その男、天才につき──折坂悠太、この世と別世界を繋ぐ歌声、ライヴ音源をハイレゾ独占配信

新しい才能が世の中に羽ばたく。折坂悠太のことだ。独特の歌唱法にして、ブルーズ、民族音楽、ジャズなどにも通じたセンスを持ち合わせ、それをポップスとして消化した稀有なシンガー。そんな彼が、彫刻家・平櫛田中の旧邸にて収録したライヴ・レコーディング音源『なつのべ live recording H29.07.02』をリリース。OTOTOYでは本作のハイレゾ版を8月23日より独占配信、発売日に先駆けて予約スタートする。そして折坂悠太へ初めてとなるロング・インタヴューを敢行した。その歌い方、歌詞の描き方、折坂の歌への向かい合い方とともに、ぜひその才能の片鱗を目の当たりにしてほしい。

平櫛田中の旧邸にて収録の音源、ハイレゾ独占配信


折坂悠太 / なつのべ live recording H29.07.02

【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/48kHz) / AAC
単曲 250円(税込) / まとめ 1,000円(税込)
2017年8月23日(水)より配信スタートになります。
配信日に先駆けて予約販売もスタート。
>>ハイレゾとは?

【収録曲】
1. 馬市
2. 稲穂
3. よるべ
4. 口無し
5. 鳥

INTERVIEW : 折坂悠太

びっくりした。折坂悠太が彫刻家・平櫛田中の旧邸にて収録したライヴ・レコーディング音源は非常に肉体的なのである。前作『たむけ』は、いわゆる宅録然とした作品で、とても丁寧に作られている印象だったが、今作はその対極にあると言ってもいい。『たむけ』の楽曲は、このライヴ・レコーディング版にも収録されているのだが、まったく違う作品のようにさえ聴こえる。ライヴで歌うことについて、折坂は「今いるこの場所と別の次元、あっちとこっちを繋ぐ役割として歌うというか、歌そのものの性質がそういうものなんじゃないか」とインタヴュー内で語っているが、まさにそれで納得できるほどの歌声と雰囲気を纏っているのだ。今回、この才能溢れる男に、初めてのロング・インタヴューを行なった。1時間近く話したがまだまだ全然掴めない。とてつもない可能性に満ちたシンガーのイントロダクションをお届けする。

インタヴュー&文 : 西澤裕郎
写真 : Jumpei Yamada

人や、世の中に対して声を張り上げているということはなくて

──YouTubeにアップされている「よるべ」の映像を観て、折坂さんの表情や歌声に大きな衝撃を受けました。宙をみつめる虚ろな視点だったり、ときおり見せる笑みからは、なにかが憑依しているかのような感じがするし、ビブラートを効かせたオペラのような歌い方も非常に印象的でした。

折坂悠太(以下、折坂) : もともとライヴ活動を始める前は、宅録のような形ですべて1人で録音をして作っていたんです。なので、本来はじっくり音像を作り込むほうが素に近いと思っていて。ライヴを始めてから「すごい顔をして歌っているよ」ということを周りの人に言われることが増えて、人のライヴを観るようになってから自分は独特なのかなと思うようになりました。そこから今回のような歌い方のほうが自分の特性に近いのかなと思うようになったんです。

──もともと家の部屋で宅録していたんですか?

折坂 : 小学生くらいの頃から通っているフリースクールがあって、そこにピアノやドラムなどが置いてあったんです。そこの仲間と一緒にバンド組み始めたことがきっかけで音楽をはじめて、前作『たむけ』までに出したCDは全部そこで録音をしています。周りが畑で民家もそんなに近くにないので、遅い時間じゃなければドラム録音も出来るんですよ。

──楽器やレコーディングをはじめるにあたって、先輩というか指標になる人はいたんですか?

折坂 : PA機材を集めるのが好きな人とか、いらなくなったCDをくれる人はいたんですけど、指標になるって感じはなくて。同世代のシンガーとか先輩のミュージシャンとか尊敬してる人はたくさんいるんですけど、原体験的なところで自分で好きにやっていた感じですね。

──プロフィールを見ると海外に住んでいたこともあったようですけど、生まれはどこなんでしょう?

折坂 : 鳥取です。父の仕事の関係で柏に越して来て、小学1、2年の時にはロシアに行っていました。帰ってきて柏にちょっと住んで、中学1、2年くらいでイランに行きました。そのあと戻ってきてからは一歩も日本を出ていないですね。

──日本のフリースクールには10歳くらいの頃から通っているそうですけど、どういうきっかけがあったんでしょう。

折坂 : ロシアから帰ってきてから学校に行かなくなってしまったんです。イランで日本人学校に通っていたときは、僕の学年が1人しかいなくて先生と1対1だったから通えていて。たぶん集団でいるのがすごく苦手なんですよね。で、学校に行かなくなると暇じゃないですか。そこからドラムを始めて、ちょっとずつバンドを組んで、自分でも作曲をやり始めました。そのときは、THE White StripesとかArctic Monkeysとかの曲をカヴァーしていました。

──海外のバンドのカヴァーから入ったのは意外ですね。

折坂 : 今やってることにまったく通じていないかもしれないんですけど、熱心に聴いていました(笑)。その後、自分でギター・ヴォーカルをやるバンドも始めて、ナンバー・ガールやeastern youthのようにシャウトする感じで僕も歌っていて。それで声量が鍛えられました。

──どうやってその歌い方を習得したのか気になっていたんですけど、大元にはシャウトのような歌い方があった、と。

折坂 : そんなこと当時はまったく考えてやっていなかったんですけどね(笑)。とにかく出しきるぞと思ってギャーみたいな感じで歌っていました。それから都内中心に弾き語りのライヴ活動を始め、身体を楽器のように使っている人たちに出会って。イメージで言えば、骨伝導みたいな感じで全方向に向けて声が出ているというか、中が空洞の楽器みたいなんですよね。あと僕の声には倍音があるよって言われたことがあって、ちょっとずつ調べたりしていくうちに、そっちの方向で工夫してやってみようかなと思ったんです。それで、モンゴルのホーメイという発声法を真似てみたり、自分なりに意識して歌い方を変えていきました。

──ナンバー・ガールの向井秀徳さんだったり、eastern youthの吉野寿さんのシャウトを自分なりに適応させていったわけですね。

折坂 : それまで、しゃべり声が聴き取れないって言われることが結構あって。僕がボソボソしゃべっているのもあるんですけど、聞こえにくい周波数らしくて、よく聞き返されるんです。なので、自分の声に自信がなかった。歌に対してもそういう気持ちだったので、楽器を頑張ろうと思っていたんです。バンドをやっているうちに、自分で思いもしなかったところで爆発する瞬間があって。それがきっかけなんですけど、弾き語りでライヴをやっていくなかでだんだん意識的になっていきました。

──自分の声を出すときには、どういう感情が出てくるんでしょう。

折坂 : 別に世の中に対して怒りがあるとか、言ってやりたいってことはないんです。さっき言ったように骨伝導というか、身体全部を使って音を出すことを意識したとき、自分で思いもしなかった響きがあったりして。「あ、こんなの出ちゃった」とか「自分で意図しない音が出てる」とか、それがちょっと恥ずかしくもあるんですけど、自分で考え抜いた末の声だし、結果的に出ている音が自分の意図したものと違う部分で響いていたりする。歌い方のスタイルで言えば、綺麗にちゃんと歌おうっていうのではなくて… もちろんそこをおざなりにしちゃいけないんですけど、わっ!! て声を出しきった結果、自分のキャパを超えたものだったり、コントロールを超えたらものが出たらおもしろいなと思ってやっています。

言ってみればフォーカスの仕方だと思うんです

──折坂さんは歌い方だけでなく、タイトルや言葉遣いも独特だなと思うんですけど、文学がお好きなんでしょうか?

折坂 : んー、でもあまり本も読んだりはしないんですよね(笑)。

──これもまた意外な答えですね。それじゃあ、折坂さんの歌詞世界で紡がれている言葉は、どこから出てくるんでしょう。

折坂 : 音楽をやる前、ドラマのシナリオ・ライターになりたいと思ってシナリオを勉強していた時期があるんです。そこには定石というかノウハウみたいなものがあって、それが生きているのかもしれないですね。例えば、1つの感情を伝えるとき、セリフで羅列して言わせるんじゃなくて、あえて言葉もなく表すと活きる場面もあるし、言葉で全部言っちゃった方がいい場面もある。それも言ってみればフォーカスの仕方だと思うんです。文学的に聞こえるのは、古い言い回しを使ったりするからじゃないかな? 自分の歌を作っていく時に、ぴったり合う言い回しにしようとすると、自然とそういう言葉がしっくり来るんです。だから、特に意識して古い言い回しにしようとかそういうことを考えてるわけではないんです。

──とはいえ、曲のタイトルを見ると、人生の中で1回も発声したことないような言葉が多くて驚きます(笑)。

折坂 : ああ、「馬市」とか(笑)。

──こういう言葉はどこでインプットされたものなんですか?

折坂 : 「馬市」は、はっきりきっかけがあって。高峰秀子さん主演の「馬」っていう映画が1940年頃に上映されていたんです。バイトで映写技師をやっていて、その時かけた映画の中に「馬」があって。フィルムもボロボロで上映するのが大変だったんですけど、妙に頭に残っていて。冒頭、馬の競売のシーンで始まるんですよ。今はないと思うんですけど、たしか青森の話で季節の行事としてあって。そのシーンがすごく印象的で。「馬市」はそこからきています。

──イメージが頭に浮かび、そこにピントを合わせたり、引いてみたりしながら曲を作っていくわけですね。

折坂 : そうですね。この曲には自分の気持ちや私情を挟む余地があまりなくて、絵的なものとして書いている。そこには自分の体験はないけど、すごく懐かしいなと思う感じがある。以前、マヒトゥ・ザ・ピーポーさんと話したときに「金木犀を嗅いだときのような感じがする」って言われたことがあって、それわかるかもと思ったんです。金木犀がふわって匂って来た時、あーなんか懐かしいなって感じがするんですよ。身体に備わってるものとして、あー懐かしいっていうような感情が浮かんでくる。「馬市」でもそういうものを歌にしたかったんだと思います。

──ドキュメンタリー映像にもなっている「よるべ」では、冒頭に朗読があるじゃないですか? これは誰かの詩の引用かと思ったんですけど、そういうわけでもないんですよね。探してもどこにもひっかからなくて。

折坂 : これは撮影の何日か前に突発的に出てきた詩ですね。会場のすぐ近くに谷中霊園があるんですけど、平櫛田中邸で録ることになり下見のときに寄って、そのときに「よるべ」を入れようと思ったんです。もともとある「よるべ」という曲の歌詞に、あの場所で歌うことを俯瞰したイメージで詩を書きました。

あっちとこっちを繋ぐ役割として歌う

──そもそも、平櫛田中邸でレコーディングをするきっかけってなんだったんですか?

折坂 : 『たむけ』のレコ発から「折坂悠太合奏」というバンド編成を始めたんですけど、その形態でライヴをやることが多くなってきたので、バンドで演奏している映像を撮りたくなって。それだけの理由で撮影場所を探し始めたんです。そしたら、撮影の和久井幸一さんが以前撮影に使ったことがある場所として何個か提示してくださって、その中に平櫛田中邸があったんです。映像とか写真を見て絵的にはここがいいよと最初に思って。そこから彫刻家の平櫛田中がアトリエ兼自宅として使っていた場所として歴史を知っていくうちに、だんだん場所ありきになっていき、曲も変えたり準備し直していきました。

──場所が持つ雰囲気が、作品に対して訴えてきたんですね。

折坂 : 『たむけ』は、いなくなった人だったり、これから生まれてくる人に対してというニュアンスを持った曲が多かったし、そういう気持ちで作ったアルバムなんです。平櫛田中邸はいまも管理されている方はいるんですけど、家主が不在の、もういなくなってしまった家とアトリエで。『たむけ』で言ってきたことを具体的な場所でやることによって、『たむけ』を俯瞰するというか、その時に考えたことをさらに具体的にできる場としてすごくいいなと思ったんです。

──いなくなってしまったもの、これから生まれるもの、すなわち今生きている自分たち以外にフォーカスを当てているのは、なにかしら理由があるんですか。

折坂 : 歌を歌うっていう行為自体が、お祭りだったり宗教的な行事に近いというか、そういう中で生まれてきたものがあると思うんです。こういう言い方しちゃうとスピリチュアルな感じになっちゃうんですけど、今いるこの場所と別の次元、あっちとこっちを繋ぐ役割として歌うというか、歌そのものの性質がそういうものなんじゃないかなって。いろんな人の歌を聴いたり、ライヴをするにつれてなんとなく思ってきたことなんです。

──この作品に寄せたコメントで、「夏は他の季節よりも、肌とシャツ、自分と他者、生と死などの境界があいまいになりやすい季節です」とおっしゃっていますよね。夏という季節もまたコンセプトとリンクしているわけですよね。

折坂 : 夏はお盆があるし、自然に触れる機会が多いこともあって、ちょっと死と近い気がしていて。「なつのべ」っていう曲にはいろんな意味を引っ掛けたんですけど、「夏の辺」って漢字でも表せるじゃないですか。こっちの世界とあっちの世界の境界が曖昧になるっていう意味で、「辺り」っていう言葉が1番近いかなって。

──言われてみると、夏は暑くて汗をかいて身体を感じますもんね。嫌でも身体が反応してくるし、意識する季節でもあります。

折坂 : あと、夏はものが腐るじゃないですか? 形をとどめてない季節なんですよね。いろんなものの形がどんどん変わっていく。そういう意味でも、夏っていうのはちょっと特殊な季節だなと思いますね。

自分とは違う感性でやってくれるのを期待している

──今回ドキュメンタリー映像にも機材を持ち込んだ場面が映っていますけど、PCMでエアーとラインで録っているんですか?

折坂 : 大まかにはエアーでLRを録っていて、足りない楽器はオンマイクで録っています。中村公輔さんに録っていただいたんですけど、ミックスは苦労したって言われていましたね(笑)。場所そのものが音楽をやるっていう場所じゃないから。

──他の音も拾っちゃいますしね。

折坂 : ヴォーカル・マイクにドラムが入っちゃって。しかも時間もそんなになかったので、その日あるもので作りましょうって事前の打ち合わせでも言っていて、それを1番いい形にしていただいた感じですね。

──ミックス作業を自分以外の方にお願いしたというのは大きな変化だったんじゃないですか?

折坂 : それは自分の中で、はっきり大きな変化としてありますね。アートワークに関しても、演奏に関しても、他人の手を入れて1個の作品にするのは初めてに近いんです。最近、意識的にそういうふうにしていこうって気持ちがあって。弾き語りでやっている際は、舞台の上に乗っているものが1個の音として出るのが理想なんですけど、バンドでやったり人とやる時は人の感性が入ってくるじゃないですか。自分のその中で音楽をやるためには、ライヴだったらライヴで、撮影だったら撮影でサバイヴしなきゃいけない。弾き語りのときは、それをより意識的にやらなきゃいけないし、逆に人を入れることによってむしろ1人になれるというか、自分のやりたいことに集中できるようにしてやっています。

──バンドメンバーであるyoji&his ghost bandのメンバーや飯島はるかさん(に角すい)とは、波長があっているということなんでしょうか。

折坂 : 彼らはどう考えてるかはわからないですけどね(笑)。僕はyoji&his ghost bandもに角すいもすごく好きだし、おもしろいなと思うんですけど、例えばyoji & his ghost bandは特に、自分がやっていることとは一見真逆のことをやっていると思っていて。実際、全然かすらないところでやってきた人たちなんです。あえてそういう人たちとやっているのは、自分とは違う感性でやってくれるのを期待している部分があるし、違うは違うんだけど、僕の音楽を好きでいてくれてる人っていうことが重要で。歌に寄り添ってくれているんだけど、感性は別のところから来ている。そういう意味で今はすごくいい状態だなと思っています。

──正直、歌い方もそうですけど楽曲や世界観も強烈で、まだまだ理解しきれない部分が多いです。だからこそ何回も聴いてしまうような作品だなと僕は思っていて。なので、ぜひまた話を訊かせてほしいです。

折坂 : 僕も混乱しながらやっているんです(笑)。ただ、これはどうなんだろう、何を意味してるんだろうって、迷宮に迷わせてしまうことは全然やりたくなくて。さっきの金木犀じゃないですけど、誰の感覚としてもより多くの人があーこの感じっていうところを目指してやっていこうと思います。

過去作品もチェック!!

折坂悠太 / たむけ

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LIVE INFORMATION

折坂悠太(合奏)わんまん

2017年8月18日(金)@代官山 晴れたら空に豆まいて
時間 : Open 19:00 / Start 19:30

音楽と暮らし3
2017年8月19日(土)@静岡市民文化会館 中央ロビー
時間 : Open 13:00 / Start 18:00

にんげんのふりをする #12
2017年8月20日(日)@京都 木屋町UrBANGUILD
時間 : Open 18:30 / Start 19:00

>>more live information

PROFILE

折坂悠太

平成元年、鳥取生まれのシンガー・ソングライター。
幼少期をロシアやイランで過ごし、帰国後は千葉県に移る。2013年よりギター弾き語りでライヴ活動を開始。
2014年、自主製作ミニ・アルバム『あけぼの』を発表。
2015年、レーベル『のろしレコード』の立ち上げに参加。
2016年には自主1stアルバム『たむけ』をリリース。その後は合奏(バンド)編成でのライヴも行う。
2017年8月18日には、合奏編成にて初のワンマン・ライヴとなる〈合奏わんまん〉を行う。

独特の歌唱法にして、ブルーズ、民族音楽、ジャズなどにも通じたセンスを持ち合わせながら、それをポップスとして消化した稀有なシンガー。その音楽性とライヴ・パフォーマンスから、ゴンチチ、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、伊集院光、小山田壮平(ex : andymori)、坂口恭平、寺尾紗穂らより賛辞を受ける。

>>折坂悠太 official site

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インタヴュー

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by 岡本 貴之
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