
10代後半の、高校生だった頃を思い出した。
今思えば、あの瞬間のどれをとってみても、青い、若い、恥ずかしい、そして愛おしい。勉強と部活、学校と家の合間を縫って、時間が惜しい程に音楽を欲していた。通学時間が待ち遠しく、ウォークマンの塗装がはげる程どこへでも持ち歩いた。目の前にある全てのものが新しく、熱烈に音楽が好きだった。
THE NEW HOUSEのデビュー作『Want Alone But Help Me』を聴いた時、かき鳴らされるギターや熱狂と爽快感が隣り合う音と、そこに乗る英歌詞の滑らかさに、胃と胸の間がきゅっとした。頭でも耳でもなく、この部分が最初に反応する音楽は20代以降味わっていない。ほんの数年前まではまだ10代だった平均年齢22歳のこのバンドは、楽器を持って1年足らずでこのアルバムを作ってしまったという。文字通りの初期衝動で、生まれる音は総じて輝いている。汗と情熱と純粋さ、身から出たものが粒になって、照明に照らされそれぞれ光っている。
彼らの音はとてつもなく青い。「若い」上に「青い」。第一印象は、アメリカ西海岸の突き抜けた晴れの空。目の前にある音楽が楽し過ぎて余裕なんか残していられない無邪気さ。どこまで行く気なのか聴く側も聴かせる側も予想できない、果てしなさ。しかし聴き込めば違う顔も見えてくる。イギリスの曇り空のように悶々としているのだ。そうか、思春期はまだ続いているのか!

聴き始めてしばらく、恥ずかしさと照れくささが抜けなかった。眩し過ぎて目が痛いように、凝ったもの、変わった手法や新しい音ばかりが模索される音楽業界の中で、彼らの真っ直ぐな音楽と姿勢をすんなりと受け入れるのにはほんの少し時間を要する。素直になるのはなかなか難しいことだ。下手に大人びた態度で上から「何かひねった所ないの? 」と聞けば、「ない」と返って来る。ひねる必要はない。来るべき場所に確かな音が鳴る、その当たり前の気持ちよさを実行しているだけなのだ。新しいものを探すうちに、「新しい」の意味すらあやふやになってくる。いろんな音に疑いを持って接してしまう。そんな人にこそ聴いて欲しい。奇をてらわない彼らの音は、きっと私達が音楽に出会った時の音に似ているだろう。
どんなに耳が肥えた音楽ファンも一度は通る音楽青春時代。懐かしさに少し照れながら、THE NEW HOUSEを聴きながら、片手にあるビールに大人になった事に気付かされながら、十代に愛した音楽の談義に花を咲かそう。
「俺らも、私達も、若かったなあ。」初めて触れるばかりの音楽に毎日胸をときめかしていたあの頃。
何を言う。音楽を聴いている人は誰でも思春期真っただ中なんですよ。わたしもあなたも彼らもおんなじです。今すぐライブ・ハウスへ行きましょう。彼らのとめどない衝動を前に、大人ぶってなどいられる筈はないのだから。(text by 水嶋美和)

→「Pale boy」のフリー・ダウンロードはこちら (期間 : 11/12〜11/19)
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THE BRIXTON ACADEMY 特集ページ
PROFILE
THE NEW HOUSE
加熱するTokyo Indie〜Electroシーンの盛況をチラッと横目にしながら、突如現れた5人組バンド。 2008年の結成から1年、爆発する初期衝動と、様々な音楽的要素を含有したインディ・サウンドで渋谷、新宿、下北沢のライヴ・ハウスを中心に話題を拡大。
LIVE SCHEDULE
- 11/14(土)@下北沢MOSAiC
- 11/29(日)@TOWER RECORDS渋谷店B1『STAGE ONE』
- 12/18(金)【SECOND ROYAL X’MAS SPECIAL】@京都METRO
- 12/19(土)【SECOND ROYAL×TWEE GRRRLS CLUB】@渋谷SECO
2010/1/24(日)
「The New House"Want Alone But Help Me"Release Party」@渋谷O-NEST
開場18:00/開演18:30
LIVE:The New House / The Suzan / Plasticzooms / Turntable Films
DJ:Twee Grrrls Club
お問い合わせ:
渋谷O-NEST
03-3462-4420
ALL INFO:
SECOND ROYAL RECORDS