2015/11/14 14:00
カリフォルニア南部を拠点とするロック・バンドが、パリでのツアー中に世界史上まれにみるテロ事件に巻き込まれました。
彼らの名前はイーグルス・オブ・デス・メタル(Eagles of Death Metal)。そのバンド名ゆえにさまざまな憶測が飛び交っていますが、彼らがプレイするのはデスメタルではなく、底抜けに陽気なロックンロールです。
事件が起きたのは2015年11月13日金曜日の夜。イーグルス・オブ・デス・メタルは新譜『Zipper Down』をひっさげてのヨーロッパ・ツアーで、パリの市街地にあるバタクランというホールを訪れていました。この会場は19世紀に建てられた由緒あるホールを改築したもので、スタンディングでの公演も可能。この夜は満員札止めで、約1,500人程度が集まっていたと報じられています。
不幸にもテロリストが会場に押し入ったのは演奏の最中で、ステージにいたバンドのメンバーはすぐさま退避できたそうですが、CNNをはじめとする海外の各メディアは100人以上が亡くなったと報じています。現時点(日本時間で11月14日13時頃)で犯行声明などはあきらかにされていないため、なぜ彼らの公演が標的になったのは不明。バンドが冗談半分に「デスメタル」を標榜していたがゆえに狙われたと判断するのは、早計にすぎるでしょう。
彼らはもともとクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジなどの面々を中心とする、カリフォルニア州南部のパーム・デザート近辺でのセッションから偶発的に生まれたバンドです。ブルージーな演奏にデス声をのせた楽曲を録音した際に、この冗談めいた名義が初めて用いられました。これを母体にして、セッションを主宰していたクイーンズのジョシュ・オム(今回のツアーには不参加)と強烈なキャラクターをもつフロントマンのジェシー・ヒューズを中心とするプロジェクトに発展。もともとの「イーグルス・オブ・デス・メタル」という言い回し自体は、仲間内でデスメタルの話題になったときに誰かがポーランドのバンドであるヴェイダーを「デスメタル界のイーグルス」と評していたことに着想を得ているそうです。バンドの本格始動後はデス声が使われることはほぼなく、エロやジョークをふんだんに織り込みつつ、ロックンロールのルーツをしっかり見つめなおすヴィンテージ感たっぷりの楽曲で人気を博しています。
筆者が数年前に足を運んだ代官山UNITでの初来日公演は、集客こそ苦戦していたもののジェシー・ヒューズのパーティー野郎っぷりがいかんなく発揮された、はちゃめちゃに楽しいステージでした。約7年ぶりの新譜発売に伴うツアーも、世界各国のファンが待望していたものでしょう。パリでの陽気な一夜を楽しみにしていた人々が、思いがけず犠牲になったことを考えると言葉が出ません。謹んで哀悼の意を評します。(たかはし)
・Eagles of Death Metal オフィシャルFacebookページ
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