order イープラス 2022年6月6日(月)正午~12日(日) 18:00
一般発売 6月25日(日) イープラス
https://eplus.jp/sf/detail/3637340001-P0030001Z
問い合わせ : LIQUIDROOM 03-5464-0800 www.liquidroom.net
*開催にあたっては、現在のガイドラインに沿い、感染防止を徹底して行われる。
主催: LIQUIDROOM
企画制作: LIQUIDROOM / zelone records
その他の詳細は以下のLIQUIDROOMの詳細ページにて
https://www.liquidroom.net/schedule/shintarosakamoto_20220714

INTERVIEW : 坂本慎太郎

インタヴュー&文 : 大石始
写真 : 西村満

通算4作目となる坂本慎太郎のアルバム『物語のように(Like A Fable)』がついに完成した。前作『できれば愛を』からおよそ6年ぶり。前作同様、菅沼雄太(ドラムス)、AYA(ベース)、西内徹(サックス&フルート)というメンバーと共にレコーディングされた本作は、ある種の重さをまとった前作と比べると、軽やかでしなやかなポップアルバムとなった。前作以降、坂本は2017年10月のドイツを皮切りに海外でもコンスタントにライヴを行い、その動向が常に世界的な注目を集めてきた。そうしたなかで本作が問いかけるものとはいったい何なのだろうか。コロナ禍の閉塞感を突き抜けるポップアルバムの核心に迫る。

時間はできたんだけど、「さぁ曲を作ろうか」という感じにはどうしてもなれなかった

──まず新作の前段階の話を聞ければと思うんですが、2020年に予定されていた日本とアメリカでのツアーがコロナの感染拡大で中止になりましたよね。そのころ音楽の聴き方や捉え方は変わりました?

コロナ禍になって何かが聴けなくなったとか、趣味が変わったということはないですね。基本的に音楽は家で聴くので、聴く環境もそれほど変わってないし、そんなに他の人のライヴに行くこともないんですよ。

──コロナ禍の最初のころは僕も仕事が飛んだりして、暇になった時期があったんですよ。それで普段あまり聴かないような長い曲をひたすら聴いていた記憶があります。グレイトフル・デッドのライヴ音源とか。

それは時間ができたからですか?

──そうですね。集中して聴くというより、ダラダラ聴いていた気がします。

古いロカビリーの7インチを聴いてみたり、そういうプチ・ブームはあったかもしれないですね。京都のα-Stationでラジオ番組をやっていて、毎週テーマを決めて1時間の選曲をしていたんですよ。テーマに合う自分のレコードを掘り起こすのが楽しくて、その選曲作業の影響が大きかったかもしれない。

──ロカビリーの7インチはもともと結構持っていたんですか?

ロカビリーはLPとかコンピレーションで持っていて、7インチはそれほど持っていなかった。あるメディアで「コロナ禍のオススメの1枚」みたいなコメントの依頼がきたんですよ。そこでチャーリー・メギラの編集盤のやつをあげて、「クランプスの“Lonesome Town”とか、リチャード・ヘルの“All The Way”とか、こういうロックが昔から好きです」みたいなコメントを書いたんです。そのときに「そういえば“Lonesome Town”の原曲って聴いたことないな」と思って、原曲であるリッキー・ネルソンの7インチを買ったんですよ。それが異常によくて、そこからそういう音楽に対して火がついちゃった感じは少しありましたね。

──その雰囲気は今回のアルバムにも入ってますよね。寂しげでロカビリー調のバラードというか。

ああいうロカビリー風の曲って昔からあるじゃないですか。あの感じが昔から好きなんですよね。ギターの音とかコード進行、ちょっと寂しい感じのヴォーカルとか。

──CINRAに掲載された松永良平さんによるインタヴュー(2020年12月2日公開)で「暇だし宅録でもやるかと思って、自分のやる気を奮い立たせるために前から欲しかったリズムボックスを買ったんですよ」と話されていましたよね。その時期にやる気を失いかけていたような感覚があったんでしょうか。

コロナ禍で予定が何もなくなって、この先どうなるかわからない状況のなか、宅録でもするかなと思って。そうは言ってもやる気が出なくて。ニューヨークで亡くなった方の遺体が山積みになっていたり、知ってるミュージシャンがコロナで死んでしまったり、「世界はどうなるんだろうか?」みたいな感じがあった。まだ日本はそこまでの状況ではなかったけど、ニュースを見ていて怖くなったし、なるべく外出しないようにしたんですね。それで時間はできたんだけど、「さぁ曲を作ろうか」という感じにはどうしてもなれなかった。

──リズムボックスを買ったことでやる気が沸き出てくるような感覚があった?

リズムボックス自体は一杯持ってたんですけど、欲しかったやつが高くて、手を出してなかったんですね。(制作の)弾みをつけるために買ってみたんですけど、届いたらうれしくて最初はやる気が出て。一瞬でしたけど。

──持続しなかった理由は何だったんでしょうね。

他のインタヴューでも言ったかもしれないですけど、ライヴができるかもという話があったんですよ。それでデモ作りを中断して、スタジオでライヴのための練習を始めたんです。結局そのライヴもできなくなって、練習したのが無駄になってしまって。スタジオが抑えてあったので、そのとき作っていたデモの曲をバンドでやってみたんですよ。そうしたらやっぱりひとりでやるより全然良くて。それが一連のシングルになりました(2020年末の“好きっていう気持ち / おぼろげナイトクラブ”と“ツバメの季節に / 歴史をいじらないで”)。


──同じCINRAのインタヴューで「やっぱり今は、歌詞のある曲を作るのは難しいと思います、いろんな意味で」と発言されていましたね。もう少し具体的に言うと、どういう感覚だったんでしょうか?

それはもう、コロナの影響ですね。他にも不景気や政治的なことなどいろんな社会状況があって、どんな言葉で何を歌えばしっくりくるのか、なかなか見つけられなかった。

─いくら書いても「なんか違うな」という感覚?

そうですね。曲はできるんですけど、歌詞が思いつかない。できなかったですね。あまり真面目なことも歌いたくないっていうのもあって、その基準を超える歌詞がなかなか出てこなくて。

──今までの音楽人生でそういうモードに入った時期はあったんですか。

まあ、自分が歌う意味、説得力と必然性がある歌詞みたいなものを考えると、年々歌える範囲が狭まってきているという感覚はあるかもしれないですね。消去法で落としていくと、残るものが少なくなってきて、結局「死」ぐらいしか残らなくなる。そうなるとだんだん重く暗くなっていくんですよ。

──歌詞を書くことに関しては年々難しくなってきていると。

そうですね。あと、自分のなかのハードルが上がっていることもあるかもしれない。「抜けがよくてバカバカしくておもしろい」みたいなのものを書きたいんですけど、今はそんな感じじゃないし。それは世の中から怒られるからということではなく、単に自分がそういう気分になれない。自分が楽しめる感じにならない。

──なるほど。

今回の作品でいうと、この過酷な状況を歌うことに耐えられなくなってきたんですよね。世の中に対する怒りはもちろんあるんですけど、怒りをそのまま歌うという気分ではなかったですね。そういうものすべてを振り切って、突き抜けた感じのアルバムにしたかった。

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