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2013/04/29 12:02

 

新生THE TON-UP MOTORS、13年間の過去と未来を繋ぐ東京ワンマン——OTOTOY最速レポ

 

 
ゴールデンウィーク2日目の下北沢CLUB Que、看板には「振替公演」の文字があった。この日行われた札幌出身のソウル・ロック・バンド、THE TON-UP MOTORSによるワンマン・ショウは、1月27日に予定していたライヴの振替公演。オリジナル・メンバーであるドラマーの内田隆之が2011年に脱退し、昨年10月に新ドラマー堀内俊聡が加入して初めての、東京でのワンマン・ショウを予定していた。しかし、記録的悪天候のため、ヴォーカルの上杉周大が北海道の宿泊先から東京へ戻れなくなってしまい、上杉不在の状態でライヴを行ったのだ。そんなエピソード付きのワンマン・ショウ振替公演は、チケットの払い戻しも設けられていたにも関わらず、まさかのソールド・アウト! 30代から40代の男女がすし詰め状態の会場は、始まる前から熱気に包まれていた。
 
定刻をだいぶ過ぎた頃、SEも無くおもむろにベースの長谷川雄一がステージに現れ、リズムを刻みだす。自然と巻き起こる手拍子に、フロアの期待も徐々に高まっていく。ギターの井上仁志に続いてヴォーカルの上杉も登場し、ソウルフルなハーモニカで盛り上げる。そして上杉の紹介とともに「第四の男」堀内が登場。さっそくスポット・ライトの中でドラム・ソロを披露して、流れるように「ノーザントレイン271」が始まった。タイトなドラムの上で、ベースとギターが細かいリフをユニゾンする、ファンキーなナンバー。上杉のハーモニカ・ソロも冴えていて、フロアからは早くも歓声が上がる。続けざまに演奏された「夜明けのハードボイルド」は、さらにアップテンポで超ファンキー! フロアは小刻みに身体を揺らし、テクニカルに見せてくるキメのフレーズに声を上げ、手を挙げて応えている。マイクに噛み付くように前のめりに、全力で歌う上杉の額からは早くも汗が流れていた。
 
「最高のダンスを見せてくれるか?」という言葉の後演奏された、ダンサブルな「ファイティング・ステップ」、歌詞を丁寧に優しく聴かせていた「月明かり一番星」まで、オープニングから4曲をノンストップで演奏。最初のMCでは今回のライヴが二部構成であることが告げられ、一部と二部ではバンドの異なる側面を見せていきたいと上杉が語る。ブラック・ミュージックを思わせるファンキーな楽曲が続き、流れるように変わっていくリズムや曲調にも、フロアは完全に着いていった。そして、第一部の最後に演奏された「俺達のバラッド」はリバーヴを効かせたソウル・バラード。遠く離れてしまう恋人を想う切ないラヴソングだ。リズム隊はヴォーカルを中心に強弱をつけて盛り上げ、井上はシンプルでエモーショナルなギター・ソロを聴かせた。
 
そして第二部、まずはヴォーカル上杉以外が真っ赤なスーツに着替えて登場し、長谷川の煽りによって全員で「ダイナマイト!」と叫びながら上杉を呼び込む。遅れて登場した上杉は、フリル付きの襟が目立つ赤いシャツに、上下銀色のスーツで登場。さっそくステージから身を乗り出して観客を煽る。とにかく派手で、熱い! 第二部に演奏された楽曲は、一部よりストレートでハッピーなポップスだった。それでも、隙があればここぞとばかりにテクニカルなフレーズを混ぜてくる楽器隊、そしてステージをハンド・マイク持って飛び回る上杉。4人それぞれが実力を兼ね備えたパフォーマーだと言えるだろう。だからこそ見応えがあり、4ピースと言いつつも、ステージのどこを見ていればいいのかわからなかった。そして、フロアも第一部より自由に身体を揺らし、恥ずかしがることなくメンバーの煽りに応えていた。上杉がアコースティック・ギターを持って演奏された「花が咲いたなら。」は、自分と向き合い、突き進もうというポジティヴな歌詞が響き、新生THE TON-UP MOTORSの決意が詰まっているように感じた。
 
第二部の終盤にはアップ・テンポなダンス・ナンバー「グッと来てライラ」が演奏され、フロアはコーラスを歌いながらタオルを振り回す。ソロ回しでは、長谷川がドナルド・ダック・ダンやジェームス・ジェマーソンなどの有名なフレーズを混ぜ込んだ「1人ソウル・ベースライン・ソロ」を披露。対して、先日30歳の誕生日を迎えた井上は、上杉に煽られてシャウトを交えた激しい「30のソロ」をかき鳴らした。そして本編最後に演奏された「バカ笑い大将」では、イントロからフロントの3人がステージの際まで身を乗り出し、全員が汗にまみれながら、最後まで笑顔を輝かせていた。
 
すぐに巻き起こったアンコールに応えて、SEとともにドラム以外の3人が登場。ベースの長谷川がギターを、ヴォーカルの上杉がベースを、そしてギターの井上がドラムの位置に着くと、二部の1曲目と同じように、今度は「グルーヴ・メイカー!!」と全員で叫んで堀内を呼び込む。先ほどよりはやや優しめの煽りの後、「バカ笑い大将」のサビ部分も混ざった、ブルース調の自己紹介ナンバー「俺が第四の男」を演奏。やや走りぎみの楽器隊の中、堀内の人の良さが伝わる歌詞とMCで、会場は暖かな笑いに包まれた。
 
その後、1月27日に会場に辿り着くことができなかった悔しさから作ったという新曲「それが愛さ」を披露。遠く離れていても支えてくれるファンのことを歌った、シンプルで熱いミドル・テンポの楽曲だ。上杉は少しずつ言葉を発してはぐっと口を閉じ、一言一言のメッセージを噛み締めるように、歌い上げた。これまでの楽曲と違って白を基調としたシンプルな照明も相まって、いい緊張感が会場を包み、彼の歌声にCLUB Que全体が聴き入っていた。
 
さらにダブル・アンコールでは、ファンからのメッセージが書かれたサプライズのフラッグを持って再登場。上京からの下積み時代、メンバーが何度か変わったこと、そして出演を諦めざるを得なかった1月27日の話など、結成から13年間で感じてきた様々な悔しさを吐露した。しかしその悔しさがあるからこそ、この日、「東京で行うワンマンで初めてソールド・アウトした」ことの喜びは大きいと、改めてファンへの感謝を語った。

最後に演奏された「歓びを唄う」は<君がいて音楽があればそれだけでOK>というシンプルな歌詞を、満員の観客と大合唱。涙を堪えながら歌い、フロアにマイクを向けてくしゃくしゃの笑顔を見せる上杉の姿には、筆者も目頭が熱くなった。最後まで歌いきり、何度も「ありがとう」と叫んで、1月27日に叶わなかった全員揃っての集合写真を撮影して、この日のライヴは終わった。

この熱いファンと、ファンを想う熱い気持ちがある限り、新生THE TON-UP MOTORSはどこまでも歩み続けるだろうし、どこまでも夢を見せてくれる。そう確信せざるをえない、ファンとの強い繫がりを見ることができた、充実の2時間半だった。(櫻井希)
 
 
〈新生THE TON-UP MOTORSワンマンソウルショウ ~明日を撃つ第四の男登場~〉
2013年4月28日(日)下北沢CLUB Que

セットリスト 
第一部
1. セッション
2. ノーザントレイン271
3. 夜明けのハードボイルド
4. ファイティング・ステップ
5. 月明かり一番星
6. タイガー・ブーガルー2009
7. 泣かすぜベビー
8. 右腕ファイヤー
9. 俺たちのバラッド
 
第二部
1. イントロダクション
2. 無邪気なひと
3. ユーに捧ぐ!!
4. 花が咲いたなら。
5. 至上の日々
6. 人生はステージ
7. グッと来てライラ
8. バカ笑い大将
9. アウトロダクション
 
En
1. 俺が第四の男
2. それが愛さ
3. 無名のうた
 
En 2
歓びを唄う

[ニュース] THE TON-UP MOTORS

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